• 訓練ジジイ 続々報

    うわあああああああああああああん
    訓練ジジイがいなくなったーーーーーーーーーー!!!
     
     
    変わらない日々が続く、と信じていた時に
    いつも突然、コトは起こるのだ。
     
    訓練ジジイは、公園でショータイムでも開催しとんのか?
    3回に1回は、奇天烈な展開をかましてくれる。
     
    まさか、この訓練ジジイを観察する私を誰かが観察している
    とかいうオチじゃないだろうな?
    とか思っていたのに・・・。
     
     
    もちろんその日も、公園に訓練ジジイの姿があった。
    座敷犬婦人は、その日はおらず
    ジジイはそれでも粛々と訓練を進めていった。
    犬もさっさと1クールこなして帰りたい様子。
    訓練は順調に終盤に差し掛かっていた。
     
    ・・・すいません、ウソです。
    訓練の順番など知らないんで
    いつが始まりでどれで終わりか
    そこまで把握はしておりませんです。
     
    でも、そのときも “取って来い” だったのは
    確実に呪われているのかも知れない。
     
     
    ジジイが2度目の “取って来い” をしようと
    ボールを頭上に掲げた瞬間、そいつらは現れた。
     
    自転車に乗った小学校低学年らしき男の子と女の子。
    ジジイがボールを投げるまん前を横切る。
    そして自転車を止め、ジジイに向かって叫んだ。
     
    男の子が何て言ったのか、わからなかった。
    子供特有の、悲鳴に近いキンキン怒鳴り声だったからである。
    そんな超音波、難聴ババアな私には聞き取れねえよ。
     
     
    とか思ってたら、何とジジイ、子供をガン無視するのである!!!
    と言うか、何のプログラムが施されているんか知らんが
    一度始めた動作は、途中解除できないようで
    ボールを投げよう投げようとしているのである。
     
    子供はそういうジジイの葛藤を読まず
    犬に おいで と声を掛ける。
     
    ・・・・・・犬、子供の方に行く・・・・・・・・
     
     
    いやあ、あの犬があんなに嬉しそうなとこは初めて見たよ。
    尻ごと、尻尾をブリブリ振って
    躍動的にピョンピョン飛び跳ねて
    とても楽しそうに子供たちと戯れる。
     
    その姿は、いつも留守番ばかりさせられていた子供が
    ずっとお祖母ちゃんちに住むの? パパは?
    え? お外で遊んできて良いの? みたいな
    ああ、私、走れるわ! 手術が成功したのね、みたいな
    記憶喪失が戻って、きみと砂浜をあははうふふ みたいな。
     
    何かもう、あれこれと溜まってたんかな、みたいな
    そういう “魂の解放” を見た気分。
     
     
    あらら・・・、と、飼い主・ジジイの心中をおもんばかっていたら
    ジジイ、激しく動揺するそぶりを見せた後
    事もあろうに、ポケットからジャーキーを取り出して
    犬を釣ったのである。
     
    ご主人様の威光、台無し!!!
     
    そして再び、ボールを頭上に掲げる。
    この融通の利かなさが、“頭が固くなった” という事か・・・。
     
     
    ジジイ、子供をガン無視して、ボールを投げる。
    「取ってこい! 取ってこい!」 と、二度叫ぶ。
    確かにジジイにとっては大事な事であろう。
     
    犬、ジジイの収まりのつかなさを察したのか
    ボールを取りに行く。
     
    ボールをくわえて、戻ってくる。
    これまた見た事もないような、スピード感あふれる疾走で
     
    ・・・・・・・・子供たちの方へ・・・・・・・・・・・
     
     
    この犬は、子供好きなんだろうな。
    そう言えば、ジジイがハッスルして気を引こうとしていた
    老婦人と座敷犬には見向きもしなかった。
    飼い主と、付き合いたいヤツの好みがズレると辛いだろうな。
     
    世代間の友情の違いについて、ちょっと考えさせられていたら
    何とジジイ、訓練を中断して帰り始めた。
     
    何て大人げない!!!
     
    子供たちが、犬に叫ぶ。
    「バイバイーーー」「またねーーーーー」
    犬、名残惜しそうに振り向く。
     
     
    それ以来、ジジイを見かけていない。
    たまたまかも知れんが、あのジジイ
    まさか、スネてやしないだろうな。
     
    それとも、公園に行ってまたあのガキらに
    犬をとられるのがイヤ、と怯えているとか?
     
     
    訓練ジジイの続々々報はもう書けそうにないかも知れない。
     
    ・・・てか、訓練ジジイが立ち直って公園復帰しても
    さすがにもう、ネタはないと思うが
    そこがわからないところが、この世の面白さであろう。
     
    とりあえず、ネタになどならなくて良いから
    訓練ジジイ、早くその傷を乗り越えてくれ!
     
     
    と願っていたら、意外な伏兵が!
    物もよく見えない時間帯の薄暗い公園を、たまたま通ったら
     
    ひとり体操着で踊る男子 が現れとる!
     
    音楽が聴こえないんで、何をしとるかわからんけど
    上半身が伴わないマイケル・ジャクソン みたいなダンス?
     
