「私の後任の手配を、長老会にお願いしました。」
リリーがこう言い出したのは
ジジイの葬儀後、1ヶ月ほどしてからである。
「え・・・? まさかお辞めにはなりませんよね?」
グリスが事務の手を止めて、不安そうに訊く。
「はい、後任に仕事を徐々に教えておきたいのです。
私は死ぬまでお仕えします。」
リリーの答を聞いて、ホッとするグリス。
「ですけど、私も必ず先に死にますよ。」
リリーの縁起でもない言葉に、グリスは真面目な顔でうなずいた。
「はい。 わかっております。
だけど・・・、出来るだけ長く側にいてくださいね?」
「努力いたします。」
いつものように冷たい口調でリリーが答えた。
「お忙しい中、ありがとうございます。」
リオンを前に、頭を下げたのはアスターであった。
「いいえー、グリスくんの親友の頼みなら
聞かないわけにはいかないでーすからねえ。」
アスターはリオンに、“面接” を申し出ていたのである。
主の葬儀の後、国中を騒がせた館スキャンダルによって知った
館の意味と、主たちの素性には驚かされたが
それでも遠くからグリスを見守ろう、と我慢していた。
しかし祖父とも呼べるジジイが死んだグリスの孤独を考えると
いたたまれなくなったのである。
何よりここを逃したら、もう一生グリスの側に行ける可能性はなくなる
そんな気がしたので、アスターは思い切ってリオンにすがる事にした。
「しかし、館は基本的に
クリスタル州の人間にしか関われませーんしねえ。」
そう言われる事は、アスターは予想していた。
「はい。
でも、私は主様に頼まれたのです。
グリスの側にいてやってくれ、と。」
リオンの目が光った。
「それは本当でーすか?」
アスターの口元に、一瞬だけ動揺の歪みが現れる。
「は、はい、別荘に招待していただいた時に・・・。」
アスターは、主とふたりきりになった時の事を
正直にリオンに話した。
「都合の良い解釈かも知れませんが
私にはどうしても、主様はあの時
『グリスを頼む』 と、おっしゃってた、としか思えないのです。」
リオンはそれには答えずに、履歴書を見ていた。
「ほお? あなたは弁護士資格を持っているのでーすね?」
「・・・はい・・・。」
話を聞いてもらえない、と感じたアスターは力なく答えた。
「館でグリスの側にいたいのなら、主を盲信しなければなりませーん。
それが、条件でーす。」
「私は主様を尊敬しております!」
慌てて言いつくろったアスターを、リオンは容赦なく斬った。
「それは嘘でーすねえ。
あなたは主を信じていませーん。
現に、主がその時にあなたに伝えたかった事を
あなたは確信していませーん。」
「リオンさんにはわかるのですか?」
リオンはただ微笑むだけで、ケーキを頬張った。
主はストレートな人でーすから、無意味な謎掛けはしませーん。
本当にアスターくんを、館に連れて来たかったのでしょーう。
それを口にしなかったのは、人任せにする罪悪感でしょーうねえ。
散々グリスくんを放置してきたあげくに
アスターくんのキャリアをムダにさせて平気なほど
無責任な人でもありませーんしねえ。
この子は主を知らないので、拒絶しちゃったんでしょーうね。
そして、それを主が珍しく敏感に察知した
と、いったところでしょーうかねえ。
リオンは目の前に暗い顔で座っている若者を、チラリと見た。
惜しいでーすねえ。
この子に、もうちょっと狡猾さがあったら
グリスくんは安泰なんでーすがねえ。
ああ、もったいない、もったいない、と。
リオンは2個目のケーキにフォークを刺した。
続く
関連記事 : かげふみ 59 12.5.21
かげふみ 61 12.5.25
かげふみ 1 11.10.27
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かげふみ 60
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特殊除霊方法
映画 “リング” が流行った時
九州で結婚生活をおくっていた私に、悲劇が降りかかった。
オウム・シスターズのような超ロングだった私を
事もあろうに当時の夫が、貞子認定したのだ。
いや、笑い事じゃなくて、離婚話にまで発展したんだよー。
「んじゃ何か?
おめえは 『妻が貞子のようで恐いんです』 とかいう
たわごとが離婚理由だ、と人に言えるのか?」
この言葉で、夫は気持ちを立て直したようだが
数年後に結局、離婚になるんで
あの時の努力はあまり意味がなかったな、と思う。
離婚理由、その後の人生において結構大事だけどな。
まあ、“性格の不一致” とか言うときゃ良いしな。
映画 “リング” で、人が家庭崩壊しかけていた時に
ネットの某所では、希望の光を見出していたようである。
「俺、貞子ならいける!」
ひとりがそう叫んだのが始まりだったらしい。
そういえば冷静になれば俺も・・・
俺もストライクゾーンかもしれん
童貞をねまらせた男どもには
(“ねまる” とは、九州かどっかの方言で “腐る” の意)
“女がTVから出てくる” というのは
ものすごいファンタジー、理想のシチュエーション。
かくして、TVの前で全裸になった男が
ギンギンにスタンバイしつつ
荒い息に血走った眼でリングを観る、という儀式が
日本のあちこちで密かに行われたそうな。
貞子が出てきた、という報告はいまだにない。
これはすべて伝聞の話。
私はリアルタイムでは目撃してはいない。
何せ、その時にはうちでは離婚話が略
それ以来、その某所では霊対策が確定する。
「うち、霊が出るんだよ・・・。」
「それは男か? 女か?」
「女だよ。」
「じゃあ、シコれ!!!」
「ええー、出来ないよー。」
「その霊も、元はキレイなお姉さんだったんだぞ!
