• Fカップの苦悩

    巨乳ババア 12.7.25 で、自分の乳のデカさに気付かされ
    売り場のおねえさんに面倒を掛けつつ買った
    “ババアのタレ巨乳をとにかく持ち上げるブラ”。
     
    ・・・・・挫折しそう・・・・・
     
     
    “乳のデカさは知能の低さ” という風潮の世界に生まれ育ち
    “性はいけない事” と、固い親にしつけられた私としては
    乳がデカかった、という事は受け入れがたい屈辱なのだけど
    現世では乳はデカいほど良い、と本気で思っている人が多いみたいなので
    こりゃ、落ち込んでる場合じゃなく、ここぞとばかりに威張らねば!
    と、速やかに心を入れ替えた。
     
    正直、エロマンガを読んでても、巨乳は気持ち悪いんだよ。
    私の好みは、清潔感あふれる貧乳。
    現にエロマンガ・スクラップ (まだやってたんか!)
    (参考記事: エロ本の処分法 12.5.16 )
    には、貧乳しか載ってねえ。
     
    でも、このナイスバディーを誇る私が巨乳なら
    それを自慢していくしかねえだろ?
    古い淑女である私のこの、乳嫌いの気持ちは
    今の若い娘さん~熟女あたりには理解して貰えないと思う。
    洗脳、恐いよな・・・。
    まあ、嘘でも誇ってる内に、その気になれるので
    皆、“自分の誇り方” を私を見て学ぶがよい!
     
     
    ・・・と、その前に、今日だけはグチらせて!
     
    この、“ババアのタレたムダ乳無理上げブラ” を着用していると
    異様に胸を張った鳥に見えるんだよー。
    さすが、“鳩尾 (みぞおち)、“鳩胸” と言うだけあって
    人間と鳥、似たとこあるんだな・・・。
     
    乳のトップの位置は、確かにこれで正解だと思えるんだ。
    今までの楽ちんブラだと、志村扮するトップレスババアの乳のように
    タレていたんだ! と、気付かされたよ。
    だから、このタレ上げブラはババアに必須! と痛感した。
     
     
    だけどな、乳を上げているとマジで重心が変わって歩きにくいし
    地面に落ちたいと願う、やる気のない乳肉を無理に上げてるんで
    こいつ、普通に歩いていても揺れるんだよ!
     
    歩いていて、揺れているのがわかるので
    デカ乳バカ論洗脳世代としては、本当に恥ずかしい。
    歩き方をどうにかしようとしたけど
    問題は自立できないタレ乳肉にあるようで、ちょっと無理。
     
    ブラはコルセットのように、乳肉を固定しているので
    そのブラの中で、スライムのような乳肉が揺れてるのが
    不愉快で、気になって気になって、もう歩きたくない!
    HEY TAXI !!!
     
     
    もう、上げブラを止めたい・・・。
    だけど、昔の服は乳なしの方が着こなせるデザインだったけど
    今の服は、乳はあるものだ! として作られているだろ?
    当たり前だよな、乳、普通あるしな。
    昔のファッション感覚がおかしいんだよな。
     
    だからタレ乳の見苦しさが、余計に際立つので
    乳は上げとかなくちゃならない・・・。
     
    ああ・・・、ものすごく苦痛・・・・・。
     
     
    このように頑張って、下がりたい乳を強引に上げてきたんだけど
    この猛暑に、ギプスのようなブラは拷問!
     
    歩いてて、乳を掻きたくて掻きむしりたくて
    それはトイレにでも入って、ボリボリすりゃ良いんだけど
    問題は、気分が悪くなる事。
     
    胴体って、締め付けてたら吐き気がしてこねえ?
    暑くて苦しいところに、重心が上がって揺さぶられるし
    冗談じゃなく、体調を崩す。
     
     
    健康か見た目か。
    これ、簡単に答は出ないよな。
    女性のファッション史は、健康に悪い事の連続じゃん。
     
    ウエストを締め上げるコルセットや、内臓を傷めるボディースーツ
    冷えを助長させる首周り開きにミニスカ
    かかとの骨を折る目的の厚底靴、外反母趾にさせるハイヒール
    冬でも素足を強要するブーティー
     
    「おしゃれは我慢よ!」 と、ピーコが叫んでいたけど
    確かに、その意見には同意せざるを得ない。
    ファッション、無茶させるのが多いもん。
    ババアになったら、ものすごく体に堪えるのがわかるんだ。
     
     
    で、私の吐き気と乳上げと、どう折り合いを付けようか悩み
    パッド付きのキャミブラに逃げただよ・・・。
     
    パッドを上に設置すりゃ良いんだろ?
    と、キャミの肩ヒモを短くして
    その上がったパッドの中に、無理に乳肉を収めたんだけど
    歩いてる内に、乳肉が降りたがって
    また、キャミを大きいサイズを買うとったもんで、隙間があって
    何か下乳はみ出ししかけたりして
    ものすごく縦にボリュームのある胸、みたいになって
    ああ・・・、もう私はダメだ・・・、と猫背で振舞う。
     
     
    一度上げてみたら、自分の乳が下がっている事に気付き
    もう昔の楽ちんブラには戻れない有り様で
    冬なら厚着の重ね着でタレ乳も隠せるんだけど
    薄着の夏は、根性を出すしかねえ。
     
    女性の皆、水を注すような事を言ってすまんけど
    貧乳もタレる、とか言うけど
    デカ乳の方が、タレを持ち上げるのにブラの強度を必要とされるのは
    ウェイトリフティング競技でもわかるだろ?
    私のブラ、オリンピックに出たら金メダルを取れる。
     
    乳のデカさを誇れる時代になったのは良い事だろうけど
    デカい乳の持ち主は、タレを遅らせる努力と
    拷問締め付けブラに耐えられる体力を持つようにな。
     
    私もこの、絞め殺す気満々ブラに、何とかして慣れて
    生き延びて、巨乳を誇ってみせるよ。 ・・・はあ・・・
     
     
    ・・・もうひとつ、文句を言わせて。
    私がこんなに苦労しているというのに
    「胸が大きいのが自慢でしょ」 とか、“まだ” 言われたくない!
     