    おめえはきっとイヤホンか何かをしとるだろうが
    こっちには何も聴こえないんで
    最初に視界に入った時には、地団駄を踏みまくるヤツに見えて
    かなりビビらされたぞ。(発展途上な踊りなんで余計に)
     
     
    次の主役はおめえかも知れない・・・
     
    と、心の中でつぶやいてはみたが
    夜の公園近所は痴漢あかん、だし
    そもそも、こういうヤツばかりが発生する公園の近所に住むのは
    結構な自殺行為じゃないか? という迷いが生じているので
    この男子のレポは厳しい。
     
     
    皆、すまん、新しいスター誕生かと期待させかけたが
    こいつは多分、一発屋だ。
     
     
    関連記事: 狡猾な愛すべき犬というヤツら 11.3.28
          訓練ジジイ 続報 11.4.11
          訓練ジジイの謎 11.12.12 

           
           

    評価:

    ドギーマン


    ¥ 630

    コメント:これを吹くとな、本当に犬がパッと顔を上げるんだよ。 犬に相手にされない私はドライブ中に吹いて回っとった。 犬、案外、犯人を特定できずキョロキョロするのみ。 それを見て車の中でニヤニヤするのは、とんだハーメルンの笛吹き状態。

  • 黒雪伝説・湯煙情緒 9

    「前に荒野に飛ばされた時に、私はここが魔界かと思ったんです。
     普通、界の行き来は出来ないから
     私も妖精界から出た事がなく、人間界の風景を知らなかったんです。」
     
    たきぎを集めて回る黒雪姫の後ろを
    ただ付いて来ながら、話す王子。
     
    「それに、ウサギやトランプの兵、あの者たちに
     妖精界の雰囲気を感じなかったんです。」
     
    「私の事は人間だとすぐわかった?」
    火をおこしながら、黒雪が訊く。
    「・・・まあ、妖精界の者ではないんじゃないかな? みたいな?」
     
    黒雪が横目でジロリと睨むので、慌てて言いつくろう。
    「だから妖精以外、知らないんですって。」
    「まあ、いいわ。 そんで?」
     
    「ずっと抱いてきた疑問の答が、ひとつ見つかった気がするんです。」
     
     
    深刻な話になってきそうなのに、黒雪は鍋を抱えてウロウロする。
    「チッ、用意の順番を間違ったわ・・・。」
    黒雪は岩陰の残り雪を鍋に入れ始めた。
     
    「何をやってるんです?」
    「・・・川、池、水溜り等がない・・・。」
    「まさか、それでスープを作るんですか?
     イヤですよーーーーー、泥混じりじゃないですか。」
     
    「地べたを這いずる生き物のくせに、よく言うわ。」
    「今は人間です!
     ほら、水があるところまで歩きますよ。」
    「ええええええ、もうお腹減ったーーーーー。」
     
     
    「ん? 何だか前にも同じ展開があったような・・・?」
    王子はしばし考え込んだが、ポンと手を打った。
    「お茶会ですよ!」
     
    「ああ! テーブルんとこに猫がいたわよね。
     あれも、きっと魔界属性よね。
     行って捕まえたら、鉱山が貰えるんじゃない?
     ・・・あれ? そう言えば、猫で思い出したけど
     女王って・・・。」
     
    黒雪が王子の顔を見る。
    王子は、険しい表情になっている。
    「答えなくても良いけど、あなたのママン、魔界出身?」
     
    「答えますよ、そんな誤解!
     母は魔界出身じゃありません。
     妖精王と共に、妖精界を統べる立場のひとりでした。
     だから “女王” と冠されているのです。」
     
    「へえ、そんなお偉いさんだったんだー?
     ショッカーの怪人のひとりのようなもんかと思ってたわ。」
    「・・・失礼な・・・。」
     
     
    集めたたきぎを抱えて歩く黒雪が、つぶやいた。
    「ん? 何だかおかしくない?
     ハブ女王って鏡に封印されてたんだよね。
     妖精王はそれを知らなかったって言ってたよね?
     あなたの存在も知らない、って言ってたよね?」
     
    「ちょっと時系列を整理してみましょう。」
     
    王子はリュックからノートを取り出した。
    黒雪が慌てて先制した。
    「夢見心地なポエムとか見せられるのは勘弁ね。」
     
    王子は黒雪をゲンコしたが、最初に開いたページは閉じた。
     
     
    ポエム、書いてたらしい。
    実は見て欲しかったらしい。
     
     
     続く
     
     
    関連記事 : 黒雪伝説・湯煙情緒 8 11.4.12
           黒雪伝説・湯煙情緒 10 11.4.18
           
           
           黒雪伝説・湯煙情緒 1 11.3.23  
           
           小説・目次 

  • 私が流す風評

    さあ、今から現政府曰くの “デマ” を言うんで
    マスコミ曰くの、“マトモな人” は帰ってくれ。
     
     
    東北大震災後、1ヶ月。
    日本全体が元気がない状態。
     
    これから私たちがすべきは、まず政権交替。
     
    何で今? と思うかも知れないけど
    この1ヶ月の民主党政府の無能さを見ただろ?
     
    欧米諸国の援助をことごとく断り
    事実を隠し続け、ウソを広める。
     
    今の日本は、世界中から注目されているんだぞ。
    今はまだ、pray for Japan とか祈られてるけど
    この政府をこのままにしておいたら、片付く問題も片付かずに
    「日本人って結局、右へならえなだけじゃん。」
    「そんな主体性のない国、助ける価値なし」 と思われてしまうぞ。
     
    何党だろうが関係ない。
    真に日本の事を考える政治家に、立ってもらおう。
     
     
    そして報道される情報の不確実性。
    もう、わかったろう?
    一般民衆に真実は決して知らされない。
     
    私が総理でも東電でも教えないよ。
    それが悪い事であればあるほどな。
     
    だけど真実を知ってどうなる?
    その内容によって、態度を変えるのか?
     