生きてる時なら出来ただろ、想像力で補完しろ。」
「う、うん、やってみる。」
「出来たよ!
よく見たら、結構可愛いんだ。」
「良かったな。」
「うん、毎晩出てくるのが楽しみだよ、ありがとう!」
「うわあああああん」
「どうした?」
「霊のおねえさんが消えたーーー!」
「詳しく。」
「いつものようにお姉さんを見てオナってたんだ。
そしたらお姉さんが急に 『いい加減にして!』 と
恐い顔で怒って、消えてそれ以来出てこないんだー(泣)」
除霊完了
いや、これ、某所じゃマジでやってる事なんだ。
パワー的には、男の性欲 > 霊の恨みつらみ なんかな。
出るたびに目の前でオナニーをされる霊は
大抵、嫌がって消えていくようである。
これはイヤだ、という我がままなヤツにはファブリーズ。
何か気持ち悪いな、と思ったらファブリーズを振りまく。
ファブリーズじゃなくても、霧状の液体なら良いらしい。
何かこれ、科学的に詳しく説明されていて
一生懸命読んだけど、何が何やらさっぱりだった。
霊と言えども、物質なので
その場の霊を形成する物質を、霧状の液体でうんぬん、みたいな。
それでなくても、掃除と換気は
邪気を溜めないためにも有効だそうだし
何より私の持論は、“ドグラの家は掃除をしてない!” なので
この私説とも符合するから、ファブリーズ説、私は支持するぞ。
この記事で、私がネットのどこに出入りしているのか丸バレだろうけど
老眼にモニターの発光は酷なので
最近とんとご無沙汰で、どういう心霊が流行ってるのか
乗り遅れてしまっている状態である。
とりあえず、ひとりかくれんぼと異世界エレベーターまでは追っていたが
あれに変わる恐い遊び、何か流行ってるんかな?
って、2年ほどご無沙汰かあ。
老眼になると、世界が狭まるなあ・・・。
と、まあ、オカルトってのは、こういう感じなんだ。
何でこういう話題を書いたか、っちゅうとな
今、うちに猫か小型犬みたいな小動物がいる気がするんだ。
霊感 10.10.22 で、霊感ゼロ! だと判定されて
ガックリきて、心霊ビデオとかあまり観なくなってるんだが
何か、うちにいる気がするんだ!!!
・・・うん、正直、歓迎してる。
だって、私に霊感が芽生えたかどうかの瀬戸際だし
相手は小動物っぽいんで、ま、困っとるんなら
うちでゆっくりしていけば良いさ。
何で 「何かいる!」 と思うのか、っちゅうと
寝ている時に、頭の上の布団を踏んでいく気配がしたのと
私の足をまたいでいったのが、続けてあったんだ。
お、これは何かがうちに来ている! と
気楽に喜んだのは、それが小型動物っぽかったからで
人だったら、恐怖で発狂ものだよ。
でも、単に横切られてるだけの気がせんでもないんで
とりあえず、ファブリーズを撒いてみたよ。
人系が出たら、すぐさまユートピアをするさ!
あ、マズい、“ユートピア” の説明までせにゃならんのか・・・。
ユートピアとは、霊現象にビビって切羽詰った時にする儀式で
1.全裸で
2.ベッド等の上でバイーンバイーンと跳ねながら
3.白目を剥きつつ
4.両手で尻をパンパン叩きながら
5.「びっくりするほどユートピア! びっくりするほどユートピア!」
と叫ぶんだ。
これをすると、霊が呆れかえって消えるらしいけど
まあ、こういう事が出来るならば
恐いものなど何もなくなるよな・・・。
にしても、もし霊感が出来たとして
それって良い事じゃないかも知れない。
片足を棺おけに突っ込んでるから、視えるようになった
とかしか、理由が思いつかないんだよな・・・。
評価:
コモライフ(株)
¥ 7,350
コメント:“リング” の検索からの横道逸れで、これが。 これ、「小さな胸を大きく」 とかいう女性のバストアップ器具と同じ匂いがする。 値段的にもドブ捨て覚悟できる範囲だし。 補助器具、色々売られてるんで男性の未来は安泰だな。
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かげふみ 59
葬儀での全員の悲しみを撮ったマデレンは
ジジイの最期も撮っていた。
「あっ、マデレンさん。」
住人の女性がマデレンに駆け寄るところから、シーンは始まっている。
「何だか元様の様子がおかしいんだけど・・・。」
マデレンのカメラは、ジジイの背中を写した。
「SPが付いてるから大丈夫ですよ。
私も後を追いますから、心配しないで。」
マデレンの声が入っている。
ジジイはいつも、キレイな服を着せられていたが
今日はいつにも増して、カッチリとしたスーツ姿に
靴もピカピカに磨き上げられていた。
わき目も振らずに、堂々と歩いて行くその姿に
マデレンは、“目的” を感じた。
「私にはわかりました。
これが最期なんだ、と。
わかるんです、カメラを覗いているとそういうのが。
・・・主様の時は意外でしたけど・・・。」
マデレンは即座にジジイを追った動機を、こう語った。
ジジイは主の墓の前に立った。
「えらい良い夢を見とったような気がするんじゃが
起こしたのは、あんたかね?」
ジジイは主の墓標に向かって喋り始めた。
「・・・そうじゃなあ・・・。
いつまでもこうしていると、あんたに怒られるじゃろうな。
『ジジイ、ボケてんじゃねえよー!』 ってな。」
ジジイは穏やかに微笑んだ。
「グリスには辛い想いばかりさせて、本当に申し訳ないと思っておる。
じゃが、館中があの子を愛しておる。
だから大丈夫じゃろう。」
ジジイは主の墓の前で、しばらく館の方を眺めていた。
何故、別れはいつも “春” と呼ばれる季節なのだろう
気持ちの良い風が、そよそよと吹いている。
ジジイは目を細めて、館の風を味わっているようだった。
そして主の墓に視線を戻して、また話しかけた。
「あんたにはバラがおるから、わしには桜が良いのお。
本場の日本には、“千本桜” というのがあるらしいのお。
それが散るさまは、さぞかし見事じゃろうなあ・・・。
それをおねだりは、ちょっと無理かも知れんが
うちには品位のない権力者がおるんで、不可能ではないな。」
はっはっはっ と声を上げて豪快に笑った。
「さて、そろそろ行くかの。」
「うっ・・・」
マデレンの嗚咽がかすかに入って、一瞬画面が揺れた。
こんな奇跡を見るのは初めてである。
自分の死を知って、制御する事が可能なのか?
