• 殿のご自慢 34

    おおおおおおおおおっ
    一団の騎馬隊から、高ぶる声が上がる。

    槍を持った敵の雑兵たちが、自分の命を取ろうと群がってくる。
    青葉を守る者たちがそれを叩き斬る。
    馬上にいても、生温かい血しぶきがかかる。

    頬を拭うとヌルッとする。
    自分は多分、血まみれなのだろう。
    青葉は吐きそうになった。
    だが、将がそんな事では隊は崩れる。

    何故、何故このような事になったの?
    ほとんどの女は、嫁にいったら家を守る。
    なのに、わたくしは戦場にいて重い刀を握っている。

    何故?

     

    それは乱世だからじゃ。
    この乱世で、わしが戦いを欲するからじゃ。

    八島の殿は、眩しげに目を細めて言った。
    「見よ、青葉姫が泣きながら剣を振り回しておる。
    まるで舞うておるように美しいと思わぬか?」

    その言葉には、青葉たちの不幸を喜ぶ者も
    さすがにゾッとさせられた。

     

    ああ・・・、柄にまで血がしたたる・・・
    青葉がふと手元に気を取られた瞬間、
    真後ろでキインと刃がぶつかる音がした。
    続いて、ガスッと鈍い音がして
    重いものが肩を掠めて地面に落ちた。

    「馬鹿か! おまえは!!!」
    声の主は、高雄であった。
    「前へ出るのなら、後ろを堅めろ!」

    涙と血と泥でグチャグチャの青葉には、
    もう返事をする気力もない。

    「口を開けるな、血が入ると吐くぞ。
    おまえはもう、刀を握って座っているだけで良い。
    堂々と前だけを見ていろ!」

    うなずく事も出来ず、青葉は顔を前に向けた。
    高雄は自分の馬を青葉の馬に並ばせ、後ろから来る敵をなぎ払う。

     

    その光景に、総大将の陣中の八島の殿は大喜びした。
    「おお! これは素晴らしい!!!
    青葉姫の赤い鎧に、高雄の純白の鎧が映えて
    まるで一対の鳥のようではないか!
    紅白というのが、これまた縁起が良い。」

    側近たちは、これは厄介な事になりそうだ、と思った。
    確かに、絵になるふたりであった。

     

    その夜、青葉は吐き気が止まらなかった。
    「宴への出席の断りを入れて参りましょうか?」
    侍女の気遣いに、青葉は立ち上がった。

    「いえ、参ります。」
    じゃないと、いないところで何を決められるか
    わかったものではない。

     

    「おお、今日は頑張ったな、姫よ。」
    八島の殿が上機嫌で声を掛ける。
    「いえ、そのような・・・」
    青葉の言葉を遮って続ける。
    「高雄がおらなんだら、そちはここにはいなかったな。」

    高雄はギクリとした。
    関わるべきではなかったが、あの時はやむを得なかった。
    やはり見られていたか・・・。

     

    「今後は、そちの護衛に高雄を付けようぞ。」
    これは夫である伊吹への、最大の侮辱である。
    夫婦を、双翼の陣で引き離して配置したくせに・・・。
    宴会の席は、静まり返った。

    青葉はにっこりと微笑んで答えた。
    「お気遣い、ありがとうございます。」
    八島の殿の薄ら笑いは変わらない。

    「ですが、わたくし、大殿さまからせっかく頂いた
    “騎馬大将” の称を返上したくありませぬ。
    しかもその上に護衛がわたくしより強いなど、心外でございます。
    わたくし、ひとりで戦えるべく強くなります。」

    言うだけ言うと、プイッと背を向け
    そのまま自分の陣へと帰って行ってしまった。

     

    相も変わらず宴席は静まり返っていたが
    その雰囲気は柔らかくなっていた。

    「プッ・・・」
    誰ともなく吹き出し、全員が大笑いする。

    八島の殿も馬鹿笑いをしながら、伊吹に言った。
    「そちの嫁は意外に気が強うてかなわんのお
    はっはっはっはっ」
    伊吹は、作り笑いをするしかなかった。

    青葉は陣中に戻り、また吐きはじめた。

     

    続く

     

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  • ピアス

    私の耳たぶは割に厚い。
    イヤリングなどしてると、脳天がガンガンしてくる。

    ので、周囲のお勧めもあって、
    ピアスを開ける事にした10代の終わり。

     

    初ピアスは、真っ当な病院で15000円かけて開けた。
    ところが、消毒をしようとピアスを外したら、
    どこまで不器用なんか、入れ直せない。
    無理矢理ねじりこんだら、中でガリッと引っかいたみたいで
    化膿してしまった。

     

    何かズキズキしてるし、膿臭いし、どうしようと思っていたが
    私にピアスを勧めた行き付けのブティックのねえちゃんは
    「大丈夫よお、私なんか膿がダラダラ出たもん」 とか言っている。

    その “膿ダラダラ” を聞いて、余計に恐怖を感じたので
    看護婦をやってた友人に泣きついた。

     

    数日後、友人がでかいカバンを持ってやってきた。
    そのカバンから出るは出るは・・・
    コットン、消毒液、注射器、麻酔液・・・。

    ・・・・・・ま、麻酔ーーーーーーーー?