     
    はっきり言おう。
    何があろうと、日本は前に進むしかないんだよ。
     
    自分がそれを支持したわけじゃないだろうけど
    それをやってる国に生まれ育ったんだろ?
    国が失敗こいたら、国民は責任を取るしかないんだよ。
     
    だから選挙とか、真面目に考える必要があるんだ。
    民主主義とは、民衆が尻拭いをするシステムなのだから。
     
     
    日本が起こした原発事故は、世界中に影響がある。
    経済にも、自然にも。
     
    きっかけが天災なので、どこで起きてもしょうがない。
    だけど日本で起こってしまったんだから
    日本人がどうにかするしかない。
     
    だから真実がどうであろうと
    私たちは、今すべき事をするしかないんだ。
    人間として、義務を果たせ。
     
    人の言う事を鵜呑みにして、安心して死んでいくか
    冷静に考えて、出来るだけ良い方向に進むように
    目的を持って動いて、覚悟して死んでいくか
    それを選べるのが、私たちに与えられた “権利” だ。
     
    どうだ、これほど確かな人権もなかろう?
    エコだのナチュラルだの言ってたんなら
    200年後に、ここに日本という国を残してくれよ!
     
     
    何の役にも立たないババアである私は
    この命、日本に捧げて良し。
    よって日本の物を優先して買うよ。
     
    どこ地方産? など、何を今更。
    小さい島国だから一蓮托生、他人事じゃねえんだよ。
    一部が潰れたら、全部が潰れる。
     
    世界から見たら、日本は汚染国。
    相手にされなくなるので、日本経済は崩れる。
    よって、自給自足に切り替えるつもりで
    国を成り立たせていかなければならない。
     
     
    これが日本に存在している私たちが
    “美しい後始末” というものを世界中に見せる機会だ。
     
    それがたとえ、ガケに向かっての行進でも
    積み重なった私たちが、何代かあとの子孫たちの足場になり
    国土が伸びていく事を信じて。
     
     
    もういっちょ、言う。
    私世代以上の、“人権”“平等” など言うヤツら
    今後も言い続けるつもりなら、もう日本から出て行け!
    おめえらは今後の日本にとって、害にしかならねえ。
     
    平常時なら、言論や思想の自由も有効だけど
    日本が終わらない戦いの時期に入った今
    おめえらの気色悪い理想論は、国を潰す。
     
    私レベルまで生きてきて
    それでもまだ社会主義や共産主義を良しとするなら、頭が悪すぎる!
    何故、日本こそが最高の平等な国だと気付かない?
    その腐れた脳みそは日本にはいらんわ。
     
    今すぐ西方面の国にでも亡命してくれ
    日本で死んでほしくもねえ。
    おめえに割く火葬の燃料や墓の土地はねえよ。
     
     
    私たちがすべき事は、“通常の生活”。
    TVではバラエティーなどを流して
    現実から目を逸らしてほしいようだが
    そんな、“今までの生活” とは違うぞ。
     
    今、皆が出来る平均的な生活を
    出来るだけ多くの人々が出来るようにする、というもの。
     
    もう二度と前の生活には戻れない事は、覚悟しとくべき。
    今後は、あらゆる事が前代未聞になってくる。
    だけどそれでもなお、平常心を保て、と言ってるんだ。
     
     
    海外に逃げるのも良し。
    その際は、日本人としての言動を守って
    日本の素晴らしさを語り継いでくれな。
     
    今の私たちに残されているのは
    日本人としての誇りか、命、このどっちかだけだと思う。
     
     
    あ、絶対に死ぬとは限らんぞ。
    ほんのちょっと寿命が縮まるだけの人が多いだろう。
     
    人間どうせ、いつかは死ぬんだから
    産んで育てて死んで、をフル回転させて
    日本を維持していく感じになるだろうな。
     
    ・・・地殻に影響しない限りはな・・・。

  • 黒雪伝説・湯煙情緒 8

     ご苦労だったー
     
    宙に声が響き、巨大な手が現われ、ウサギを掴んで消えた。
     
     
    「誰ですか!」
    叫んだのは王子である。
    黒雪は振り下ろした包丁が宙を切り、反動で脳天からコケていた。
     
     この者の王である
     我々が他界で動くのはご法度
     始末に困っておったのだ
     
    「え? 誰? 何だって?」
    ノンキに空中に訊き返す黒雪を揺さぶり
    黙らっしゃい! とパントマイムをした王子が
    代わりに空へと質問をする。
     
     
    「あなたのお仲間は、まだこの世界に散らばっていますよね?
     私たちに捕まえて欲しい、という事ですか?」
     
     うむ・・・
     生死は問わぬが、出来るなら生け捕りにしてもらいたい
     
    「その報酬は?」
    黒雪のセリフに、王子がギョッとする。
     
     何が望みだ?
     
    制止しようとする王子を逆に押さえつけて、黒雪が叫ぶ。
    「国内で今から300年間は、金、銀、鉄、銅
     500年後はダイヤモンド、ルビー、石炭、800年後には石油
     1000年後からはレアメタルが採れるようにしてほしいーーー!」
     
     
    「な、何という欲張りな事を・・・。」
    「この王さまには、このぐらい軽いもんだと思う。」
    青ざめる王子と、平然としている黒雪。
     
     ふふ・・・
     界をまたぐ戦よりは安い、と値踏んだか 娘
     
     ならば、1匹捕える毎に鉱脈を教えよう。
     珍しくどちらにも損のない取り引きだが、やむをえぬ
     では、頼んだぞ
     
     
    「・・・・・・・・・・・・・
     ・・・・・・いなくなった?」
     
    重く暗かった空気が一掃された途端、王子が頭を抱えて叫んだ。
     
    「あああああああああああああっっっ!!!」
     
    ビクッとする黒雪。
    「ど、どうしたの?」
     
    「あ・・・、あなた・・・、今のが誰か知ってるんですか?」
    黒雪は、さあ? と首をかしげる。
    王子はガックリ、肩を落とした。
     
    「でしょうね・・・
     知っていたらああいう口は利けないでしょうしね。」
    この言い草に、黒雪がムッとする。
    「あなたのそういう誘い受けなとこ、イライラするわ。」
     