ジジイは、大木が倒れるように前に沈んだ。
SPもマデレンも、助けようとしなかったのは
倒れてなお、カッと見開いたその瞳が
命がもう、そこにはない事を示していたからである。
誰もしばらく、ジジイの側には近寄れなかった。
この映像を観た誰もが、驚愕した。
尊厳ある死を目撃した気分になった。
「葬儀の映像とともに、この映像も流します。」
マデレンは、プロに徹したというより
ジジイの立派な最期を、多くの人に誇りたかったのである。
ジジイは、歴代の主の墓の並びに眠っている。
その隣には、いずれグリスが来る。
続く
関連記事 : かげふみ 58 12.5.17
かげふみ 60 12.5.23
かげふみ 1 11.10.27
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肌研ヒアルロンUVクリーム
このブログのコメント欄で教えてもらった日焼け止め。
SPF30 PA+++ という、日常使いに理想的な数値だ。
35g入りで、 値段・・・?
ごごごごごめん、ほら、レポのためにしばらく使用してたから
はいーっ、次からメモっておきますーーーっっっ!!!
ロート製薬のサイトでは、1050円だってよ、やっすーーー!
これがさ、私の行動範囲のところでは中々売ってなくて
根気強く探して、やっと入手したんだよー。
そんな、メーカーも力を入れてなさそうな商品だけど
メーカーサイトによると、スキンケア機能を重視してて
UVカット、化粧下地、保湿がこれ1本でオッケー!
と書いてあるけど、へえ、そうなんだー。
いや、別に文句はないよ。
でも化粧下地を兼ねていない顔用日焼け止めの方が珍しいから
何? この定型文、と思っただけなんだ。
メーカー、ほんっと、これに力を入れてねえのな。
こんな日焼け止めは、滅多にないのにな。
ロート製薬、ちょっと聞いてくれー。
購入力の薄い層はどうでも良いのかも知れんが
どうせ作ったのなら、一生懸命アピールせえ!
私が見本文を書いたるから。
:肌研(ハダラボ)からお届けする、貧乏ババアに優しい日焼止めです。
:UVカット数値は、これ以上は逆に肌に刺激になるんだよ、の
:SPF30 PA+++
:
:塗り心地は、他にない業界初の、何?これ単なるオイル?風味!
:下ネタに使えそうな、トロリとした白い液状クリームなのに
:塗ってみると、肌のアラを1個も隠さない透明感の高さで、白浮きもゼロ。
:
:キシキシ感も、乗ってる感じも一切なしの
:まるで軽めの油を塗ったような、オイル光りでテッラテラ。
:これで本当に紫外線カットをしているのか
:不安になるほどの、単なる油塗り状態。
:
:もちろん乾燥も一切なしどころか
:ベタベタしていて、粉吹きババアにも安心のテカリ具合。
:
:それでいて、お値段は定価で夏目がひとりだけ。
:ひきこもりババアならひと夏持つ、普通量の35g。
:
:こんな日焼け止めは、どこにもありません!
いやあ、SPF30 PA+++ で
膜感と白浮きが一切なく、乾燥せずにしっとりしている
スキンケアのような日焼け止めなんて、ほんと滅多にないんだよー。
やっと見つけて、ずっと愛用してきた日焼け止めがあったのに
改変されてさ、何かそれがいまいち信用できなくて
関連記事: しっとりする日焼け止め 11.11.9
ソフィーナ・ボーテ デイプロテクター 10.12.17
真剣に困っていたところに、これを教えてもらったんだ。
これが、なっかなか売ってなくて、期待薄で使ってみたら
もう、日焼け止めとは思えない塗り心地で!!!
本当にサラリとしたオイルを塗った感じで
何回重ね塗りしても、白浮きがなくて
マジでUVをカットしてくれてるのか不安になるほどの
日焼け止めらしくない使い心地なんだよー。
保湿はよくわからんけど、乾燥はまったくしない。
粉ものが一瞬でシワに寄るババアに最適なのに、値段も激安なんだよー。
こういうのを待ち望んでいたから、こいつにはぜひ生き延びて欲しい。
切り捨ての製造中止も、良かれと思ってのいらん改良も
ほんと止めて! 絶対にしないで! ソッとしておいて!