    私がもうちょい慣れたら、そういう言葉も大歓迎だけど
    今すっげえ辛くて、叫びながら人ごみの中を走り出し
    胸を掻きむしったあげくに、引きちぎりたいぐらいなんだよ。
     
    でも、のちのち威張り散らしたいんで
    そういう言葉にも、余裕の笑みを装って耐えているけど
    こめかみ付近から、ビキビキきしむ音が聴こえるわ!
    ブラに慣れるか、脳の血管が切れるか、どっちが先やら。
     
     
    まあ、それもこれも、すべては自画自賛のための苦労。
    やっぱり、タダでは天狗にさせてもらえんのだな・・・。
     
     
    関連記事: タレ巨乳の末路 12.10.3 
     
     
     
     
     

    評価:

    夢企覚販売有限会社


    ¥ 2,470

    コメント:美容好きの人に教えてもらったラクちんブラ。 “ブラ” じゃなく、乳を持ち上げる布的な乳バンドだそうだ。 皆、寝ている時に着けているようだけど、これで出掛けるぞ、私は! 首周りが狭いので、谷間見せ服には無理だってよ。

  • 継母伝説・二番目の恋 26

    公爵家の娘の召使いは、補充が簡単であった。
    この国一番の貴族の娘だからだ。
    しかも王の寵姫の上に、ヤリ手である。
     
    公爵家の娘が王妃に差し出した召使いたちが、若い女性ばかりだったのは
    “王妃付き” という事で箔がついて
    より良い家に嫁げるようにであった。
     
    通常はそうなので、公爵家の娘は今回もそうだと思い込んだ。
    しかし表向きの結果は、王妃侮辱罪で処刑。
    幸いと言って良いのか、“今回” は実家にまでは咎めはなかったが
    彼女らの人生を狂わせたのには違いない。
     
    ほんの一瞬の判断の狂いが、ひとつの家系を潰す事に繋がりかねない。
    公爵家の娘は、今回はより慎重になった。
     
     
    「おまえたちはチェルニ男爵領から来た召使いたちと
     仲良く交流が出来るかしら?」
     
    公爵家の娘の問いに、召使いたちは快い返事をした。
    「はい、もちろんです。
     そのような、遠くの領地から来た人たちには
     親切にして差し上げるべきですわ。」
     
    その気持ちを、似た境遇の王妃にも持ってくれれば良いのだが
    彼女たちが優しいのは、同じ召使い同士間での事である。
    身分が高くなるほど、要求される事も多くなるので
    義務をひとつも果たしていない現王妃をかばう事は出来ない。
     
     
    公爵家の娘は、溜め息を付きそうになったのを
    扇で隠しながら、命じた。
    「・・・では、新しく来た王妃さま付きの召使いたちに
     “ここ” での慣習を教えてあげなさい。
     彼女たちの働きぶりの報告もしてちょうだい。」
     
    はい、と元気良く返事をする召使いたちを、公爵家の娘は見据えた。
    「あたくしの希望は、今度は叶えられるのかしら?」
     
    召使いたちは、は、はい、と重ねて返事をする。
    公爵家の娘は召使いたちを睨んで、持っていた扇を閉じ
    その先で自分の首をゆっくりと斜めになぞった。
     
     
    召使いたちはゾッとしたが、心配はしていなかった。
    処刑された召使いたちの両親は、公爵家から莫大な見舞金を渡され
    次々に西国へと旅行に行っている、という噂を聞いたからである。
     
    これが、公爵家の召使いの間だけでの噂に終わったのは
    それを聞いた者全員が何となく、外に漏らしてはいけない
    と感じ、実際に口を閉じたからである。
     
    どこの家にも秘密はある。
     
     
    さあ、これで王妃の世話の件は片付いた。
    あたくしは社交、社交、と。
    公爵家の娘は、いつもの夜会だけではなく
    昼食会にも熱心に顔を出し始めた。
     
    「あら、姫さま、今日はおひとりですの?
     ごゆっくりできますわね。」
     
    皆が掛けてくれる言葉に、公爵家の娘のこめかみに青筋が立った。
    ・・・そうなのよ、いつもあの人見知りの王妃がくっついてきて
    しかも、ほとんど食事をせず口も利かず
    ただそこに “いる” だけなので
    あたくしは自由に社交が出来ないんだわ。
     
     
    公爵家の娘は、華やかに談笑しつつも
    あたりをそれとなく見回した。
     
    一見したら、無造作にバラけているようでも
    “グループ” というのが垣間見える。
     
    無秩序な集団というのは、存在なしえないのである。
    それを探すには、距離感やアイコンタクト、真顔になる等の
    一瞬の親しみを見抜かねばならない。
     
     
    公爵家の娘は、ベイエル伯爵の交友関係を探っていた。
    “家” が悪事を働いていなくても
    悪い “付き合い” があるかも知れないですものね。
     
    公爵家の娘の頭の中には、ベイエル伯爵家が
    “清廉潔白” という可能性は、まったくなかった。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 25 12.8.13 
          継母伝説・二番目の恋 27 12.8.17 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
          カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ 
          小説・目次 

  • 老婆の休日

     この前の土日は、一歩も外に出なかっただよ。
    理由は、暑 い か ら !!!
     
    「年寄りには、この暑さは本気で命取りだよね。」
    こんな言い訳が通るのも、電力会社の甘えのお陰。
    うちが節電してるのは、関電のためじゃなく我が財布のためだがな!
    節水してるのは、断水の辛さを経験したからだ。
    地球のためじゃねえ。
     
    と言う事で、関西に不似合いな暑さのせいで
    脳みそが煮えたぎって、いつもの高尚な記事が書けなくてごめん!
    でも、きっちりバチは当たってるからね
    というのが、今回の記事の主旨である。
     
     
    金曜の夜は、心霊祭をした。
    “北野誠のおまえら行くな” が面白かったので
    DVD全3巻と特別編を借りて、深夜2時まで観まくる。
     
    その夜は、恐いけど暑いので布団をかぶれないせいで
    中々寝付けず、1時間おきに目が覚めて
    翌日の昼までうなされながら、うたたね状態。
     
     
    夜に心霊観賞はいかん、という教訓を思い出したので
    残りの2巻は土曜の昼間に観こなし
    後は合間合間に “ゼノブレイド” というゲームをしたり
    “モンスターハンター3G” というゲームをしたりしつつ
    日本人には一切関係のないハリウッド・ホラーを観たり
    “ウィーン警察犬REX” というドラマを観たりして
    ものすごくフリーダムに過ごす。
     
    その夜は1時には寝たけど、何故か恐い夢にうなされる。
    夢の内容は、覚えている自信があったけど
    すっかり忘れている自分にビックリ!
    まあ、人の見た夢の話ほど聞きたくないものもないので
    これは天の助けだと、皆は神とかに感謝するがよい。
     
     
    日曜は、レンタルも録画も見尽くしたし
    TVCMでモンハン4予告を目撃したので
    すっかりモンハン3Gをプレイする気力を失い
    “戦国無双3 (Wii)” を開封する。
     
    長いゲーム歴で、手がゲーム腱鞘炎になっているので
    あまりアクションゲームはしたくないんだけど
    と言いつつ、モンハンとかやっちゃってるけど
    戦国無双は 「俺、強ええええええええええ!!!!!」 が
    味わえるゲームだという噂を聞いたので
    落ち込んでいる時用に、と買って
    ・・・忘れていた逸品である・・・。
     
    お金に困っていても、こういう浪費はするから
    貧困のラビリンスから抜け出せないんだよな。
    と、ちょっと詩的表現を交えて誤魔化す。
     
    で、結局そのゲームをサルのようにやり、一日が終わる。
    もちろん、手が痛ええええええええええ!!!!!
     