     
    王子はカッとなり、黒雪の両肩を掴んだ。
    「良いですか? おバカさん
     あれ・・・、多分、魔王ですよ!
     あなたは魔王と取り引きをしたんですよ!!!」
     
    「まおう?
     魔界の王さまって事?
     何でここに魔王が出てくるの?」
     
    黒雪の緊迫感のなさに王子は益々落胆したが、それもしょうがない事。
    普通の人間は、他の “界” が現実に存在する事すら知らないのである。
     
     
    王子は、しばらく無言で考え込んでいたが
    頭の整理が出来たのか、話し始めた。
     
    「一連の出来事で、私にもわからない事がいくつかあるんです。
     だけどそれも魔界が関わってたとしたら
     つじつまが合う部分もあるんですよね。」
     
     
     続く
     
     
    関連記事 : 黒雪伝説・湯煙情緒 7 11.4.8
           黒雪伝説・湯煙情緒 9 11.4.14
           
           
           黒雪伝説・湯煙情緒 1 11.3.23  
           
           小説・目次 

  • 訓練ジジイ 続報

    この記事は、狡猾な愛すべき犬というヤツら 11.3.28
    の主役のジジイのその後の話である。
     
    まさか続編を書く事になるとは思わなかったが
    とある状況に陥ったんで、2話連続放送でいくぞ。
    あ、続々編は明後日な。
     
     
    陽気が穏やかになったせいか、ジジイをよく見かけるようになった。
    いつ見ても公園にいるので
    もしかしたら家庭に居場所がないんじゃないか?
    という、いらん心配までしてしまう程に。
     
    春になると、外に這い出てくるのはジジイだけではない。
    ゆかいな仲間たちも、公園に集うようになる。
    公園はもう、あの孤独なサッカー少年だけの場ではない。
    (ちなみにこのサッカー少年、人が少ない時を狙って来るようだ。
     関連記事 : 2011年 明け 2011.1.4 )
     
    最近この公園が、ネタの宝庫である事に気付いたので
    我がのブログのためだけに、他人の荒探しをしている私としては
    鵜の目鷹の目で公園を注視している真っ最中である。
     
     
    ある日、ジジイがいつものように犬を訓練していた。
    犬はどんどん成長し、グレかけてる年頃なのか
    ジジイのお守りに嫌気が差しているようである。
     
    と言うのも、ダラダラし過ぎているのである。
    若犬には、ジジイのモタつきはイライラするであろう。
    ババアである私ですら、イライラさせられるから。
     
    もう、ジジイ、尺取虫レベルでスローモーなのだ。
    そのくせ、いきなり妙な指示を出す。
     
    犬、それに慣れきっているのか
    ジジイの進路変更には、何ひとつ動じず
    かと言って、言う事も聞かず、自分ルールを決行。
    また、その犬の決めたルールの方が
    正しい訓練法だったりするので
    実は犬が訓練士だったんか! という疑惑も浮上中である。
     
    そんで、それで褒めてジャーキーをあげるジジイは
    犬によく訓練されたジジイになってきているようである。
     
     
    て言うか、冒頭に書いただろ、“いつ見てもいる” って。
    犬という生き物は、外が好きだが
    さすがに、そんな根無し草のような生活がイヤなのかも知れない。
     
    「まだ、やりますのん?」 というセリフが聞こえてきそうな
    はあ、やれやれ、といった態度なのだ。
     
     
    “お守り” というのは、そういうもんだよ
    暑くなったら、また家にこもるだろ、それまで耐えれ
    と私がまったくの他人事で、目で犬を励ましていたところ
    座敷犬を抱いた初老の女性がおもむろに登場。
     
    ジジイ、老婦人の方を急に意識し始める。
    そして、おもむろに “とってこい” 訓練用の
    ボールを頭上に掲げる。 やたらピシッと!
     
    「え? 次その訓練じゃないでっしゃろ?」
    と、犬が動揺する。
    「え? “取ってこい” が見せ場だと思ってるんか?」
    と、私も動揺する。
     
    どっちかっちゅうと、犬を真横につけて歩き回るやつの方が
    おお、凄い! となると思うんだが
    あ、そうか、おめえらのその訓練は
    ジジイが先に歩いて、犬は後ろで自由行動で
    ジジイが振り向く瞬間に、キメれば良いだけの
    “ダルマさんが転んだ” もどきだもんな。
    ・・・ん? と言う事は、ジジイは犬のサボりを知ってるんか?
     
    どうもいまひとつ、この訓練の目的自体がわからんくなったが
    とりあえずジジイは、老婦人にちょっとイイとこを見せたいらしい。
     
     
    ジジイの成功を祈りつつ、私も物陰から応援する。
    まるでジジイの後ろに、見えない鼓笛隊がいて
    ドロロロロロロロロロ・・・・
    と、ドラムの音が聴こえてきそうな緊張感である。
     
    ・・・いや、そういう緊迫をしているのは
    ここら一帯半径100mでも、ジジイと私ぐらいのもので
    犬は 「まだ投げないの? タメ、長すぎちゃいますかー?」 だし
    老婦人は、自分の抱いてる座敷犬に何かを話しかけ
    座敷犬は老婦人無視で、道路を通る車に吠えている。
     
    ・・・飼い犬にナメられてる飼い主、多過ぎるぞ!
     