この商品は、好き嫌いが真っ二つだと思う。
日焼け止めの、あのキシキシした膜感と、乾燥と
白浮きに悩んでいる人だけにお勧め。
オイリー肌のメイクは崩れやすいと思うけど
乾燥防止のために、他の日焼け止めの下地には役立つはず。
まったく、どれもこれも保湿力をうたうと膜感が強いし
透明感とか言っても、微妙に白っぽくなるし
塗っていないようなさっぱりタイプは乾燥するし
数時間経った後の、キシキシした肌の手触りと
夜、洗い落とした後の、肌の疲れ・・・。
ガードやカバー力は白浮きまっしぐらだし
本当に、保湿クリームのような日焼け止めって、ありそうでない!
多分、ブランドの日中スキンケアの項目に
そういう日焼け止めは隠れているんだろうけど、その手のブツは高い!
値段も大事じゃん、一生使うんだから。
ソフィーナボーテの3000円弱も、貧困層には結構辛かったよ。
自然派系メーカーのの日焼け止めは、数値への不信感と
使用期限が短すぎるのが難点だし
昨今は肌に悪そうなBBクリーム流行りだろ、
“スキンケアのような日焼け止め” が、いつ絶滅するか、と
ほんと恐くてしょうがねえよ。
多様性を重視する社会なら、もっと幅広い商品展開をしてほしいけど
売れないのなら、作りたくないよな。
だから消費者の方に言いたい。
その、“皆が使っている” 売れ筋の化粧品、
本当におめえの肌に合ってるのか?
それが、おめえの求めていた使い心地か?
もっと我がままを言って良いと思うぞお?
と、少数派への誘い・・・ (“いざない” とポエムっぽく読んで。)
続編記事: きえゆくものたち 12.6.5
評価:
ロート製薬
¥ 1,050
(2011-02-03)
コメント:普通は、「クリームを塗っているような」 だけど、これは 「透明オイルを塗っているような」 他にない使い心地の日焼け止め! 乾燥キシキシ白浮きなしなので、化粧が土砂崩れるドス黒い顔色の私のようなババアに、ものすごくお勧め!!!
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かげふみ 58
ジジイは痴呆を発症していた。
この事は、長老会や館へと速やかに通達され
手配された専門医によって、適切な処置も取られたが
年齢も年齢なので、屋敷で余生を自然に過ごしてもらおう、となったのである。
ただひとつの問題は、この事を誰がグリスに言うか、であった。
ズルズルとなすりつけ合いをしていたら
グリスが先に気付いてしまったのである。
グリスのショックは相当なもので
誰もが、自分が伝えなくて良かった、と思ったほどであった。
「おじいさまには、館へ帰って来てもらいます!」
グリスの泣き顔での、この訴えを退けられる者はいない。
館で過ごせるのなら、それはジジイにとっても良い事に思えた。
館では住民を集めて緊急総会が開かれ
ジジイの状態と、その対応について話し合われた。
しばらくの間は外部からの訪問者、観光客も断ろう、となった。
住民たちにも、ジジイの出戻りは何の異存もなかった。
かくてジジイは、館へと凱旋を果たした。
ジジイは館で自由に振舞えた。
歩き回りたい時に歩き回り、食べたい時に食べ、寝たい時に寝る。
おぼつかない足取りで、ゆっくりゆっくりと歩くジジイの後ろには
いつもSPが控えていた。
彼らは街の屋敷時代からの護衛で、望んで任務を引き続けた。
皆が自分の生活をする中、さりげなくジジイを見守っていたので
事故もなく、快適な生活を送れていると思われた。
ただ一点を除いて。
ジジイはすれ違う人を捉まえては、訊いた。
「アッシュはどこじゃ?」
これを訊かれた人は、微笑むしか出来なかった。
「さあ? どこでしょう?」
そしてジジイが再びウロウロと探し始めるのを見て、目頭を拭うのだ。
ジジイが、朝、目が覚めたら、ベッドに朝食が運ばれる。
世話係、時にはグリスが食べるのを手伝い
身支度を完璧に整えられると、ジジイは館を歩き回り始める。
昼になると、主の演説映像が流され始める講堂に行く。
真ん中あたりの列の長椅子の、中央付近に座って
首を少し左右に振りながら、主の映像をニコニコと観る。
それが終わると、執務室へと行ってお茶を飲む。
そして主がいない事に気付き、探し回るのだ。
ジジイは、グリスもリリーも誰の事も一切覚えていなかった。
ジジイの記憶にあるのは、“アッシュ” だけであった。
この事は、グリスをひどく悲しませたが
同時に、その気持ちも痛いほどにわかるので
グリスはヒマを見つけては、主探しを手伝った。
「ぼくも主様を探したかったんですよ。」
後年になって、グリスはそう言って微笑んだ。
ジジイは、主の墓の前で倒れた。
葬儀は館関係者のみで行われた。
長老会メンバーも全員出席した。
しかし館最後の生き証人として、有名人になっていたので
国中から見物人が集まり、館の門の外は人で埋め尽くされた。
報道ヘリまで飛ぶ有り様だった。
続く
関連記事 : かげふみ 57 12.5.15
かげふみ 59 12.5.21
かげふみ 1 11.10.27
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エロ本の処分法
女性用エロマンガを愛読しておる私だが
そういう人種で誰もが持つ悩みに言及しよう。
それは、読後のブツの処分。
私はゲーム雑誌の攻略情報や、美容雑誌のメイクテク等を
こまめにスクラップしておく癖があったので
もちろん今回も、そうする事になるのは当然の流れ。
そこで、セックスシーンのみ破りとってホッチキスで留める事にした。
エロマンガ1冊で、セックスシーンは平均約0.5cmぐらい。
1冊1スクラップブックが出来るわけだ。
ところがこのエロマンガ、破れねえ!
正確に言えば、裂けない?
