• 人生相談 37 既婚者と未婚者との友情は成り立つのか?

     <質問>
     
    人生相談させて下さい。
    「既婚者と未婚者との友情は成り立つのか?」です。
     
    生活環境が変わり仕方がないのですが、共通点が殆ど無くなってしまい、
    以前の様な会話が出来なくなってしまいました。
     
    旦那の愚痴、子育ての話、姑問題  近況報告の程度なら分かりますが、
    ストレス発散したい様で、そんな話を一方的にされて疲れてしまいます。
     
    挙げ句、結婚予定も無い、年齢的にも子供が産めるかどうか微妙な歳の私に対し
    「子供は可愛いし、産んだ方がいい。年齢的にも早くしないといけない」
    「結婚はした方がいい」等と、言われたり…
     
    心配している様で、実はちゃっかり幸せアピールも怠って無いのが、
    見え隠れしているのが分かってしまい、傷ついてしまいます。
     
    今では、理由付けては断っているので疎遠状況です。
    (誘いの連絡がはいると胃が痛くなります…)
     
    このままじゃ、益々孤独になりそうで…
    どう付き合っていけば良いでしょうか?
     
    もし宜しければアドバイスお願いします。<(_ _)>
     
     
     <回答>
     
    この質問、経験ある人が多数ではないだろうか。
    耳が痛い人も多いはず。
    私も気軽に 「バツ1、ラクだよー。」 とか言ってたのを反省・・・。
     
    既婚者と未婚者の友情は、ズバリ 「ある!」 だ。
     
     
    結婚したら、家庭の話題しかしなくなるヤツっているよな。
    でもさ、よーく思い起こしてみい。
    そいつは結婚前に、そんなに面白いヤツだったか?
     
    学校が違えば、自分の学校の話題しかしない
    就職すれば、自分の仕事のグチしか言わない
    彼氏が出来たら、彼氏のノロケしかしない
    結婚したら、夫や姑の文句しか言わない
    子供が出来たら、子供の自慢しかしない。
     
    基本的に自分の話しかしないヤツって、話していて面白くないだろう?
    共通の話題があれば、何とか聞いていられもするのだが
    それでも、とことん人の話を聞かないヤツとの付き合いは、楽しくねえよな。
     
     
    付き合ってて楽しいヤツってのは、“お互い様” を、わきまえている。
    そういうヤツなら、どんなに世界が違っても友情は続くと思うんだ。
     
    私は人の話を聞く方が好きだけど (意外だろうけど)
    それでも、こっちへの気遣いがないヤツは
    そんなに面白い話は、しない傾向にある気がするなあ。
     
     
    私は、結婚適齢期時に宣言したよ。
    夫や子供の話がしたけりゃ他のヤツにしろ、私は興味ねえ、と。
     
    それでも普通に、「ごめん、グチって良い?」 と来る。
    そういう、わかっているヤツは
    こっちが真に言いたい事も察してくれている。
     
    普段の世間話では、興味のない話を聞き続けるのは嫌だけど
    辛い時には、話の種類なんか関係なく助け合うのが当たり前。
     
    ここの地主ぷらちッが結婚した時も
    「おめでとうー! でも子供の写真は送ってくな。」 と祝福したさ。
    お陰で、ぷらちッの状況がまるでわからぬ・・・。
     
    こういう事が言えない場合は、「はあ、そうですかー」 で済ませる。
    はっきり言えない状況って、大抵が上っ面だけの付き合いだから大丈夫。
    社交辞令な反応ぐらい出来んと、社会に溶け込めねえ。
     
     
    私だったら、その友人はいらねえ。
    それ、友人じゃなくて、単なる知り合い。
     
    孤独より、ヘンなヤツからこうむる被害の方がストレスになるぞ。
    寂しさより、アホウが持ってくるトラブルの方が大問題に発展する。
     
    んで、そいつは自分の都合の良い時だけ、こっちにすり寄ってくるだけで
    おめえが辛い時には、支えてくれないと思う。
    自分基準でしか物事を考えないヤツは
    相手の苦しみなど、想像する頭がないからだ。
     
     
    だから相談者は、フェイドアウトをした方が良いと思う。
    メールとかにも、どんどん返事を遅らせるようにして
    「私も色々と忙しくて」 と茶を濁せ。
    「色々と忙しくて」「何が?」「まあ、色々よ」 で遠ざかる。
     
    他の友人と付き合ってるのがバレても
    「忙しいんで、あの人と会う時間もやっとで困るわー。」 で。
    私も寝転んで駄菓子を食ったりゲームをしたり、忙しくて忙しくて。
     
     
    子供を作ったほうが良い、という意見は、私も言われた事がある。
    その時は、こう言った。
    「病気で子供が出来ない人も多いのに、そういう事は言わない方が良いよ。」
     
    「あなたは作れるんでしょ?」 と、更に突っ込むんで
    「さあ?」 と流そうとしても
    「調べた方が良いわよ。」 と、無神経が過ぎたので
    「善意で言ってるんだろうけど、もし子供が出来ない体の人だったら
     あなたをものすごく恨むかもよー。 気をつけた方が良いよー。」
    と、いかにも親切ぶってるフリで、脅しておいたさ。
     
     
    自分の世界がすべて、という感覚の人は、私は理解できる。
    でもその、自分の世界が “正しい” と思い込む人が許せない。
     
    その顕著な例が、「結婚した方が」「子供は作っておいた方が」 推奨。
    こういう人は、それをしていない人を勝手に哀れむ。
    色んな事情の人がいるというのに。
     
    努力しても無理な可能性がある事を、“指導” するのは
    言ってる事がどんなに正しくても、それは正義ではない!
     
     
    意外な事に、私は人に対しては気が長いんで、1度2度じゃ怒らないんだ。
    “お節介” をされるのも好きだ。
    いらん世話だというような事も、相手なりの思いやりだと受け取るからだ。
     
    でもあまりにもしつこいと、チクリと刺すんだが
    その一刺しがえらいキツいらしいので、まったく人望がない。
     
    よって温和路線は、通りすがる皆に任せた!
     