     
    ジジイ、真上に上げた腕が戻らなくなったんか?
    と不安になり始めたその時、緊張のせいか
    いつも以上に女投げでボールを放り
    「よし、取ってこい!」 と、無意味に大声になり
    犬が はいはい と、ダラダラ走って
    ボールをくわえてジグザグに小走りで戻ってきた瞬間
    ジジイはチラッと老婦人の方を見たら
    老婦人はベンチに よっこらしょ と座りかけていた。
     
    正直、周囲を見回して探しそうになったよ。
    何? これ、どっきりカメラじゃねえの?
    どこ? どこにカメラがあるの?
     
    だって、こんなベッタベタな定番コント
    思っても普通しないだろ。
     
     
    もちろん、この出来事は偶然の産物で
    その後、私がちょっと数日間、目を放している隙に
    ジジイは犬ナンパに成功して
    件の座敷犬婦人と、ぎこちなく会話をするまでに発展していた。
     
    私が次にこのふたりを見かけた時にも
    ジジイは “取ってこい” を披露していて
    座敷犬婦人に 「凄いわねえ」 と褒められて、誇らしげだった。
     
     
    関連記事: 訓練ジジイ 続々報 11.4.15
          
    訓練ジジイの謎 11.12.12
     
     

    評価:

    GENDAI(ゲンダイ)


    ¥ 1,050

    (2005-05-30)

    コメント:この手の商品は動物を締め出すが、使った人間も締め出される諸刃の剣! 犬猫は柑橘系が嫌いだけど、私も嫌いなんだよ。 そういう人は、ああ、使わなきゃ良かったよ、いつまで匂いが持続するんだよ、家に帰りたくねえよ、となる危険性大。 庭にでも撒け。

  • 黒雪伝説・湯煙情緒 7

    凄い勢いでザカザカ歩いていた足を止める黒雪。
    振り向く後方に、王子がノタノタ歩いている。
     
    「いつまでブーたれてるの?」
    王子はうつむいたまま、ボソッとつぶやく。
    「だって、あんな言い方しなくても・・・。」
     
     
    王子と黒雪がふたりで探索に出ると言うと
    当然、周囲は止めに入り、誰か彼か付いてくると言い張った。
    黒雪はその意見を、ひとことで黙らせた。
     
    「今の内に種を仕込まにゃならんから、付いてくるな!
     じゃないと、冬に出産が間に合わん。」
     
     
    「皆、黙って見送ってくれたでしょ?」
    「そうかも知れないけど、私たちの愛を汚された気がする・・・。」
     
    その湿った態度に、イライラしてきたのか
    王子の肩を黒雪が人差し指でドスドス突付きながら言う。
     
    「あなたは爬虫類だから、わからないかも知れないけど
     人間はそうボロボロ子供は出来ないのよ。
     隙あらば作っておかないと、子孫が繁栄しないの!」
     
    「そんな、人を産む機械のように・・・。」
    「どこぞのムチャ振り平等人権団体と同じ抗議をすな!
     王族は産む機械なのよ。
     継承権が揺らぐと、国自体が揺らぐの!
     税金で生きてる以上、個人の感情は二の次なの!
     それが人間の王族の務めなの!
     あなたも人間になったのなら、自覚してね。」
     
     
    黒雪がギャアギャア怒鳴るその肩越しに、動くものがかすかに見える。
    王子は指を口にあてて黒雪を岩陰に誘導し、望遠鏡を取り出した。
     
    「・・・やっぱりあなたの言う通り、ふたりで来て正解でした・・・。」
    王子がささやいて、黒雪に望遠鏡を覗かせた。
     
    チョッキのウサギが走ってくる。
     
    「“あれ” の説明を、従者にどうすれば良いのか、わかりませんものね。」
    頭を振り溜め息を付く王子の隣で、黒雪は無言で大ナタを取り出した。
     
     
    「ダメーーーーーーーーッ!」
    王子が小声で怒鳴る。
    「何? またご親切に逃がしてやるつもりなの?」
    今にも走り出そうとする黒雪を、王子が必死で止める。
     
    「止めてくださいーーーっっっ!
     この話、今までNO死人、という快挙なんですよ?
     こいつがこんな展開の話を書くなんて、もう二度とないですよ?」
     
    「・・・あれ、人じゃないし。」
    「NO死体!
     ずっとこのまま、メルヘンで行きたいんです。
     どうか、恋バナ、お願いします!!!」
     
    黒雪はチッと舌打ちをしながら、大ナタをしまいスリングを取り出した。
    姫出身とは思えないガラの悪さである。
     
     
    黒雪の撃ったそこらの石は、見事にウサギの腹に命中した。
    「あっ、当たった! 凄い!
     あなた、本当に戦闘は天才的ですね。」
    王子が褒めながら横を向くと、黒雪はもういなかった。
    撃ったと同時に、ウサギの側へと走り寄っていたのである。
     
     
    ふふ・・・、今夜はウサギのシチューね
    “食材” ゲットは、殺生だけど殺戮ではないわよ
    メルヘンでもロマンスでも、腹が減るのが自然の摂理!
     
     
    黒雪が邪悪な笑みを浮かべながら、包丁を振りかざした。
     
     
     続く
     
     
    関連記事 : 黒雪伝説・湯煙情緒 6 11.4.6
           黒雪伝説・湯煙情緒 8 11.4.12
           
           
           黒雪伝説・湯煙情緒 1 11.3.23  
           
           小説・目次 

  • ブスがモテる方法

    : この記事の出来事は、2010年夏の事である。
    : 何故書かずにいたかは、読めばわかる。
    : 何故今書くのかは、読んだ人全員からドン引かれされた
    : 口裂け女 11.4.5 の
    : コメント欄を読んでくれたまえ。
    : それでも、何でこんな記事を書かにゃならんのか
    : さっぱりわからんだろうが、心配すな。
    : 私にもまったくわからん。
    : 多分どうしても自画自賛したい、という私の習性のせいだ。
     
     
    さて、またケンカを売るようなタイトルだが、大丈夫!
    内容も充分に、四方八方に牙をむいているから。
     
    ブスがモテる、これにはひとつ条件がある。
    まず、ナイスバディになれ!
     