    「そんなん持って来て大丈夫なんか?」 と、ビビって聞いたら
    「大丈夫。 モルヒネじゃないから。」

     

    何か、えらいなおおごとになってるような気がしたが
    注射器を構えた看護婦に逆らえるヤツはいない。

    おそるおそる耳を差し出したら、ブッチーーーーーっと注射を打たれ
    「いってええええええええええええ!
    その注射を打つのと、いきなり穴を開けるのと、同じ痛みじゃねえのか?」
    と、叫んだら、友人がムッとした顔をした。

     

    次に注射針で穴を開けて貰ったが
    「穴の位置がヘン」 と、クレームをつけたら
    友人の機嫌が更に傾き、何か耳元でやってると思ったら
    「はい、終わった」。

    鏡を見たら10箇所ほど穴がブチブチ開いてる。
    ひいいいいいいいいいっ と、驚愕する私に
    「好きな穴を選びな」 と、カバンに道具一式をしまいつつ
    投げやりに言う友人。

    「他の穴はどうすんの!」 と、怒ったら
    フン、とした顔で 「じき塞がるさ」 と、吐き捨てられた。

    とりあえず、これ以上こいつに逆らっても、
    良い事は何ひとつない気がしたので
    大人しく2つの穴を選んでピアスをはめた。

    「いい? 1週間は絶対に触るなよ。 消毒もあ・ん・た・はせんでいい」
    と、厳しい口調で言って友人は帰って行った。

     

    素直に友人の言う事を聞いて、ピアスには一切触らなかった私だが
    美容院に行った時に悲劇は起こった。

    美容師が 「ピアスを外してください」 と言うので
    外せない事情を説明したのに、その美容師の機嫌が悪くなったようで
    えらくザツにブラッシングしてくれ、ピアスに引っ掛けてくれた。

    「痛っ」 と、思ったが、美容師は詫びすら言わず
    「そらみたことか」 という顔をしている。
    帰宅して鏡で見たら、何と・・・・・・
    耳たぶがちぎれて皮1枚でピアスがぶらさがっている。

    その瞬間に私が思った事は 「友人に怒られるーーーーー」 だった。

     

    でも、これはどうにかせねばならない。
    友人に電話して、慈悲を請うた。

    友人は鬼の形相でやってきた。
    「あんた、美容院には文句を言ったの?」 と聞かれ
    そういや友人への恐縮で、そういう事はすっかり忘れていた。
    「あんた、ちとバカじゃねえの?」 と、言われても返す言葉もない。

     

    「氷を出して。」 「何か飲むの?」
    「氷で冷やして痛覚をマヒさせるの!」
    「えええええっ、そんな素人な方法? 麻酔はーーー?」
    「あんた、この前、麻酔の注射が痛いと文句を言ったじゃんよ。」

    こ・・・これが看護婦ならではの仕返しか?
    氷で耳を冷やして貰いつつ
    「冷たくて、しかも痛いんですが・・・」 と、訴えたら
    「麻酔の注射も痛かったはず!」
    ううう・・・根に持つヤツはこれだから・・・。

     

    氷で冷やすのは、やはり限界がある。
    今度はヒイヒイ言うほど痛かった。

    「あれ?」 と、友人が言うので 「何?」 と、ビビったら
    「いったん穴を開けて塞がった場所は、固くなってて針が通らん・・・。」

    「ええええええええ、あんなに穴を開けるからー。」 と、抗議をしたら
    「普通、こう何回も穴を開けるとは思わんじゃん!」 と、また切れられた。

    無事にとは、全然言える状況じゃなかったが、
    ともかく3度目に開けた穴はその後、何事もなく、
    私は片耳に2個ピアスをし続ける事ができた。

     

    ・・・が、私の耳には4個の穴が開いている。
    2個しか使ってなかったのに・・・。
    塞がってないじゃんよーーーーーーー!

    しかもヘンなところの穴が生き残っているので
    最大限に活用しても3個までしか使えない。
    おまけに耳たぶちぎれの痕もくっきり残っているし・・・。

     

    友人は仲間と穴の開けっこ、という看護婦ならではの技で
    両耳1個ずつにピアスをしていたが
    よくピアスを失くすウカツなヤツで、
    片方だけになったピアスは私の元にやってきた。
    私は片耳に2個だから型違いのでもオッケーだからだ。

    4万円のダイヤのピアスの片方を、海の家の更衣室で落とした時には
    うろたえて這いつくばって探したらしいが
    外で旦那は怒るわ子供は泣き喚くわで
    「こっちが泣きたいよ!」 と、怒りを抑えつつ諦めたそうな。
    その残った片方のピアスも、後日私の耳にはめられる事になる。 ははは

     

    ちなみに今はピアスをしていない。
    何故かっちゅうと、穴があるのは右耳なのだ。

    ・・・つまりゲイの証・・・。

    当時の純真な私は、そういうマニアなお約束は知りませんでしたとも。
    ようするに、アレだ。 「私はレズよ~ん」 と、
    看板背負って歩いてたも同然だったんだな?
    誰か注意してくれよーー、くすんくすん・・・
    人生の汚点になっちゃってるよー。

     

    で、つい最近、穴のチェックをしたら、
    5年ぐらいピアスをやめていたのに
    3個の穴が生き残ってて (1個死亡)
    しかもそこに汚れが詰まる事を発見。

    これはピアスをしないと、また詰まるんだろうな・・・。
    でも右耳・・・・・。
    左にも1~2個穴を開けて両耳にするべきか?

