あれっ・・・?
あたりをキョロキョロと見回す。
うっわー、真っ暗。
私、また夜まで昼寝しちゃった。
ああ・・・、空しい・・・。
にしても、夜ってこんなに真っ暗じゃないよね?
電気電気、あ、あれっっっ???
スイッチ、どこにあったっけ?
え? ちょっ、私、ついでに記憶もない?
え? え? って事は、もしかしてここ病室か何か?
私、記憶喪失とかで入院させられてんの?
グチャグチャになった頭を抱えながら
あたりを見回してみるが、明かりひとつない。
・・・隔離病棟って言うより、刑務所の懲罰房・・・?
まさか私、犯罪犯して服役してるとか?
そう思った瞬間、激しい目まいがして、うずくまった。
ふと気が付くと、部屋の中にいた。
あ、夢だったー、良かったーーー。
ホッとしたのもつかの間、背後で人の気配がする。
振り向くと、こちらを見て驚いた表情の若い男性が座っている。
「あなた、どっから・・・!」
そう言い掛けてよく見ると
ここ、私の部屋じゃない!
どっから来たのは私の方じゃんよー!
慌てて、青年に頭を下げた。
「えっと、何でここにいるのか、よくわからないんですけど
人様のお宅に勝手に上がりこんでいたようで
ほんと、申し訳ございません。
すぐ出て行きますんで。」
相変わらずビックリ顔の男性だが、とにかく勢いでごまかして
おおごとにされる前に、ここを脱出せねば
そう思い、ドアに向かおうとした瞬間、青年に呼び止められた。
「あ、あの、待ってください!」
あいたー、正気に戻られたーっ。
ガックリしたが、何とか言い逃れをしようと奮闘する。
「ほんとすいません、ほんとすいません
明らかに怪しいでしょうけど、ほんと何かの間違いですんで
何とぞご容赦ください、出来れば通報とか勘弁してくださいーーー!」
両手を合わせて平に頼み込んでいたら、青年が呆れ顔になった。
「・・・驚いた・・・。」
ええ、ええ、そうでしょうとも。
こんな夜中に、得体の知れない女が部屋に上がりこんでさ。
何でこうなったのか、私にもよくわからないんだけど
とにかくこの状況では、私側に非があるのは明白。
私、マジ犯罪者になっちゃうじゃんー。
どうやって、この窮地を切り抜けたら良いんやらーーー。
頭をフル回転させて、算段していると青年が言った。
「あの、あなた、死んでますよね・・・?」
「はあああああ?」
ああ、しもうた、気違いはこいつの方だったか、と激しく脱力する。
「うーん、自覚ないんですかー。
まあ、だからこそ迷っているんでしょうけどね。
そこの水、取ってくれます?」
「は? これですか?」
掴もうとした自分の手が、ペットボトルをすり抜ける。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!!!
超能力ーーーーーーーーーーっっっ!!!」
「いや、そっちの超常現象じゃなくて、心霊の方ですって。」
青年が立ち上がって近付き、ペットボトルを手にした。
「・・・うそ・・・、私、霊?」
「はい、霊です。」
「じゃ、あなた見えるヒト?」
「はい、ぼく見えるんです。」
「へえ、すっごーい、霊感あるんだー!
私、そういうの全然ないから、興味あるんですよねー。
どんな感じで見えるんですかあ?」
ちょっと呆れる青年。
「・・・あなたにも、もう見えてるんじゃないですか?
“そっちの世界” に入ってるんだから。」
「ええー、私そういうのほんとダメで・・・」
言いながら、青年が指差した方を見たら
血まみれの女性が、部屋の隅に浮かんでいる。
「いやあああああああああああああっ
マジ恐ーーーーーーーー!!!
やめてーーーーーーーーっっっ!!!」
叫んだ途端、血まみれ女性がフッと消えた。
続く。
関連記事: 亡き人 2 10.11.19
カテゴリー 小説
カテゴリー: 亡き人
-
亡き人 1