アッシュの連日の、ジョブ・ゴーゴー演説の成果なのか
館の生産量は予定よりも大幅に上がった。
村に作られた館直売所の売れ行きも好調で
ハムの他、チーズなどの乳製品にも力を入れようとしている最中である。
デイジーの熱心な和食研究と、アッシュの単純な味覚の賜物か
和食を知らない人にも容易に受け入れられる、安い日本食コーナーも
当初の予想を覆して好評で、街から食べに来る人も増えた。
長老会でのアッシュの評価は、これによって不動のものとなったが
同時に生意気さという、マイナス要素も目立ってきていた。
熱心にやってるかと思えば、もう何もかもどうでも良い、と
厭世観をむき出しにしたりと、不安定な心理状態が続いていたのだ。
デイジーやアリッサの、大丈夫ですか? という心配にも
いや、単なる更年期だし、と流し
本人が気付いていない分、余計に始末に負えなかった。
正に、“荒れている” と周囲には映っていたのだが
やるべき事はやっているし、まあ、そのぐらい
という温情で、アッシュの無体は見逃されていた。
アッシュが診察を受ける気になったのは
ゲームを長時間続ける気力がなくなってきたためだった。
目も疲れやすくなったし、こんなこっちゃLV上げもままならない。
何か一発、元気が出る薬 (注: 合法薬) を処方してもらおう
という、軽々しいドーピング気分であった。
診療所は5階にある。
リハビリ室や、トレーニングルームと同じ階である。
アッシュがアリッサの整体以外の用事で、この階に来る事は滅多にない。
何せ、“主様” だから、フリーパスである。
アッシュはノコノコと受付けに入っていった。
「あっ、主様!」
受付けってのは、何でどこもこんなに美人揃いなんだろう
アッシュは久々に気を良くして、カウンターに両肘を突き
美人受付け嬢に診察をお願いした。
美人受付け嬢が、医師のところに行った時に
開けっ放しにされたドアから、事務室の棚が見えた。
何となく眺めていたら、Rの項目にROSEというインデックスがある。
アッシュは、護衛の制止を振り切って
カウンターを乗り越え、そのカルテを取った。
ローズだって、医者にかかる事ぐらいあったはず。
カルテがあっても不思議じゃないのだが、何故かそれを見逃せない。
開いたカルテの中には、“krebs” と書いてあり
アッシュには、その単語だけが読めた。
看護士の友人に習った事があるのだ。
ローズの名前を見ただけで、頭の両脇の血が引いているのに
更にその単語がある事で、心臓をドスッと拳でどつかれた感覚になった。
うう・・・、とその場にうずくまったアッシュの異常に
護衛がカウンターを乗り越え、アッシュを抱きかかえて叫んだ。
「誰かーーー、早く来てくれーーーーーーーーーー!!!!!!」
慌ててやってきた医師と受付け嬢は、アッシュの様子に驚いた。
胸を押さえながら息が吸えない状態で、もがき苦しんでいる。
何かの発作だと思われた。
酸素マスクを着けるも状態が変わらず、心音が異常に高鳴っている。
護衛が、これです、と差し出したカルテを見て
医師はこの状態がヒステリーによるものだと判断した。
が、何かの疾患の可能性も捨てきれない。
医師は救急車の手配を決断した。
街の長老会管轄の病院に入院したアッシュは
一応、主だという事で、頭の先からつまさきにいたるまで
全身をくまなく検査された。
顔と頭が飛びぬけて悪い以外は、さしたる異常は見られなかった。
貧血と栄養失調ぐらいである。
今回の症状は精神的なものだと診断された。
長老会のメンバーが見舞いにやってきたが
アッシュは鎮静剤を点滴され眠り続けていて、反応はなかった。
主の入院という事で、館にも長老会にも衝撃が走り
病院長まで呼び出されて、どうするかを何日も会議で話し合われたが
病気は何ひとつない、という事で
アッシュは眠ったまま、館に移送される事になった。
長老会管轄とは言え、人の多い街の病院では警備面に不安があるからである。
アッシュの寝室は改築中だったので、客用寝室に運ばれた。
デイジーは、アッシュの側を離れなかった。
眠る時は、部屋のソファーで寝た。