    でも今となっては、ピアス、面倒くさいんだよなあ。
    金属アレルギーはないはずなのに
    ピアスの穴だけは、銀とか、ヘタすりゃ18金でもかぶれるし・・・。

     

    と、マジマジと鏡を見てたら、とんでもない事実に気がついた。
    長年、右耳だけにピアスをしていたせいか、
    右の耳たぶの長さが伸びてるのである。
    はっきり言って、見苦しいほど左右の耳たぶの長さが違う。

    ああああああああああああーーーーーーーーーーっ
    これ、どうすりゃいいんだよおおお!!!!!

     

    でも、これは友人には相談しない。
    どうせ 「死ぬわけじゃねえし」 とか言われるに決まってるもん。

     

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    こういうので掃除!

  • 殿のご自慢 33

    八島の殿は、青葉を騎馬大将のひとりに任命した。

    空気がざわつく中、青葉が黙っていたのは
    “大殿” という人種には、何を言っても無駄だと知っていたからである。
    “女” として求められるより、マシかも知れないわ。

    八島の殿は、そんな青葉にいたく満足したようであった。
    「そちは、本当に利口な女じゃのお。
    さすがは良い血筋じゃ。
    生き延びる術を本能で知っておる。
    はっはっはっはっ。」

    八島の殿の笑い声だけが響く中
    高雄は気配だけで、末席の伊吹の様子を伺った。
    大丈夫、伊吹は耐えている・・・。

     

    「大殿さまのお召しという事で、無理難題を命じられそうで
    何だか嫌な予感がいたしますわ・・・。」

    青葉が自分の手を握って、不安そうに訴えてきた時に
    伊吹は笑って済ませた。

    「いくら大殿と言えども、女であるそなたに無茶な事はおっしゃられぬさ。
    山城とは違うのだ、案ずる必要はない。」
    青葉は、そうならばよろしいのですが・・・ と、目を伏せた。

    俺が馬鹿だった。
    大殿は、“姫を俺に嫁がせた” お方だ。
    それが全部厚意でなど、思い込んでいた俺が・・・。

    今日の大殿の様子では、俺たちは良いおもちゃ。
    青葉は多分、苦労をする事になる。
    俺なんかと出会ったせいで・・・。

     

    伊吹の前に座っている乾行は、その顔色に胸が痛くなった。
    本当なら新婚で、幸せいっぱいのふたりのはずなのに
    何ちゅう、ひでえ事をしやがる。

    周囲の重臣たちの顔を見回す。
    気の毒そうにしている者が多い中に、明らかに楽しんでいる奴がいる。
    身分のない俺たちが、ここにいるのが気に入らないヤツらだ。

    乾行は目を閉じた。
    ああ、つまんねえ、つまんねえ世の中だ。
    生まれた時から、既に死ぬまでの道筋が見えている。

     

    ・・・・・・・・いや?

    乾行はゆっくりと目を開いた。
    伊吹を見る。
    そして青葉を見る。

    このふたりは、その道筋から逸れているではないか。
    そして俺も、本来はここにいる事のない者ではないか。

    ・・・そうか・・・
    乾行はあごを撫ぜながら考え込んだ。

    人生はわからないのか。
    面白く出来るのか。
    俺たちには、まだ先は見えていないのか。

     

    伊吹が乾行の視線に気付いた。
    乾行は、ニッと笑った。

    その表情を見て、伊吹は少しホッとした。
    最悪じゃないんだな?

    ああ、そうだ。

    乾行の目が、そう言った気がした。

     

    続く

     

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  • 天然

    年に1~2回、自分が天然じゃないだろうか? と悩む時ってないか?

    世には “天然” を売りにしている人もいるけど
    計算ならば、自己プロデュースだから問題ない。
    だけど知らず知らずの内にバカな事をしでかしても
    人はそれを 「天然だから」 と、許してくれると思うんだ。

    そんな事になるのがイヤだから、時々自分をかえりみて
    ものすごく不安になるんだよーーー。
    知らずに人に 「やれやれ」 と溜め息を付かれてるとしたら
    気付かない内に迷惑をかけてるって事じゃん。
    私は、それがイヤなんだよー。

     

    ついこの前も、天然不安にさいなまれて 思いきって人に訊いてみたんだ。 「私って天然?」 って。

    そしたら間髪入れずにナチュラルに肯定された・・・。
    いつもなら、ここでショックを受けて思考停止をするけど
    今回は覚悟を決めていたので、「どこが?」 と訊く事ができた。

    そしたら、「自分じゃわかんないでしょ、ふふ。」

    ・・・・・・・・・・・・ この返事は想定外だった!!!!!

