カテゴリー: 黒雪姫シリーズ

  • 黒雪姫 26

    小人たちと女王が、チェスの用意をしている間
    黒雪姫は座ったまま、ボーッと考え事をしていた。
     
    「何を考えとるのかね?」
    小人たちがふたり、黒雪姫の横に座った。
     
    「あなたたちは参加しないの?」
    「ああ、わしらはチェスは苦手なんじゃ。」
    「へえ、皆似たようなもんかと思ってたけど
     違う部分ってあるのね。」
     
     
    その言葉に、小人は仲間を指差しながら解説をし始めた。
    「ほれ、あそこにおるヤツは、弓が得意なんじゃよ。
     だから主に狩りを担当しておる。
     あそこのヤツは、手先が器用で特に針仕事を好む。
     ご近所さんから服を作ってくれと頼まれる事もあるんじゃ。
     あそこのヤツはな・・・。」
     
    黒雪姫はただ黙って、活き活きと説明する小人を見ていた。
    「・・・あんた、聞く気がないじゃろ?」
    見つめられている事に気付いた小人が、ムッとして言った。
     
    「いや、楽しそうに説明してるなあ、と思って。
     本当に仲が良いのがわかるわー。」
    珍しく黒雪姫がクスクス笑った。
    そうやってると、普通の可愛い女の子に見えない事もない。
     
     
    「私が思っていたのは、あなたたちはオールマイティで
     皆、一様に万能だって事。
     そう思ってたんだけど、不得意なものもあるなんて
     ちょっと意外だったな、と。
     これは悪口じゃないのよ。」
     
    「よくわからんが、わしらは何でも助け合うから
     傾向も似てきて、個性がないのかも知れんな・・・。」
     
    「同じ個性が集まってるから、無個性に見えるだけですよ。」
    口を挟んできたのは王子である。
    「世界が一緒なら、個性が一緒になるのも自然な事ですよ。
     たまに違う感覚を持つ者が出ると
     異端として扱われるんですよね。」
     
    小人の表情がパアッと明るくなった。
    「そうなんじゃ! わしらは似てるだけなんじゃ!」
     
     
    王子と小人たちの弾む会話に、黒雪姫は興味がなかった。
    周囲と自分の個性の調和など、平民の悩みだからである。
     
    黒雪姫の不安はただひとつ。
    この勝負に負けたら、どうなるんだろう?
    てか、勝って女王になるのも、何だかヤバくない?
    どう転んでも、危ない展開になるっぽい。
     
    そこに、チェスに参加する小人が走ってきた。
    「駒が足らんので、あんたに代わりに来いって言ってるが。」
     
    「はあ? 道具が足らないゲームを
     どうしてそんな無理くり、やらなきゃならないのよ。
     てか、この私を駒扱い? 何をたわけてるのよ!」
     
    黒雪姫が一蹴すると、女王が向こうの台の上から叫んだ。
    「駒がないと不利になるぞえ?」
     
     
    「ふーん、まあ、いいわ。」
    黒雪姫は、やる気がなさげにノソノソと盤上に立った。
     
    「あんたはここ、ルークの位置じゃ。」
    「スターウォーズ?」
    「何じゃ? そりゃ。
     ルークは戦車という意味で、縦横に何マスでも動けるんじゃ。
     自分サイドの駒は飛び越えられんが」
     
    とりあえず、ルールを聞いていた黒雪姫だったが
    案の定、理解しきれずに途中でさえぎった。
    「わからん! おまえの話はわからん! by大滝秀治 」
     
    「?」「?」「?」
    皆が怪訝な表情をする中、黒雪姫が叫んだ。
    「もう良いから、とっとと始めようよー。」
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5    

  • 黒雪姫 25

    一行はウサギの向かった方向へと歩いたが
    ウサギの姿はどこにも見えなかった。
     
    歩いていた黒雪姫が、ふと向きを変えた。
    「あ、やっぱこっちじゃなく、こっちに行くから。」
     
    「ちょっと待て、そういう場合は皆で相談じゃないのか?」
    よせば良いのに、小人のひとりが意見をする。
    案の定、黒雪姫は ああーーーん? と
    チンピラのような表情で、小人たちを見下ろした。
     