    WiiコントローラーのBボタンを押すので、人差し指にマメが
    左手はスティックをグリグリ動かすので、親指が痛む。
     
    何でそんな力一杯握り締めてるんだよ、と怒られそうだが
    年寄りというのは、そういうものなんだよ。
    以前、病院の待合室でお祖母ちゃんがお孫さんとDSをやってたんだけど
    タッチペンを彫刻刀と勘違いしてるんじゃないか? というほど
    タッチパネルをえぐってたもん。
    見ててハラハラしたけど、そんな常識ぶってる私もその祖母と同年代なので
    きっと無意識に、同じく力を込めすぎてやってるに違いない。
     
     
    その夜は、明け方に目覚め、1時間ぐらい
    金縛りになろうなろうとする体と戦う。
     
    金縛りって、何であんなに恐いんだろうな?
    しかも幻聴、幻覚があって、正にホラー!
    私の場合、視覚の幻覚じゃなく、触覚の幻覚があるんだ。
    ・・・幻触って言うんか? とにかく、“錯覚”。
     
    今回も、布団の背中側に人が横たわる感覚があったんで
    必死こいて金縛りに抵抗してたんだけど
    横になって枕の横に伸ばした手に、何かが当たり
    何だろう? と触ってみると、小さな柔らかい手で
    その手は私の枕の下から出てるんだよ!!!
     
    ヒイイイイイイイイイイイイ! 霊に腕枕されてるーーーっ!
     
    何でこれで私が霊感ゼロなんだよ?
    と、飛び起きようと時計を見たら、まだ朝の5時過ぎで
    ここで起きたら、寝不足で体調が悪くなるんで
    やっぱ私、霊感ないよな、と自分に言い聞かせて寝たさ。
     
    その後はやっぱり悪夢悪夢で
    ダラダラしてたら、ここまで仕置きされるんかい、と
    お天道様が見ている事を実感。
     
    カレンダーを見て気付いたんだけど、今、お盆なんだな。
    言われてみりゃ、スーパーにお供え菓子コーナーがあるもんな。
    こりゃ、先祖が怒りに来たかな・・・。
     
     
    行事にうといのは昔からだが
    実はオリンピックが始まったのも、2日後に知ったさ。
     
    一瞬自分を、非国民・・・と責めたけど
    そういう大会とかは観ないようにしているんだ。
    それは
     
    自分が応援すると負ける法則!!!
     
    つい、錦織選手の試合を観ちゃって、本当に申し訳ない。
    それ以来、他の競技は一切観てないからな!
     
     
    「録画すれば良いのに」 と言われたが
    その点で、ちょっとイライラしている事があるんだ。
     
    うち、ブルーレイなんだけど、調子が悪くてな。
    その事について、ちょっと調べたけど
    まったく頭に入ってこないんで、記事に書けない有り様なんだ。
     
    いつも下調べをして記事を書いているんだぞ、ほぼ。
    「いつも」 と言った端から 「ほぼ」 とか
    毎回はしていない、とカミングアウトしてるし
    私の調査などアテにならん、とバレてるだろうが
    確認しようとする気持ちだけでも、ないよりマシ!
     
    ブルーレイについては、1記事まかなえそうなら、その内書くよ。
    何か腹は立つけど、よくわからん事ってあるだろ?
    だから書けないんだよな。
    わからんままでも平気で書いてるくせに
    今回は何を言い訳してるんだろうな。 暑いからな。
     
     
    表面的には、上品でナイスバディーな老婆が
    実は家の中では、自堕落な生活をしているなど
    ギャップ萌えで、自分としてはとても楽しいのだが
    そうやって人生の経験値をムダにしまくっているせいか
    割に不幸な出来事が続いているんだ。
     
    「休日にひきこもってゲームとか寂しい」 とか、ドやかましいわ!
    言うとくが、孤独なヤツは外に出てても孤独なんだぞ。
    ・・・いや、そうじゃなく、ゲーム、楽しいよ?
     
     
    この記事、添削するのも恐くて出来ない・・・。
    ごめん、今、“継母伝説” で頑張ってるから許して!
    それが通らないのなら、“太陽がいっぱい” という事で!
     
     
     

    評価:

    竹書房


    ¥ 3,243

    (2012-05-02)

    コメント:真面目に観れば出演者のムチャさ加減がほんとに恐いし、エンターテイメントとして観れば笑える。 心霊系にお笑い要素を混ぜ、オカルト分野に新ジャンルを構築した! とまで、評価して良いと思うんだ。 私は1で震え上がり、2と3で慣れて大笑いしたよ。

  • 継母伝説・二番目の恋 25

    宮廷の資料室は広大である。
    入り口には常に司書が待機しているし、いつも誰かが出入りをしている。
    しかし、その奥の歴史室に用がある者はあまりいない。
     
    なのに、その者はすぐに現れた。
    「わたくしを思い出していただけて光栄です。」
     
     
    公爵家の娘は、振り向きもしない。
    「あたくしが、いつそなたを呼んだと?」
     
    「中央廊下は遠回りでございましょう。
     わたくしに御用の際は、書類でも手に
     ひと気のない場所においでになってくだされば
     いついかなる時も、速やかに馳せ参じましょう。」
     
