• 偏食

    偏食になる理由は、ただひとつ
    “親に甘やかされて育った”、これに尽きると思うが
    この偏食にもタイプがある。
    食えないタイプと、食わないタイプ。
     
    食えないタイプは、食べた事がないものや
    自分の思う食い物像から、かけ離れた見た目や食材は
    はなから口に入れる事が出来ない。
     
    食わないタイプは、美味いと思える味覚の幅が狭いだけで
    食えと言われたら嫌々食うけど・・・、というヤツ。
     
     
    育ちの悪い私も、もちろん偏食なのだが
    私は後者のタイプである。
     
    グルメな兄に無理矢理、色んなものを食わされて
    (「食わずに文句を言うな!」 が兄の決めゼリフなのだが
     食って文句を言うと、「食い物に文句を言うな!」 に
     バージョンアップされるという罠が。
     どう転んでも、兄の勧めるものは喜んで食う道しかないようだ。)
    蛙料理まで食った事がある。
     
    確かに言われているように、鶏肉系あっさり味だったが
    私は 鶏 肉 も 大 嫌 い なんだよ!
    ほんと、しなくて良い経験のひとつだったぜ、蛙食はよ。
     
     
    私がひとつ、偏食で疑問を持っているのが
    兄弟が多いという環境に育った偏食家を見た事がない、って事。
     
    今までに会った偏食家は、ひとりっこか割と年が離れた末っ子だった。
    三人兄弟とか、全員モリモリ食う。
    それこそジュースの注ぎ分けをmm単位でして、平等平等うるさい。
     
    犬猫で食が細い子は淘汰されるけど、まさか人間界でそれはないだろう?
    大家族の偏食家、どっかにいるはず。
    話を聞いてみたいものだ。
    競争社会での意欲のなさが、どう人格形成に影響を与えたか。
     
     
    そう。 偏食は、人格を疑われる。
    偏食家である私でさえ、偏食なヤツを情けないと思ってしまう。
     
    私の場合、親族間では知れ渡っているので
    もう大っぴらに食い散らかしを出来るのだけど
    やはり友人知人には気を遣う。
    食い物に興味がないヤツは、付き合っててつまらんらしいからだ。
     
    何を偏食を他人事のように言ってるんか、っちゅうと
    珍しくこの私が、あくせく策略をめぐらせている項目だからだ。
    “食う” に関するイベントは。
    ない知恵を絞って、偏食がバレないよう苦労してるんだから
    それに関しては偉そぶるよ? という気分なんだよ。
     
     
    その横柄な気分の流れで、ついでに文句を言いたいけど
    ええ? これにお金を取るってどんな神経?
    という料理を出す飯屋、あれ何なんだ?
    そんでそれを喜んで食ってるの、それ演技じゃないんか?
     
    とりあえず私も、場の雰囲気を壊さないよう穏やかに食うんだが
    貧乏ゆえに、その出費、ものすごーーーく痛く感じるんだよ!
    ああ、こんなもん食わなかったら、あのゲームソフトを買えたのに
    とか思いつつ食うんで、余計に不味く感じるんだよ。
     
    そんで、量、多すぎ!
    偏食は必死になって隠すけど、少食は許してもらいたい。
    この項目は、私にはどうにも出来ない。
     
     
    と、このように円滑な人間関係を築く努力をしてきた私だが
    他人の目、あなどれんよな・・・。
     
    美味い > 普通 > 食える > 不味い > 食えない
    私が内心、この5つの評価をしていた事を見抜かれているようだ。
    ある日のふいの 「どう? 食べられる?」 の問いに
    ギクーーーーーーーッ としたよ。
     
    自分では完璧に自然に演じていたつもりなので
    どこの部分でどんな態度に出てたのか定かではないが
    「うん、食える」 など認めると、今までの努力が水の泡だろ。
     
    「えーーー? 美味しいよ?」 とか
    背中にダラダラ汗をかきながら、ウソを付いたさ。
    偏食、ほんと育ちを疑われるから、とことん猫をかぶらせてもらう!
     
     
    ウソだとバレていても、気の毒に思われるんかわからんけど
    追求をされた事はない。
    ただ、たまに誤解されるのが辛い。
     
    美 食 家 だと・・・。
     
    ウソを付くのって、すぐさまバチが当たるっちゅうか
    何でこんな保身にまで代償が必要なんか
    人生、ほんと厳しく作られてるよな・・・。
     
    単なるしつけの悪い偏食の上に、安物食いなのに
    “舌が肥えてる” とか、グサグサくるんだ。
     
    あ・・・、もしかしてイヤミを言われてるんだろうか?
    でも私にお勧め飲食物を訊くんだから、それはないよな???
     
    こういう事をチマチマ悩むのも、何だか面倒だよなあ。
    “真っ当” でいるのって、本当に難しい。
     
     
    そんな私だけど、ひとつだけ忠告したい。
    何でも食べられるヤツ、味覚が破壊されてねえか?
    あまり辛いものを食うな、味覚細胞の害にしかならんぞ。
    それだけ気をつければ、おめえらの天下だ。
     
    んで、偏食家仲間、とにかく隠し通せ。
    食わず嫌いとか、飯に文句を言うとか
    ほんっっっっっと嫌う人が多いから。
     
     

    評価:

    永樂 和重

    教育評論社


    ¥ 1,680

    (2006-10)

    コメント:内容については賞賛が多いけど、著者が実践してるだけでデータがないんだと。 私の美容法みたいなもんかな? (ごめん、読んでない。) 私・・・? 剥いてくれたら食うよ。 果物、それが面倒くせえ。(はい、人間のクズ決定!)

  • 継母伝説・二番目の恋 55

    「黒雪姫は今、5歳だ。
     心配いらぬ、健康に育っておるぞ。」
     
    5歳・・・?
    あたくしは5年も呆けていたの・・・?
    自分のダメージの大きさに、驚く公爵家の娘。
     
     
    「静養は、もう良いであろう?
     わしは王妃とそなたを同時に失って以来
     愛人をひとりも作っておらぬ。
     それを、わしのそなたへの誠意と受け取ってはくれぬか?」
     
    その言葉をすんなり信じられたのは
    以前の公爵家の娘が情報通だったからである。
     
    結婚前には、時々 “お遊び” の噂を耳にはしていたけれど
    このお方は恋愛に関しては、達者な方ではなかった。
    だからこそ、あの王妃との恋を貫いたのでしょうし・・・。
     
    そう思った直後に、ハッと驚く。
    この5年間、考えないように思い出さないようにしていた、あの王妃の事を
    こんなに、さり気なく考えられるとは!
     