     

    もう、ええっ? って、ほんと ええっ? って衝撃を受けて
    思考停止をしそうになったけど、覚悟が略なので
    「わ、私、常識あるよね?」 と、多分泣きそうな顔で訊き直した。

    そしたら、「常識はあるけど、時々突き抜けるのよ。」 と言われ
    そこで力尽き、思考停止。
    “突き抜ける” って何だよ・・・?

     

    冷静さを取り戻した今、分析すると
    どうも世の中は “天然” に対して 幅広い解釈で
    しかもそう悪くは取られてないようだ。

    私は天然なんか大っ嫌いだから、言われたくないけど
    他の人はそうでもないから、気軽に私を天然認定するんじゃないかと。
    ああ、そうだよ! 言い訳開始してるよ!

     

    でも私、自分で言うのも何だけど、ほんと常識的なんだよー。
    ちゃんと和も大事にするし、社会性を持つように気を付けている。

    ただ時々、自分でもよくわからないミス?をする事はある。
    それが “突き抜けている” って事・・・?
    そんな大層なミスはしていないと思うんだけど
    まさか本当に自分では気付いてない “何か” をしてるとか?
    いやああああああああああああああ!!!!!!!

     

    と、まあ、このように、よくわからない “天然” に対して
    恐怖と憎しみを持って、迷ってしまうんだな。

    他の人はこういう事で悩まないんだろうか?
    そもそも私も、何で悩んでいるんだろう?
    自分でも “天然” だと疑っていないと悩まないよね・・・?

    ・・・あっ、今、言っちゃいけない事を言った気がする!
    天然とか自分で思ってしまったら、人前での言動が恐くなる。
    私は大丈夫、充分に常識的、普通の振る舞いをしてる大丈夫大丈夫。

     

    今さ、色々病名が付いているだろ
    社会不適応障害みたいな感じで。
    それになりたくないんで、あがいてるとこもあるけど
    よく考えたら、この歳で何をやっとんのだろうな。

    だけど悩まない人ほど、ロクでもねえ言動をしてるはず。
    悩んでる分、私には良心がある!

    と、ここで締めるのがいつものパターンなんだ。

     

    今日はただのグチ記事だけど、私には大きな恐怖なんだよー。
    似たような事で悩む仲間がいれば
    “皆、一緒” と安心できるんだがなあ。

    同類が何人いようが免罪符にはならんけど
    今回はそう罪も犯してねえよな。

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    ラピスラズリ、めちゃくちゃ好き!
    きれいな青に、金が散りばめられているんだ。
    でも天然のままじゃ硬度が低くてすぐ割れるから
    粉々にして練り直すんだって。
    そうすると金が消えてしまうんだよ・・・。
    そんなラピスラズリの地球儀、ラブリー!

  • 殿のご自慢 32

    「おお、久々のお目見えだな。」
    「相変わらず美しい。」
    「いや、子供っぽさが抜けて色気が出たような。」

    「いずれにしても、美しい。」

    八島の城に、青葉がやってきた。
    いつもは城下にある屋敷で、“奥” という役割りを果たすべく
    家の事を学んでいたのだが、八島の殿からお呼びが掛かったらしい。

     

    御前でお辞儀をする青葉に、八島の殿は上機嫌であった。
    「おお、姫、敷島の奥となり、以前にも増して美しゅうなったな。」

    「大殿さまにおかれましては、益々のご興隆の段
    せん越ながら、お喜びを申し上げます。」

    はっはっは と八島の殿が笑う。
    「おお、おお、よき家の姫はどこに嫁いでも
    礼儀をわきまえた挨拶が出来るようじゃな。」

    重臣群の末席にいる伊吹は、その言葉に驚いたが
    かろうじて動揺を表に出さずに済んだ。

    「今日、そちを呼んだのはな
    わしの、ちょっとした頼みを聞いてほしいのじゃよ。」
    高雄の背筋がヒヤリとする。

     

    「お断り申し上げます。」
    再び頭を下げる青葉に、全員が えっ? と注目する。

    「待て、わしはまだ何も申してはおらぬぞ?」
    青葉は顔を上げて、平然と言った。
    「ものすごく嫌な予感がいたしますの。
    お聞きしてからお断りするのは、失礼だと思いますので。」

    あまりの開けっ広げな言い様に、ハラハラして下を向く者もいる中
    八島の殿は、ニヤニヤとしていた。
    「よいよい、おなごは我がままなぐらいが可愛い。」

    「じゃがな?」
    八島の殿が立ち上がり、青葉の目の前に立つ。
    「わしの方が我がままじゃぞ?」

     

    腰の刀は・・・
    その場の全員が、八島の殿の右手の行方を見守る
    このようなピリピリした雰囲気が、八島の殿の好物であった。

    普通ならば、大殿の前での帯刀は禁じられる。
    しかし八島の殿は、あえてそれを命じる。
    それは、斬れるものなら斬りに来い、という自信を感じさせ
    帯刀の許可は、重臣たちを逆に不安にさせていた。