    はい、1個目からすいませんでした。
    以後、配慮いたします。
    気を付けてお帰りください・・・。
     
     
    そして美肌ババアになれ!
     
    はい、お怒りはごもっともです。
    またのご来場をお待ちいたしております・・・。
     
     
    さあ、ふるいに掛けられて残ったヤツ、
    おめえの未来は明るい。 かも知れない。
     
    今ババア真っ最中で、どうにも取り返しが付かんヤツは諦めろ。
    そうじゃないヤツは、若い今を我慢して未来に備えろ。
     
    ブスの下克上、可能だぞ!
     
     
    時は平日の正午
    場所は関西の駅前のスーパー。
     
    えらく限定されとるが、しょうがない。
    実体験っちゅうのは、世界同時多発は出来んものだ。
     
     
    いやあ、いっつも休日か、平日でも夕方以降にしか
    行かないから、気付かなかったよー。
     
    平日の昼間の安いスーパーな、穴場なんだ!
     
    何で駅前かっちゅうと、繁華街で会社も多いから
    昼飯を買いに来るサラリーマンがいるんだ。
    こいつらに賞賛してもらおう、という目論みである。
     
    もうわかったな?
    平日の昼間のスーパーの客層、きったないババアが多いんだよ。
    そう!
    モテるには、周囲が自分より汚い場所に行けば良い
    これ、自己満足の道への鉄則。
     
     
    何? その低レベルなモテ、と思うかも知れんが
    ブスなんだろ? 真にブサイクなんだろ?
    だったらモテる事自体、奇跡じゃねえか。
    滅多に起こらないから、“奇跡” なんだよ
    その、起こすのすら難しい奇跡の質にまで注文つけるなよ!
    真のブサイクでモテてみたいのなら
    贅沢言わずに私の経験を聞け!!!
     
     
    何故ここで年齢が大事か。
    それは会社近辺っちゅう事で、OLさんも来るからである。
    ピッチピチの彼女らと対等に扱われないためには
    この歳でこのレベルは凄い、と思われる必要がある。
    よって、ババアを前面に押し出すのである。
     
    そんで、たまに小ギレイなババアもいる。
    だがそれは、きっちりメイクに派手目ファッションが大多数。
    一般社会での美熟女は、少々暑苦しい人が多いのだ。
     
    そこで、こっちは “自然体” を演出する。
    美肌という条件の理由は、これなのだが
    日焼け止めのみでいける素肌の美しさが必要。
    これは、“歳の割に” で良い。
     
    一番大事なのが、“その歳で” Tシャツにジーンズで
    外に出られるスタイルの良さ。
     
     
    日本の男性はナチュラル好きとは知っていたが
    いやあ、この時ほど視線を感じた事はなかったよ。
     
    “歳の割に”“この歳で” という、他人の心の声がうるさかったが
    もんのすごーーーーーーーーく注目されたんだ。
    それも思わせぶりな視線ってやつ。
     
    一瞬だけ、美人の気持ちがわかった気がしたよ。
    美人って、いつもああいう風に男性に見られてるんだろうな。
     
    そうか、私の恋愛濃度が薄いのはブサイクだったからか!
    美人なら恋愛のお誘いも多かろうから、敏感にもなれるよな。
    うーん、私の知らない世界!!!
     
    ブサイクでも、体型と肌に気を遣っていれば
    ババアになった時に、晴れ舞台に上がれるぞ!
     
     
    モテ場を見つけた事で、私がどう良い目に遭ってるかっちゅうと
    ・・・・・別に何もない・・・・・。
    それから、その時間帯には行ってないし。
     
    ・・・・・・・・・・・・・
    何だよ、その沈黙は。
     
    あのな、いきなり勇者の剣とか渡されて
    どう使えば良いかわかるか?
    てか、今まで持ってなくても生きてこられたんだから
    これからも、そんな強い武器はいらんはず。
    それに使い慣れんものを、いらん事活用しようとして
    うっかり自分の手とか切るのがイヤ!
     
    ただ、意外な穴場発見! という方に喜びを感じたんだ。
    んで、ここで報告アンド自慢が出来てめでたしめでたし。
     
    ブサイクが幸せになれるコツは、わきまえるこっちゃな。
    「おっ」 という目で、瞬間的に見られる以上の事を望むと
    とても痛い目に遭いそうな気がするんだ。
    ケダモノの勘に過ぎないけどさ。
     
     
    生きる姿勢が、行動力と探究心がないんで
    そもそも、これが “モテ” と言えるのか? という
    身も蓋もない結論しか出せんですまんかったが
    おめえらの誰かは未来に、私にはない才覚で
    このユウシャノツルギを使いこなせるかも知れない。
     
    後は任せた、頑張れ!