    「じゃあ、文句のあるヤツは、まずは殴り合いからいきましょうか。」
    小人たちが黒雪姫に敵うわけがない。
     
    「なあ、あんたも何か言ってくれんか?」
    小人の懇願に、王子は微笑みつつ最悪の答をする。
    「私は姫の行くところなら、どこへなりと。」
     
    「ダメじゃ、この王子・・・。」
    「人間というのは、何故こうも不可解なのか。」
    小人たちは、いちいち寄り集まっては不平不満を口にしていた。
     
     
    その姿を横目で見て、黒雪姫は茶化した。
    「烏合の衆でたーーー (笑)」
     
    そのからかいには腹が立つが、7人いるという事が
    案 × 7 なのではない事は、自たちでもよくわかっている。
    それどころか、協調性があるあまりか
    7人がまるで1人のように、感覚が同じなのである。
    小人たちはそれぞれ、自分の分身が6人いる気分であった。
     
    それがいけない事なのか・・・?
    小人たちは動揺し始めていた。
     
     
    突然どこからか、行く手にひとりの女性が現われた。
    真っ赤なドレスを着ている。
    「これ、そこな娘、そなたを女王にしてあげようぞ。」
     
    「何か出たが・・・。」
    小人の言葉に黒雪姫は小さい声で、それでもきっぱりと言った。
     
    「無視!」
     
     
    女性の近くを避けて、迂回しようとする一行に
    女性が走り寄ってくる。
     
    「娘、そなたの事じゃ。」
    黒雪姫が右に目を逸らすと、女性は右に顔を突き出し
    左を見ると、左に顔を突き出す。
     
    「これ、わらわの言葉が聞こえぬのか?
     娘よ、そなたを女王様にしてやるのじゃぞ?」
     
    「この女、今でも既に何様じゃから。」
    いらん真実を答えた小人の頭を、ゴッとゲンコツする黒雪姫。
    「てか、私、唯一の嫡子だし、自動的に女王になるから!」
     
     
    「何を焦っているんじゃ?」
    空気を読めない小人が、黒雪姫の腕を引っ張る。
     
    黒雪姫は女性の方を見て、ビクビクしながら訊いた。
    「・・・チェス?」
    「おお、よく知っておるな。
     その通り!
     わらわにチェスで勝ったら、そなたを女王にしてあげよう。」
     
    「私、チェス知らないからパス!」
    行こうとした黒雪姫に、小人たちが言った。
    「わしら、チェスは得意じゃぞ!」
    「じゃ、あなたたちが女王にしてもらえば?」
     
    ひとり立ち去ろうとした黒雪姫に、女性が怒鳴った。
    「ダメじゃ! 女王は女と決まっておる!
     では小さい者たちよ、そこな娘を賭けようぞ。」
     
    「よし! その勝負、受けて立った!」
    小人たちが調子こいた。
     
    「ちょ、ちょっと待って!」
    黒雪姫が止めるのも聞かず、自称女王と小人たちは
    チェスの用意をし始めた。
     
     
    小人たちの先走りに、黒雪姫は青ざめて座り込んだ。
    ザコだの脇役だの、散々あおったせいで
    小人たちは一旗揚げようとしているようだ。
     
    悪事は自分に返ってくる、という良い見本である。
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5  

  • 黒雪姫 24

    黒雪姫の意見は、あまりにあまりなのだが
    戦いというのは、通常の感覚ではやれない。
     
    黒雪姫に付いていく = “戦に参加する”、という図式に
    小人たちは、やっと気が付いた。
     
    泣きたくなるような、イヤな予感がヒシヒシと漂う。
    もう1mmも後戻りが出来ない気がするのだ。
     
     
    そんな不安も手伝ってか、辺りも何となく
    薄気味悪い場所のように思えてくる。
     
    「なあ、ここはどこじゃろうなあ?」
    「うむ・・・、わしもそれが気になっとった。」
     
    黒雪姫には、“ここがどこ” など、何の疑問も浮かばなかったが
    小人たちの言葉は、“道に迷った” レベルじゃない雰囲気である。
     
    「えっ、ここって妖精界じゃないの?」
    「うーん・・・、妖精界でトランプの兵士など聞いた事がないぞ。」
    「妖精同士の戦いも御法度じゃしな。」
     
    悩む小人たちに、王子が言う。
    「ここ、魔界じゃないですか?
     妖精界は妖精王がいるのでしょう?
     さっき猫が “女王さま” って言ってましたよ。
     だから人間界と妖精界以外の場所だと、神界と魔界で
     神界に女王さまがいるとは思えませんから。」
     
    「魔界じゃと・・・?」
    「いやじゃあ! いやじゃあ! わしら、どうなるんじゃーーー!」
    小人たちが四方八方にパニくり走りし始めた。
     
     
    「うるさい!!!」
     
    黒雪姫が、小人たちを一喝する。
    だるまさんが転んだ、のごとく静止する7人。
     
    「ここが魔界と決まったわけじゃないでしょ。
     てかさ、現実に妖精界には “ハブ女王” がいるそうじゃん。
     その人の事じゃないの?」
     
    「ハブ女王は300年前の戦いで破れて死んだんじゃ。」
    「あら。」
    黒雪姫のとぼけた返事に、小人たちが怒る。
    「『あら』 かい、『あら』 !」
     