背表紙からページを切り離せないんだ。
女性用エロマンガ、本の背面に糊をつけてページを固定する方式で
その糊が厚く強固に塗られていて
ページを破り取ろうとすると、糊の塊で
ページのフチがガタガタになるのである。
言いたい事がわからないヤツは
とりあえず女性用エロマンガを買ってきて
1ページ1ページ破ってみい。
10ページずつでも良い。
何でこんなに頑丈にする必要があるのかっ!!!
と、思うはずだから。
私がここまで怒るのには、2つの理由がある。
ひとつは、同じく背面糊接着で作られているゲームの攻略本が
すぐにバラバラになるからだ!
参考記事: 攻略本 09.7.21 (画像あるもエロじゃなし)
まあ、エロマンガはゲーム攻略本のように繰り返し繰り返し見ないけど
それにしても、強固すぎる接着に
まるで 「コピー禁止!」 とか言われているようで不愉快である。
人はエロ関連に対しては被害妄想を膨らませる。
もうひとつは、負傷!
背面の糊のせいで、ページが取れないんで
糊の塊をねじり取る必要があるのだ。
その作業の時に、親指の関節や爪の間をケガするのである。
この私の美しい手が!!!
ムスカ風に言うと、あああ、私の手が手があああっっっ!!!
試しにカッターでやってみたところ
幼児が包丁でカボチャを切るより、危なさそうな風情になったので
(硬いものを固定なしストッパーなしつまり考えなしに切ろうとする)
私はまだ道具を使うまでには進化していない、と
自分の未熟さを認めて、チマチマと素手で作業する方向に戻ったさ。
そうやって、リアル負傷をしつつ作ったスクラップブック。
・・・いやあ、エロマンガって、思いのほか読み返さないもんなんだなあ。
先日、押入れの除湿剤を交換しようとして
雪崩が起きたのが、そいつらの仕業。
ああ・・・、こういう事をしてたっけ、と思い出したのは
風邪こじらせ → めまい発症 と、病に臥せっていたので
ここんとこ、気分はエロどころじゃねえ、だったからである。
思い出して、と言うか、現実に
目の前に雪崩れてきているエロマンガスクラップブックを
読み返してみると
・・・・・・・・・・・・・・・
セックスシーンのみの羅列って、アホみてえ・・・。
私さ、常々不思議だったんだよ。
AVさ、オムバニスとかあるんかも知れないけど
大体ディスク1枚に1作ずつ入ってるんだろ?
それを男性は、早送りしてセックスシーンだけ観てる印象があるんだけど
実際にそうやってる、と何人からも聞いたんだけど
だったら何でセックスシーンのみのAVを作らないんだろう?
と、疑問が湧かないかあ?
答はな、セックスシーンばっかり延々と見せられても
意味がわからんし、見てる自分がアホみたいだからだよ!
やっぱりエロでも話は重要!!!
と、わかったんで、私の手に多くの傷を残してくれた
セックスシーンスクラップブックは、速やかに廃棄した。
こいつら、捨てるにもホッチキスの針を取る作業で
加害してくれるやがる・・・。
もう、作ってもケガ捨ててもケガで、私ボロボロ・・・。
・・・・・・廃棄は燃えるゴミでだ。
いいか? よく聞いてくれ。
若い男性のエロ所持と、ババアのエロ所持では
人格の評価に対する影響が、格段に違うんだよ。
ヘタすると、穴さえあれば良い無差別級なお方が
「ババアそんなにやりたいのかだったら俺が」 等
てめえに関係ないのに首を突っ込んでアレも突っ込みに来るかも知れん。
犯罪を未然に防ぐために、エロはわからないように捨てるべきなのだ。
だから燃えるゴミにチマチマ混ぜて、気長に捨てておるさ。
うちの自治体のゴミ規定は、割にフリーダムだけど
エロだけは隠して捨てたいんだ。
更に自己正当化をさせてもらうとな
レジ袋が減って、燃えが悪くなった焼却炉もあるんだとよ。
あのレジ袋自体、リサイクル製品だし
失くすのは、店のサービス削減の良いカモに思えるがな。
あ、私、エコとか意識しないんで説教に来ないで。
そんな立派な理由がなくても、質素で真面目に暮らしておるから放っとけ。
と言う事で、私のエロマンガスクラップは、話1個ずつになった。
セックスシーンだけが大事じゃない事が、よくわかりました。
描いてる皆様、どうもすみませんでしたーーーっ。
評価:
笠倉出版社
¥ 650
(2012-05-07)
コメント:恐怖の “レデースコミックス” 検索、第二段、お・金・の・貯・ま・ら・な・い・女! ものすごい既視感! おめえ、私にケンカ売っとんのかあっ!!! ケンカすら買えんよ、貧困だもん・・・。 正に、お・金・の・貯・ま・ら・な・い・女!