    無表情で振り向いた公爵家の娘の靴に
    チェルニ男爵が口付ける。
    「お望みを何なりと。」
     
     
    「王妃の召使いが欲しい。」
     
    片膝をついて頭を下げたままのチェルニ男爵が微笑んだのは
    公爵家の娘には見えなかったが
    命じる側は、命じられる側の反応など気にしない。
     
    「かしこまりました。
     では、至急わたくしの領地の資格ある者を
     何人か選んで呼び寄せましょう。」
     
     
    その提案に、公爵家の娘は満足した。
    男爵領は、東国の北西の辺境の地にある。
     
    宮廷に上がる可能性のない、田舎の弱小貴族の領地の良家なら
    “あの” 王妃への忠誠心も、持てるかも知れない。
     
    チェルニ男爵の言う “資格” とは
    とりあえず貴族の称号を持つ娘、という意味なので
    身分の体裁も保てるというもの。
     
     
    果たして、来た娘たちは垢抜けてはいなかったが
    期待通りによく働いてくれた。
     
    田舎者の召使いという事もあり、宮廷のしきたりに慣れておらず
    大部分の事は、公爵家の娘が指示を出さないといけなかったが
    王妃も、今までの気位の高い召使いに対するよりは
    その朴とつさに、恐怖心が和らいだのか
    少しは用事を “お願い” 出来るようである。
     
     
    王妃の部屋の暖炉には、火が入った。
    東国中央地方の首都近辺の生まれの公爵家の娘でさえ
    少々ちゅうちょする暑さの部屋で
    寒い北西の地から来た召使いたちは、汗だくである。
    それでも不満を表さずに動き回ってくれた。
     
    ・・・これは確かに、通常の召使いでは勤まらないでしょうね
    ムワッとする室温に、公爵家の娘はウンザリした。
    しかし、王妃の風邪は治った。
     
     
    チェルニ男爵とやら、さすが王が信頼するだけあって
    申し分のない働きをしてくれる。
     
    公爵家の娘は、王妃の部屋のチェックを早々に切り上げ
    汗が吹き出た顔を、扇でバサバサと扇ぎながら自室へと戻った。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 24 12.8.9 
          継母伝説・二番目の恋 26 12.8.15 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4  
          カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ 
          小説・目次 

  • アフィリのお礼 3 こたつ

     アフィリポイントが溜まったら、破れたマットを買い直すんだー
    と、死亡フラグをはためかせていた私が買ったのは
     
    こたつ 5980円
     
      
     
     
    皆さま、どうもありがとうございます。
    皆さまのご協力がなければ、私は今頃
    畳に食器直置きで、ご飯を食わざるを得ませんでした。
     
    だいにんぐてーぶる とか言う
    余裕をかましておる家具は、うちにはない!
     
     
    いやな、旧こたつは、関西に来た時に
    ホームセンターの安売りで買ったんだけど
    それが何故かグラつき始めてな。
     
    テーブルの上に、座ったり
    足を上げたりしてたのが悪かったんだろうか・・・?
    (聞けば聞くほど、幻滅する行儀の悪さだよな、私。)
     
    こたつはうちの唯一のテーブルなので
    そこで飯を食い、そこで攻略本を読み、そこでうたた寝る日々で
    ババアの水分補給のために、こたつの上にはいつも
    コーヒーと目ぐすりの木茶と粉末玄米茶のコップを置いているんだけど
    ちょっとコタツに触るだけで、それらの液体が波打つんだよ。
     
    んで、最近は揺れが激しくなって、こぼれるように。
    地震も、震度2から感知できる。
    どんだけグラグラになってんだよ?
     
    ねじ回しを手に、こたつの足とかを見たけど
    何かもう、買い直す時期なんじゃね? と
    買い直し目標のマットの破れを、縫い縫いと補強し直したさ。
     
    マットは破れていても惨事は起こらないけど、こたつが倒れたら・・・
    ああ、考えただけでウンザリする掃除が待っている・・・。
     
     
    と言う事で、皆さまからの温かいお気持ちであるアフィリポイントでは
    本当に必要なものしか買わない!
    何が “おこずかい” だ、私にはリアル生活費なんだよ!
    をモットーにしている私の今回の買い物は、こたつでした。
     
    皆さま、重ね重ね、どうもありがとうございます。
     
     
    私の次の野望は、布団乾燥機だな。
    マットも欲しいけど、最近、布団が重くなってな。
     
    何で寝具にこんなに金が掛かるんだろうな。
    ロングスリーパーで寝てばかりいるせいか?
     
     

    評価:

    山善


    ¥ 4,980

    コメント:私が買ったのと多分、同タイプ。 家具は絶対に明るい色にしないとホコリが目立つし陰気臭いし、生命力がどんどん失われていくだよ。 メーカーの人、明るい色のインテリア、特に控えめな和の色のを作ってくれーーー!

  • 継母伝説・二番目の恋 24

    「何だと?」
    王妃が気分が悪いとふせっている、という報告を受けた公爵家の娘は
    口元を閉じた扇でトントンと叩きながら考え込んだ。
     
    そういえば最近、食欲がなかったみたいだし
    以前にも増して、部屋からも出たがらなくなっている。
    これは・・・・・
     
    ようやくの懐妊かも!!!
     
    だったら、あたくしの役目もあと少し!
    公爵家の娘は、笑みを噛み殺しながらも
    期待に満ち溢れて、王妃の寝室へと急いだ。
     
     
    寝室には、グッタリしている王妃だけ。
    「侍医は呼んだのか?」
     
    廊下に居並ぶ召使いに訊くと、頭を下げながらもお互いの顔を確認し合い
    その内のひとりが、か細い声で答える。
    「い、いえ、まず姫さまにお伺いをと・・・」
     
    公爵家の娘は怒らなかった。
    身篭っているかも知れない王妃を、怯えさせたくなかったからである。
    出来るだけ、普通の口調で支持を出す。
    「・・・侍医を呼べ。」
     
     
    程なくして、侍医がやってきた。
    公爵家の娘は召使いを残し、自分は隣室の王妃の居間で待機した。
    侍医の後ろでソワソワするのが嫌だったからである。
     
    王妃の部屋は、相変わらず手入れが行き届いていない。
    あの処刑以来、王妃の召使いはなり手が見つからずにいて
    公爵家の娘がその都度、自分の召使いに指示を出す
    という有り様である。
     
     
    召使い、と言っても、王族クラスの身分の側仕えともなると
    国内の下流貴族の子女が召使い長になり
    身元のしっかりした家の、教養のある子女が仕えるのである。
     
    王族や大貴族クラスでなくとも、貴族の召使い、というのは
    給金も良いし、家柄や身分の保証にもなる。
    “行儀見習い” としての側面もあるので
    真面目に勤めていれば、男女ともに良い縁談話も舞い込んで来る。
     
    平民にとってはエリートコースであり、そのプライドも生半可なものではない。
    大国・東国の宮廷勤め、ともなると、他国の田舎姫など鼻で笑う勢いである。
     
    あたくしの、あの召使いたちも上級平民たちだった・・・。
    公爵家の娘は、王妃のための犠牲を悔いていた。
     
     
    飾り窓の桟に積もったホコリを眺めていると
    意外にも早く、侍医が戻って来た。
     
    「王妃さまのお具合はいかに?」
    公爵家の娘の問いに、侍医が答えにくそうにしたのは
    侍医もまた、懐妊を期待していたからであろう。
    「・・・お風邪を召されたようですな・・・。」
     
    また?
     