     
    公爵家の娘は、王の顔を見つめた。
    もしかしてあたくしに必要だったのは、逃げ出す事ではなく
    分かち合う事だったのかしら、同じ痛みを持つこのお方と・・・。
     
    公爵家の娘の視線に、王は答を読み取った。
    「最初から愛しているのだ。 わが姫よ・・・。」
    王は再び、公爵家の娘を抱きしめる。
     
     
    公爵家の娘は、王の抱擁に身を任せた。
    そして目を閉じて、心を起こした。
     
    あれから5年・・・、もう止めましょう。
    あたくしの時間を再び進めましょう。
    今までに起きたすべての事は
    きっとこれからのあたくしに必要な経験だったのでしょうから。
     
     
    このお方もお辛かったでしょうに、ひとりあの宮廷に留まり
    そして、こうやって迎えに来てくれた。
    “あたくしたち” は、これから始めればよいだけの事。
     
    公爵家の娘の無抵抗に、“許し” を感じた王は
    改めて公爵家の娘に口付けようとした。
     
     
    「ですが、まだ2つ問題がございます!」
     
    グイと王の顔を押し返した公爵家の娘は、鬼だった。
    「ひとつは、黒雪姫がまだ正式なる王位継承権を得ていない事です。」
     
    東国では7歳になってようやく、王位継承権を持つ事になる。
    このままいけば、黒雪姫の王位継承権は1位になれる。
    「黒雪姫が王位継承権を得て
     その厳守をあなたが命じないと安心できません。」
     
    王に異存はなかった。
    「ふむ、それは約束した事であるから、任せてよい。
     2年、子を作らねば良いだけだ。
     わしは、そなたが側にいるだけで良いのだ。」
     
     
    「そこで2つ目の問題ですわ。」
    すり寄ろうとする王を制し、公爵家の娘が上品に微笑む。
    その表情は、もう以前の誇り高き姫に戻っていた。
     
    「チェルニ男爵領に恩返しをいたします。」
    王は、これも快諾した。
    「うむ、それも許可する。 何の問題もない。」
     
    「では、今日のところは、おひとりでお帰りください。
     2年後に迎えにいらしてくださいね。」
     
     
    公爵家の娘の別れのお辞儀に、王は大慌てをした。
     
    「な、何と申した?」
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 54 12.11.7 
          継母伝説・二番目の恋 56 12.11.13 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
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  • アフィリのお礼 4 シーリングライト

    幸せな一般家庭において、本来なら “ダイニング” と呼ばれるべき
    うちの洗濯物干し場の電灯が壊れた。
     
    電球を交換しても点かないので、本体がもうダメなんだろう。
    性格を変えても顔がダメ、という私のようなものである。 ドやかましい!
     
     
    何故に貧乏人の所有する家電は、次から次へと壊れ続けるのか
    安物を買うからダメなのか、中古の貰い物の当然の寿命なのか
    それとも、私の発する静電気がいよいよ破壊工作を始めたのか
    とにかくチマチマと貯めている最中に、予想外だった洗濯機が壊れ
    また1からの貯め直しをやっている、冷蔵庫貯金に手を付けるハメになった。
     
    と言うのも、エコ、ナチュラル、地球とトモダチ の、この時代に
    買う電灯といったら、LEDしかないであろう!
     
    このLED、本体も電球もえっらい高いらしい、という情報しか私は持っていない。
    だが皆が皆そういう時には、絶対に裏がある。
    だって世の中、そんなに意思統一されているはずがないから。
    よって、怪しい!!! (ものすごい言い掛かり)
     
     
    という陰謀論好きの私は、さっそくLED粗探しの旅に出た。
    途中で “自分” も見つけたりして~、と
    徳川埋蔵金を探すようなメルヘン気分でいたが
    LEDの悪口は、光の速さで見つかったさ。
     
    青い光は目に悪い説
     
    光に目が弱く、緑内障持ちの私は
    こういう疑いがあるだけで、すべてのものを却下する!
    そもそも値段からして気に食わなかったんだから
    1個でも何かあったら、親の敵のように憎みまくる!!!
     
     
    そこらへんの説は、軽くまとめると
    ・ 青色LEDは、青色光による網膜傷害の作用スペクトルに
      近い分光特性をしているので危険度が高く
      青色光は眩しさを感じにくいため危険を感じにくい
     
    ・ 同じ眩しさの場合、青色LEDの青色光網膜傷害のリスクは
      水銀灯に比べて約23倍高い
     
    ・ 白色LEDにも青色光は含まれる
     
    大体このような事が、あちこちのサイトに書いてある。
    あと、何かノイズで電波の受信障害が起こる?
     
    もう、これがあるから私は普通の蛍光灯にするけど
    ちょっとわかった事を書いておく、けど自分で調べ直すようにな。
     
     
    普通の電灯は全体的に明るいけど、LEDの場合は指向性があるんだと。
    つまりある部分だけ照らす、みたいな。
    散弾じゃなく貫通弾、みたいな。
     
    だから選ぶ時は、蛍光灯からの買い替えなら
    ちょい明るめにしないと、暗くなったと感じる人がいるらしい。
     
    ほれ、部屋の天井の四隅が薄暗い風景を想像してみれ。
    すっげー陰気くさいだろ?
     
    んで問題のお得度だけど、研究上ではそうだけど
    実際に家庭で使う場合は、使用電力にそこまで差が出ない事が多いらしい。
    電球は持っても、電灯本体が持つとは限らないので
    “20年交換不要” は、ちょっとした罠だそうだ。
     
    特に外国製の粗悪品が出回っているので
    買うならば、生産が外国でも国内メーカーのを。
     
    んで、電灯は蛍光灯でもLEDでもメンテナンスが必要で
    ホコリとかで効率が落ちて行くし、LEDも徐々に暗くなるそうな。
     
     
    えー、だったら私はLEDじゃなくて良いやー。
    皆も買う時にはよく調べて、自分のニーズに合わせて買うようになー。
     
    と、上から目線で、皆にLED説明会を開いていて
    ここで、とてもとても重要な事を思いだす。
     
    高価なLEDじゃないのなら、アフィリポイントがあるじゃない!
     