     
    :::::::::::::::::::::::::
     
    人生相談は、あまり受け付けておりませんでしたが
    ここを通りすがる人々の意見が、えらい素晴らしいので
    それに期待をして、ペリー以来の門戸開放の方向で行きます。
     
     
    相談はメールでお願いいたします。
    念のために、相談前に私の他の記事をご一読ください。
    こういう “私” に相談する、というその選択について
    もう一度よくお考えくださるよう、お勧めします。
     
    アドレスはプロフィールにあります。
    件名に、「人生相談」 と入れてください。
    迷惑メールに紛れる危険性がありますので、何とぞ。
     
    匿名で結構です。
    いらん個人情報ばかり書いてこないで
    肝心の相談内容の情報の方にこそ気を遣ってください。
     
     
    なお、ここの相談では、通りすがりの人にも回答されます。
    むしろ、通りすがった人に回答を丸投げする思惑です。
     
    なので相談後の意見、返事、報告等がありましたら
    出来れば記事のコメント欄に書いていただけたら、ありがたいです。
    答えた人ここを読んだ人全員、結果を気にしていると思いますので。
     
     
    ※ 相談内容を転記の際、状況によって
      伏字、改行、修正などをさせていただく場合があります。
     
    ※ 精神的に打たれ弱い方はご遠慮ください。
     
    ※ 相談文の情報のみを基に考え、相談者のためにだけなるような
      相談者をえこひいきした回答になるのを、ご了承ください。
      ここに来てない人の事まで知ったこっちゃありません。
     
     
    注: たまに、こちらからのメールが届かない人がいますが
       その “私ブロック” を解いておいてください。
     
     
     <通りすがりの人の、回答上の注意>
     
    偽名、匿名、無記名で結構ですので
    相談内容に沿った、ご自分の意見、経験を教えてください。
     
    相談者にも、詳しく言えない事情もあるかも知れませんので
    相談文のみの情報で、お考えください。
     
    貰った意見をどう解釈して取り入れるかは
    相談者が勝手に決めて良い事なので、意見を書く人は
    相談者に一方通行の贈り物をするつもりでお願いします。
     
    相談者には相談者の個性や性格があるので
    願ったものとは違う答を出しても
    助言がムダになったわけではないのです。
     
    相談者が意見募集を締めた後も
    似たような状況の人も関係ない人も、何かの参考になって
    皆が何かを得る事ができたら良いな、と願っておりますので
    いつでも経験談などの意見を書いてくだされば、ありがたいです。

  • かげふみ 45

    葬儀の後、ジジイは主の事務室に座っていた。
    主がいなくなった暗い部屋の中に、ただジッと。
     
    何をする気にもなれない。
    主の死を知った瞬間から、ロクに飲食もしていなかった。
     
     
    わしより先に逝くなど、思ってもみない事じゃったわい。
    あやつには最後まで驚かされる。
     
    じゃが・・・、さすがのわしも参った・・・。
    泉の水が枯れたような気分じゃ・・・。
    あの時の主も、こういう気持ちじゃったんじゃろうか。
    わしは主の気持ちもわからず、励ますばかりで・・・。
     
    ジジイが後悔と懺悔を繰り返していると、ノックの音がした。
    「すみません、元様、緊急事態ですので・・・。」
     
     
    ジジイがツカツカと廊下をやってきた。
    ドアの前に立っていたタリスは、その形相に無言で横に退いた。
     
    ドアを開けると、グリスはベッドに突っ伏して泣いていた。
    ジジイは、グリスの襟を掴んで引き上げた。
    老人とは思えない、ものすごい力である。
     
    拳でグリスの頬を思いっきり殴った。
    その強さは、グリスが床に叩きつけられるほどだった。
     
    「ローズを失った主は、2ヶ月で立ち直った。
     グリス、おまえは男じゃから1ヶ月でどうにかせえ。
     よいか、グリス、必ず立ち直れ!
     主の拓いた道を閉ざすでない!!!」
     
     
    そう怒鳴ると、厳しい顔で部屋を出て行った。
    グリスが殴られた頬を押さえて、混乱していると
    館内放送が鳴った。
    ジジイの怒りに満ちた声が響き渡る。
     
    「主代行じゃ。
     主の世話係のデイジーが自殺した。
     遺書で主の死を嘆いておった。
     主があれだけ言っていた事を忘れたか!
     よいか、皆、殉死など許さん!
     主の教えを守りぬけ!」
     
    少し間を空け、放送が続く。
    「これより30日間、この館は喪に服する。
     その間、派手な事は慎んで、主の死を思う存分に悲しもう。
     しかしそれが過ぎたら、また動き始めよう。
     この館を停止させてはならん。
     主の死を悲しいと思う者なら、主の残したものを大切にしようぞ。」
     
     
    デイジーさんが死んだ・・・。
    グリスはショックを受けたが、その気持ちも痛いほどに理解できた。
     
    わかってる。 自分のすべき事はわかってるんだ。
    でもあのお方を失って、どうして自分が生きていられる?
    グリスは再び、号泣し始めた。
     
    その声は、ドアの外のタリスにも聴こえたが
    どうする事も出来ず、タリスも溢れてくる涙を拭うしか出来なかった。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事 : かげふみ 44 12.4.3 
           かげふみ 46 12.4.9 
           
           かげふみ 1 11.10.27 
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  • 人生相談 36 いじられキャラの苦悩

     <質問>
     
    私が悩んでいるのは対人関係です
    私は典型的ないじられキャラです
    (別に狙ってるとかではなく、自然とそう周りからはそう見えるらしいです)
     
    でも最近それが嫌で仕方ありません
    私は普通にしているだけなのにからかわれるとすごく悲しくなりますし、
    私はそうしていないと人から相手にしてもらえない気がしてきて寂しくなります
     
    そうやってどんどん暗いことを考えてしまいます
    自分でも嫌だと言いたいです
    でも自分にも原因があるんじゃないかと不安になってなかなか言えません
     
    私は気にしすぎなのでしょうか?
    だとしたら私はどうすればいいでしょうか?
    アドバイスよろしくお願いします
     
     
     <回答>
     
    さあ皆、今回はものすごい難問だぞ。
    何たって、情報がこれっきりしかない。
    年齢層どころか、性別すらわからない。
    私の送ったメールは、はじかれて戻ってきてしまう。
     
    私たちには、たったこれだけの文面で
    相談者の心をどうにか軽くせねばならんのだが
    人生相談の猛者・皆が、どう想像、連想するのかが、正直楽しみー。
     
     
    では、手始めに私の妄想。
    “いじられキャラ” というのは、ザツに分けて2つだと思う。
    ナメられてるか、安心されてるか。
     
    「こいつには何を言っても良い (勝手な判断) んだから
     俺が面白いヤツだと皆に思われるために、絡ませてもらおう。」
    「こいつは良いヤツだから、何を言っても怒らないんで
     場をなごませるために、突っ込もう。」
    このどっちかじゃないか、と思うんだ。
     
    “ナメる” と “安心”、これは表裏一体。
    身近にいる、一番わかりやすい例は母親。
    普段は召使いのように使われるけど
    いないと、もう不安で何も上手くいかず落ち着かない。
     
    だからナメられてても、一発逆転は可能だと思うんだ。
    というのも、相談者が嫌気が差してるようなんで
    あまり良い絡まれ方をしていないのかなー、と。
     
     
    もし、相談者がイヤだと言ったら
    “扱いにくいヤツ” 認定されるかも知れない。
    逆に、「そうだよね、ちょっとヒドいと思ってたんだ。」 と
    賛同してくれる人が現れて、新しい関係を築けるかも知れない。
     