    公爵家の娘は、思わず叫びそうになった。
    まだ、木の葉の色付きもまばらな時期である。
     
    ハッ、と振り向くと、暖炉は火が入った形跡がない。
    東国では、まだ暖房は入れる季節ではない。
    しかも、ここのところ暖かかったので
    公爵家の娘も、王妃の部屋の暖房の事を忘れていた。
     
    南国出身の王妃は、やはりこの気候でも寒いのかも知れない。
    しかしそんな王妃を思いやる召使いは、ここにはいない。
     
    召使いに厳しく押し付けて、言う事を聞かせるのは
    本来なら伝統に反する事なので、もうやりたくない。
    “進んで仕えられる人” になるのが、上流の義務なのだ。
     
     
    どうしたものか・・・
    自室でソファーに座って考え込んでいた公爵家の娘は
    思うところがあったのか、おもむろに立ち上がった。
     
    そして机の上の書類を適当に掴み、腕に抱えて
    人通りの多い中央廊下を通り、資料室へと向かった。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 23 12.8.7 
          継母伝説・二番目の恋 25 12.8.13 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
          カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ 
          小説・目次 

  • 禁煙と美肌

    「肌の色が2段階明るくなった」
    この言葉、すんげえよく聞くと思わんかあ?
    特に美白関係の化粧品の使用感想でさ。
     
    この言葉さ、私的には ケッッッ! だったんだよ。
    一体どんだけ黒ずんでたんだよ、何をしたら黒ずむんだよ、と。
     
    本当に申し訳ございませんでしたーーーっっっ!
     
    経験いたしました。
    「肌の色が○段階明るく」 これ、現実にあります。
     
     
    美容好きなので、熱心にお手入れをしていたんだけど
    その労力を考えると、私の肌の美しさのランクは
    “普通” に分類して良い、と冷静に思ったんだよ。
    こんだけ試行錯誤してこの程度? みたいな。
     
    そんで、どの化粧品を使っても
    “肌が生まれ変わった” “劇的にキレイになった”
    こういう感覚を味わった事はなかったんだ。
    そりゃもう、5万円クリームからニベアからオーガニックまで
    とんだ尻軽女のように、あっちこっちフラフラ浮気してきたさ。
     
     
    それがな、禁煙して約1ヶ月ぐらいの時に、人に言われたんだ。
    「すごくキレイな肌ですね」 って。
     
    これもよくある事なんだよ。
    相手が私の実年齢を知っている事が発動条件で
    このセリフの前に、( ) 付きで “年齢の割に” ってのが入る。
     
    どうしても社交辞令を言いたい人種、っているんだよな。
    そんな無理に褒めんでも、と思うんだが
    そういう人たちにとっては、普通の肌でも褒めどころになるようだ。
     
    自分の肌の普通さに気付いてからは
    肌褒めは他に褒めるとこがないんだな、と解釈している。
     
     
    んで、褒めどころに困るヤツっているじゃん。
    そういうのに限って、気難しそうでさ。
     
    私もその手の、“扱いに困る” 印象を与えるみたいなんだけど
    ナイスバディ! という揺るぎない褒めどころを備えているので
    感謝されても良いぐらいだと、心から思うんだが
    ナイスバディーは、陰でしか褒められない不思議。
     
    最近の褒めは、肌と若さに集中しているので
    ああ・・・、私は支障がない肌のババアなんだな
    と、日々心がしおれていくようだ・・・。
     
    ハッ! もしかして、あの褒めたがり人種、何かの刺客だったんか?
     
     
    でさ、禁煙後に肌を褒められる事が増えたんだけど
    何か相手の本気度が少し濃くなったんだよ。
    えらい演技上手な人だなー、と思ったけど
    気を良くして、久々に鏡を凝視したんだ。
     
    いや、美しくなるためには
    キレイなものを見るべきだ、と言うじゃん。
    だったら、あまり自分の顔は見ない方が良いような気がしてな。
     
    そしたら、鏡に映ってた自分、肌がキレイだったんだよ!
    その時、またかよ、イイ歳をしたババアがそれで良いんかよ!
    な、日焼け止めと天花粉のみのノーメイクだったのにだよ。
    はいはい天花粉の時代じゃありませんベビーパウダーベビーパウダー。
     
    白くて清潔感があって、色素が薄い人、みたいで
    えーと、まるで結核をわずらってご静養中のお嬢様?
    はいはい言い過ぎ言い過ぎ、静養中のご婦人、で許してくれ。
     
    ちょ、何、このノーブルな透明感は??? と、驚愕したぜ。
    5cm距離で肌をチェックしたら、シミは相変わらずだけど
    禁煙前よりも、毛穴が締まってるんだ。
    そんで、ほうれい線が少し薄くなっている。
    顔色の白さは、薄紙を1枚貼ったような感じ。
     
     
    ほんと、ここぞとばかりに自画自賛に夢中で
    肝心の表現が、わかりにくい事しか言えんですまんけど
    とにかくマイ美容史上、最大の肌のキレイさだったんだ!
     