    いやあ、最初の頃アフィリポイントでは
    トレビーノ (蛇口直付け浄水器) の、取り替えカセットを買うつもりで
    これは私の生活に、なくてはならないもので
    だってミネラルウォーターと比較して、こっちのが安いんだよ。
     
    浄化メーターが0になっても、リセットして戻し
    要するに、自分が 「いかん!不味い」 と思うまで
    エンドレスで浄水してもらい続ければ良いんだし。
     
     
    でも私は、ポイントで物を買える事に対してお礼を言いたいんだ。
    それが毎度毎度 「トレビーノをありがとう」 じゃ
    東レ以外の世界中にとっては、つまらんだろ?
    でもトレビーノのカセットを買うだけで、ポイントはなくなる・・・。
     
    ならば、年に1~2度、でっかいものを買って
    変化あるお礼報告をするのが、私の義務じゃないか?
     
    そう思ってアフィリポイントを貯めていたんだ。
    大きいもので生活必需品・・・
    何を買えば良いんだろう? という私の不安はふっ飛んだよ。
     
    何故なら、次々に家電が壊れていくんだ!
    ザ・アフィリのプラマイゼロ仕打ち!!! (とんでもない言い掛かり)
     
     
    ・・・うち、何か霊障に合ってる・・・?
    と落ち込みつつも、アフィリポイントの有効期限もあるので
    私の分際にしては、ちょっと良いライトを買おう、と
    選びに選びまくって結局わけわからんくなり混乱しつつ買ったのがこれだ!
     
    Panasonic ツインPaシーリングライト(クール色)
       4.5~8畳 HHFZ4190  7937円
     
     
     
    ごめん、天井にあるものを撮るのは、この程度が私の限界。
    フライ返しを持ってるんで、片手でこのショットはむしろ奇跡扱いして。
     
     
    ごめんその2、勇んで買ったは良いけど、電気の違いとかよくわからんので
    このライトの良いところを丸写しする。
     
     ・ 明るく目にやさしいツインパルックプレミア蛍光灯搭載
     ・ 長寿命で交換不要のLED常夜灯(6段調光・滅)搭載
     ・ イヤな虫が寄りにくい!入りにくい!ムシベール搭載。
     
    だって。
    私が何でこれを買ったのかっちゅうと
    幸せなご家庭で言うところの “キッチン” の天井ライトがな
    ヘンなところに電灯設置器?があって、上の棚が全開き出来ないんだよ。
     
    あっ、同情すな! ここで同情はいらん!
    壊れたライトもそれも、最初から付いてたやつだから
    買わずにラッキー! だったんだから、・・・ううう・・・。
     
    で、幸せな一般家庭略のダイニングのライトが壊れたろ?
    そこで頭脳明晰な私は、即座に思ったさ。
     
    台所のライトを、幸せ略ダイニングに移して
    台所に小さいライトを新しく買おう!!!
     
    幸せって意外なところにあるものよね・・・。
    ダイニングのライトが壊れなければ、私は今でも半開きの棚から
    鍋だのタッパーだのを出し入れせねばならなかったんだから。
     
     
    と言う事で、サイズのみでこのパナソニライトどこで略しとるを買ったんだけど
    選んでいる内に、もうひとつ欲が出て。
     
    それは、明るさ調節リモコンが欲しい!
     
    さあ、ここから病人ぶるけど、私の目は光に弱い。
    これ、ついこの前言うたけど、ちょっと気に入ったんで押すけど
     
    もしかして時流に乗ってヴァンパイアの血を引いてるかも知れない。
     
    貧血なのも、血を吸ってないからかも。
    ニンニク、胸焼けするし。
     
    ・・・そろそろ無意味な行間共々、怒り出されそうなので
    このへんで勘弁しとくけど、とにかく明るさをちょっと暗めにしたいんだよ。
     
    という事で、直径とリモコン付きの2つの条件でこれにした。
    棚戸は全開バリバリだし、薄暗いし、とても満足している。
     
     
    ちなみにリモコンは、付いて来た電池にイヤッホウ!と得した気分になりつつ
    それは大事に取っておき、ゲームリモコン用に買ったエネループを付けて
    明るさ調整をした後、電池を外して押入れに収納した。
     
    だって居間のライト (昔に自腹買い) は、それも明るさ調節して
    そのまま、“ちょっと暗い家庭” で住んでいるんだから
    台所なんて、余計に明るさを変える必要がないじゃん。
     
    点灯もスイッチで充分だし
    それにな、リモコンって意外に別製品に流用できるんだぞ。
    台所に置きっ放しで汚すより、いざという時のために
    大事にしまっておくのが吉じゃないかい?
     
     
    と言う事で、うちに薄暗い電灯が灯りました。
    これも皆さまが、うちからアマゾンに入って買い物をしてくれるお陰です。
     
    いつも本当に感謝しております。
    どうもありがとうーーーっっっ!
     