    「でもさ、別に魔界でも良いじゃない。
     だって私ら、さっきの兵隊とのバトルで快勝してるんだし
     魔界、結構チョロいかもよー?」
     
    「おお、それもそうじゃな。」
    小人のひとりが同調すると、別のひとりがたしなめた。
    「しかし、妖精界にどうやって帰るかが問題じゃないか?」
    「そうじゃった・・・。」
     
     
    沈み込む小人たちに、黒雪姫が気楽に言う。
    「こういう場合は、ラスボスを倒せば元の世界に戻れるんじゃない?
     仮に戻れなくても、ここで天下を取れば良いわけだし。」
     
    「あんた・・・、楽観的すぎるぞ・・・。」
    呆れる小人を、黒雪姫がそそのかす。
    「ここの親玉を倒せば、あなたが王さまよー? んんーーー?」
     
    「わしが王・・・?」
    グラつく小人を、他の小人が止める。
    「ヘンな夢は見るな!
     ここの主を倒しても、この女がいる限り
     わしらは下僕扱いじゃぞ。」
     
    腕組みしてニヤニヤしている黒雪姫を見て、我に返る小人。
    「お、おお、そうじゃった。
     危ない危ない、騙されるところじゃった。」
     
     
    「ふーん。
     私は、地位なんかには興味ないんだけどー。
     まあ、いいけどねー。」
     
    黒雪姫は、ウサギの走って行った方向にブラブラ歩き始めた。
    「とりあえず、干し肉を追いましょうよー。」
     
    「うむ、早く何とかして、この女と縁を切ろう。」
    小人たちは円陣を組んで、その気持ちを確認し合った。
     
    王子はテーブルに飾られた花を愛でつつ、鼻歌を歌い
    執事は残った食料をタッパーに詰める。
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5  

  • 黒雪姫 23

    野原の1本の木の下に、長テーブルが置かれていた。
    お茶や軽食が乗っている。
     
    ウサギを椅子に縛りつけて、お茶を飲ませ菓子を食わせる。
    「嫌がらずに飲み食いしたわね
     よし、毒は入ってない。
     さあ、食いましょう、いただきまーす。」
     
     
    皆が楽しく茶をしている横で、縛られたウサギが訊く。
    「俺はいつ解放されるんだ?」
    「色々答えたらじゃないかのお?」
     
    「じゃあ、早く訊いて放してくれ。」
    「えーと、質問、何でしたっけ?」
    ボケボケな王子である。
     
     
    「♪ あっはっはー、バカなウサギ
     女王さまは怒り心頭
     兵隊たちが責めてくるー ♪」
     
    歌声がする方向を、黒雪姫以外が見る。
    「・・・?
     何であんたは見ないんじゃ?」
    小人の問いに、黒雪姫が答える。
     
    「どうせニヤついてる猫でしょ?」
    苦々しい表情の黒雪姫。
    「・・・当たりじゃ・・・。 何故わかる?」
     
     
    「おい、それより兵隊が来る、って言ってるぞ。」
    ここで黒雪姫がようやく返事をした。
     
    「あ、それ大丈夫。
     灯油とライターくださーい。
     一瞬でカタが付きますのでー。」
     
    茶を飲みながら、明るい声で言う黒雪姫に
    何じゃ? どうしてじゃ? と、口々につぶやく小人たちだったが
    向かってくる兵隊が見えると、全員が納得した。
     
    「なるほど、紙か。」
    某メルヘン名物のトランプの兵士である。
     
     
    「こんなん、素手で破れるわ!」
    黒雪姫が、兵士を持ち上げては頭上で破り捨てていく。
    どう見ても、怪獣大戦争である。
     
    小人や王子たちも、加勢する。
    「ほりゃほりゃ、松明じゃぞー。」
    「王子さまソード!!」
    「執事ムチ!」
    「メラ!」
    えっ、誰? 何でドラクエ? しかも最弱呪文・・・。
     
     
    途中いらん実況をはさみつつも、瞬時に兵隊を全滅させたご一行。
    「わしらも頑張ればやれるもんじゃのお。」
    「頭脳派じゃが、案外運動もいけるかも知れん。」
     