     

    青葉はまったく気にしていないようでいて、青ざめていた。
    姉がああいう死に目に遭ったのだ。
    “殿” という生き物が突然何をしでかすか、わからないのを
    誰よりも深く思い知っていた。

    だからこその、先制だったのだ。
    大殿さまからの呼び出しなぞ、ロクでもない事でしかない。
    どういう結果になろうと、意思表示だけは先にしておかないと
    わたくしの、龍田家の、そして伊吹さまの名誉が堕ちる。

    八島の殿は、背筋を伸ばして座っている青葉の前にしゃがんだ。
    「間近で見ても美しいのお、そなたは。」

    もはや伊吹にとっては、それは褒め言葉ではなく脅迫に等しかった。
    表情を変えないようにするだけで精一杯であった。

     

    「わしね、いくさが詰まってるの。」
    その甘え声に、全員が は? と八島の殿を見る。

    「ほら、宿敵である吾妻家との争いだけじゃなく
    青葉ちゃんとこの山城を追っ払ったら
    周囲の大名たちが跡地を奪い合いだしたでしょ?
    そしたら青葉ちゃんとこが危ないから、助けなきゃいけないしぃ。」

    青葉は最早、どういう表情をして良いのかわからず
    呆然と八島の殿と鼻を付き合わせている。

    「そんでね、うちには将が足りないの。」
    八島の殿はすっくと立ち上がり、重臣たちを見回した。

    「敵武将の首も取れぬ奴は、将とは呼べぬわ!」
    いきなりの怒声に、一同は慌てて下を向く。

     

    どうやら八島の殿は、先日の吾妻家とのいくさが
    いつもの小競り合いに終わった事が不満のようであった。

    確かに最近の吾妻家との勢力争いは、形骸化している
    と言っても、過言ではないかも知れない。

    しかし、それと青葉を呼びだす事が
    どう関係があるのか・・・。

    八島の殿が、青葉の方に振り返った。
    「そこでじゃな・・・。」

    殿は自慢を増やしたいらしい。

     

    続く

     

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  • ルルド マッサージクッション

    1年以上前に、一番小さいのを購入。
    値段は確か、5800円ぐらい? ← また始まったよ、値段忘れ。

    Lourdes3

     

    これさ、ネットで人気があったんで、とても興味があったんだよ。
    で、何度かロフトとかに行って、動きとかを試して
    迷いに迷って、値段が安い一番小さいのを買ったんだ。

    感想: よくわかんねえ・・・。

    というのもな、裏がこういう形状なんだ。

    Lourdes1 Lourdes2

    ここのローラーで腰をマッサージするんだろ?
    でもこれ、すっげえ痛いんだよ。

    グリグリ回ってくれるんだけど
    薄い布越しだから、ゴリンゴリン当たって痛え痛え。

    クッションを腰側にすると、まったく振動がないんで
    間に薄い座布団でも挟まないと、使えない。
    皆、これ、痛くねえの?

     

    そんで、まともにゴリゴリしてくれるのは
    腰から肩下あたりの範囲の高さ。

    肩や首には無理しないと当たらないし、尻に敷くと壊れるらしいし
    私としては、肩に、との想いが強くて小さいのを買ったのに
    正直、買わなきゃ良かった・・・。
    こんな痛い揉み玉、私には合わないよーーー。

     

    でな、クッション側の意味がわからないんだ。
    マッサージしてない時はクッション代わりにしとけって事?

    あ! もしかして会社での椅子用?
    それならわからないでもない。
    でもこのゴリゴリ、服が痛むと思う・・・。

     

    こんなん買っちゃってどうしよう・・・
    と、己のバカな買い物を後悔して、涙にむせぶ日々だったんだけど
    どうにか活用せんと、うちには物を遊ばせとく余裕はねえ。

    そこで天才・私は、アントワネット気分で
    胴体がダメなら足にすれば良いじゃない! と思い付いた。

    足と言っても、太ももとかそんなに凝るもんでもないんだけど
    ふくらはぎと、それより何より足の裏!!!

    ルルドは足の裏に使うのが一番気持ちが良い!!!

    付いてるヒーター機能も、冬の冷えた足先ならピッタリだし
    足の裏だと、揉まれながら好きに動かせるんで、大満足!