    自分がどっちの地位を得られるかは
    今の雰囲気を読んで、自分で判断するしかない。
    正に、空 気 を 読 め ! 状態だよ、それ。
     
     
    私ならどうするかというと、イヤならイヤだと言う。
    すっげー怒るか泣く。
    ただし、すべてを失うつもりで。
     
    私の人生のパターンとして、ひとつ何かを得たら、ひとつ何かを失うんだよ。
    それは私が、えらい極端な事をしているからだろうけど
    周囲は、そんな私の失くしものには気付かずに
    自由でマイペースで羨ましい、と言う。
     
    自由にもマイペースにも、大きな代償を払わなくちゃならないのに
    それをせずに思い通りになりたい、と願う。
    それが出来たら世話ねえよな、と私は思う。
    出来る人もいるんだろうけど、何せ私は不器用ですから! by高倉健
     
     
    自分がどのぐらいの “もの” を持っているのか
    分析力、判断力、そして空気を読む能力がなくて
    それでも思い通りにしたいのなら、失う覚悟で行くべきだぞ。
     
    運が良い時もあるし、捨てる神ありゃ拾う神もいるぜ。
     
     
     
    最近思うんだけどさ、私の回答っている?
    冷静に考えて、こんな極端な意見は必要ない気もするんだよなあ。
     
    私自身は、真面目に答えているんだけど
    書いてて自分で、こんなロクでもねえ事をやっとったんか、私!
    と、驚く事が3回に2回はあってさ・・・。
     
    人生相談が来るようになったのも
    私以外の皆が、色んな角度から様々な意見をくれるからなんだよ。
    うーん・・・。
     
    とにかく皆様、マトモな意見をどうかよろしくお願い!
     
     
    :::::::::::::::::::::::::
     
    人生相談は、あまり受け付けておりませんでしたが
    ここを通りすがる人々の意見が、えらい素晴らしいので
    それに期待をして、ペリー以来の門戸開放の方向で行きます。
     
     
    相談はメールでお願いいたします。
    念のために、相談前に私の他の記事をご一読ください。
    こういう “私” に相談する、というその選択について
    もう一度よくお考えくださるよう、お勧めします。
     
    アドレスはプロフィールにあります。
    件名に、「人生相談」 と入れてください。
    迷惑メールに紛れる危険性がありますので、何とぞ。
     
    匿名で結構です。
    いらん個人情報ばかり書いてこないで
    肝心の相談内容の情報の方にこそ気を遣ってください。
     
     
    なお、ここの相談では、通りすがりの人にも回答されます。
    むしろ、通りすがった人に回答を丸投げする思惑です。
     
    なので相談後の意見、返事、報告等がありましたら
    出来れば記事のコメント欄に書いていただけたら、ありがたいです。
    答えた人ここを読んだ人全員、結果を気にしていると思いますので。
     
     
    ※ 相談内容を転記の際、状況によって
      伏字、改行、修正などをさせていただく場合があります。
     
    ※ 精神的に打たれ弱い方はご遠慮ください。
     
    ※ 相談文の情報のみを基に考え、相談者のためにだけなるような
      相談者をえこひいきした回答になるのを、ご了承ください。
      ここに来てない人の事まで知ったこっちゃありません。
     
     
    注: たまに、こちらからのメールが届かない人がいますが
       その “私ブロック” を解いておいてください。
     
     
     <通りすがりの人の、回答上の注意>
     
    偽名、匿名、無記名で結構ですので
    相談内容に沿った、ご自分の意見、経験を教えてください。
     
    相談者にも、詳しく言えない事情もあるかも知れませんので
    相談文のみの情報で、お考えください。
     
    貰った意見をどう解釈して取り入れるかは
    相談者が勝手に決めて良い事なので、意見を書く人は
    相談者に一方通行の贈り物をするつもりでお願いします。
     
    相談者には相談者の個性や性格があるので
    願ったものとは違う答を出しても
    助言がムダになったわけではないのです。
     
    相談者が意見募集を締めた後も
    似たような状況の人も関係ない人も、何かの参考になって
    皆が何かを得る事ができたら良いな、と願っておりますので
    いつでも経験談などの意見を書いてくだされば、ありがたいです。

  • かげふみ 44

    主の死を最初に聞いた時に、誰もが悪い冗談だと信じなかった。
     
     
    ジジイは、またまたー、と笑い
    リリーは、はいはい、と聞き流し
    グリスは、嘘でもそんな事は、と怒った。
     
    しかし駆けつけてみると、床に崩れ落ちて泣くデイジーの姿と
    布団に横たわる主の、見たこともない安らかな寝顔に
    誰もが言葉を失い、その場に立ち尽くす事しか出来なかった。
     
    必ず来るとはわかってはいても、現実となると
    その衝撃は、ただごとではなかった。
    しかも主には病気も何もなかったのだ。
     
     
    葬儀は長老会が仕切って、盛大に執り行われた。
    街の名士がズラリと参列し、花が並び
    葬儀にこういう表現も妙だが
    館はかつてないほどの豪華絢爛な雰囲気に包まれた。
     
    最初から最後まで、出席者全員が号泣する中
    グリスはタリスに体を支えられて、かろうじて立ってはいたが
    棺の蓋が閉められようとしたその時に、激しく取り乱した。
     
    「やめてください!
     そのままにしておいてください!
     主様が起きてこられないじゃないですか!」
     
     
    その叫びを聞き、参列者は益々涙に暮れ
    感情を抑え慣れているはずの紳士たちでさえ、声を洩らして泣いた。
     
    ジジイとタリスが、棺に追いすがるグリスを引き離そうとした。
    「いやです!
     主様が死ぬわけがありません!
     主様の事だから、絶対に “万が一” を起こされます!
     その時に誰も側にいなかったら、どうするんですか!」
     
    ジジイが泣きながらも、グリスをいさめる。
    「グリスや、もう諦めなさい。
     いくら人間離れしていた主でも、それはない。
     主は、ようやく安らぎを得たんじゃよ。
     遠い異国で辛かったろうに、長い間よく頑張ってくれた。
     我々はせめて、主を快く送り出してやろうじゃないか。」
     
     
    両脇を抱えられて棺から離されたグリスは
    わああああああああああ と、雄叫びのような泣き声を上げた。
     
    館中が、グリスの慟哭に引っ張られた瞬間であった。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事 : かげふみ 43 12.3.29
           かげふみ 45 12.4.5
           
           かげふみ 1 11.10.27 
           カテゴリー ジャンル・やかた
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  • モテる男への道 反省

    えらい昔に書いていて、途中で頓挫したシリーズなんだが
    ここには変質者か病人かババアしかいないんで
    このシリーズは需要はないよな。
     
    だがしかし先日、人生相談がきて思い出したのだ。
    このシリーズの事を。
    そして、大きな間違いにも。
     
    タイトルに “モテる男” とあるが
    私が書いていたのは、モテるための方法ではない。
    “女性に相手にされる” ための、最低限の方法だったのだ!
     