    暴力沙汰の達成感に小人たちが浸っている隙に
    ウサギが縄を緩めて逃げ出した。
     
     
    「あーあ、だから食おう、って言ったのにー。」
    「あんた、本気じゃったんか!」
     
    「人類以外の生き物 = 食い物。
     人間っちゃあ、そういうもんよ。」
     
    サラッと鬼畜発言をする黒雪姫の隣で、王子が優雅に微笑んだ。
    「この姫と私を、一緒に考えないでくださいねー?」
    この王子も大概な人格である。
     
     
    いち早く冷静になった小人のひとりが、問題提起をする。
    「なあ、この惨状はどうするんだ?」
     
    そこいら中に転がっている千切られたトランプたちは
    上半身と下半身に分かれてなお、動いていた。
    カサコソと音を立ててジタバタしているその光景は
    何かの虫のようでもいて、ちょっとグロテスクである。
     
    「もう何も出来んじゃろうから、放置で良いだろう。」
    「しかし、哀れ過ぎないか?」
     
    小人たちが、オロオロし始めた。
    ひとりが感情に支配されると
    残りの小人たちに、その感情が次々に広がっていく様は
    まるで伝染病のようである。
     
     
    「じゃあ、とどめを刺せば良いのね?」
    黒雪姫がマッチを取り出した瞬間、小人たちが慌てた。
    「わーーーーーーーっっっ! 止めてくれ!」
     
    一斉に黒雪姫に飛び掛かる。
    この黒雪姫小人ブドウ状態も
    幾度となく繰り広げられてきた風景である。
     
     
    小人たちの矛盾した言動に、黒雪姫が怒り始めた。
    「あなたたち、何がしたいのよ?
     イクサって言うのは、こういう事なのよ?
     普通は敵の、血まみれ内臓ドバーの死体が
     目の前に山積みになるわけ。
     今回は紙で、まだ動いているだけマシでしょう!」
     
    黒雪姫の激怒に反論が出来ずに
    うつむいて黙りこくっている小人たちを
    王子がしゃがみ込んで、優しく慰める。
     
    「まあ、正当防衛だとしても
     他人を傷付けるのは気分の良いものではありませんよね。
     でも彼らは、普通の生き物ではないようですので
     その内、自力でくっつくかも知れませんし
     そっとしといてあげる、というのはどうでしょうか?」
     
     
    この王子の提案を、欺瞞だとわかっていても
    すがりついてしまう小人たち。
     
    「そうじゃな。」
    「きっとわしらと違う構造なんじゃ。」
    「とりあえず、復活を祈ろうぞ。」
     
    自分たちにだけ都合の良いプラス思考に
    黒雪姫が冷淡につぶやいた。
     
    「最後まで殺してあげるのが、勝者の義務なのに・・・。」
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5   

  • 黒雪姫 22

    ドスン! と、地面に落ちたご一行。
     
    「ふふふ・・・、ここがどこだかわかるかね?」
    ウサギが邪悪な顔をして問う。
     
     
    「ほらあ、明らかにこいつが悪でしょう?
     あなたたち、さっき私を悪者呼ばわりした事を謝りなさいよ。」
     
    黒雪姫の抗議に、小人たちが素直に詫びた。
    「すまんじゃった。」
    「まさか、こういう展開になるとは思わんで・・・。」
     
    「だから、あなたたち、考えが浅すぎるんだって。」
    小人たちに説教をかます黒雪姫に、ウサギが怒鳴る。
    「おまえら、ここをどこだと思ってるんだ!」
     
     
    黒雪姫が、ゆっくりとウサギを持ち上げる。
    「あなた、まことのバカ?
     ここがどこだろうと、あなたは私になぶり殺される事決定なのよ?」
     
    黒雪姫はワープ中もウサギの耳を離さなかった。
    ウサギは、黒雪姫に両耳を掴まれたまま凄んでいたのである。
     
    自分の目の高さにウサギを持ち上げた黒雪姫が、キリッと言う。
    「大丈夫、全部残さず美味しくいただくから!」
     
     
    「・・・あわわ・・・。」
    動揺するウサギに、王子が優しく語り掛ける。
     
    「ウサギ殿、我々に情報をくれたら
     姫をとりなしてあげても良いですよ?
     私は殺生は好みませんので。
     いえいえ、決してベジタリアンではないですけどね。」
     
    「・・・何を訊きたい?」
    渋々と受けるウサギ。
     
    「そうですねえ、まず、ここはどこで、誰が黒幕で
     あなたは何者なのか、何をしようとしてるのか
     300年前と数年前に、妖精界に何が起こったのか
     人間界の北国の村の滅亡と、東国の王妃に関わる鏡は何なのか
     現在の妖精界で、何か異変が起きているのか
     今のところ、これぐらいですかねえ?」
     