     
     

    評価:

    パナソニック


    ¥ 8,280

    (2010-03-01)

    コメント:私は棚戸との距離で一回り小さいのを買ったけど、感覚的に4.5~8畳用で、光量全開だと4.5畳じゃ明る過ぎない? って感じだから、通常だったらこっちのサイズの方が色んな部屋に合うと思うぞ。 ・・・うち、狭いから・・・ウジウジ

  • 継母伝説・二番目の恋 54

    「わしがそなたを手放すわけがないであろう?」
    シレッと言う王に、公爵家の娘の怒りが爆発した。
     
    「あなたは! いつでも! 何でも!
     ご自分の思い通りに出来るとわかっていらっしゃる!
     そのために人がどんなに苦しもうとも!!!」
     
    自分を抱き締める腕から、逃れようと激しくもがく。
    しかし離してくれない王を、キッと睨んだ後に
    意を決して、その頬を思いきり叩いた。
     
     
    王に手を掛けるなど、即死刑である。
    その物音に、王の兵士たちが部屋に入ろうとする。
    止めようとしたチェルニ男爵は
    兵たちに取り押さえられ、床にねじ伏せられた。
     
    「わしの姫に手を触れるな!」
    王が公爵家の娘を、兵から守るように抱く。
     
    「そしてその者は、わしの姫の恩人だ。
     離してやれ。」
    チェルニ男爵からも、速やかに兵が引いた。
     
    チェルニ男爵は立ち上がりながら、無表情で服のホコリを掃い
    再びドアの陰に直立する。
    兵士たちも、元の立ち位置へと戻った。
     
     
    公爵家の娘は、なおも王の腕の中で暴れた。
    「何故、あたくしを宮廷に縛ろうとするのです?」
     
    「・・・覚えておらぬのか・・・?」
    王の目が、寂しげに曇る。
    「塔でのあの約束を。」
    王の言葉に、公爵家の娘は驚愕を隠せなかった。
     
     
    娘を王妃にと企む公爵は、幼い娘を時々宮廷に連れて行った。
    同様にまだ幼い王子との、“お話相手” として。
     
    利発で可愛い女の子を、周囲の誰もが認めた。
    後に王位に就く男の子でさえ。
     
    大人たちの目を盗んで、ふたりで冒険に行った塔から
    広がる街を見下ろしながら、王子は訊いた。
    「わしがこの国の王になっても、一緒にいてくれるか?」
     
     
    「覚えていらしたとは・・・。
     そう、あの時からあたくしは “王妃” になるために生きてきました。
     なのに何故?」
    公爵家の娘の非難に、王は率直に詫びた。
     
    「すまなかった・・・。
     予定外だったのだ、“あれ” は。」
     
    “ あ れ ” ?
     
    「そんな言葉は聞きたくありません!」
    公爵家の娘が王から離れようと、拳で王を叩く。
    王はそれでも離さない。
     
     
    「そなただからこそ、気持ちを尊重してやったのだ。
     他の者なら、わしをこばむなど許さぬ。
     わしが請い願うのは、そなたに対してだけだ。
     死んだ王妃にすら、それをした事はない。」
     
    王は、ようやく公爵家の娘を離した。
    そして片膝をついて頭を下げる。
     
    「わしはそなたを裏切ってしまったが、どうか許してくれ。
     わしとの約束を破らないでくれ。
     永遠にわしの側にいてくれ。
     わしには、そなたがどうしても必要なのだ。」
     
    その言葉ほど、今の公爵家の娘の救いになるものはなかった。
    ようやく自分の居場所が見つかった気がした。
    公爵家の娘が泣き出すのを、王は誰にも見せないよう再び抱き隠した。
     
     
    しかし続く言葉に、公爵家の娘の記憶が甦る。
    「そなたの願いはすべて叶える。
     だから、そなたはわしが死ぬ時も側にいてくれ。」
     
    公爵家の娘は、長い間封印してきた名前をついに口にする。
     
     
    「・・・黒雪姫は・・・?」
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 53 12.11.5 
          継母伝説・二番目の恋 55 12.11.9 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
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  • 危険な朝日

    どこぞのリベラル?報道機関の事ではない。
    まあ、そっちも大いに懸念すべきだが
    今回は、朝に出現する太陽の話である。
     
    ちなみに、うちの故とうちゃんは、“真の共産主義” なので
    故かあちゃんと結婚する時に離党届けを出したそうな。
     
    真の共産主義は、利や苦を皆で分配するもので
    子供も皆で育てるものらしい。
    私、割とピンチだったかも。
     
    そんなとうちゃんは、新聞を4紙取っていた。
    その中に、朝日新聞も入っていたぞ。
     
    なのに私が国粋主義もどきの思想を持っているのは
    “自分で判断できない未成年に、親の思想を押し付けない”
    という、両親の立派な主義ゆえ。
     
    お陰で、こんなにアホウな人間になってしもうたんで
    あまりに主義、環境の違う男女は結婚せんでもらいたい。
    と、八つ当たり。
     
     
    さて、問題の朝日だが
    美容マニアにとって最凶の敵は朝日!
     
    無責任なメイク雑誌では
    「朝のメイクは日光が差し込む窓に向かって。
     洗面所とかでやったら、厚塗りになるわよ!」
    と言うとるが、現実はその逆!
     
    朝日は1日の光、人工も天然も合わせた中の光で
    朝日は、朝日は、一番残酷なんだよおおおおおおおおお!!!
     
    毛穴もシワもシミもくっきりと高解析で見せてくれる。
    そんな光の中でメイクをしてみい
    塗っても塗っても肌のアラが隠れず、今日、化粧ノリが悪い?
    って、朝の爽やかな光が、女性の肌を汚く見せてるんだよおおおおおお!!!
     
     
    私は忠告したい。
    メイクはどうせ通学通勤時に崩れるんだから
    3割だけ家でメイクをして、その日いる場所に着いたら
    残りの5割を仕上げろ、と。
     
    また足し算が出来てない、と思ったヤツ、大バカ者!
    日常のメイクは7割方にしときなさい!
    10割のパワーを出すでない。
     
    言うとくが、ギャグだからな?
    (こういう興醒めな言い訳をせねばならないほど
     普段からふんだんに色々と大間違いをしている自覚はある。)
     
     
    もういっちょ、朝日が危険な人がいる。
    それは目が光に弱い人。
     
    この私なんだが、それに気付くのに5年ぐらい掛かったよ。
    目が人工だろうが天然だろうが、とにかく “光” に弱くて
    透明の紫外線カットグラスでも、目の痛みを防げなくて
    結局、暗いのが一番目に刺激がない、と結論が出たんで
    ちょっとバンパイア、審判じゃないぞ、今流行りの吸血鬼の方だぞ
    そういう “闇に暮らす住人” みたいなキャラ付けを楽しむしかない。
     
    物が見えにくいのが難点だけど
    目が痛くなる、肩が凝る、脈打つ頭痛がする、吐き気が始まる
    という流れにならない分、暗い方が目に良い、と断言するよ!
     
