夏休みに海外旅行に行く人も多いと思うが
その旅の後に、普通に日本で一生暮らしていくのなら
行ったらいけない場所というのがある、と激しく主張したい。
それはインドあたり。
私の脳内統計では、行ったヤツのほぼ5割が
精神に何らかの影響を受けて戻るからである。
雄大な自然とともに、本来の人間としての在り方に還るとか
ガンジスの流れのように、すべてをありのまま受け入れて生きるとか
途方もない事を大真面目に、周囲に押し付けて回りだして困るのだ。
一体インドにどんな魔力があるのか
恐ろしくて、あそこらへんには近寄りたくない。
兄の友人が、ついうっかり会社をグシャッと潰してしもうたので
どうしてるのか心配で、兄に様子を訊いたら
ネパールに旅行をするという計画になっているそうで。
ネパールと言えば、頭の悪い説明だとインドの上。
会社を潰したら、もっと他にすべき事が山ほどあるだろうに
何でまず最初にインドあたりに旅行なんだよ?
その時に思ったのが、インドあたりが問題なんじゃなくて
インドあたりに行きたがるヤツの神経が
もう普段からあっち方面に傾いてるんかな、という事。
その兄の友人は、割とフワフワしているヤツだからだ。
だったらインドあたりも、そういうヤツらに押しかけられて大迷惑だよな。
で、うちの兄もフランスに行ってたせいか、ちょっと奇妙なヤツなので
HEY! BROTHER! おめえも一緒に行くんかYO!
と、おそるおそる訊いてみたら
何故にこの俺様がそんな辛い旅をせねばならんのか
みたいな拒絶をやんわりと示していたので、安心した。
ヨーロッパかぶれに悠久思想まで加わったら、家族はたまらんからな。
聞くところによると、ネパールに行って
ヒマラヤを “登れるだけ登る” というアバウトな目的で
自分の息子も一緒に連れて行くらしい。
思春期の男子をそんな場所に連れて行くなど、宗教の洗脳にも等しく
もう、あそこの家系終った! と、その時に絶望したが
後日談を聞いたら、息子は食い物合わずの下痢と高山病で苦しみ
カルチャーショックもあり、もう2度と行かない! と怒っているそうで
さすがイマドキの脆弱男児、よくやった!!! と嬉しかった。
ニッポンの摩天楼に包まれて、ゆっくりマックでも食ってくれ。
当の兄の友人本人には、何度目かの懲りずのインドあたり旅行の後に
会ったんだが、案の定、以前にも増して脳畑に花が咲き乱れていた。
「全人類の平和」「皆で一緒に幸せにならないと意味がない」
などと目をキラキラ輝かせながら口走る、お約束通りの変調をきたしていて
延々と熱苦しく語りかけてくれた。
ずっと黙って大人しく聴いていたのに、いらん藪を突付きたいのか
「どう思う?」 と、わざわざ意見を訊いてきたので
真顔で 「うさんくさい」 と、一言だけ振り下ろしてあげた。
周囲の兄の友人ズが、えらくウケていたので
彼らも内心は迷惑しているんだな、とわかって安堵した。
友達なら、注意してあげるのが友情だと思うのだが
色々と事情もあって、そう強い事も言えないのだろう。
えれえ年下の何もわかっていない “小娘” (← ここ自画自賛)
なら、ちょっとぐらい、たわけた説教をしても怒りも湧きまい。
何しろ、“何もわかっていないアホ” だからこそ、暴言を吐くのだから。
と言う事で、その兄の友人には
「いずれ僕の言ってる事がわかるようになるよ」 と、微笑まれた。
これがオトナの漢 (と書いて “おとこ” と読む) の余裕だな。
・・・とことんバカ扱いされている気もせんでもないが・・・。
しかしインドあたりは、まるで磁石だな。
砂の中から砂鉄だけを吸い上げるように、それらしい人々を呼んでいる。
そんでそのパワーを増幅させて、日本に帰す。
何かがジワジワと侵略されているような気分になるぜ。