    黒雪姫に同意を求める王子に、小人が突っ込む。
    「それ、この話全部じゃないか!」
     
    「てかさあ、ウサギごときにそんな核心がわかるとは思えないけど?
     それより、これ、鍋にしない?
     私、お腹すいちゃったわ。」
     
     
    軽々しく自分を鍋の材料にしようとする黒雪姫に
    ウサギが慌ててバタついた。
    「待てっ、待ってくれ、何でも答えるから命だけはーーー!」
     
    「そういや、さっきお茶会とか言ってたぞ。」
    「食べ物があるんじゃないのか?」
     
    「ある! あるから俺を食わんでくれーーー!」
    「んじゃ、さっさと案内した方が良いぞ。
     この女、腹が減るとより一層凶暴になるし。」
     
    「何ですって?」
    小人のその言葉に、黒雪姫の腕がピクッと動いた。
     
     
    「あああああ、余計な事を言って
     こいつの神経を逆なでせんでくれーーー!」
    ウサギが必死に叫ぶ。
     
    黒雪姫の怒りは、全部自分にくる事をわかっているようだ。
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5  

  • 黒雪姫 21

    黒雪姫ひとりの働きで、やっと茨の藪を抜けた。
    最後の方は、ナタが壊れて使い物にならなくなり
    執事のキッチン鋏が活躍した。
    (剣を持った王子は、災いを恐れた小人たちに制止された。)
    それほど長い藪であった。
     
    「こっから、あっち方面に2時間じゃ。」
    「急ごうかの。」
     
    「あなたたち・・・、私を少しは休ませようとか思わないの?」
    肩で息をする汗だくの黒雪姫に、小人たちが冷たく言い放つ。
    「行きたがってるのは、あんたひとりじゃからのお。」
     
     
    このもっともな意見に、言い返す言葉が見つからず
    黒雪姫が一歩踏出した時に、前方に動く影が見えた。
     
    「ああー、遅れる遅れる。」
     
    その瞬間、黒雪姫は小人のひとりの首根っこを掴んでいた。
    「うおりゃあああああああああああっっっ!」
     
    「きゃあああああああああああああっっっ!」
    投げられた小人は、悲鳴を上げながら水平に飛んで行き
    動く影に的確に叩きつけられた。
     
    そこへ黒雪姫が、すかさずにボディスラムをする。
    黒雪姫にダイブされた小人かウサギのどっちかが
    グエッと小さい声を洩らした。
     
     
    一同はこの衝撃映像に、驚愕した。
    「何て事をするんじゃ!」
    「そりゃ、ひどすぎるぞ!」
    「そこまでの仕打ちはあんまりじゃ!」
     
    小人たちのブーイングをよそに
    黒雪姫はウサギの耳を掴んで持ち上げた。
    「こいつの皮を剥いで、さばいて干し肉にしましょ。」
     
    「ちょっと待て、そのウサギ、服を着とるぞ。」
    「懐中時計も持っとるぞ。」
     
    小人たちの指摘を、黒雪姫は聞き入れない。
    「森にいるウサギは食用と決まってます!
     肉系は捕れるうちに捕っておかないと。」
     
    「言葉を話す者を食べるのは感心しませんねえ。」
    王子の言葉に、黒雪姫がブチ切れた。
    「うるさい! こいつは生かしておいたらダメな気がするの!!!」
     
     
    「あー、これ以上面倒な事になりたくないんじゃな?」
    「見え透いとるぞ。」
    「しかし、そのために殺人をしちゃいかんじゃろうー。」
     
    小人たちのヤジに、黒雪姫が怒り出す。
    「ドやかましい!!!
     あなたたちだって、こんな騒動はさっさと終わらせたいでしょ?
     そのために私が汚れ仕事をする、っつってんじゃん
     何の文句があるのよ!」
     
    「悪じゃ・・・。」
    「こやつが真の悪だったか・・・。」
    ザワつく小人たち。
     
     
    その時、黒雪姫の手元のウサギが、歪んだ笑みを浮かべた。
    「ふっふっふっ・・・
     よくぞ見破ったな、女。」
     
    ウサギは両手を前に出した。
    「こうなったら、全員ご招待しよう。
     お茶会に・・・。
     波ぁっっっ!!!」
     
     
    空中に出来たヒズミのような亀裂に
    黒雪姫一行は吸い込まれて行った。
     
    「波動砲ーーー?」
    「カメハメ波ーーー?」
    「ブレストファイヤーーーー?」
     
     
    そのまま黙っていれば、黒雪姫が糾弾されて
    自分は無傷で解放されてたかも知れないものを
    早々とカミングアウトして馬脚をさらすなど
    しょせん小動物は小動物、低脳なこって、という話である。
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 1 10.7.5  