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かげふみ 57
館は平穏を取り戻すどころか、逆に賑やかになった。
主やジジイやグリスの存在を知った、国中の人々が
村や館に観光に来るようになったからである。
こういう事態も覚悟していたものの
予想以上の盛況に、館に急きょ “観光課” が作られた。
農産物の売れ行きも良くなったので
住人たちが客の案内に割く時間も、限られてしまうのである。
館の産業は、外部からのバイトを雇うまでになった。
グリスは多忙ながらも、事務を懸命にこなした。
外に出ると、議会中継を見てファンになった女性たちが
キャアキャア叫んで追い回すので、執務室にこもるしかないのだ。
活動的なグリスにとって、インドア生活は辛いものだったが
主様もこれに耐えていらした、と自分を律して頑張った。
主は単にアウトドアの方が辛い性格だっただけなのだが。
ジジイは相変わらず街の豪邸に暮らしていたが
一日おきぐらいには館に通ってきた。
講堂で観光客相手に講演をしたり
グリスの話相手になっていたりした。
「理想の隠居ライフじゃな。」
ジジイは、快活に人生を楽しんだ。
長老会の他の辞任組も、講演に引っ張りだこであった。
かえって辞める前よりも忙しくなった者もいた。
彼らも、館には思い入れが強く
たまに館にやってきては、飽きずに主の資料館を見学し
来賓室でくつろいだりしていた。
元長老会メンバーがこのようにひんぱんに館を訪れるなど
過去に例がない事である。
リオンは、主の寝室通いをやめなかった。
時間が空けば、ちょろっと来てちょろっとやって帰って行く。
自宅でやればいいのに、とは誰も思わなかった。
リオンもまた、主の側を離れたくなかったからである。
この館に住む者、来る者は、全員が主を追う者であった。
主がいなくなっても、なお。
館に来る観光客たちは、これらの事を
かつての惨劇の館が現実にあった証しとして
興味深く、そして好意的に見守った。
館のすべてが、生まれ変わった。
浄化がようやく終わった、と誰もが確信した。
そんな平穏な日々が、何故許されないのか・・・。
グリスがリリーに言った。
「ちょっとおじいさまの様子を見てきます。
最近ここにいらっしゃらないし、携帯にもお出にならないので。」
リリーが少し動揺したのを、グリスは気付かなかった。
ジジイの屋敷でジジイを前に、グリスは凍り付いていた。
ジジイの言葉を聞いて。
「あんた、誰かな?」
続く
関連記事 : かげふみ 56 12.5.11
かげふみ 58 12.5.17
かげふみ 1 11.10.27
カテゴリー ジャンル・やかた
小説・目次 -
カスタマーサービスの意味
昨今、“お客様満足度” とか、そういう事を企業が言っている。
日本は昔っから接客が上等なのに、今更何を言い出したんだろう?
と、不思議だったんだ、この言葉。
だけど、やっとわかったよ。
この企業理念の真の意味が。
とある器具を買った。
ところがそれがちと支障があって、使えない。
でもこれが仕様かも知れないし、という可能性もあったので
まずは保証書に載っているお客様相談センターの方に電話をした。
こうなるんですが、これは我慢すべきでしょうか?
と問うと、それは不具合だから修理に出してくれ、と言われる。
言われた通りに修理に出して、しばらくしたら
メーカーから電話が掛かってきた。
テストをしたけど異常はない、と。
そんなわけはないんだが、わからないらしい。
とりあえずAの部品を交換して返す、と言われたので
Aの部品じゃなく、Bの部品が問題なんだと思う。
だからAじゃなくBを交換してくれ、と頼んだ。
私の訴えを聞いていれば、Aの交換など言い出すのはおかしいんだよ。
素人でも、Bの部分がおかしいと考えるはずなのに
一体どういうこったい?
この電話では、相手がものすごく困っていたので
これで直らない場合は諦めますから、と申し出ると
そうしていただけますか、と、すがるように言われた。
で、器具が手元に返ってきた。
お願いした通り、Bの交換がされていた。
・・・・・直ってるんだよ、支障が!!!
メーカーは原因不明だと言っていたけど
やっぱりBに不具合が出ていたわけじゃん。
これは教えてあげないと、と再びお客様センターに電話をしたさ。
以前にメーカーの人が、事例報告はものすごく大事だ、と言っていたんだ。
で、一通り説明をしたら、担当部署に電話を回された。
もう一度最初から説明をした。
すると、「不愉快な想いをさせて申し訳ございませんでした。」 と言う。
いや、私は文句を言ってるんじゃなく
お礼を兼ねて、報告をしてるんで
おこがましいけど、今後の参考にしてもらえれば、と思って
原因不明だと修理の人が言ってたから
と、一生懸命に説明した。
「では修理部門に電話を回させていただきます。」 と言われ
違う、この不具合は製造段階で発生してるわけで
修理じゃなく、作る時に気をつけるべきものでしょう、と言うと
また、不愉快な想いをさせて申し訳ないと謝られる。
もう言葉が通じている気がせず、電話した事を後悔したよ。
私、クレーマー扱いですか? と直球で訊いてしまったさ。
「いいえ、とんでもございません!」 と、強く否定されたけど
人間同士の会話ではないんだ。
電話を切った後に、一体どういう事なのかと考えた。
で、わかった。
“マニュアル通りの受け答え”
その番号に掛かってくるのは、大抵苦情の電話であろう。
だから担当者はクレーマー対応を教えられているわけだ。
そこに種類の違う内容を言われてきても
個人の判断で応用を利かせた場合に
ヘタしてメーカーの責任を問われる事態になりたくない
だからマニュアルで習った以外の対応は出来ない
こういう事なんだと思う。
“謝ったら全責任を取らされる”
これは日本の社会にはない概念である。
しかし、“グローバル” とかいうやつになってきて
日本でもこの感覚が幅を利かせてくるようになった。
メーカーは一見、謝っているように見えて
実は決して非を認めてはいない。
自分とこの製品が悪いのではなく
“不愉快な想いをさせた” 事にのみ、謝っているのである。
見事な責任逃れである。
こうやって型通りのやり取りしかしてくれないので
メーカーとマトモな話をするのは難しくなってしまっているんだろう。
「私の場合、Bが悪かったみたいでしたよー。」
「ああ、そうだったんですかー
同じような事故がないよう、その事例を参考にしますね。」
こういう話をしたかっただけなのに
申し訳ない申し訳ない、と繰り返されて
私こそ、余計な電話をして申し訳なかったよーーーっ!