    いやあ、これ、色んな眼科やメガネ屋さんと論議したんだよー。
    そこで私が思ったのは
     
    プロでも病人じゃないなら答を出せない
     
    病状とか人によって出方が違うから
    これは当たり前っちゃあ当たり前かも知れないけど
    私が思ったのは、苦労していない人にはわからない、である。
    いくら科学で証明されてようと。
     
     
    そこで忠告パート2。
    光に目が弱い人は、紫外線だけじゃなく光自体を避けろ。
    物が見えにくいと、目の筋肉を酷使して逆に目が悪い、と言われるけど
    目筋を酷使しないギリギリまで、暗くせえ。
    むしろ暗い中で無理に見ようとしない意識が大事!
     
    そして、朝日を絶対に見るな!
    朝日を見た日と見ない日では、目の疲れ方が違う。
     
    地球の周りをグルグル回っているだけのあの太陽が
    (今またオカルト界の隅っこでは天動説が流行りかけている)
    何故に東にいるだけで、あんなに眩しいのかよくわからんけど
    (ちょっと考えたら良い説が出そうだけど、ごめん、今眠い)
    朝日はものすごく目に悪い!
     
     
    よって、朝はカーテン開け、NO!!!
    朝日を浴びてオーラがどうのとか、したいナチュラルな人は
    サングラスをして、太陽のパワーを貰ってくれ。
     
    通学通勤もサングラス必須。
    「朝っぱらから・・・」 と言うような顔を一瞬されるんで
    早くサングラスが医療器具にでも昇格してくれんかのお。
    でもあの花粉よけゴーグルも、してる人を見ないもんなあ。
    見た目の異様さ、克服しにくいよなあ・・・。
     
     
    辛い思いをするのは自分なんだから、人目を気にする必要はないんだけど
    常識人なら、やっぱり考えちゃうのがTPO。
     
    でも知りもしないで、軽く考えてくれる人には
    嫌がらせのいっちょもしたくなるのが、人心だよな。
    (何をしてる)(いや、被害者ヅラをちょっと・・・)
     
    ああ・・・、色んな意味で朝日が憎い・・・。
     
     
     

    評価:

    旭電機化成


    ¥ 880

    コメント:“朝日” で検索して何でこれが・・・、と思ったら旭という会社の商品だった。 アマゾン検索、大味すぎる! が、これは小さい子がいる家では便利じゃないかな、と思うんで、たまには役立つものを貼るよ。 善行、善行、と。

  • 継母伝説・二番目の恋 53

    公爵家の娘には、これから何が起こるのか予想できなかった。
    暗殺なら、こんなに大勢で来るはずがないし
    処刑なら、前沙汰があるし
    拘束されるのなら、王自身が来る必要はない。
     
    では単なる訪問?
    何故、今更?
     
    公爵家の娘は、逃げ出したくなった。
    今の自分のみすぼらしさを、重々承知していたからだ。
     
     
    「おお、会いたかったぞ、姫よ!」
    王がズカズカと、公爵家の娘の部屋に入ってくる。
    通常ならば、客室で待つのが訪問客の作法と言うものだが
    最高権力者にタブーはない。
     
    公爵家の娘は、動揺しつつも
    体で覚えている “貴婦人の挨拶” をしようとしたが
    その隙も与えず、王は抱きついてきた。
     
     
    「痩せたな・・・。」
    頬を撫ぜながらキスをしようとする王を、公爵家の娘は激しくこばんだ。
    「何をなさるのです、お止めください、人の妻に恥知らずな!」
     
    その言葉に、王の顔が見る見る険しくなった。
    「チェルニ男爵! わしの姫を誰と結婚させたのだ?」
     
    ドアの陰から、チェルニ男爵の声がする。
    「いえ、どなたとも・・・。」
     
     
    公爵家の娘には、“あれ” からの記憶がほとんどなかったが
    チェルニ男爵に嫁いだつもりでいた。
     
    しかし周囲の解釈は、王も父公爵もチェルニ男爵も、すべての人にとって
    “王さまの最愛の人が、お友達を失くした心痛のあまりに
     ご静養になっている” であった。
     
    だからこその、厳重な警備なのである。
    公爵家の娘が滞在している城周辺の警備は、王の軍の兵士であった。
     
     
    その策略をしたのは、王自身だった。
    宮廷を離れたがる公爵家の娘の願いは
    “約束” である以上、聞き入れてやらねばならぬ。
    しかし無二ともいえる王妃候補を手放す気など、毛頭ない。
     
    そこでチェルニ男爵の元へと、一時的に預ける事にした。
    遠くの地での長期静養なぞ、ロクでもない噂を立てられかねない
    と猛反対した父公爵も、娘の憔悴ぶりに首を縦に振らざるを得なかった。
     
    こういう経緯であったので、チェルニ男爵を “夫” と思い込んで
    妻として接しようとしている公爵家の娘に
    チェルニ男爵は慌てて、王を呼びに走ったのである。
    長期間の留守は、遠く離れた首都への往復だからであった。
     
     
    「姫さまがお寂しがっておられます。」
     
    昼食前に着いたチェルニ男爵のその知らせに、王は即座に席を立った。
    廊下を大股で歩きながら、叫ぶ。
    「馬!」「パン!」「ワイン!」「マント!」「帽子!」
     
    マントを羽織り、頬張ったパンをワインで胃に流し込み
    王は35分後には馬にまたがった。
     
     
    その日の門番は、前代未聞の出来事を目撃する。
    ひとり、馬で城門を走り出る執務服の王と
    いつもは強面の、近衛兵たちが
    転がるように走りながら、武具の用意をしつつ後を追う姿である。
     
    食料や衣服、野営の道具を積んだ馬車が城を出発できたのは
    その2時間後であった。
     
     
    これから数日間に渡って、国の動きが鈍るであろうが
    止められる者などいなかった。 
    いや、誰ひとり、止める気なぞ微塵もなかった。
     
    待望の “王妃” を迎えに行くのだから。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 52 12.11.1 
          継母伝説・二番目の恋 54 12.11.7 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
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  • シャンプーブラシ