  • 黒雪姫 20

    地図や文献などは、城にはあるだろうけど
    一般の妖精の家にはないらしい。
     
    「詳しい人とかいないんですか?」
    王子の問いに、小人が答える。
    「だから、賢者さまが・・・」
     
    「あんな伝書バトの役割りしかしてないフクロウじゃなく
     もっと他に生き証人みたいなんはいないの?
     って訊いてるんだってば。」
    えらいな言い様だが、黒雪姫の怒りももっともである。
     
    「うーん、樫のじいさまなら知っとるかもしれん。」
    「出た、木!」
     
    メルヘンの知識係って、いっつも大木よねー
    と暴言を吐く黒雪姫に、王子が感心したように同意する。
     
     
    とりあえず、会いに行こうと全員で家を出る。
    王子が黒雪姫に小声で訊ねた。
    「小人たちの数人は、家に残しておいた方が良いんじゃないですか?
     賢者さまとバラバラに動き過ぎるのも無駄が多いでしょう?」
     
    黒雪姫が驚いたように、王子の顔を見る。
    「へえ、あなた、そこまで能無しの馬鹿ボンでもないのね。」
     
    「ふっ・・・、己の能力をひけらかすのは下品ですしね。」
    王子が髪をかき上げながら、余裕で答えているのを無視して
    黒雪姫はスタスタと先へと歩いて行った。
     
    「どこの国でも姫は我がままなもの。 ふっ・・・。」
    王子は憂いに満ちた笑みを浮かべながらも
    女走りで黒雪姫の後を追った。
     
     
    「で、どこにその樫の木が植わっているんだってー?」
    叫びながら、黒雪姫が茨の藪をナタでバッサバッサと叩き切る。
    離れて後ろを付いていく小人のひとりが答える。
    「茨の藪を抜けて、2時間ほど歩いた先の高原らしいんじゃ。」
     
    「こっから更に2時間・・・?」
    黒雪姫は、茨を叩き切る手を止めた。
    「てゆうかさあ、何でこの中の紅一点が力仕事をさせられてんの?」
     
    「おお、すみませんでした、姫。
     実は私、こう見えても剣術が得意でして。」
    王子がスッと前に出た。
     
    「後はこの私にお任せを。
     この茨を瞬時に切り開いてみせます。」
    王子が右手を上に左手を前に構えた。
    剣はどうした。
     
     
    「南 斗 水 「」 待って!!!」
    黒雪姫が、慌てて静止する。
     
    「いや、もういいから! 私が手動で切るから!
     それもう既に、この前私がやった芸だから!!
     そろそろ真面目に苦情がきそうだから!!!」
    言うなり、凄い勢いで茨を滅多切りし始めた。
     
    「姫というのは気まぐれなもので。 ふっ・・・。」
    王子は両手を上げて、ヤレヤレのポーズをした。
     
    王子のこの言葉が黒雪姫に聞こえなかったのは
    命拾いをした、と言えよう。
     
     
    とりあえず王子以外の全員が、ムダに疲労度ゲージが上がった。
     
     
     続く
     
     
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  • 黒雪姫 19

    「とにかく、話をまとめてみよう。」
    小人の提案に、黒雪姫が異議を唱えた。
    「いや、まとめるまでもなく、鏡がポイントでしょ。
     ハブ女王の乱で、どっかに鏡が出てこない?」
    小人たちが首をひねる。
     
    「・・・あなたたち、ザコだから事実とか全然知らされてないのねー。」
    黒雪姫のこれ以上にない失礼な発言が
    小人たちのちっちゃなハートにグサッと突き刺さった。
     
     
    黒雪姫が立ち上がり、落ち込んでいる小人たちを急かす。
    「ほら、どうすんの?
     今回もエキストラで背後でうごめいとく?
     それとも主役を張る?」
     
    小人たちが相談をしようとすると、黒雪姫が怒鳴った。
    「やりたいヤツはやればいい。
     やりたくないヤツはやらなきゃいい。
     今度の事は、危険もあるかも知れないから
     自分の判断で決めろ!」
     
     
    「・・・やらないと、ザコ扱いなんじゃろ?」
    小人たちが、イジイジしながら言う。
     
    「当たり前でしょ。
     死ぬかも知れんこっちとしては、安全圏にいるヤツには
     最後っ屁のひとつもかましてから、出撃したくなるってもんじゃない。
     まあ、自己満足でしかないから、そう気にしないで良いから。」
     