    これ、“足裏用” として売るべきだと思うんだ。
    買ったは良いけど、私のように使い方がわからんアンポンタレは
    足の裏に使ってみなされ。
    真冬は特に天国だから。

     

    これを発見したから、ルルドは一応活用できたけど
    当初の目的、首肩はどうすんだよ、と
    ルルド大、特大も見てみたけど、どうも私には使いこなせそうにない。

    こりゃ、他のマッサージ器具を探すべきだな、と
    ネットでバイブレーター等を検索するも
    エロ用になり下がっておるようで、良い情報が入って来ない。

    しょうがないので、事あるごとに家電店をチェックしてたけど
    良いのを見つけたぜ!
    買って、またレポしようぞ。

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    そういえば、車のシガレットんとこに繋ぐコード、付いてた!
    そうか、車用かー、なるほどーーー。
    服を厚めに着ている事前提なんだな。

  • 殿のご自慢 31

    店を出た後ふたりが向かったのは、あの丘であった。
    「ここからは馬は無理だから、ここに繋いでおくのだよ。」
    供の者もそこで待たせる。

    丘を上り空が見えてきた時に、伊吹が振り返って嬉しそうにつぶやいた。
    「・・・二人分の足跡だ・・・。」

    頂上も草が青々と茂っているのが、余計にあの時の侘びしさと対比し
    思わず青葉を抱き締める。
    「まさか、ここにそなたと夫婦となって来れるとは・・・。」

     

    伊吹は、ずっと疑問に思っていた事を訊いた。
    「あの時に何故ここにいたのだ?」

    青葉はサラリと答えた。
    「戦場の下見です。
    伊吹さまもでしょう?」

    「何故、俺の姿を見て逃げた?」
    「敵の侍かも知れない、と思いました。」

    「何故、次の日も来た?」
    それまでスラスラと答えていた青葉が、言葉に詰まった。

    「何故、かんざしを落とした?」
    「何故、巾着を置いた?」
    「何故・・・。」

    伊吹は問うのを止めた。
    一歩間違えば、もう二度と出会えなかったかと思うと
    未来ですら恐くなってくる。

     

    青葉は伊吹の胸に顔を埋ずめた。
    青葉にとって、この場所は後悔の地であった。

    「逃げた後に、後悔しました。
    どうしてお話をしなかったんだろう、って。
    だから次の日に、また会える事を願って来たのです。
    あなたがいない事に、悲しみを感じました。
    かんざしは、私の代わりにあなたの元に届けば、と思って置きました。
    受け取ってはもらえなかったけど、手拭いが嬉しかった・・・。」

    青葉は、伊吹にギュッとしがみついた。
    「いつも組み紐を髪に巻き、手拭いは胸元に入れていたのです。
    たとえ頭と体を切り離されても、どちらにもあなたがいてくれるように。」

     

    その言葉に、伊吹はゾッとさせられた。
    “出会えない” どころではなく、目の前で死なれていたかも知れないのだ。

    「姫・・・、俺は恐い・・・
    失えぬものが出来て、心底恐い・・・。」

    情けない事を言っているのは、自分でもわかっている。
    だが、恋がこれほど恐いものだとは・・・。

     

    伊吹の不安がる姿に、青葉は思った。
    好きな相手と一緒になれる、って
    楽しいものじゃなかったのかしら・・・?

    そう言えば、お母さまを亡くしてからのお父さまも
    まるで生きていないかのようだった。
    散る花に落ちる陽に、ご自分を重ねていらした。

    殿方って弱いものなのね・・・。
    青葉は自分を抱きしめる伊吹の背中を、優しく撫ぜた。

    伊吹さま、ごめんなさい
    わたくしのために、あなたを苦しませてしまって・・・。

     

    気持ちの良い日差しが降り注いでいるというのに
    伊吹も青葉も、地に映る影にばかり気を取られていた。

    夏がやってくる。

     

    続く

     

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  • 年寄りのファッション

    歳を取るとな、何を着て良いのかわからなくなるんだよ・・・。
    人は、そんなに他人を見てはいないんだけど
    私のようなナイスバディーは、美魔女や男性から見られる事が多くて
    そんで、ロコツにガックリされて、どうもすいませんどうもすいませんと

    何で私が謝らなきゃならないんじゃあ!

    と思わんでもないんだけど、とにかくガックリ感が 申し訳なさすぎて
    心の中でつい謝ってしまうんだ。
    ババアのナイスバディーほど、意味のねえもんもない、と知ってるんでな。

     

    考えてみると、好きなものを着られる年齢なんてないんだよ。
    若い頃は、パンクファッションで怒られ
    モノトーンで若さに似合わないと文句を言われ
    パンツスタイルで女の子らしくせえと懇願され。

    流行に沿った、皆がしている格好をすりゃ良いんだろうけど
    私的には、シンプルでメンスライクな感じが好きで
    そういう格好をしてると、いつの時代も浮いてる気がしてかなわんわ。

     

    そういうヘンな趣味じゃなくても 歳を取る毎に
    何が一番、自分の年代にしっくりくるのか
    さっっっぱりわからなくなってくる。

    30代までは良いよ、割と自由。
    でも40代以降になると、常に高価なコンサバしか選択肢がなくなる。
    それが好みじゃない、もしくは経済的余裕がない場合は
    もう、逆切れしつつの服選び人生になってくるんだ。
    好きなものを着てて何が悪い! ってな。

    それが悪いのが、誤解を招きやすいナイスバディー。
    街の華になれるわけでもないナイスバディーババアは
    なるべく目立たぬようにしたいんだけど
    デニムにTシャツだけでも、悪目立ちをするんだ・・・。

     

    最近つくづく服選びに疲れて、キャベツ片手に スーパーに来てるご婦人方をボンヤリ眺めてたら
    老婦人たち、私とそんなに変わらない格好をしてる人も多いんだよ!