    間違っとって、ほんとすいません。
    この訂正のせいで傷付いた人がいたら、もっとすいません。
    放置しときゃ良いものを、わざわざ蒸し返して
    その上、更に無神経な事を言いかけてるようなんで
    ガラスのハート男子は、ここで閉じてくれ。
     
     
    友人と、美人について話した。
    私は、美人と友達になりたい。
    何故ならば、美人の方が性格が良いと思うんだ。
     
    美人といると、美人は性格が良いんで私に気を遣ってくれるし
    男性もブサイクな私に同情して、気を遣ってくれるし
    その場の全員に大事にされて、とっても楽しい!
     
    というドス黒い事を言うたら、友人が反論をしてきた。
    「男って、ロコツに美人ばかりチヤホヤするでしょ!」
     
    ええ? 私はそういう経験はないぞ?
    だって私の友人に美人はいても
    私以上のブサイクはいないし、と言ったら
    「それは空気が読めてないだけ!」 と、返された。
     
     
    とても失礼な言われ方だと思うかも知れんけど
    その友人とは、そういう仲だし
    私がブサイクなのは事実なので、それは構わんのだ。
     
    言っても良い仲じゃないヤツが言ったら
    ちゃんと目の前でススリ泣いて
    そいつを加害者におとしいれちゃるから、心配すな。
     
     
    で、こっからが重要だぞ。
    空気のと・て・も読める (イヤミっぽい言い方) 友人曰くな
    男って、女性が複数いたら
    美人な方をロコツにチヤホヤするヤツが多いんだと。
     
    これ、ポイントアップチャーーーンス!!!!!!
     
    モテないヤツ、おめえらは美人は諦めろ。
    美人は、大勢から選べるんだ。
    モテないおめえらに可能性はない。
     
    ああっ? 鉄板処女らの言うところの
    白馬の王子さまみたいな妄想はやめとけ。
    そういう事ばかり言うとるから、縁が出来ねえんだよ!
     
     
    そもそも “モテる” というのが、漠然とし過ぎだろう。
    毎日毎日、違う女の子とセックスしたいのか?
    美人ばかりに寄ってこられたいのか?
    彼女候補がたくさん欲しいのか?
     
    ・・・何だかオトコって、上の3つを全部願ってそうで
    イライラするんだけど、気のせいかな?
     
    まあ、何を願おうが、いつどこで誰にどういう風に
    と、具体的に希望を持っていた方が、望みは叶いやすいと思う。
     
    毎日違う美人な女の子んちでエッチできて
    俺ひとすじな家庭的な彼女もいてほしい
    という男の人は
     
    死ね!
     
     
    さあ、生き残った諸君、おめでとう。
    おめえらには、モテる可能性のひとつを伝授しよう。
     
     
    美人は、美人に選ばれる自信のあるヤツに任せて
    おめえらは美人のお友達に平等に親切にしてあげろ。
     
    そうしたら、もしかしたら目の腐った女性が
    おめえに恋をするやも知れん。
     
    ばかもの! 傷付くな!
    私は私の歴代彼氏全員、目腐れかマニアだと思っとるぞ。
    己を自覚してこそ、真の幸福にも出会えるというもの。
    わきまえつつ、励め! 頑張れ! 努力せえ!
     
     
    あのな、女性のグループがあったとして
    その中での権力持ちは大抵の場合、ブッサイクなんだよ。
     
    そのブッサイクに嫌われてしまったら
    美人ともお近づきになれる目が1mmもなくなるんだぞ。
    これで玉砕した男性、多いと思う。
     
    リーダー格のブッサイクは、イケてるメンズに喰らい付くので
    下級庶民のおめえらには、逆にジャンピングチャンスなんだよ。
    しかしそこで、一番の美人はやめとけ。
    ああ? 理由? 上に書いてるだろうが! 何度言わせるんだよ!
     
    おめえらは、中間あたりで良さげなのを狙うんだ。
    皆に平等に親切にしろ。
     
     
    女性は、“平等” を好み、不公平を嫌う。
    この “平等”、ほんと大事なんだよ。
    それさえ守ってれば、女性たちには好意を持たれるんだ。
     
    女性たちに “良い人” と認識され、好意を持たれたら
    後は目当ての女の子の前では赤くなる、とかやってれば
    女子側で勝手にお膳立てしてくれるから。
     
    「あの人、あなたに気があると思うわよ。」
    「あの人、良いと思うわよ。」
    「いっちゃいなさいよ。」 てな風に。
     
    そう言われると、道ばたの石コロでさえ気になってくるのが乙女。
    おめえがテヘテヘやってる内に、とんとん拍子にコトが進む。
    そんで、「あの人、私がいないとダメなの」 とかなって
    おめえはあまり動かずに済む付き合いになるから。
     
    いや、こういう事、結構見聞きしてるから、あるんだぞ。
    おめえらの敗因は、1本釣りをしようとするとこにあるんだよ。
    網! 撒き餌して網でいけ!
     
     
    この方法さ、グループによっては一番美人にも効く場合がある。
    ブッサイク権力者が、その美人を良く思っていない状況下でなら。
    それならサエないおめえに、美人を差し出す可能性もあるんだよ。
    しかもニヤニヤしつつ。
    そんで自分はイケメンゲットで、美人を見下す、と。
     
    恐ろしいだろ? ひがみブッサイク。
    な? 私のように自画自賛してる勘違いババアの方が善良ってもんよ。
    ほーっほっほっほっほ
     
     
     

    評価:

    SWAROVSKI スワロフスキー


    ¥ 13,150

    コメント:「スワロフスキーって何?」 と男性にたまに訊かれる。 私の答、「ガラス玉」 で大きな間違いはないよな? “ガラスのハート” で検索したら、これが出てきたんでアフィる。 ああ・・・、私らしくない営利に走ったアフィリだわ!