    「・・・ひどいヤツじゃのお・・・。」
    「じゃが、この女に好き勝手にさせたとバレたら
     わしらの立場も悪くならんか?」
     
    「てゆーかさ、嫌がっても協力してもらうしー。」
    真顔でテーブルの底をガンガン蹴り上げる黒雪姫に
    小人たちはゾッとさせられた。
    「・・・この女、本当は魔界から来たんじゃないのか?」
     
     
    未来は既に決まっている事に
    絶望する小人たちと、高笑いをする黒雪姫。
     
    そして、それをキラキラした眼差しで見つめる王子と
    ウツロな目で、嫌な未来を覚悟する執事。
     
    それぞれの思惑が、微塵も交錯しないまま
    この話がどっちへ行くのか、どう言い訳をしようか
    頭を抱える “舞台裏” の事は、気にせずともよろしい。
     
    ええ、そりゃもう、1mmたりとも。
     
     
     続く
     
     
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  • 黒雪姫 18

    コトが収まったのを見計らって、王子と執事が戻ってきた。
    何やら密談もしていたようだ。
     
    「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」
    「ダメ。」
    手を上げる王子を、見もせずに却下する黒雪姫。
     
    「話ぐらい聞いてやらんか。」
    黒雪姫がそっぽを向く。
    「だって、こいつ、黙って待ってようというチキンじゃん。
     発言の権利なんかないわ。」
     
    「まあ、待て。
     体力がない者は知力があるのがデフォじゃ。
     聞いてみようじゃないか。」
     
    アザだらけなのに、まだ意見をする小人たちは
    実は最強なのかも知れない。
    しかも何気にイヤミな言い方。
     
     
    案の定、頬杖をついた黒雪姫が、ジロリと小人たちを睨む。
    「非力なあなたたちも頭が良い と言いたいわけ?
     はっ!!! まさか、遠回しに私の知能を否定してるとか?」
     
    「とととととんでもない!」
    小人たちは全力で否定した。
     
    「まったく、やりにくいおなごじゃのお・・・」
    「ここで王子がロクでもない事を言い出したら
     こっちにまで被害が出るぞ。」
    「この王子、ちゃんと空気を読んでくれるじゃろうな?」
    ボソボソと苦情が出てくる。
     
     
    小人たちが祈るような気持ちで見つめる中
    空気を読んでいるのかいないのか、王子が芝居がかった喋りを始めた。
     
    「北国のある地方では、鏡がご神体だという村があったのです。」
    「ふむ、呪術などで使われる場合もあるそうじゃからの。」
    「いえ、その村はそうではなく、伝説だけが残っていて
     今では鏡どころか、村もなくなってしまっています。」
     
    黒雪姫が、王子の話に初めて反応した。
    「ちょ、その話、詳しく。」
     
    「はい、姫の仰せとあらば。」
    王子は深々とお辞儀をした後
    遠くを見るような表情で、詠唱し始めた。
     
    「かつてその地方で一番栄えていたというその村は
     北国でも、とりわけ厳しい風が吹きすさぶ北海の近くにあり
     しかし村人たちは、魚の酢漬けをつまみに地酒を飲み
     暖炉の周囲で歌い踊る事で気をまぎらわせ
     長く辛い氷に閉ざされた季節を、皆で支え合っ・・・」
     
    「代打、執事!」
    黒雪姫の怒号に、執事が はっ と1歩前に出た。
     
     
    「とある村の鏡が、ある日突然お告げをするようになり
     村人はその鏡を神として崇めていたけど
     鏡を巡って争いが起きて、村は滅びたという話です。
     約300年ほど前の話なので、真偽はわからないのですが
     その場所に村の跡は確かにあります。」
     
    「300年前・・・?」
    小人のひとりが考え込んだ。
    「その頃、ここでは戦いが起こってなかったかの?」
     
    「戦い?
     ここ数百年間で戦いといえば、ハブ女王の乱ぐらいじゃろ。」
     
     
    「ちょっと待って! ストップストップ!!
     この話、名作二股のパクリにすんの?」
     
    黒雪姫の突っ込みに、小人が非難めいた口調で答えた。
    「“妖精王” という呼称が出た時点で
     転がる可能性は覚悟しとかんと。」
     
    「ああーーーーーっ、頼むからボーフーリンとか
     そっちにまで話を広げないでほしいーーーーーーっ!」
     
    「大丈夫じゃ。
     その話は知識として知ってるぐらいで
     読んだ事はないらしいから、そう盛り込めんじゃろ。」
    「だけど後先考えなしに、そういう無謀な事を軽々しくして
     激しく後悔するのが、いつものパターンじゃない?」
     