    以前の私なら、頭皮マッサージも洗髪も
    全部、自分の指で優しく丁寧に、と言っていたであろう。
     
    だが私は知ってしまった。
    私の指はゲームコントローラーを操るためだけにある、と。
     
     
    はい、タワケるのは今日はここまでにして
    頭皮のマッサージの仕方から、おさらいねー。
     
    1.両手の指を広めに開く
    2.その両手の全部の指の腹を、頭の地肌に置く
    3.指の場所を絶対に移動させず、頭皮に固定し
      頭の皮を頭蓋骨からズラすように、カクカクと動かす
     
    そう、あの 「ズラだよー」 のギャグをする要領で
    頭皮だけを動かすのが、頭皮マッサージ。
     
    これを、ちょっとずつ位置を変えながらカクカクとやっていく。
    ・・・のが王道だけど、これがものすごく面倒くせえんだよー。
    特にゲームで腱鞘炎になってる時に、ゲーム以外で指を使いたくねえ。
     
    ああ、またか・・・、と呆れたヤツ、ちょい待て。
    歳を取るとな、ドアノブも回すのが辛いほど握力が減退するんだぞ。
    だから私は、ただのゲームバカの代表ではなく
    全ての人がいずれは来る地点に立って、予言しておるのだ。
     
     
    ゲームも休めば良い事だって?
    ゲームって、ゲームって
    そういうものじゃあ、ないんだよおおおおおおお!!!

    1回1時間とか、ゲームを知らないヤツが言ってるだろ!
    旧ロマサガのラスボスとか、バトル開始からエンディングまで
    2時間ノンストップを覚悟せにゃならんのだぞ。
    頻尿老人には、正に瀕死ミッション!
     
     
    で、その頭皮マッサージから逃避したくて韻!
    試してみたのが、サクセス 頭皮洗浄ブラシ
     
      
     
    数年前に買ったので、値段はわからず
    また、今売ってるのと同じ仕様なのかもわからない。
     
    だって私が買った時は1種類しか売り出してなかったはず。
    んで、今、花王のサイトを見たら、“頭皮洗浄” て
    この硬いブラシで頭皮を洗ったら、皮ズル剥けるぞ下ネタじゃねえぞ。
     
    今のは、“ふつう” と “やわらかめ” とあるけど
    ブラシ部分の作りは、ほぼ一緒に見えるんだよなあ。
    硬さが変わったんかなあ?
     
    とりあえず、私が持ってるサクセスブラシで言うけど
    このブラシは上の頭皮マッサージをするには良い。
    今のは、698円で売ってるとこが多いみたいだぞ。
     
     
    何だよ、新バージョンを試さないのかよ?
    と思った人、ごめん、もう他に良いのを見つけてしもうたんだ。
     
    それは、メリット シャンプーブラシ 600円台だったはず
     
      
     
    これを買った時の気持ちは
    「モンハン3Gで腱鞘炎になってるのに
     シャンプーとかタルくてやってらんない!」
    という、ゲーム脳状態。
     
    ブラシで頭皮を洗うなど、おお、恐ろしや恐ろしや
    ヘアのキューティクルがダダめくれしちゃうじゃないの!
    という私だったけど、何か最近、老人性ウツかのお
    色々と面倒くさくてのお。
     
    何でも歳のせいにし始めたら、立派な老害!
     
     
    でな、これ、恐々と使ってみたら
    ザツな性格の人 (主に私) なら、自分の指より優しい!!!
     
    心配していた、毛の引っ掛かりもなし。
    シリコンっぽい材質なのに何でだろう? と不思議で
    花王のサイトの “ブラシのヒミツ” というページを見たら
     
    やわらかなブラシの先端が、地肌 (頭皮) をいたわりながら
    汚れをしっかり落とし
    ブラシの配列を工夫することで、クシどおりがよく髪がからまりにくく
    子供の小さな手でも持ちやすく
    3種類のブラシが、地肌 (頭皮) のすみずみまで届き
    ブラシでマッサージしながら、地肌 (頭皮) をすっきり気持ちよく洗える
     
    って、こんな説明じゃ幼稚園児でも納得せんわ!
    そのブラシの先端が何で柔らかいのか
    ブラシの配列の工夫が何を意味するのか
    秘密、全然明かされてないじゃん。
    実は説明する気がねえだろ、花王。
     
     
    しょうがないので、説明書に書いてある材質でも写しとく。
    ちっ、手打ちかよ、HPに記載しといてくれよ。
     
    持ち手 : ポリプロピレン
    ブラシ : スチレン樹脂
    平板 : ポリプロピレン
    耐熱温度 頭皮もヤられる60度
     
    注: 老眼には小さい文字は、POなのかBOなのか
       PIなのかBIなのか見えません。
     
    んでな、ちょっと驚いたんだけど
    「ブラシの先端部が減りはじめたら、新しいブラシへの取り替えをお勧めします」
    って、減るんだ?????
     
    と、一瞬とても凄いネタを発見した気分になったけど
    まあ、柔らかい材質なら普通に摩耗も激しいだろうな。
     
     
    今は、1度目の軽い洗いでサクセスブラシで頭皮を揉んで
    2度目の本洗いで、メリットブラシを使っている。
     
    利点は
     ・ 腱鞘炎でもきちんと洗える
     ・ 何か手で洗うより、めんどくない
     
    不安点は
     ・ 気を付けないと、洗いすぎ、こすりすぎが起こりうる
     ・ 毛染めの根元が色落ちしやすい (私比)
     
    私は剛毛なので、まったく絡みもないけど
    繊細な髪質の人は、気を付けて洗うようにな。
     
     
     

    評価:

    花王


    ¥ 593

    コメント:コントローラーで指が痛いゲーム脳のあなた! 頭を洗うのも面倒がるダラけたあなた! いや、全部、自分の事なんだけどね。 そういうヤツに、これをお勧め。 でもアマゾン・・・、これを定期おトク便で買う人いるの・・・?