  • 人生相談 35 人生の負の渦

     <質問>
     
    23歳 女性です。
     
    私は大学を卒業する前から就職難で精神病にかかっておかしくなり、
    恋愛は大学中盤から激しく悪い方向に変動しました。
     
    就活は困難なものでなかなか内定がいただけず、一人暮らしをしているので、
    死活問題も抱えていたせいか、精神面に大きな負担がかかってしまい、
    精神病にかかりました。
     
    何社か選考を受け、偶然即日採用だった福祉施設の事務として、
    7ヵ月程勤務していたものの、過度な冷遇、著しいパワハラを受け、
    また精神病にかかり、現在経済的問題があるので、
    夜職をしています(本当は禁止されていますが、、)。
     
     
    一方恋愛に関しては、高校入学時から大学1年まで、
    付き合っていた彼氏と私が好きな人が出来た為、彼氏が仕事をしなかった為別れ、
    新しくお付き合いした人とおよそ2年付き合いましたが、
    私が夜職をしていた為別れ、
    それからまともな彼氏が出来なくなりました。
    付き合っては別れの繰り返し、相手は薬に手を出すような人だったり、
    超ケチケチ節約家だったり、DVだったり。散々たるものでした。
     
    悲しさ、寂しさを紛らわしたいが為に、援助交際もしたりしていましたが、
    そんな自分を絶ち、新たに純粋な恋をするようにしました。
     
    しかし、合コンではイマイチでしたので、美容師さんのことが気になっていたので
    通って3 回目に、アドレスを渡しましたが、連絡はこず、諦めかけていた時に、
    新たに気になる人ができ、その人と連絡を取り合いたいのですが、
    彼は夜職のボーイで、当然アドレス交換は禁止です。
     
    彼を気になりだした切っ掛けは、彼が私に就職は介護の仕事をしたいので、
    介護の求人のことを教えて欲しいと彼が要求してきたことです。
    それから、私は必死に求人を探し、資料、サイトなど教えましたが、
    一向に私個人の話には興味がさらさらないようで、
    その話が終われば無言、です(送迎の時に話ます)。
     
    はじめ、彼は大学散々遊んだから、介護の仕事したいなんて、
    ツレや親に言えないって言っていました。
    それから、私は片想いだ、っと勝手に落ち込んでしまい、
    彼の連絡先など聞く勇気さえなくなってしまいました。
     
     
    会社は非常にブラックで私を解雇、っと言いましたが、
    後日離職票の発行の依頼をする為、
    電話したとき、そんなことは言っていない、と言います。
     
    本来ならば、私は事務であるのに、休療中に解雇し、事務では籍はないが、
    介護の籍なら作れるというように言っていました。
    矛盾にしか聞こえないんです。
     
    解雇であれば、解雇手当、解雇通知するのが、従来であると思っていたので。。
    経済、仕事、恋愛、全てがだめで、お先真っ暗です、
    親もいつになったら、落ち着くの?って言ってきたので、それもショックです。
     
     
    次やりたいことが決まっているけれども、ネイリストなので、お金がいります。
    もう、毎日苦しいです。
    この渦から抜け出すために、助言をお願いします、
     
    ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
    乱文、雑文、失礼しました。
     
     
     <回答>
     
    この相談文には、必要がないと思われる情報も入っているけど
    少しでも相談者の人となりを解釈する材料になれば
    と、そのまま載せたんだ。
     
    これは深刻で難しい相談なんだけど
    “ここ” に言ってきたからには
    それぞれ皆、自分のままで意見や提案、説教をお願いー。
     
     
    私も人生、今は全部ダメだけど
    ただひとつだけ恵まれているのが、人間関係かな。
    友達は少ないけど、友人知人、とにかく周囲に悪い人がいない。
     
    良い人ばかりではないけど、悪い人はいないんだ。
    だから何とか、生きていけてるんだと思う。
     
    何で悪い人がいないのか、と考えたら
    そういう環境に近付かないから。
     
    あ、この “悪い人” の、ここでの定義は
    “自分に悪い影響を与えない人” と、限定して言ってるからね。
     
     
    環境を選ぶとか、そういう事は不可能に思えるかも知れないけど
    簡単に言うと、近くに安くて品揃えの良い店があっても
    客層が悪いなら、私は遠くても高くても他の店に行く。
    たった、それだけの事なんだよ。
     
    どの世界でも、環境が良い悪いがあって
    環境の良い場所にいると、不思議と良い人ばかりがいるんだ。
     
    お金持ちばかりの世界や、教養のある人の集まりでも
    環境が悪い場合もあるんで、裕福とか知性とか
    ステータス的なものは、あまり関係ないみたいだ。
     
    ひとつ思うのは、パワーがあって悪い人がひとりいたら
    その場所は、悪い環境になる率がはね上がる気がする。
    うーん、ここらへんの法則は、よくわからないなあ。
     
     
    私は、居心地が悪い場所からは、すべてを捨てても逃げてきた。
    だから今のド貧乏に陥っているんだけど、後悔はしていない。
     
    お金があれば、私の問題の9割は解決するだろうけど
    貧乏なだけ、っていうのは、それ程不幸でもないぞ。
    プラス、何かのトラブルが起きると、途端にドン底になるけど。
    何その綱渡り人生。 あはは
     
     
    私が相談者に、“私らしい” アドバイスをするとしたら、それかな。
    どの世界に行っても人を見ろ、って事。
     
    環境が、人を良くも悪くもするし
    また、良い人が環境を良くし、悪い人は環境を荒らす。
     
    相談者は、悪い人がいる場所ばかりに迷い込んでいるのかも知れない。
    今の自分の状態が、“渦” だと感じるのなら
    意識して、良い場所かどうかを見極めるように、心掛けてみてはどうだろう。
     
     
    “負の連鎖から抜け出す方法” みたいな
    方法や経験、意見がある人、お願いー。
    もちろん、相談者の質問への具体的な意見も。
     
     
    :::::::::::::::::::::::::
     
    人生相談は、あまり受け付けておりませんでしたが
    ここを通りすがる人々の意見が、えらい素晴らしいので
    それに期待をして、ペリー以来の門戸開放の方向で行きます。
     
     
    相談はメールでお願いいたします。
    念のために、相談前に私の他の記事をご一読ください。
    こういう “私” に相談する、というその選択について
    もう一度よくお考えくださるよう、お勧めします。
     
    アドレスはプロフィールにあります。
    件名に、「人生相談」 と入れてください。
    迷惑メールに紛れる危険性がありますので、何とぞ。
     
    匿名で結構です。
    いらん個人情報ばかり書いてこないで
    肝心の相談内容の情報の方にこそ気を遣ってください。
     
     
    なお、ここの相談では、通りすがりの人にも回答されます。
    むしろ、通りすがった人に回答を丸投げする思惑です。
     
    なので相談後の意見、返事、報告等がありましたら
    出来れば記事のコメント欄に書いていただけたら、ありがたいです。
    答えた人ここを読んだ人全員、結果を気にしていると思いますので。
     
     
    ※ 相談内容を転記の際、状況によって
      伏字、改行、修正などをさせていただく場合があります。
     
    ※ 精神的に打たれ弱い方はご遠慮ください。
     
    ※ 相談文の情報のみを基に考え、相談者のためにだけなるような
      相談者をえこひいきした回答になるのを、ご了承ください。
      ここに来てない人の事まで知ったこっちゃありません。
     