で、この経験でわかった、カスタマーサービスの真の意味。
カスタマーサービスとは、客への対応ではない。
“顧客になってもらわない方法” である。
「そんなんで文句を言うヤツなど、客にならなくて結構。」
という、取り引きしたくない性質のヤツが、文句を言ってきた時に
どんだけ穏便に追い返すか、という技術なんだと思う。
企業の担当者は、客へのサービスだと習っているんだろうけど
それはカスタマーサービスの専門家の嘘だと思うぞ。
企業がCS教育者に求めているのは
表向きは客大事に見える、クレイマーの門前払い。
まずはそれを、担当者に “サービス” だと思い込ませないと
長い事やってると、心が壊れてしまいかねんからな。
正当かつ美しい理由がないと、酷な業務だろうし。
“誠意” は、金銭物品サービス等の付加じゃなく
心のこもった 「ごめんなさい」 という態度で表してほしい客なら
「不愉快な想いをさせて申し訳ございません。」
この言葉にこそ不愉快になる。
こっちのどんな気持ちも、ひとくくりだから。
私は日本の企業を大事にしたいけど
向こうは私をいらないようで、悲しい。
そう思わせてくれる言葉である。
評価:
カンロ
¥ 1,200
コメント:特別な私のための選民意識キャンディーの呪縛を解き放してくれたのが、これ。 何か塩気がある割に、キャラメルらしい味のキャンディー。 ヴェルタースよりバター風味がないんかな。 しかし、“サレ” ってのが、“塩” って意味だとはなあ・・・。
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かげふみ 56
ジジイはいまや、マスコミに引っ張りだこであった。
その毒舌と潔さ、そしてどことなく漂う哀愁。
「すべての罪は、わしにある。」
そう告白して、当時の館の状況を語るジジイに、人々は誠実さを感じた。
ジジイが注目を集めている間に
長老会の調査は、いとも簡単に終わった。
「結局、館の存在を公にして、クリスタル州を糾弾し
鉱山の利権を、州から国に移そうという企みでした。
現・州知事が、国会進出の手土産にしようと目論んだようですね。」
「ふうむ、クリスタル選出の現・国会議員は鉄板の票田を誇るから
引きずり降ろすには、相当のネタがないと無理だからなあ。」
「そうとわかったら、作戦はおのずと決まりますよね。」
「ええ。 売国奴ならぬ売州奴だと突き上げれば良いだけですよ。」
「現・国会議員も、協力してくれる事でしょーう。」
長老会の若いメンバーの話し合いを聞いていた古参メンバーたちは
しみじみとうなずきあった。
「時代は変わったな。」
「彼らは筋肉痛すら起こさずに敵を倒すのだろうな。」
そんな沈んだ空気の中、将軍がいさましく言った。
「今は戦争も、ボタンをポチポチで済みますが
敵の意欲を削ぐのは、やはり兵を行かせるのが一番なのですよ。」
「生きた人間が一番衝撃を与えるのか。」
「ええ、我々の生き証人も正に今、人々に衝撃を与えていますしね。」
実際、思わぬ伏兵の連続に州知事側は焦っていた。
主、ジジイ、グリス、禁断の館の蓋を開けてみたら
魅力あふれる人物が次々に飛び出してきたのである。
そして街の名士たちの、次々の鮮やかなる辞任。
私欲に溺れたわけではないのにそこまでせずとも、との声が上がる。
とどめが、リオンの “責任” を取っての市議会議員辞職。
一個人という身分になって、州知事を弾劾している。
その煽動をクリスタル州立新聞が引き受け
州知事が国政への足がかりに州を裏切った、と報道し始めた。
鉱山は今でもクリスタル州の財源なのは、州民も周知している。
そしてクリスタル州民は排他的である。
自分たちの事は自分たちで決める、という意識が強い。
そんな州民たちも、よそものとは言え
館のために尽くしてきた者たちには、同情的であった。
世論は、州知事リコールへと動き出した。
勝敗は、誰の目にも明らかとなった。
野心を暴かれ、州知事は辞任した。
館は温情をもって、国中に徐々に受け入れられ
その関係者は尊厳を失わなかった。
面倒ではあったが、終わってみればラクな戦いであった。
まるで浄化の一環として、プログラムされていたように事は進んだ。
不思議な事に、今まで館の敵は全滅している。
禁忌の場所にはやはり手をつけてはいけない、という事らしい。
続く
関連記事 : かげふみ 55 12.5.9
かげふみ 57 12.5.15
かげふみ 1 11.10.27
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女性の明るさのリスク
コメント欄とかの皆の意見を聞いて、ふと思った事を言ってみる。
リスクの意味は、“危険度”。
“モラルリスク” という言葉もあって、これは本来は保険業界の用語で
保険金詐欺などに使われるんで、真似しないで欲しいが
私の中では、無意識に危険度の高い方向に行くヤツを
「モラルリスクが高い」 と思っている。
リスクにも色々あって、生命の危機、生活の危機、経済の危機 等
とにかく、“安泰じゃなければヤベえよ!”
という単純な使い方を、私はするわけだが
これも多分、正しくない使い方なので、真似をするのはお勧めしない。
てか、真似すんな真似すんな、正しくない、とか思うんなら書くな!
っちゅう話なんだが、これは自分を守ってるだけなんで書く!
よって真似するなら、自己責任でな、自己責任!