  • 継母伝説・二番目の恋 52

    チェルニ男爵は、公爵家の娘の散歩に付き添える信頼を得た。
    それは、何も訊かない言わない、という出過ぎない態度だけではなく
    側にいても、息遣いすら感じさせない気配の消し方が出来たからである。
     
    チェルニ男爵に許される範囲は、徐々に広くなっていった。
    ベランダで湖水を眺める時にも、暖炉の火を見詰めていても
    振り向けば、チェルニ男爵の姿があり
    公爵家の娘には、それが普通の状態へとなっていった。
     
     
    いつも公爵家の娘は、チェルニ男爵の前をポツポツと歩いていたが
    ある日、ふいに立ち止まった。
    チェルニ男爵も立ち止まると、少し振り向く。
     
    その様子が、待っているように感じたので
    チェルニ男爵が近くに行ってみると、歩き出す。
    チェルニ男爵には、公爵家の娘が並んで歩きたがっているのがわかった。
     
    翌日から、チェルニ男爵はしばらく城を空ける。
    それが公爵家の娘には、拒絶に思えた。
     
     
    そうよね・・・
    チェルニ男爵は亡き奥方と深く愛し合っていた、と聞く。
    その人の産んだ子に、家督を継がせたいわよね。
    その長男にも、もう正妻と嫡子がいるそうだし。
     
    もし、あたくしがチェルニ男爵の子を産んだら
    領主としては、その子を最優先させねばならない。
    国一番の公爵家の血を継ぐ子なのだから。
     
    政治的な物の考え方は、衰えてはいなかった。
    が、公爵家の娘は、生まれて初めて自分の生まれを悔いた。
     
     
    公爵家の血は、チェルニ男爵には不要・・・。
    王は何故チェルニ男爵に、あたくしを嫁がせたのかしら。
    お側を離れたがった罰?
     
    風に乱れる髪を押さえようと、頬に触れた手に水滴が付いた。
    それは、自分の目からこぼれ落ちていた。
     
     
    公爵家の娘は愕然とした。
    側室にしてやられて幽閉される正妻なぞ、よくある話なのに
    大貴族のあたくしが、そんな事にも耐えられないとは!
     
    自分が何ゆえに泣いているのかすら、わからなかったが
    今まで教えられたすべてが、崩れ落ちていくようだった。
    頭に浮かぶその何もかもが、悪い方向へ流れていた。
     
    公爵家の娘は、再び心を曇らせた。
    せっかく出てきた食欲も、すっかり失せてしまった。
    外に出るどころか、揺り椅子に座りっ放しの生活へと戻った。
     
     
    チェルニ男爵が城からいなくなって、何日経ったであろうか。
    公爵家の娘は、最後のプライドで
    静かにひとり、ここで生きていく事を受け入れた。
    殺される場合も多いのに、生きていられるだけマシね・・・。
     
    その瞬間、ふと誰かのシルエットが脳裏をかすめたが
    それを追う事はせず、薄れて行くのをただひたすら待った。
     
     
    突然、外が騒がしくなった事に気付く。
    ソッとカーテンの陰から忍び見てみると、城が多くの兵馬に囲まれている。
     
    ひと際目立つ、きらびやかな装飾の馬の後ろに
    輝く王冠の双斧の紋章の旗がたなびいていた。
     
    あれは王の紋章!
     
    それはすなわち、王がそこにいるという印であった。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 51 12.10.30 
          継母伝説・二番目の恋 53 12.11.5 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
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  • 色の見え方

    どっかで記事に書いた気もするけど
    “色” の見え方って、人それぞれのような気がする。
     
    “人” どころか、右目と左目でも違う。
    私は左目が赤みがかって見えるのだ。
    緑内障の目薬を点し始めてから、それが顕著になってきた。
     
     
    ところで皆、思った事はないだろうか?
     
    老人は何故あんなヘンな色の服を着るのか?
     
    服だけじゃなく、靴、バッグにいたるまで
    こんな色どこで売ってるの? という色柄をまとっているよな。
    常々この疑問を抱いてきた私は、若い頃は
    「きっと美術の授業とかなかった世代なんだな」 と解釈していた。
     
    が、その色盲世代のご近所年齢になった今
    私もヘンな色の服を着ていないか、とても不安である。
     
     
    というのも、小学生の時に色盲検査で引っ掛かり
    (理由は私があの図をパズルと勘違いし、解いたせい)
    その後も色彩学教師に、「おまえは色盲か!」 と怒鳴られ
    緑内障の目薬で視野が赤みがかっている、という
    四方八方隙なしの腐れ色彩感覚に陥っている気がするのである。
     
    しかもここにきて、“暗い色は老けて見える” という
    ファッション界の常識が本当だった! と思い知り
    黒灰茶紺の世界から、一気にパステルカラーへと飛び出そうという
    無謀なチャレンジも、やってる真っ最中なのだ。
     
    ババアになってわかったのは、ババアは好みとかじゃなく
    この色にせざるを得ない “事情” っつーのがある、事。
     
    ほら、よく見る全身ピンクのババア、
    あの人は、無意識か意識的にかはわからないけど
    女性ホルモンを色の心理効果で補おうとしているんだよ。
    私も裕福になりたいんで、全身黄金色にしようかと思うもん。(大仏か!)
     
     
    それにな、眼科医に 「視野が赤い」 と訴えたら
    「おかしいですねえ、歳を取ると普通は黄ばんで見え始めるんですけどねえ。」
    と、眼科医からいらん情報をもらったんだよ
    これを聞いた途端、世界が黄色く見え始めた私の自己暗示ブラボー!
     
    えーと、眼球のどこかが黄ばむんだと。
    言われてみれば、ディオールも “老化による皮膚細胞の黄ばみ”
    に着目した美白理論を展開しとったし
    白い布も経年劣化で黄ばむし
    人間、歳を取ると世界が黄色くなっていくのかも知れない。
     
     
    こういう悲しい老化項目を客観的に検証するのが
    何でも報告の恥知らずな私の役目だが、今回は残念ながら
    目薬で視野真っ赤で、“一般的” な観察は無理。
    人に 「黄色くねえ?」 とか訊いても
    徐々に徐々にと黄ばんでいくだろうから、自覚も難しいと思う。
     
    よって、世界の黄ばみは謎のままだが
    あの青緑はジジババたちには、プラス黄色で
    エメラルドグリーンに見えているのかも知れない。
     
     
    残る問題は、小さな細かいヘンな柄物。
    (何か、いきなり出現した新たな項目だが
     “色柄” と言うだけあって、“色” ときたら次は “柄” だろ。)
    よくおばあさま世代が、そういう模様を選んでいるが
    それこそ、どこで買うの? である。
     
    これは解決した。
    スーパーの婦人服売り場に行けば、普通に売ってた。
     
    ただ解せないのが、しまむらとかでも
    おばあさま世代は、黒っぽい細かい柄物を探し出しているので
    「それしか売っていないから買う」 という消極的なものではなく
    「それが着たい!」 という情熱のようだ。
     
    ・・・何故、歳を取ると黒細かい柄に走るのか・・・?
     