     
    注: たまに、こちらからのメールが届かない人がいますが
       その “私ブロック” を解いておいてください。
     
     
     <通りすがりの人の、回答上の注意>
     
    偽名、匿名、無記名で結構ですので
    相談内容に沿った、ご自分の意見、経験を教えてください。
     
    相談者にも、詳しく言えない事情もあるかも知れませんので
    相談文のみの情報で、お考えください。
     
    貰った意見をどう解釈して取り入れるかは
    相談者が勝手に決めて良い事なので、意見を書く人は
    相談者に一方通行の贈り物をするつもりでお願いします。
     
    相談者には相談者の個性や性格があるので
    願ったものとは違う答を出しても
    助言がムダになったわけではないのです。
     
    相談者が意見募集を締めた後も
    似たような状況の人も関係ない人も、何かの参考になって
    皆が何かを得る事ができたら良いな、と願っておりますので
    いつでも経験談などの意見を書いてくだされば、ありがたいです。

  • かげふみ 43

    空がドンヨリと重く、風が強くなってきた。
    「うー、今日も寒いのお、もうすぐ雪も終わる時期なのにのお。」
    鼻の頭を真っ赤にして、ジジイが執務室に入ってきた。
     
    「あれ? リリーちゃんだけかい。
     主やグリスはどこ行っとる?」
    「主様はリハビリ室でマッサージを、
     次期様は販売所設置の件で、街の方へ行ってらっしゃいます。」
    「ほお、クリスタルシティへか。」
    「はい。」
     
    そこへ戻ってきた主が、ドアを開けるなりつぶやいた。
    「ああー・・・、見えるはずのない人が見えるー・・・
     霊感が発達したのかー?」
    「わしゃ、霊か!」
     
     
    ソファーでくつろぎながら、ジジイと主が茶を飲む。
    何年も何年も繰り返されてきた光景である。
     
    「館の商売は順調に伸びているようじゃの。」
    「ええ、当初の予定よりもずっとスムーズでしたねー。」
    「あれから事件も起きとらんし。」
    「こんなに穏やかな日々が続くなんて、嬉しい誤算ですよねー。」
     
    「すべては順調、ようやくこの館にも平和が訪れたか・・・。」
    「あとは私のポックリ待ちですねー。」
    「あんた・・・、それをあまり言うでない。」
    「でも目的達成には欠かせない要素でしょー。」
    「グリスはあんたのその無神経さに傷付いておるぞ。」
    「はあー・・・、やれやれー
     あのガキはいつまで経ってもメソメソですかいー。」
     
     
    一向に反省の色のない主に、ジジイが少し怒って突っ込む。
    「グリスと言えば、あんた最近グリスをコキ使っているようじゃな。」
    「私の仕事は全部覚えてもらわないといけませんから
     仕事の量自体は増えているでしょうよー。」
     
    「仕事量じゃなく、問題はあんたの態度じゃよ。
     あんた、自分が家畜のように扱われたらどう思う?」
    「興奮しますねー。」
    主が真顔で言う。
    「「 ・・・・・・・・・・・・・・ 」」
    ジジイとリリーが目を見開いて絶句した。
     
    「冗談ですよー。」
    主が真顔で言う。
     
    「・・・あんたの冗談は、ほんと恐いぞ!」
    「あははー、すいませんー。」
    主が真顔で言う。
     
     
    でも、主様のおっしゃる事も、あながち冗談ではないかも知れない・・・
    リリーは思った。
    主様に指図されている時の次期様は、幸せそうにしていらっしゃる
    これがおふたりの愛の形だと思えなくもないほどに。
     
    そこまで考えて、リリーはそれを打ち消した。
    いけないけない、リオン様の特殊嗜好に毒されたみたいだわ。
    でも、ここに次期様がいらっしゃったら
    「嬉しいです!」 などと、爽やかに答えて
    主様に嫌がられるでしょうね。
    リリーは笑いを噛み殺し、キーボードを打ち始めた。
     
     
    リオンは選挙に見事に勝ち、市議会議員になっていた。
    そのせいで多忙になり、館に来る回数も減った。
    と言っても、以前は週に2~3回だったのが、1~2回になった程度である。
     
    「“忙しい” など、愚者の言い訳でーす。
     時間は空くものではなく、作るものなんでーすよ。」
    そう言いつつ。
     
     
    「世は万事、事もなし、・・・か・・・。」
    ジジイが遠い目をしながら茶を飲むのを見て、主が冷たく訊く。
    「で、あんたは何の用ですかいー。」
     
    「用がなきゃ来ちゃいかんのかね?」
    「当たり前だろー。」
    「ええっ、リリーちゃん、主がひどい事を言うーーーっ。」
    抱きつこうとするジジイに、リリーが無言でスタンガンを出す。
     
    「はあ・・・、うちの女性たちはきっついのお・・・。」
    「矢を6本仕込むおめえが何を言うー。」
    「おっ、まだ覚えとったんかね?」
    「殺されかけた事は、普通忘れたくても忘れんと思いますがー?」
     
    「あの頃は大変じゃったのお。」
    「あんたにそれを言う資格はないと思いますがねー。」
    ジジイはふぉっふぉっふぉっと笑った。
     
     
    昔話に花が咲くようになるのは、老いた証拠である。
     
    と言っても、このふたりの場合は
    一方的にジジイが責められる展開になるのが常なので
    “花” などというファンシーな雰囲気ではないのだが。
     
     
    「にしても、あんた、そう安穏としてるとボケますよー?
     まさか、もうボケ始めじゃないでしょうねー?
     やめてくださいよー、まったくー。」
     
    主の、汚いものを見るような目付きに、ジジイは不安になった。
    「・・・あんた、わしがボケたらひどい仕打ちをしそうじゃな・・・。」
    「そりゃもう、正気になるまで冷水をかけてムチ打ちですよー。」
    その言葉に、思わずムセ込むジジイ。
    「本当にやりそうで恐いわ!」
     
    「閉じ込めるんじゃなく、しばき倒すのが私の愛ですよー。」
    ニヤッとほくそ笑む主に、ジジイがゾッとする。
    「あんた、最近穏やかになったという噂じゃったが、変わっとらんなあ。」
    「人の本性なんて、そう変わるもんじゃありませんってー。」
     
     
    ジジイが、ふと思い付くいて訊く。
    「じゃ、また襲撃計画が浮かび上がってきたらどうする?」
     
    「話し合いますねー。」
    「で、ムダじゃったら?」
    「それでも話し合いますねー。」
    「で、決裂したら?」
    「大人しく討たれますよー。」
     
     
    「ふうむ、やはり変わったのお。」
    ジジイの言葉に、主は言った。
     
    「もう未来は育ってるんですからねー。」
     
     
     続く 
     
     
    関連記事 : かげふみ 42 12.3.28 
           かげふみ 44 12.4.3 
           
           かげふみ 1 11.10.27 
           カテゴリー ジャンル・やかた
           小説・目次 

  • かげふみ 42

    「白雪姫の童話はご存知ですねー。
     鏡が世界一の美女は娘だと空気の読めない発言をして
     母親が怒り狂って、実の娘を毒殺する話ですー。」
    主が演説で、またロクでもない事を言い始めた。
     