     
    「舞台裏の話をするでない!」
    小人のひとりに怒られて、黒雪姫はテーブルに突っ伏した。
     
     
     続く
     
     
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  • 黒雪姫 17

    小人のひとりが黒雪姫の前に進み出た。
    「結論は出た?」
    腕組み仁王立ちで訊く黒雪姫は、とても被害者とは思えない。
     
    「んと、ひとつ頼みがあるんじゃが
     もし妖精王さまにバレた時には・・・」
    「はいはい、わかってるって。
     私があんたらを脅して従わせた、って言うから。」
     
    小人たちは、ホッとして顔を見合わせた。
    王子がまたしても執事にささやく。
    「自分を犠牲にする義侠心もある。」
     
     
    「て言うか、脅し、事実にさせてもらうから!
     さあ、あなたたち、私のためにチャッチャと動かないと
     木に吊るしてお仕置きだからね!」
     
    ひいいいいいいいいいいーーーーーーー
    と、叫びながら逃げ回る小人たちを
    いいから! と、黒雪姫が集めて回る。
     
     
    ダイニングの椅子にドカッと座り、黒雪姫が話し始めた。
    「あのバカ賢者、私の話を最後まで聞かずに飛んで行ったけど
     私・暗殺未遂事件、まだ続きがあるのよ。」
     
    「何じゃ?」
    「窒息して倒れた後、まだ微かに意識があったのね。
     その時に聴こえたのが、鬼ババが帰ろうとしたんだと思うけど
     『鏡、鏡、さあ、通して』 って言ったのよ。」
     
     
    小人たちがザワついた。
    「“通して” とは、もしかして結界の穴かいな?」
    「うん、わしもそう思ったぞ。」
    「鏡とは?」
     
    「あのね、鬼ババ、よく城の塔に行くようになってから
     おかしくなったような気がするんだけど
     その塔から時々、ガラスが割れるような音がしてたのね。
     侍女が言ってたんだけど、大量の皿を塔に運ばせて込んでいて
     塔からは割れた皿を回収させてるんだって。
     んで、その部屋には、大きな鏡があるんだって。
     布をかけてあったけど、光が反射してチラッと見えたらしい。」
     
    「何じゃ?
     その部屋で鬼ババは、何のために皿を割るんか?」
    「うーん、そこは私もよくわからないんだけど
     “鏡” ってのがキーワードのような気がするわ。」
     
     
    「鏡・・・、鏡・・・」
    小人たちは考え込んだ。
     
    「ここじゃ、猛禽類が賢者なぐらいだから
     鏡が動いても何の不思議もなくない?
     そういう部族、いないの?」
     
    黒雪姫のムチャ振りに、小人が呆れた。
    「いくら妖精とは言っても、無機物は動いてはおらんぞ。」
    「・・・そうよねえ・・・。」
    黒雪姫も、諦め顔になった。
     
     
    「で、もうひとつ解せないのが、鬼ババが
     『これで私が世界一の美人よーっ!』 って叫んでたんだけど
     風鈴が鳴らなかったのよねえ・・・。」
     
    私の時は警報機のごとく鳴ったのに・・・
    と、黒雪姫が憮然としている横で、小人たちが騒然とした。
     
    「え? じゃあ鬼ババは、風鈴も認める美人って事じゃよな?」
    「ちょっと待て、その鬼ババを抑えてNo.1なのがこの女だろ?」
    「じゃ、この女、美人なのか?」
     
    小人たちが風鈴の周りに集まり、口々に唱えた。
    「黒雪姫は美人。」「黒雪姫は可愛い。」「黒雪姫は美しい。」
    風鈴は気が狂ったようにジリジリ鳴りまくる。
     
    「うおっ、鼓膜が損傷する!」
    「こんなにやかましかった事は、かつてない!」
    「わかった、すまんじゃった、鳴り止んでおくれ。」
     
     
    誰もが勘違いしているが、風鈴が鳴るのは嘘を付いた時だけ。
    本人が事実だと信じているのなら、それは嘘ではない。
     
    継母は本当に自分を、世界一の美人だと思い込んでいるから
    風鈴は鳴らなかったのである。
     
     
    「うむ! やはり黒雪姫はブスで決定じゃな!!」
    背後にどんどん暗黒の闇が広がっていく事を
    満足してうなずき合っている小人たちは、まだ気付かなかった。
     
    王子と執事は、さりげなく席を外した。
     
     
     続く
     
     
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           黒雪姫 18 10.8.30
           
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           黒雪姫 1 10.7.5