ドサドサドサドサーーーーッ
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
何度も何度もしつこいワープに
もう誰も何も言いたくなかった。
無言で目を開けて、無言で立ち上がった。
反応したら負け、という気分になっていたからである。
しかしそのささやかな抵抗も、目の前の光景を見たら
簡単に打ち破られてしまった。
「きゃあああああああああっっっ!!!!!」
最初に叫んだのは継母であった。
目の前には、茶色の巨大ヘビがトグロを巻いていた。
「・・・・・マジでハブかい・・・・・・。」
黒雪姫は、とてつもなく落胆した気分になった。
「ママン!!!」
背後で声がして、ヘビに駆け寄る者がいた。
王子である。
王子はヘビに抱きつくと、いとおしそうに頬ずりした。
そして黒雪姫の方を向いて言った。
「私は実はハブ女王の息子なのです。
300年前の戦いで、母は妖精界を追われ
私は妖精界に取り残されてしまったのです。
あなたについていけば、いつか母に会えると思っていました。
騙してすみませんでした。」
黒雪姫は、ポカーンと口を開けている。
「そんなに驚きましたか?」
王子が申し訳なさそうに言うと、黒雪姫が動揺しつつ言った。
「う、うん・・・
その歳で 『ママン』 って呼んでるんだ・・・?」
「そこですか!!!」
王子、渾身の突っ込みである。
「てか、ここ、さっきの荒野よね?」
黒雪姫があたりを見回してつぶやく。
マジで王子がハブ女王の息子でも、どうでもよさげである。
「そう・・・・・。」
ハブ女王が答えた。
「ヘビが喋った!」
継母が驚く。
「喋る鏡とお話してたくせに、何を驚いてるんやら。」
呆れる黒雪姫に、とまどう継母。
「だって、あれは魔法の鏡で・・・。」
「いい加減、目を覚ませ、ババア!
あの鏡の正体は、この大蛇だったのよ。
あなたは利用されてたのよ。」
継母にそう怒鳴ると、黒雪姫は握り締めた拳を突き出した。
「お継母さま、ヘビにナメられてムカつきません?」
「・・・・・それは、そうだけど・・・。」
「人間の世界を、ヘビなんかにめちゃくちゃにされて良いのですか?
とても歯が立ちそうにない相手だけど
ここで引いたら、人間失格じゃないですか?」
黒雪姫は、腰のナイフを継母の前に差し出した。
それを見た継母は、やっと状況が呑み込めたようで
大蛇の方を睨んで訊いた。
「じゃあ、あの関西弁は?」
「怒らせて割ってもらおうとしていたのだが
そなたが意外に忍耐強くて、敵わなかったようだな・・・。」
大蛇がチロチロと舌を出しながら答える。
継母は溜め息をついて、ナイフを受け取った。
「はあ・・・、通りで妙な関西弁だと思ってたわ・・・。
遊んで暮らすために、王室に後妻に入ったというのに
結局、重労働をしなきゃいけないのね・・・。」
「しょうがないじゃん、東国人は働き者なんだから。
世界のために頑張って当然ですわよ。」
ふっ と余裕を見せる黒雪姫に、大蛇が言う。
「割ってくれて、ど ・ う ・ も ・・・。」
その言葉を聞いた途端、黒雪姫がサーッと青ざめた。
「あーら、引き鉄を引いたのはあなたのようね。」
継母が、鬼の首を取ったように高笑いをする。
「黒雪、お継母さまに何か言う事は?」
「・・・謝りませんわよ。
私ら母娘、結局どっちもどっち。
騙され損の骨折り損、それもまたよし。」
黒雪姫にツンとそっぽを向かれ、一瞬ニヤッとした継母は
気を取り直すかのように、ナイフを握り直して叫んだ。
「では、いきますわよ!」
続く
関連記事 : 黒雪姫 31 10.10.7
黒雪姫 33 10.10.14
カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ
黒雪姫 1 10.7.5