    「白雪姫は、リンゴに仕込まれた毒で仮死状態になったのですが
     そんなこたあ、ありえないー。
     リンゴはキリスト教で言うところの “知恵の実” ですー。
     白雪姫は、リンゴを食って知恵が付いたのですー。」
    宗教を信じていないくせに、何を言いだすんやら。
     
    「つまり、白雪姫は知恵が付いて
     人間、顔だけじゃやっとられん
     現に母親は美に執着しすぎて、ドグラになっとる
     そう気付いて、ひきこもりになったのですー。
     つまり、“社会的な死” なのですー。」
    まったくムチャクチャ言うものである。
     
    「人間、顔のつくりではありませんー。
     でも人間、外見なんですー。
     人は見た目で判断されますー。
     それは当然の事なんですー。
     何故なら、その服を髪型を選んでいるのは
     他ならぬ自分の判断なのだから、外見に性格が表れるのは当然で
     人はそれを見抜くのですー。」
     
     
    今日の話は、きちんとした格好をしましょう、という事らしい。
    主は話の最後にこう締めた。
    「まあ、老いていくのはしょうがないですけどねー。
     せめて美しく老いていきましょうー。」
     
    聴きに来ている住人から声が飛んできた。
    「主様はいつまでもお若いですよーーー。」
     
    その言葉に、主は高笑いをした。
    「当然ですわー。
     わたくしは苦労を顔に出すような生き方はしていませんことよー。
     ほーほほほほほほほほほーーー」
     
    講堂が笑いに包まれたが、主にとってはギャグではなかった。
    こんだけ金と手間をつぎ込んで、普通に老いとったらやっとられんわ!
    主はフンフンと鼻息を荒くして、執務室に戻ってきた。
     
     
    デスクに座るなり、顔にシートマスクを乗せ
    スプレー化粧水を吹きかける。
     
    「パソコンの前で霧吹きをすると、また壊して電気部に怒られますよ。」
    リリーがシュッシュの音を聞いて、注意すると
    主がリリーのデスクにきて、20cmの距離から顔を注視する。
     
    「やめてください。」
    嫌がるリリーの頬を、主が指で突付く。
     
    「ほら、アップで見られると気になるでしょうー?
     あなた最近、こことここにシワが増えましたよー。
     あと、ここ、ソバカスが繋がりかけてるー。
     これ、大ジミになりますよー。
     ケアしないと、老け込みますよー。」
     
    「余計なお世話です。」
    「キレイなままのリリーさんでいてほしいから、ほらこれー。」
    主が美白用シートマスクをリリーに渡した。
    「20分だけで済むから、それ貼ってくださいー。」
     
    渋い顔をするリリーに、主が言い放った。
    「事務部にも若者が増えてるし
     バカガキって、自分が悪いくせに怒られたら
     『あのクソババア、更年期でイライラしてんじゃねーの?』
     とか言いたれやがるんですよー?
     そんな隙を与えないようにしてくださいねー。」
     
     
    グリスが執務室に入ると、女性ふたりがスケキヨになっていて
    思わず、うわっと声が出た。
     
    「な、何をなさっていらっしゃるんですか?」
    「美容ー。」
     
    あ、ああ、そうですか・・・ しか、グリスには答えられなかった。
    マスクの下のリリーの目は、明らかに怒りに燃えており
    それ以上に主の目は鬼気迫っていたからである。
     
     
     続く 
     
     
    関連記事 : かげふみ 41 12.3.26
           かげふみ 43 12.3.29
           
           かげふみ 1 11.10.27 
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  • お便りコーナー 8 注射が苦手

      < ゆず より > 
     
    すごく恥ずかしい悩みなんですが、聞いてください。
     
    子供の時から、注射と採血が苦手で、ドキドキして気分が悪くなり、
    注射と採血の後、脳貧血を起こして倒れてしまいます。
     
    しかも腕の血管が細いみたいで、緊張すると余計に見えづらくなってしまい、
    よく失敗されるので時間もかかるしブルーです。
     
    最近は、絶対倒れるのが分かってるから、
    最初から横にさせてもらってるのですが…。
     
    細い血管でも採血と注射をしやすくするコツと、
    倒れなくするコツがあればアドバイスください。
     
     
    補足ですが、注射は貧血起こすけど針治療は大丈夫です。
    注入系がダメなんでしょうか?
    タンポンと座薬もダメです。
    低血圧とも関係あったりしますかね?
     
     
    ————————-
     
    これ、何気に専門的な分野じゃねえ?
     
    でも、実際に倒れている病院でアドバイスをされないのなら
    医学界の範ちゅうじゃないんかな?
     
     
    私は注射の針を見るよ。
    注射、嫌だよねー。
    ほんと嫌いだった。
     
    ・・・・・・・・・・・・・・・・
    ふはははははははは!!!!!
     
    嫌い “だった” という事は、実は私は今では注射が大好きなんだあ!
     
     
    この心境になった切っ掛けは、気付いたからなんだ。
    見てても見てなくても痛い、って事に。
    んで、嫌でも注射はせにゃならん、とも。
     
    だったら自分の知らないところで、何をされるかわからんよりも
    見張っていた方が、まだ安心だと思うんだよ。
     
    おめえらさあ、政治や歴史では真実を知りたがるくせに
    自分に刺される針の行方は、見て見ぬフリか?
    知りたい知りたい言うのなら、自分に痛い事もキッチリ見やがれ!
     
    と言う事で、自分に刺さる針を見ていたら
    何だか自分がとても冷静沈着なオトナになった気分がして
    “注射が余裕な自分” を披露したくて
    意味もなく採血希望の日々を送っているよ。
    もちろんマイ主治医、余計な検査は断固拒否してくれるが。
     
     
    ただ以前、インフルエンザの予防接種をマイ主治医にしてもらったら
    すんげえ痛くて、思わず 「いってええええええ!」 と叫んだよ。
    上品で穏やかな淑女を装っていたのに・・・。
     
    マイ主治医、「そんな痛くないでしょー」 と鼻で笑いおったが
    針の刺すところを、もう5mm上の外側にしてくれたら痛くなかったはず。
    おめえ、刺す場所がズレてんだよっっっ!
     
    と、腹の中で罵倒させてもらったが
    それ以来、インフルエンザ予防接種を避けている・・・。
    どのツラ下げて、注射好き宣言?
     
     
    なお、尿管結石とかしたら、点滴なんかどうでも良くなる。
    打ってよ刺してよ体中に! この痛みが消えるなら! って感じで。
     
    ゆずちゃん、出産経験があるんだから、思い出してみいよ。
    あの痛みの最中に何を刺されようが、どうでも良いだろ?
     