    ええっ、何が違うの? もちろんナイスバディーもだけど、と思いつつ分析した結果
    ・・・・・姿勢・・・・・
    あと、何というか、気を遣ってなさ?

     

    要するに、年寄りが目立たなくするには
    どうでもいい服を着て、小さくなって歩く事なんだ。

    姿勢は平均身長より高いと、猫背にも程があるんで隠せないし
    て言うか、猫背、骨に悪いんで逆に気を付けてるんだし
    考えないファッション、好みがはっきりしてる私には無理!

    これは私は一生、悪目立ちだな・・・、と覚悟したよ。
    カートに両肘ついて、ブラブラ徘徊なんて出来ねえよ。

     

    あとさ、30代以降の女性に多いんだけど
    ベージュを着るのは、やめた方が良いぞ。
    パステルが似合わなくなる年齢だろうけど
    似合う柔らかくキレイな色味、絶対にあるから!

    ベージュって決まると上品だけど、多くのベージュはボヤける。
    無難なようでいて、実は純白や黒より難しい色だと思うんだ。
    ファッション誌のベージュも時々失敗こいてるぐらいだぞ。

    しかもベージュの恐いところは
    失敗してなくても成功じゃなければ、すごく老けて見える事!
    若い女性でもベージュを着て残念な事がよくあるんで
    ベージュだきゃあ、定番色から外してくれ。

    すごく危険な色だぞ、ベージュ!!!

     

    ところで最近の日本の服って、小さくなってる?
    メンズやセレクトショップばかり覗いてたんだけど
    通りがかったショップのセールで、アウターを買ったら袖が短かったよー。
    肩もちょっときついな、とは思っていたんだよなあ。

    こんな事初めてだよ。
    そういうデザイン、と思うにしては中途半端な袖丈で
    買ったからには着るけど、おかしくないかすっげえ不安。

    気付いたの、着続けて3か月後だったがな。
    うちの買い換えた壁掛け時計も、半年経ったぐらいで
    温度計と湿度計が付いているのに気付いたぐらいだし
    私の目、フシ穴過ぎる!!!

     

    このザツな性格で、まだ助かってるのかも知れない。
    大事にしようかな、このボケ・・・。

     

     

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    殺伐系の部屋な私は、こういうシンプルなのが好み。
    26cmの小さめサイズも良い。
    大きいと見るたびにビックリするんだよーーー。

  • 殿のご自慢 30

    一方の伊吹も、決して舞い上がっているわけではなかった。
    ただ単純に、青葉に喜んで欲しかっただけなのだ。
    そして店にもお礼をしたかった。

    「・・・では、おねだりしても良いですか?」
    青葉が伊吹に訊く。
    何を与えたら良いのかわからない伊吹はホッとした。
    「おお、何でも言ってくれ。」

    しかし、それは意外なものであった。
    「わたくしたちに子が出来た時に
    男の子には緑、女の子には赤の着物を作ってくださいませ。」

     

    青葉のこのおねだりは、実によく出来た回答であったが
    結婚できたのも不思議な伊吹には、子供の事など考えてもいなかった。
    「あ、ああ・・・?」

    「それではご主人、よろしく頼みます。
    今日はこの人の着物をお願いしますね。」
    「は、はい、しかと承りました。
    それではお武家さま、どうぞこちらに。」

    主人の呼び方に、伊吹は慌てた。
    「あ、俺は伊吹、敷島伊吹と申す。
    こちらは、つ、妻の青葉だ。」

    真っ赤になる伊吹に、その場の全員が照れる。
    伊吹さまのこういうところが好きなのだけれど
    時々つらいのよねえ・・・

    青葉も赤くなりながら、うつむいていると
    おかみが座布団を出した。
    「ささ、奥さま、お待ちしている間、こちらでお茶でも。」

     

    ありがとう、と言って座る青葉に、おかみが言う。
    「奥さまは高貴なお方なのですから
    あたしどもに優しくしてくださる事はないんですよ。」

    今まで町人という人種に接した事がない青葉にとって
    その言葉には驚かされた。
    「いいえ、わたくしもこれから普通の暮らしになるわけだし・・・」

    乳母からの言葉をそのまま言い掛けて、ハッとする。
    「あら、このような言い方は伊吹さまにとても失礼だわ!」

    おかみの方も、そんな青葉にビックリした。
    何の苦労もなく、裕福に過ごしてきたお姫さまだから
    無邪気に気持ちを言葉を出し、素直に詫びる。
    それが嫌味に思えないのは、本当に純粋だからなのだろう。

    これから御苦労なさらないと良いけど・・・
    おかみは、青葉の美しい白い手を見ながら案じた。

     