  • 黒雪伝説・湯煙情緒 6

    「ねえ、用意できたあ?」
    黒雪が王子の書斎を覗くと、荷物が山のように置かれていた。
     
    「うわっ、何? この大荷物!
     あなた、夜逃げの練習してない?」
    「備えあれば憂いなし、って言うでしょう。」
     
    「これ、誰が持つの?
     ふたりだけで行くのよ?
     私には私の荷物があるのよ、あなた、持てるの?」
     
    「えっ、何でふたりだけ?」
    「人が多くても足手まといなだけ、と
     昔のサバイバルで、ものすごく学んだから!」
    「・・・ああ・・・、あなた、徹頭徹尾そういう態度でしたね・・・。」
     
     
    黒雪が荷物を覗き込む。
    「何が入ってるのよ、このバッグの数々。
     鍋、フライパン、包丁、まな板、コップ、茶碗、諸々の食器類
     下着、寝巻き、朝用普段着、昼用普段着、夜用普段着
     スリッパ、靴、香水、小説、辞書、etc、etc
     アホかああああああああああっっっ!」
     
    黒雪はバッグをちゃぶ台返しした。
    「どこにお呼ばれですかっ、それともお引越しですかっ!」
     
    「わかってますよ、ふたりだけなら厳選しますよ。」
    「とうっ!!!」
    王子が選んだ事典を、黒雪が手刀で叩き落した。
     
    「ふざけてるのかしら?」
     
    「ふざけてませんよっ!
     これは野草の事典なんです!
     知識は現地調達できませんからねっ。
     そういうあなたは何を持って行くんですか?
     それはそれは、なくてはならないものなんでしょうねっ!」
     
     
    ふたりでワアワア怒鳴り合いながら、黒雪の部屋へとなだれ込む。
    「はあっっっ?
     アックス、ハンマー、モーニングスター、クレイモア、
     マチェット、クロスボウ、スリングショット
     全部武器、しかも腕力頼りの武器ばっかりじゃないですか!!!」
     
    「あなたが武器名を全部知ってるのが驚きだわ・・・。」
    「私は知力特化キャラですからね。」
    「だったら草の名前ぐらい全部記憶しといてよ!」
    「一応大体の暗記はしましたけど、念のためですよ、念のため!」
     
     
    しこたま怒鳴り合い、ハアハア言いながら睨み合う。
    「・・・初夫婦ゲンカじゃないですか?」
     
    王子が怒った表情ながらも、フラグを立てようとするのを
    黒雪は素早く阻止する。
    「そうかも知れないけど、記念日とかにするのは止めてね?」
    「わかってますけど、何事も “初” は1度きりなんですよ?」
     
    黒雪がフーッと息を吐きながら
    ポージングをし、全身の筋肉を盛り上げた。
     
    「ラブラブ “恋バナ” が、こういう面倒臭いものなら
     この話、速攻で血と臓物のスプラッタ劇にする自信があるけど?」
    「ひいいいいいいいいいいっ・・・。」
     
     
    黒雪の脅し勝ちである。
     
    「・・・とりあえず、お互いに荷物を見直しましょう・・・。」
    「・・・そうね・・・。」
     
    無言でそれぞれの荷物の整理に取り掛かるふたり。
    市原悦子レベルじゃなくても、召使いたちには全部聴こえていた。
     
     
     続く
     
     
    関連記事 : 黒雪伝説・湯煙情緒 5 11.4.4
           黒雪伝説・湯煙情緒 7 11.4.8
           
           
           黒雪伝説・湯煙情緒 1 11.3.23  
           
           小説・目次 

  • 口裂け女

    知らない人はいない都市伝説だけど
    まあ、ザッと説明すると
    裂けてる口をマスクで隠した娘さんが
    「私、キレイ?」 と問い掛けてくる、という話である。
     
    えらい大雑把なのは、いつもの私仕様ではない。
    地域や年代ごとに設定が変わっているからで
    どの出方が正しいとか、ないからである。
     
    私の時代は、・・・あれ? えらい大昔なんで忘れたよ。
    鎌で切り掛かられてたような・・・?
    とにかく、回避方法がなかった気がする。
    “会ったら最後” みたいな。
     
    だから恐怖もハンパなかったようで
    女子たちはパニックを起こして、教室で泣き喚いていたけど
    何故か私は、「こんなド田舎に来るわけはない」 と
    歌手の巡業レベルに捉えていて
    すげえ他人事で、話に加わってなかったなあ。
     
    ちなみに、口裂け女はちょっと前は韓国に行ってたらしいぞ。
    えらいな日韓交流をやっとるよな。
     
     
    さて、私は先月ちょっとだけ口裂け女の気持ちになれた。
    口避け女の気持ちがどんなものかはわからんが
    何かを知った気にはなれたんだ。
     
    とある雨の日、日焼け止めすら塗るのが面倒だったので
    冬だし傘も差す事だし、まあいいか、と
    とことんノーメイクで出掛けたのであった。
     
    だがその格好は、サングラスにマスクに
    マトリックス的ロングコートに、・・・・・傘。
    自分でも思ったけど、正直近寄りたくない人種になっとった。
     
     
    反対側の歩道を5~6人の男子高校生たちが歩いてくる。
    皆でわいわい話をしているんだけど
    その内のひとりが、ずっと私に見とれているのである。
     
    ああ・・・、ダースベイダーとか好きな男子だろうな
    とは思ったけど、正直申し訳なかった。
     
     
    “夜目 遠目 傘の内” と言うてな
    私はその時、美人に見える3大条件の2つを満たしていたわけだ。
    遠目と傘の内。
    夕方で薄暗くなりかけていたので
    “夜目” も加わっていたかも知れんで
    スリーセブンの確変開始だった可能性も、大いにありえる。
     
    それでなくとも、ナイスバディの私は
    顔さえ隠せば、とても格好が良い。
    この顔がなければ、顔さえなければ
    それで動き回れる生物など、まさしく化け物だが
    そんな事を言っているのではなく
    とにかく私は顔がマズいのである。 うるせえ!
     