    注射が恐い、と自己暗示を掛けてるだけで
    出産に耐えられる強靭な精神力の持ち主なんじゃん。
     
    私には出産は無理だよー。
    何の価値もないシュウ酸カルシウムの結石でも作っとくよ。
    うそうそ、もう二度と石なんて出来ないでくださいーーーっ。
     
     
    注入系苦手は、セックスをしてるんだから違うと思う。
    低血圧は、失神には関係あるかも。
    えーと、低血圧性失神みたいな病気があった気がする。
    これはそれこそ医者に相談、だな。
     
    ちなみにヨーロッパのどこだったか、中世の貴族の間で
    男性でも女性でも、失神する事が上品で繊細だと流行ったらしいよ。
    病弱そうに見えるように、おしろいで顔色を悪く見せたとか。
     
    くそお、ゆずちゃんも私 (顔色が土気色) も
    中世の貴族に生まれていれば、チヤホヤされたのにっ!
     
     
    注射嫌いの人々、どうしのいでいるのか
    その知恵や葛藤を教えてー。
     
     
    :::::::::::::::::::::::::::
     
    このコーナーは、何か言いたい人のためのものです。
     
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    それがたとえ、私の意見と違っていても、です。
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    なので、私にえこひいきをされたい人、お便りをください。
     
     
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    “お便りがこない” という、私の人徳のなさを隠すためですので
    皆様方は、介護のつもりで温かく許してください。

  • かげふみ 41

    さて、カメラマンのマデレン。
    いたんか? って感じだが、ちゃんといる。
    毎日、主を追うとともに、館中を撮影している。
     
    自分を無機物だと思ってくれ、の言葉通り
    存在を消しつつ、気が付いたらそこにいた、という具合である。
     
     
    このマデレンなら、主の変化にも気付いているに違いない
    そう思い、グリスはマデレンを探した。
     
    ところが探すと、どこにもいない。
    館の敷地中を、推理ゲームのごとく訪ね歩いて
    やっと見つけたのは、何と村の外れの道端だった。
     
     
    「あら、次期様、ここで何をなさっていらっしゃるんですか?」
    マデレンがグリスを見付けて、手を振りながら訊く。
    「それはこっちが訊きたいですよ。
     こんなところで何をなさっているんです?」
     
    マデレンは足元を指して言った。
    「ほら、アスファルトがここまで伸びているでしょう?
     この村は、以前はボコボコの整地されていない道だったんですよ。
     でも館産の品の販売が村で始まって、人が来るようになってから
     道路も徐々に整備されてきているんですね。」
     
    「主様の改革が、こんなところにまで影響を及ぼしているんですか。
     凄い事ですね。」
    グリスのいつもの主様凄い発言に、マデレンはちょっと笑った。
     
    「で、主様がどうかなさったんですか?」
    「何故、主様の事だとわかるんです?」
    やれやれ、この坊ちゃんは天然ですか、マデレンは内心呆れた。
     
     
    グリスの話を聞いて、マデレンは思案した。
    次期様の不安は、いずれ現実のものとなる。
    だけどそれが明日なのか10年後なのかはわからない。
    その間ずっと、来るであろう事に怯えるのは生産的ではない。
     
    それは次期様にもわかっていらっしゃる事であろう
    聡明なお方だし。
    だけどお若いから、不安を拭えないのだ。
     
     
    「主様は確かに最近、お変わりになられたと思いますよ。」
    マデレンの言葉に、グリスは落胆した。
    「やっぱり、あなたもそう思いますか・・・。」
     
    「ええ。
     だけど、それには理由があるんですよ。」
    「理由?」
     
    「はい。
     主様はあの態度ゆえに、ダラけているという印象がありますけど
     実はとても合理的なお方なのですよ。」
    マデレンが村の方へと歩き出したので、グリスも歩調を合わせた。
     
     
    「主様は手ぶらでは動かないお方なのです。
     必ず次の事、その次の次の事を見越して動いていらっしゃる。
     たとえば総務部に書類を持って行く時にも
     経理部への明日用の書類をついでに持って行く、といったように。
     明日する事は今日する、といったお方なんですね。」
    マデレンがカラカラ笑った。
     
    「それがこの前、通り過ぎる瞬間に何かを思い出されたのか
     棚からファイルを取りながら歩いて行こうとなされて
     わき腹の筋を傷めてしまわれたんですよ。」
     
    「えっ、そんな事が?」
    「いえ、医務室でシップを貼ってもらって
     すぐ治ったようなんですけど
     『もうセカセカしない!』 と怒ってらっしゃって。」
    グリスもちょっと吹き出す。
     
    「それで、ゆっくり動くように心掛けていらっしゃるみたいですよ。
     次期様には、それが “衰えた” と映るのではないですか?」
    「・・・そうでしょうか・・・。」
     
    「あのお方はせっかちすぎますので
     ゆっくりぐらいで、普通の人と同じなんですよ。」
     
     
    グリスは考え込んだ。
    そう言われると、そうかも知れない。
     
    「ゆっくり動くようになさってからの主様は評判良いですよ。
     上品に見えるみたいなんですね。
     デイジーさんなんか、『透明感溢れる気品』 だと言ってるし。」
     
    「透明感・・・?」
    グリスは、その単語に不吉なものを感じたようで
    表情を突然、曇らせた。
     
     
    「次期様、主様の事を案じるお気持ちはわかります。
     その不安も。」
    マデレンはズバリ核心を突いた。
     
    「私もカメラマンとして、色んな状況に立ち会ってきましたけど
     死ぬ人というのは、特有の雰囲気を持つんです。
     それは・・・、死臭とでも言うものでしょうか
     死臭と言っても、実際の匂いとかじゃないんです。
     “影が薄い” とか、そういうものでもないんですよ。
     何というか・・・、とにかくわかるんですよ。」
     
    「主様は大丈夫だと思いますか?」
    グリスの不安そうな表情に、マデレンは断言した。
     
    「私の拝見する限り、主様は大丈夫です。
     主様は停滞していらっしゃらない、という事だと思います。
     本当に底知れぬお方ですよね。」
     
     
    グリスの表情が明るくなった。
    「マデレンさん、ありがとうございました。
     ずっと心配だったのが、落ち着きました。
     みっともないところを見せて、恥ずかしいです。」
     
    「いえいえ、そのご心配はよくわかります。
     私に答えられる事なら、いつでも構いませんから話に来てくださいね。」
     
     
    まだ村を撮る予定のマデレンと別れて、グリスは館に戻って行った。
    村を歩きながら、マデレンの表情は逆に沈みこんでいた。
     
    私の話は本当に経験した事なんだけど、万人に当てはまるわけではない。
    特にあの主様のような特殊なお方は、どうなるかわからない。
    だけど若者が未来を案じて悩み暮らすなど、させてはならない。
     
    主様を失った時、彼はどうなるのだろう・・・。
     
     
     続く 
     
     
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