    のれんの隙間から、町人たちが覗いているらしく
    外が騒がしくなってきた。

    おかみは外に出て、見物客を追い払う。
    「さあさあ、静かにしとくれ。」

    「おかみさーん、あたしは良いだろ?
    お侍さんの奥さまにご挨拶させておくれよ。」
    あの時に呉服屋に伊吹を連れて来た小物売り屋の娘である。

    「しょうがないね、礼儀正しくするんだよ。」
    「やったあ!」

     

    伊吹が採寸を終えて戻ると、女が三人キャアキャアとはしゃいでいる。
    「何だね、おまえ、奥さまに騒がしくするんじゃないよ。」
    主人に怒られて、おかみが罰が悪そうである。

    「お侍さん、おめでとうございます。」
    伊吹は娘を覚えていた。
    「ああ、おまえはあの時の・・・。
    どうもありがとう。」

    青葉が伊吹に、花の髪留めを見せる。
    「伊吹さま、これなら短い髪でも留められます。
    これを買ってくださいませんか?」

    「おお、良いぞ、何でも買ってやる。」
    青葉のおねだりに喜ぶ伊吹に、女二人は呆れた。

    おかみは伊吹の目を盗んで、青葉に耳打ちをした。
    「奥さま、財布の紐はきっちりと締めなさいませ。
    男ってのは女がねだれば、考えなしに金を遣ってしまいますからね。」

    その言葉に、青葉は真面目にうなずいたが
    わかっているのか、いないのか・・・。

     

    続く

     

    関連記事 :

  • 貞子3D

    ブログ移転の休止中に私が何をやってたのかっちゅうと、案の定。

     

    私の恐い映画の観方は、まずメガネを外す。
    パズルや美容系雑誌を用意し、リモコンはすぐ近くに。
    TVモニターの横の壁を向いて座椅子に座ったら、準備終了である。

    ぜんっぜん映画を観る体勢じゃないのは
    私が実はものすごい恐がりだからなんだ。
    なのに心霊好きという悲劇。

    リモコンを近くに置いておくのは、あまりに恐いと体が固まるだろ?
    もう、1mmも画面の側に寄りたくないじゃん。
    リモコンの電源ポチッで済むのに、隣室に逃げて部屋に戻れなくなった、とか
    多々ある経験上、とにかく電源オフの手段だけは確保しておく事を学んだのさ。

     

    さあ、映画の始まりです。
    ドキドキしつつ、今年の夏は “また” ネイビーが流行る、とか
    いう雑誌の記事を一心不乱に読み始める。

    春にはグリーンが、秋にはワインレッドが流行る、と毎年言われるけど
    本当に流行ったためしがねえし
    夏にマリンが流行る、と言われない年はないが
    ボーダー部門は、とっくの昔に年中定番だから!

    もう、夏にファーが流行る、ぐらいの事を言われないと驚きもしねえよな。
    と、映画とまったく関係ない事を無理して脳内で考えつつ
    全神経は目の端に映るTV画面に。

    あ、まだ観てない人は、盛大にネタバレしてるんで読まないようにな。
    と言っても、私の解説なんざ、本筋にまったく関係ねえがな。

     

    ・・・あれ・・・?

    ハリウッドホラーのBGMは、さあ、出るぞ出るぞ派手にいくぞ、の
    勢いづけの意味を持っているんだけど
    日本のホラーと言えば、神経に障る不愉快な音である。
    クライマックスに向けて、精神に徐々に負担をかけていくやつ。
    心が、“恐いモード” に入ってしまう、日本独自のの手法は見事!

    なのに、この映画にはその音やそういう空気がまったくないので
    いつの間にか画面を直視していた。
    3Dじゃなく、2Dで観ているせいか全然恐くないんだよー。
    貞子、早々に出現するも、結構明るい性格っぽい。

    これ、ジャパンホラーじゃねえよ、ゲーム画面だよ!
    ここでとうとう雑誌を閉じて、メガネもかける。

    だって貞子本体のビジュアルといい動きといい、“バイオハザード” なのだ。
    途中、ロッカーに隠れるところは “クロックタワー”
    箱を背負っての移動は “メタルギアソリッド”。

     

    日本のホラーは、陰湿で得体の知れない気色悪さが特色なのに
    この貞子3Dは、心霊でもホラーでもなくCGアクションだった、と。

    まあ、呪怨とか観て、むちゃくちゃ後悔したんで
    そういうハメに陥らなくて良かったな、と前向きになっても良いんだけど
    貞子をこういう風にしちゃ駄目だと思うんだ。

     

    ああ・・・、まるでエイリアンの落ちぶれを観たような気分・・・。
    シリーズを重ねる毎に悪くなっていく典型な映画だったよ。

    恐くないんで、気軽にどうぞ。
    観る価値は・・・、私はなかったな。
    TVでやる、本当にあった恐い話の再現ドラマの方が恐いよー。

     

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    本文とは全然関係がないけど、今くるおしく愛用してるのがモップスリッパ。
    グータラなだけじゃなく、クッション性が良いんでカカトが痛くならないんだよー。
    難点は、洗うのが大変なのと乾きにくい事だけど
    毛足の短いこれなら、それも多少は軽減されるかも。