    人生も終盤に差し掛かろうというに
    ムダに肌のキレイなババアになっちゃったよ。
    この肌、もちっと若い時に必要だったんじゃないかな・・・。
    若い頃は湧き出でる脂に悩んだというのにのお。
     
     
    で、この美肌の理由、いまだに禁煙しか思い当たらないんだ。
    禁煙して1ヶ月やそこらで、そこまで顕著に肌が反応するかあ?
    たかが禁煙だぞ? 毛穴とかシワに関係あるんかよ?
    と、自分でも疑わしくてしょうがないが
    その後数年経った今でも、理由はそれしか見つかっていない。
     
    正直、喫煙が肌を傷めていたという事も、認めたくない。
    本当にタバコを吸うのが好きだったんで、悪口を言いたくないんだ。
     
    だけど、この美肌の理由は、多分禁煙・・・。
    美肌になって嬉しいけど、喫煙してた自分にイライラさせられるという
    ちょっとモヤッとした気分である。
     
     
    この禁煙美肌効果も、個人差があるだろうけど
    私は禁煙1ヶ月で、赤黒さが少し取れて肌が1段白くなった。
    常々悩んでいた赤黒さ、これが “クスミ” というものだったようだ。
     
    肌が1段階白い状態、というのは
    白い日焼け止めを塗っても、それほど白浮きをしなくなった、という感じ。
    私は色白ではないので、以前はスケキヨ風味に白浮きしてたんだよっ。
     
    あのバカ殿必須の日焼け止めの白さって、肌に馴染むんだー? 
    クスんでない人って白浮き、本当に気にならないんだー?
    へえー・・・、って気分で、素直に喜べない自分がいて
    女心って、つくづくややこしいものだ。
     
     
    冷え性や血行不良の自覚症状はあったんで
    このクスミ抜けは、禁煙によってそれらが緩和された結果だと思う。
    皮膚の乾燥の軽減も実感しているけど、こっちもそれが理由だろう。
     
    クスミ、気軽に捉えてたけど
    これって美容的には、結構大きな問題だとわかった。
    クスミが改善されただけで、肌が明るく見えるんだから。
     
    皆、これ、知ってたか?
    私、知らなかったよ、自分がなってたのも気付かなかった。
    クスミってちょっと顔色が悪くなる事かな、程度に思っていたけど
    まさか、こんなに年中くすんでいたなど!!!
     
    てか、ほとんどの時間くすんでいるなら
    それはもう、そういう顔色だと思ってしまうよな。
    たかが1ヶ月で治るものなんて・・・。
     
    どこがどう、というわけでもないけど
    何となく肌が薄汚く思えるヤツが喫煙者だったら
    おめえ、もしかしたら本当は美肌の持ち主かもよ。
     
     
    と、禁煙直後の頃を書いてみたが
    今の私の肌は老化で、もうどうでも良い感じ。
     
    皮膚自体は良い方だろうけど
    一番恐れていたタルミが顕著になってきてるので、全体的に投げやりに。
    タルミは化粧品じゃ改善できないんで、諦めるよ。
     
    タルミも長年の喫煙習慣が、大きい要因になってる気がする。
    喫煙者の男性の肌、伸びる人が多い気がするからだ。
     
    私はお手入れに励んでいたんで、まだ食い止められてたと思うんだ。
    タルミが一番先に表れた事で、喫煙との因果関係を疑っているよ。
    遅かれ早かれ、喫煙の害は襲ってくるんだな。
     
     
    でも禁煙できるなら、した方が幸せになれると思うよ。
    肌キレイ! 家キレイ! 歯キレイ! 息キレイ! しかも無料で!!!
     
    ただし、顔キレイ! にならないところが、JT憎し! (何で?)
     
     
     

    評価:

    イーグルジャパン


    ¥ 1,529

    コメント:喫煙歴30年以上1日60本吸いの私は、これで禁煙したぞ。 ニコチン切れで苦しいのは3日だけだ。 あとはこれを吸ってれば、「そこまでしてタバコを吸いたいかあ?」 と己の尊厳に疑問を持てば、大・成・功 !

  • 継母伝説・二番目の恋 23

    城の図書室には、全国の貴族の歴史の記録が置いてある。
    その記録を随時更新するのは、貴族の義務である。
     
    だがどの家も、当然ながら自分に都合の良い歴史しか残さない。
    そこで東国の歴史書と合わせて調べるのが、正しい方法であった。
     
     
    公爵家の娘は、ベイエル伯爵家の歴史を紐解いた。
    納税記録には不審な点は見当たらない。
    ベイエル伯爵家は、実に正しい維持がなされていた。
     
    これは清廉潔白そのものな家ね、だけど・・・
    公爵家の娘は、“公爵家” としての教育を受けていた。
    秘密を持ちたければ、疑われないようにしろ、と。
     
    つまりきれいであればあるほど何かを隠している、という事。
    ここまで “何もない” のは、逆に怪しいのよね・・・
    公爵家の娘は迷った末に、基本に立ち戻る事にした。
     
     
    “基本に立ち戻る”
     
    貴族の基本は “社交” である。
    貴族たちが宮廷に集うのは、国王の下において
    各々が持つ役職を遂行して、国の運営をするためでもあるが
    自分の家を有利に維持していくために
    他の貴族たちとの交流が必要不可欠であるからだ。
     
    領地に引きこもって、その交流をすると
    陰でコソコソと反乱を企てている、と思われかねない。
    よって貴族たちは王の目の届く宮廷で、堂々と社交をせねばならない。
     
     
    それは王族も同じ事。
    王や王妃も、社交で貴族たちの心を掴み
    また、動向を見張るのである。
     
    現王妃は、それがまったく出来なかった。
    あの召使いたちの処分の件で
    “王妃の振る舞い” というのを学ぶべきだったのだけど
    逆に王妃は口を利かなくなり、内にこもってしまった。
     
    あたくしの召使いたちは、ムダ死にしたようなものね・・・
    公爵家の娘は、王妃の反応の悪さにイライラさせられた。
     
     
    今日も公爵家の娘が、華やかに談笑をしている後ろで
    王妃が公爵家の娘の背中に張りついている。
     
    最初は言葉がわからないのだ、と黙認されたけど
    次第に周囲の目は、王妃への軽蔑へと変わっていった。
    ふたりがいても、皆、公爵家の娘にしか挨拶をしない。
     
    それは公爵家の娘にとっても、喜ばしい事ではなかった。
    いつも王妃がベッタリだと、動く範囲や喋る内容が限られてしまう。
    そして何より、王妃ひとりの教育も出来ないのか、と思われる。
     
    王妃にひとり立ちしてもらわないと
    “お友達” である、公爵家の娘が無能だと思われるのである。
     
    なので王は、公爵家の娘を “お友達” から
    “側室” へと格上げしたのだろうが
    王妃があまりにも、公爵家の娘にしか懐かないので
    この状況をどう打開したら良いのか、誰もが困惑していた。
     
     
    側室である公爵家の娘が、公務をこなしてくれるのなら
    元々、次期王妃になる、と世間に思われていた姫だし
    使えない王妃は、そのままお飾りで良いではないか
    と、ほとんどの者が考えていたが
    それを歓迎しない一派も存在している。
     
    その筆頭が、ベイエル伯爵家である。
    公爵家の娘が王妃になれなかったのは喜ばしい事であったが
    消えずに王の側にいる。
    しかも汚らわしい土人の王妃を従えて、権力を伸ばしている。
     