アッシュはそのまま、何日も何日も眠り続けた。
ジジイが主代行として、館に滞在する事になった。
館は過去にないぐらいに、揺れに揺れていた。
講堂に住人たちが折を見ては訪れ
主のいない演壇に向かって、自己流の祈りを捧げていた。
続く。
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ジャンル・やかた 67 10.4.2
ジャンル・やかた 1 09.6.15
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ジャンル・やかた 66
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刹那
もう、言葉からして、耽美なイメージがあるんだが
現実生活にこんなものはいらん! と、断言する。
ババアになった今だからこそ、言える事なんで
若いもんは耳をかっぽじいて聞いとけば、良い事もあるかも知れん。
私も何百年前だったか忘れてしもうたが
若かりし頃はチャラチャラしとった。
毎日が普通に来て普通に終わって、何の不都合もなくて
イヤな事があっても、その場をしのげれば後はどうでも良かった。
そういう日々がずっと続くと信じて疑わなかった。
20代も中盤になると、人生のすべてが決まってしまった、と思えた。
自分の道はこの足元の1本に絞られて
努力しても、ちょっと良くなるだけで
そう大して変わらないんだろう、と諦めていた。
かあちゃんの、「まだまだこれからなのよ。」 という言葉も
虚しく聴こえるだけで、到底信じる気分になれなかった。
不幸だったわけではないけど、“決まってしまった” というのが
何だか窮屈に思えて、絶望まではいかないまでも
あーあ、って感じの心境だったんだ。
ところが、あれやこれやと色々あって
すっかりババアになった今になってみると
何かもう、人生えれえな展開になっとって
しかも自分は実は、そんなに苦労してきていなかった
努力もしていなかった、そう気付いてしまった。
その時その時で、すんげえ辛い想いはしてるんだけど
それは感情であって、“苦労” じゃないんだ。
気分が落ち込んで苦しい時は、どうにかしようと
気分転換になるような事をして乗り切ってたけど
それも単なるその場しのぎにしか過ぎなかった。
楽しい事ってのはな、結局は思い出にしかならない。
そういう思い出は、心の支えにはなるけれど
昔を思い出して懐かしむ、なんて情けない。
良い時が若い頃の武勇伝のみで、それを脳内でリピート再生して
昔話ばかりしている年寄りにはなりたくねえと思う。
年を取ってきた時の、本当に役に立つ財産ってのは
頑張って勝ち取ってきたものなのだ。
金銭でも人脈でも地位でも知識でも心の強さでも、何でも良い。
とにかく、これをした! と、胸を張って言える何か。
苦労は買ってでもしろ、という格言があるけど
あれは真理だと、今になってようやくわかった。
“苦労” というのは、切磋琢磨、試行錯誤する事であって
どうにかしよう、と逃れる術を考える事じゃない。
立ち向かおうとする意気込みを言うんだと思う。
まだ若造の分際で、「道は決まった」 とか、ほざいていたけど
ババアになった今でも、いや、ババアになればなるほど
明日がわからなくなってくる。
それは自分ではどうにもならない支障が増えるのが、理由のひとつ。
運動神経が鈍って、1cmの段差につまずくとか
体の節々が痛むとか、今考えてた事を忘れて思い出せないとか
信じられない老化が押し寄せてくる。
明日はどう衰えてるのか、もうすんげえ恐怖でなあ。
ある意味、自分が日々生まれ変わっている気分さ。 劣化コピーで。
そんでもういっちょの理由は、死が現実のものとして目の前に控える事。
周囲で死に事が多くなってきて、それが自分の年齢と近くなってくる。
でもただポックリ死ぬのなら、まだ幸せだと言える。
ボケただの、寝たきりだの、介護だの
リアルに自分の近い将来の問題として、ドーンと鎮座されちゃう。
自分がどう死ぬかわからない不安、それが一番恐いものだったとは!