んで、何かあったら教えて。
そういう事故に合わないように気を付けるから。
今回は人間関係における、女性の明るさに特化して書く。
友人に数人、リスクの高いヤツがいる。
嫌われる、ナメられる、バカにされる、ウザがられる、など。
そんなヤツとよく友人でいられるな、と思うかも知れんが
人間、誰しも欠点はあるわけじゃん。
いや、私もナイスバディだが顔が悪い、とか欠点があるし
物覚えが悪くて、物忘れが優れているなど
類が友を呼びまくっている恐れもあるんだが
そいつらのリスクは、“単なる欠点” だと私は捉えているんだ。
付き合っていると、確かにウゼえ、と思うんだが、良いところもあるんだ。
でも、初手で引くぐらい、欠点が目立つんだよ。
これを私は、リスクが高えヤツだな、と思う。
たとえば女性で言えば
明るい性格の方向で、すんげえテンションが高いヤツ。
私は、あまり人にナメられる事はない。
自分で言うのはほんと情けないけど、アホウなのに何故?
この疑問は、彼女らを見ていて解けた。
私は普段のテンションが、すげえ低いんだ。
明るいのは長所に思えるけど、ナメられる事が多い。
友人にも数人いるし、同級生にもかなりの数でいた。
何故ナメられるかと考えたら
ひとつは、キャンキャン吠える座敷犬のようなテンション。
もう、うるせえうるせえ。
「キャーーーッ! 可愛いーーーーーーー!!!」
と、気っ色悪い人形を見ても言っとる。
他の言葉は、「うっそー」「ほんとー?」「すごーい」。
3分に1度、この単語を叫ばれてみい
そりゃもう毒沼に入ったかのように、寿命がゴゴッゴゴッと削られるんだ。
このせいで、陰で嫌われていた子がいたが
私はブチ切れて、本人に 「うるせえ!」 と怒鳴った。
そしたら、「いいじゃん!」 と腕にしがみついてきた。
結構しぶといヤツなようだ・・・。
こいつとは今でも、連絡が取れる関係を保っている。
次にこいつらがよくやるのが、“笑う”。
傷付く事を言われても、その場で笑って流す。
そして陰で泣くんだ。
私はその場では気付かない、大概なポヤンなのだが
はー、ほー、へー、ふーん、と、ハ行で無表情の反応をする。
この無表情が、私の顔面構造上かなり無愛想に見えるらしいんで
怒っている? となるようなのだ。
女性の明るさは美徳として教えられるが、かなりの諸刃だと思う。
とにかく何があっても笑顔でいれば切り抜けられる、とか言うけど
私もたまに、それに助けられる事もあるけど
ずっとそれでやっていける人は、単に運に恵まれてるとしか思えない。
正直、女性は計算で笑顔を出した方が安全だと思う。
締めるとこはビシッと締めんと、つけ込む輩も多い気がする。
私の明るい友人たちは、お互いの存在すら知らず
生まれ育った環境も、性格も、住んでる場所も共通点はないけど
この、“明るいテンションの高さ“ という、たった1点で
それぞれが似たような人間関係を築いている。
学生時代は教師や同級生にナメられ、結婚してからは夫にナメられ
近所の主婦仲間にナメられ、我が子にナメられているんだ。
私には、そう見える。
「それ、ナメられてるよ、ビシッと言ったら?」
みたいに言っても、「でも」「だって」の嵐なんで
力になれなくて、正直イライラする時もある。
私が近所にいたら、暴れまくるのに!!!
てか、近くにいた時は、そうしてた。
たまに本人からストップが掛かってたんで、ありがた迷惑だったんかも。
その手のヤツは、協和を大切にするから
私の暴走は困りものだったんかも知れんなあ。
そう考えると、性格が良いのがどっちかは、おのずとわかるが
世の中の全員が善人じゃないんだから
いつでもどこでも何があっても “良い人” なのは
やっぱり、リスクが高いと思うんだ。
嫌がらない断らない人は、人に嫌われたくないんだろ?
それが何で、ナメられるか嫌われるかの二択になるのか
本人たちは理不尽に思えるだろうけど
弱肉強食のバトルフィールドに、知らずに引き込まれているんだよ。
そこで無意識に負け続けているんだ。
嫌われたくない、人を傷付けたくない、と言うから
ナメられて傷付けられる。
これはまるで、「世界はひとつ」 と言いながら
他国にどんどんつけこまれていく我が国のようではないか。
そこで、専守防衛ドーン!
ナメられているのを止めたいヤツ、私の方法を試してみい。
これは誰がやっても、効果があるから大丈夫。
まず、ムカつく事を言われて怒れない状況だとする。
相手がこっちの顔を見て言ってたら、チャンス!
一瞬だけ、真顔になれ。
ただ、これだけ。
その後、いつものように受け答えをすれば良い。
相手が見ていない時でも、この一瞬真顔をしたら周囲の誰かが気付く。
そこから変わる事もある。
この一瞬真顔、とにかくものすごく恐いんだ。
その瞬間に、怒りを混ぜるか、悲しみを込めるかでも
違うオーラを出せるので、練習してみい。
そんな抵抗すらしたくないヤツは、とっとと犬死にせえ
と言いたいところだけど、私は実は親切なので
また何か、他の打つ手を考えてみるよ。
私のひらめきよ、なるべくカミングスーン!
評価:
松原卓二
メディアファクトリー
¥ 1,300
(2012-04-20)
コメント:動物好きに悪い人がいてごめん、私だ! ただし動物からは、出会った瞬間嫌われるんで、平和は乱していないと思う。 そんな動物好きなら、“笑顔” の単語検索で出てきたこれを貼らずにはおられまい。