    何とか策を講じて、一時的に公爵を西国に足止め出来たのは良いけど
    その間に、公爵家の娘を何とかせねば
    公爵家と敵対している身としては、立場が危ぶまれるのだ。
     
     
    公爵家の娘は、大体の構図はこういうものかしらね、と
    グラスを交わす人々を見ながら、考えをまとめた。
     
    召使いの件以来、あたくしを嫌う者も増えたかも知れない。
    残酷に近い威厳は、統治者としては当然の資質であるけれど
    あの事件を傍観しているほど、ベイエル伯爵が無能だとは思えない。
    隙あらば、自分の “益” にしようと画策してるはず。
     
     
    ふと王に目が行く。
    目立った人の輪は、王とベイエル伯爵の2つに分かれている。
     
    そう言えば、ベイエル伯爵は王に追随しない。
    公爵家と仲が悪いのなら、王族と組するべきなのに。
    王族も公爵家も敵に回して、勝ち目があるのかしら・・・?
    公爵家の娘は、ベイエル伯爵の真意を測りかねた。
     
     
    あら・・・?
    公爵家の娘は、ふとある事に気付いた。
     
    が、それは王妃によって、かき消された。
    王妃のお腹が鳴ったのである。
     
    「夕食はお食べになりましたの?」
    公爵家の娘の問いに、王妃はうつむいて黙っている。
     
    返事も出来ないぐらいにあたくしが恐いのなら、離れていれば良いのに
    本当に、この娘にはイラつかされる・・・
    公爵家の娘は、召使いを目で呼んだ。
    「刻んだフルーツと、オレンジジュースとグラスを。」
     
    「・・・? はい。」
    召使いはわけがわからなかったが、“あの” 公爵家の娘の命令である。
    とにかく、急ぎ厨房へと走った。
     
     
    公爵家の娘は、用意されたグラスにフルーツを盛る。
    「わ、わたくしどもが致しますから。」
    慌てる召使いに言う。
    「よい。
     これぐらい大した事ではない。」
     
    最後にグラスの中のフルーツに、オレンジジュースをかけて
    フォークと共に、スッと王妃に渡した。
    「これなら、お食べになれるでしょう?」
     
    思いがけないデザートに、王妃はオドオドしつつも笑顔になった。
    その顔を見て、公爵家の娘は気分が悪くなった。
     
     
    「あたくし、少々疲れましたので
     今日は失礼させていただきますわ。」
    グラスのフルーツをパクついている王妃にそう伝えると
    横に控えている召使いに言った。
    「今度から、王妃さまの食卓には
     ジュース数種類とフルーツを用意するように。」
     
    部屋に戻るために振り向くと
    貴族たちが驚いた表情で、こっちを見ていた。
     
    しまった、あたくし自らが給仕をするなど失態だわ!
    公爵家の娘が後悔した通り、人々は驚いていたが
    その理由は、公爵家の娘が意外に甲斐甲斐しかったからである。
     
     
    こういう優しさは、身分の高い者にとっては長所にはならない。
    しかし公爵家の娘は、普段の厳しい言動の上
    召使い皆殺しの直後だったので、この “愚行” はプラスに働いた。
     
    「あの王妃が懐くだけの事はある」
    貴族たちは、そう納得させられたのである。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 22 12.8.3 
          継母伝説・二番目の恋 24 12.8.9 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
          カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ 
          小説・目次 

  • 天才

    私、すっげえバカなんだよねー、みたいな事を言ったら
    「本当は自分が頭が良いと思ってるくせに
     あんたのそういう謙遜、ムカつく」 と言われた。
     
    これが良い大人を通り越した、初老の会話かと思われるだろうが
    人間の真の内面って、割に25歳ぐらいで色々とストップしてしまうんだ。
     
    で、その煽りを言われた私は
    へえ、こいつ、私の事を頭が良いと思ってるんだ?
    と、とても嬉しかったのが顔に出てたようで
    ものすごく嫌な顔をされた。
     
     
    意外だろうが、私は自分を “頭が良い” とは思っていない。
    “頭が良い” って、勉強が出来るとか色々知ってるとかじゃないだろ。
     
    私は義務教育までは勉強が出来たし
    内容の質さえ問わないのなら、広く浅く知っている事もある。
     
    そこらへん面倒くさい時は、全部ひっくるめて
    “頭が良い” 自称もしているのだけど
    恥知らずゆえに、客観性も持っているので
    どうも自分があまり頭がよろしくない事がわかってしまうのだ。
     
    どういうのが “頭が良い” のか、突っ込まれたら答に困るんだけど
    少なくとも、物覚えが悪くて物忘れが激しくて
    空気が読めない言動と、ありえない失敗を繰り返すババアは
    決して “頭が良い” とは言えないと思う。
     
    そこで、何が何でも自画自賛したい私は
    “天才” を、本気! で自称しているのだが
    ほら、私、優れた客観性があるじゃん
    何か最近、天才ですらない事に気付きつつあるんだよ・・・。
     
     
    大真面目に天才を自称しているので
    小説も書いているからには、“文豪” も自称せんと気が済まない。
     
    でも、客観性略なので、ノーベル文学賞までは言えず
    政治的要素の強いノーベル平和賞に八つ当たりをしているわけで
    そのノーベル平和賞を盗った暁には、確か賞金みたいなんが出るけど
    それは震災のために諸経費を除いて全額寄付をしよう、と思っているんだ。
     
    そんな善行をしていたら、きっとどこかのお金持ちが
    何かしら恵んでくれるだろうから
    その際には、マンションをおねだりしよう、と決めている。
     
    そこで、関西のどこに住むのが便利が良いか
    地図を見て研究してたりする。
     
    周囲の人に、どこに住みたいアンケートを取ったりしてるのは
    実はそういう意味があった、など口が裂けても言えない。 ほほほ
     
     
    と、いらん日常をポロリしたところで、本題に戻ると
    『ほら、私、優れた客観性があるじゃん』
    ・・・上記のこれは冗談じゃなくて、マジであるんだよ、客観性。
    恥知らずゆえに。
     
    恥を恥と思える人は、自分の欠点をあまり直視したくないだろ?
    私は、「ま、いいか。 私も万能じゃないし。」 と
    恥知らずな自己弁護を出来るので、欠点どすこい! なのだ。
     
    だから客観性がある。
    反省もするけど、改善する気は
    ないとは言わんけど、苦労の度合いによる。
     
     
    そんな私も、自分が何で本気で “天才” だと思えるのか
    よく考えたら、絶対におかしい気がするんだ。
    よく考えなかったら幸せなままなんだけど、何せ客観性略。
     
    そこで、自称 “天才” の動機について、掘り下げてみた。
    ら、答はすぐ出たぞ。
    どうも私は単純なようで、そう難しい心理でもなかったさ。
     
     
    私はドドド田舎の山村に生まれ育ったので
    6歳で幼稚園に入るまでは、同年代の子と接触する機会があまりなかった。
    いつもひとりで裏山に入っては遭難しかけてたさ。
     
    同年代がいない = 競争心が育たない
    これが、あると思う。
    私は、人と自分を比べる事をしないんだ。
     
    ああ、“マイペース” とよく言われてたのは、これか・・・
    と、結構なショックを受けたさ。
    「人に興味がないでしょ」 と、心外な事も言われるんだよ。
    人に興味がないヤツが、訓練ジジイを観察するかい!
     