     
    もしかして、色だけじゃなく形の見え方も違うとか?
    あの黒地に小さい小花模様ぎっしり、とか
    ペペペペイズリー? と動揺して解釈せにゃならん幾何学的な模様とか
    老人3D・EYEで見たら、ものすごい美しい柄なのかも!
     
    緑内障の上に、近視乱視も入った邪眼な私には
    この検証も出来るかどうかわからない。
     
     
    て言うか、何でこういう事に興味を持ったのかっちゅうと
    くれようとするじゃん、年寄りって。
    「これ、買ったんだけど、いる?」 って。
     
    それが、ものすごく貰って困る色柄が多いんだよ。
    (レースとかフリルとかの女性らしい服をくれる叔母は確信犯)
    だけど大抵が私には入らないんで、難を逃れている。
     
    私、華奢なんで細いと思われがちだけど、肩幅が広いんだよ。
    乳もあるし、Mなんて着たらパッツンパッツンだぜ。
     
    足が長いんじゃなく、座高が低い
    頭が小さいんじゃなく、肩幅が広い
    ウエストがくびれてるんじゃなく、肉が前にしかついてない
    こういう私マジックで奇跡のナイスバディーなんだよ、実は。
    ほーほほほほほ
     
     
    途中から、“色の見え方” にはまったく関係ない内容になっていた事に
    お気付きいただけだろうか・・・。(呪いのビデオ風に)
     
    要するに、ジジババのファッションの何もかもが
    “私たちの知らない世界” なのである。
    ヘンな色にヘンな模様、あのすべてが理解できない。
     
    でもそれが、“見え方が違う” としたら
    何だか、ものすごくロマンを感じないか?
     
    同じ星に住んで同じ種類の生き物なのに、見えている世界が違う
    しかも、もしかしたら歳を取れば、自分もそうなる可能性がある
    としたら、何だかワクワクしねえ?
     
    最近の私は、ファッション誌より
    近所のおばあさまたちに注目している。
     
     
     

    評価:

    株式会社 半田屋商店


    ¥ 15,999

    コメント:すっげー高価だよな。 教材用だからか? 私がやったのは、何枚もの紙に模様が描かれてたやつだけど、模様の配置で微妙にわかるんで、まるでパズルだったよ。 昔の検査は杜撰だったんかもなー。

  • 継母伝説・二番目の恋 51

    「こ、これは姫さま、何故このようなところに・・・。」
     
    うろたえたチェルニ男爵の、くだらない問いに
    公爵家の姫は答える事が出来なかった。
    ただ、歩いていただけだからだ。
     
    供は公爵家の娘の邪魔をしないよう、遠くに控えている。
    この地は、公爵家の娘が自由に過ごす場所なので
    周囲を兵で固めていて、関係者以外は近寄る事すら出来ない。
     
    その万全の護りに、かえって油断を招いてしまったが
    あまり動きもしなかった公爵家の娘が、いきなり外に出るとは
    誰も思っていなかったのも、事実である。
     
     
    視線を落とし動揺する公爵家の娘を見て
    会うのが早過ぎた事を、チェルニ男爵は感じとった。
     
    「わたくしは城に用がございますので、ここで失礼いたします。」
    頭を下げたが、何の返事もなかったので
    さりげなく城へと向かった。
     
     
    しばらく歩いて、用心深く振り返ると
    公爵家の娘は、うつむいたまま一歩も動かず、ただ立っていた。
     
    その姿が、あの在りし日の王妃と重なって見えたチェルニ男爵は
    全身が震えるほど、ゾッとさせられた。
     
     
    この “やり方” が間違えていないか、何も見落としていないか
    予期せぬ “狂い” が生じてないか
    何度も何度も頭の中で反すうする。
     
    あのお方までを失う事だけは、絶対に避けねば!
    チェルニ男爵は、城に逗留する事を決断する。
     
     
    チェルニ男爵と公爵家の娘は、夕食を共にするようになった。
    それが時々であったのは、公爵家の娘の様子見をしながらだったからである。
     
    あの社交的だった姫が、無言で少しだけ食べ物を口にするのに
    チェルニ男爵の存在が、邪魔になる日もある。
     
    その日の夕食をひとりで摂りたい気分と
    チェルニ男爵が “いて良い” 気分を
    公爵家の娘が、わざわざ口に出さなくて良いように
    “チェルニ男爵がいる食堂” を決めた。
     
    こういう気配りが出来るからこそ
    王はチェルニ男爵に公爵家の娘を託したのである。
     
     
    強制も指導もしなかったせいか、公爵家の娘の足は
    チェルニ男爵がいる食堂へと向かう回数が増えた。
     
    黙って食べていた公爵家の娘が
    「ここのお水は美味しいですわね・・・。」
    と、つぶやいた時には、チェルニ男爵はフォークを落としそうになった。
     
    そして、それは良かった、と微笑んで答えた後に
    フォークをわざと落として、拾いながらテーブルの陰で目頭を押さえた。
     
    本来、落としたものは給仕に拾わせるのがマナーである。
    「済まない、つい拾ってしまった。」
    と言いつつ、フォークを手渡したチェルニ男爵の目が
    真っ赤に濡れていたのを気付きながら、見ないようにした給仕も
    忘れ物を取りに行くフリをして、部屋から出て涙をぬぐった。
     
     
    公爵家の娘は、生きているのが不思議なぐらいに傷付いていたが
    それを救おうとする周囲の気配りも、並大抵のものではなかった。
     
     
     続く 
     
     
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