    それをサングラスとマスクで隠している。
    さぞかし美人に見える事であろう。
     
     
    だがしかしマスクを取ると、まごう事なきババアである。
    すまん、私は実はおめえのかあちゃん、
    いや、もしかすると、ばあちゃんの年齢なんだよ
    と、心の中で、ものすごく懺悔をした。
     
    マスクを外すとあらびっくり、って口裂け女のようだよな。
    ナイスバディも罪だよな、ふっ・・・。
     
     
    とか悦に入ってるけど、あの男子には二度と会わないよう願っている。
    会ったら、絶対にすぐバレる。
    だって私レベルのナイスバディ、ここらへんじゃ私だけだもん。
    真相がバレたら、ショックを与えかねんし
    こっちも、そこまで落胆されるのは辛いぞ。
     
    にしても、ババアのナイスバディ、ここで自慢するぐらいしか
    使い道がねえのが、大誤算だったぜ。
     
     
    あ、ついでに自慢をもう一弾かますがな
    エレベーターのドアが開いたら、ジジイが乗ってたんだよ。
    んで、どうもと頭を下げて奥へと乗り込んだんだな。
     
    1階に付いたらジジイが言った。
    「ねえちゃん、先に降りてえや。」(関西弁あやふや)
     
    ねえちゃん
     
    ね え ち ゃ ん !!!!!
     
    ジジイでも関西人は、「おばちゃん」「ばあちゃん」 と呼ぶはず。
    と言う事は、私はすっごく若く見られたと言う事だわよね!!!
     
     
    「では、お先に失礼いたします。」
    と、上品ブリつつお辞儀をして降りたが
    背中で勝利宣言の高笑いをさせてもろうたわ。
     
    その日はいつもに増して、無意味に増長させてもらったが
    これは私のせいではない。
    悪いのは、あの ジ・ジ・イ ハートマーク略
     
    ジジイがこれを知ったら
    目が悪いだのボケてただの、色々と言い分もあるだろうが
    それらには一切、耳を傾けたくない。
     
     
    と、このように、勘違いアホウを調子こかせると
    ロクでもねえ事にしか、ならんわけだ。
     
    だがしかし、落ち込まれるのはもっとうっとうしいので
    やはりここは、口先三寸のお世辞をペラって
    適度に機嫌良くさせておくのが、私の正しい使用法である。
     
     
    通りすがりの半ボケ老人の、たったひとことに
    ここまで舞い上がれるのも凄い、と思われるだろうけど
    これが、残念なヤツがラクに生きるコツだぞ。

  • 黒雪伝説・湯煙情緒 5

    王子が寝室に戻ると、黒雪が紙の束を持ってベッドの上に立っていた。
    「何をしてるんですか?」
     
    「あら、もう寝るの? ちょっと待って
     危ないから、部屋の向こうの端っこに行ってて。」
     
    「はあ・・・」
    王子が部屋の隅に行くと、黒雪姫はヘアバンドで目隠しをした。
    そして持ってた紙束を宙に放り投げる。
    その後、ベッドの上でばいーんばいーんと飛び始めた。
     
    「???????」
    王子があまりのわけわからなさに、動揺し始めた時
    「そこだあああああああっっっ!」
    と、黒雪がベッドの上から床へとダイヴした。
    黒雪の持ってたキリが、床にグサーッと突き刺さる。
     
     
    黒雪が目隠しを外し、キリに刺さった紙を拾い上げる。
    「ふうむ・・・。」
     
    「あの・・・・・・?」
    王子が部屋の隅から声を掛けると
    黒雪はようやく王子を思い出したようだ。
    「あ、ごめんごめん、もういいわよ。
     紙を拾うのを手伝って。」
     
    せっせせっせと拾い集めた紙を見たら、どうやら地図のようだ。
    「それで何をしてたんです?」
    「うん、調査に行く地を決めてたの。」
    「はあ?????」
     
     
    「この前、他の誰かの意思が関係してそう、って言ってたでしょ?
     それが本当なら、私たちがランダムに選んでも
     そいつの行って欲しい場所に設定されるんじゃないか、と思ってね。」
     
    「なるほど・・・。 それは一理ありますね。」
    「でしょー?」
    黒雪は嬉しそうに威張った。
     
    王子が黒雪の笑顔にキュンときて
    いとおしそうに頬にチュッチュチュッチュしながら訊く。
    「で、どこになったんです?」
    「ここ。」
    「えーと・・・。」
     
    王子は全体地図と見比べながら、穴の開いた場所を探した。
    「ああ、国の南東の端ですね。
     荒野の向こうはじですよ。
     ここなら途中まで東国との道を行けるから
     行き来もラクで・・・・・・・
     ・・・・・・・・・・。」
     
     
    王子は部分地図の穴に改めて気付き、足元を見た。
    「奥さま・・・、次からは他の選出法にしてください!
     いくら貧乏国とは言え、一応、王子妃の寝室
     このじゅうたん、高価なんですよっ。」
     
    「でへへー。」
    黒雪がベッドに潜り込む。
    「『でへへ』 じゃありません!」
    怒る王子だったが、すぐにデレデレし始めた。
     
    「こういうのって、“新婚” ですよねえ。」
    布団をめくると、黒雪は既にヨダレを垂らして寝ていた。
     
     
    「・・・・・・・・
     何で頭を使わない人って、寝付きが良いんでしょうね・・・。」
     
    気にするな。 不眠症のヒガミだ。
     
     
     続く
     
     
    関連記事 : 黒雪伝説・湯煙情緒 4 11.3.31
           黒雪伝説・湯煙情緒 6 11.4.6
           
                  
           黒雪伝説・湯煙情緒 1 11.3.23  
           
           小説・目次