    関連記事: 狡猾な愛すべき犬というヤツら 11.3.28
     
    世間は、人に注目する = 自分と比較する なんかな。
    いずれにしても、比較対象の存在は具体的な目標になるので
    するのとしないのとでは、頑張りが違うはず。
     
    私に競争心があれば、世界の私! になっていたろうに
    ほんと幼少時の環境って大事だよなあ。
     
     
    つまり、人と比べないから自分を天才だと思えるわけだ。
    では何故、“そんなに頭が良くない” と分析している自分を
    天才だと思えるのか?
     
    これ、言うのはどうかと思うんだけど
    私は単純に、また単純に、ほんっと信じられない単純な事に
    “人体の不思議を賞賛しているに過ぎない”、と結論づいた。
     
    ・・・ほんと、だから自分がバカだと思うんだよ・・・。
     
    どういう事かっちゅうと、例え話だけど
    危ない! と思った瞬間ブレーキを踏める、とか
    わけわからんパソコンのトラブルを、偶然直せた、とか
    夢で壮大な物語を見れる、とか
    そういった皆が出来る事々、それを私はものすごく得意がるわけだ。
    ある意味、えらい幸せな思考回路だよな。
     
     
    これで、そんなに迷惑はかけてはいないだろうから
    直す気がサラッサラないどころか
    自称天才の由来がわかって、益々言いやすくなったさ。
     
    でも自分ひとりの王国の王様じゃないぞ。
    私の世界には、ちゃんと皆がいる。
    中心は私だがな。 ほーほほほほほほ
     
     
     

    評価:

    加藤美蜂園本舗


    ¥ 591

    (2010-05-01)

    コメント:この “てんさい” とは “甜菜” と書いて、大根の一種だってさ。 糖って体を冷やすものが多いけど、甜菜は寒冷地で育つので体を温める、と言われてるそうな。 でもこれは俗説らしいから、自分に合うかで選べ。

  • 継母伝説・二番目の恋 22

    宮廷では、召使いの処刑の噂が広まっていた。
    ありがちな尾ヒレが付いていたのは、言うまでもない。
    公爵家の娘は、この件によって残虐さを恐れられるようになる。
     
     
    「海千山千の貴族が跋扈 (ばっこ) するこの宮廷で
     おひとりでは限界がございます。」
    公爵家の娘に声を掛けたのは、ひとりの中年貴族である。
     
    公爵家の娘には、その男性への見覚えがない。
    「そなたは?」
     
    「失礼いたしました。
     わたくしはチェルニ男爵と申します。
     長男が成人しましたので、領地を任せて
     この度、宮廷に上がらせていただく事になりました。」
     
     
    チェルニ男爵・・・、聞いた事がない。
    あたくしが知らぬレベルの国内の貴族が、宮廷に上がれるとは解せない。
     
    いぶかしんだ公爵家の娘は、その夜も寝室を通る王に訊ねた。
    「チェルニ男爵なる者をご存知でしょうか?」
     
    王の答は意外なものだった。
    「現チェルニ男爵の母親は、わしの乳母だ。
     現チェルニ男爵の末の弟とわしは、乳兄弟なのだ。
     代々、王の馬番をしていた家系の夫の妻に
     乳母としての身分を与えるために
     当事、跡継ぎが絶えていた小さな男爵領を与えたのだ。」
     
     
    「そうだったのですか・・・。」
    それでは、公爵家の娘が知らないのも無理はない。
     
    「その後、あの者が長男だったので男爵家を継ぎ
     結婚して跡継ぎを作ったが、奥は病気で亡くなってな。
     貧乏貴族なので、男手で子供たちを育てていたから
     今まで宮廷に顔を出せなかったのだ。」
     
     
    「よくわかりましたわ。
     ご説明を、ありがとうございます。」
    公爵家の娘が礼を言うと、王がつぶやいた。
     
    「あの者、何かと役に立つ。
     辺境の領土で、貧しいながらも幸せに暮らしていたので
     呼び寄せるつもりはなかったのだがな。」
     
    え?
    公爵家の娘が思わず顔を上げた時には、ドアは閉まっていた。
     
     
    公爵家の娘が資料室の奥で書類を探していると、背後で声がした。
    「お探しの書類なら、ここに。」
     
    受け取った書類は、確かに公爵家の娘が探していたもの。
    「何故あたくしが、貴族の税収を調べていると?」
    チェルニ男爵は、頭を下げたまま答えた。
     
    「今のあなたさまが真っ先になさりたいのは
     ベイエル伯爵を潰す事だからです。」
     
     
    宮廷での貴族たちの遊興費等は、基本的には王家が持つ。
    しかし城下町での邸宅の賃貸料や維持費、滞在費、使用人たちへの給料
    流行に合わせた、宮廷に  “ふさわしい” 高価な衣装代などを
    捻出し続けられる貴族は少ない。
     
    だから多くの貴族は、イベント時などに短期間の滞在しか出来ない。
    貧乏な新興貴族であるチェルニ男爵家にも、そのような財力はない。
     
    と言う事は、王がそれをすべて出している、という事。
    そこまでして呼び寄せた理由が、この一瞬でわかった気がした。
     
     
    公爵家の娘が、冷たい表情を崩さないまま訊く。
    「そなたがしたい事は?」
     
    「あなたさまのお手伝いです。」
    チェルニ男爵はひざまずいて、公爵家の娘の靴に口付けた。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事: 継母伝説・二番目の恋 21 12.8.1 
          継母伝説・二番目の恋 23 12.8.7 
          
          継母伝説・二番目の恋 1 12.6.4 
          カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ 
          小説・目次