ほんと、20代なんて人間としてまだまだ新品である。
そういう時に財産を貯えておかんと、後々絶対に後悔する。
何度も言うが、ジジイババアになってからが長いんだよ。
車や家電は10年20年使えるのに、翌年には型落ちだろ。
人生もそうだと思われているけど、実は古ぼけてからが勝負時なんだ。
長い生の中、若い時なんて一瞬なんだよ。
その体が動く時に、何か頑張っておくべきなんだ。
私は今、後悔しているよ。
無条件に安泰を信じて、無意識に刹那を感じて退屈していた事を。
切羽詰ってなかった、あの頃の自分を。
だけど今こうやって、年取った年取った、と言っているけど
多分、平均寿命から考えても、あと数十年は生きる。
その時になって、再び過去の自分を恥じたくないから
まだ頭や体が動く今の内に
私は刹那を捨てて、未来を考えて生きていこうと努力したい。
若い頃のチャラチャラ仲間なんかも
皆グチグチ嘆いてはいるけど、何とか少しずつでも備えていってる。
過去に生きる人として、生を終えたくない年寄りは
あがいてあがいて必死こいている。
たとえ未来がどうなろうと、今の頑張りは無じゃないと信じて。
どうやら人生は、何度でもやり直せるみたいなんだ。
道も1本道じゃなかったんだ。
自分が気付けば、だけどな。
年を取るのが恐いかも知れないけど
年を取った自分は、また違う自分になっている。
恐がってた昔の自分を鼻で笑えるほどに。
それも自分次第のようだが、きっとそうなれると信じる。
一生苦労する気になれば、人生、結構良いもののような気がする。 -
ジャンル・やかた 65
「まず、この書類を見てくださいー。」
アッシュが示し、リリーが書類を配る。
あらかじめ提出しておかなかったのは
その場で提案し、勢いのみで押し切ろうという
アッシュのいつものやり方であった。
「館は畜産だけでも、牛、豚、羊、鶏を飼っていますー。
それに加えて、広大な畑で様々な作物も栽培していますー。
しかしその収穫物は、住人が消費する以外は
村にちょろっと卸すぐらいなんですよー。」
「それがどうしたんだね?」
「この館、寄付金と税金で運営されているんですよねー?
皆さん、寄付していらっしゃいますよねー?
それを “投資” にしてみませんかー?」
まるで、どこぞの不認可金融取引セミナーのような話である。
メンバーもやれやれ、と落胆した。
「館の産業は、昔ながらの方法でやってるんですよー。
つまり人の手ですべてまかない、化学薬品も極力使わないー。
今で言うところの “自然派” なんですー。
それが実に丁寧で美味いんですよー、野菜も肉もー。
これは充分に “館” ブランドとして、売れるレベルなんですねー。」
捲くし立ては、アッシュの真骨頂である。
「村のリサーチもしてみましたー。
街が館の本拠地なら、村は館の最前線ですー。
村の人々は、細々と生活を営んでいて
大きい買い物は街まで行ってるんですー。
店が充実していないー。」
アッシュは、館での演説のように声を張り上げた。
「そこでー!」
「村に館ブランドの製品の直売所を作るんですー。
乳製品はまだ生産量が弱いですが、野菜や肉は充分に出荷可能ですー。
この提案に、村人の反応は好評でしたー。
販売の仕事をしたいという人もいますー。
売り場所を作る資金がないなら、ネット販売も視野に入れれば良いしー
館の仕事を自給自足主体ではなく、商売にするためには
もっと効率を考える必要があって、その計画書がこれですー。」
ここまできたら、徐々にメンバーも興味を持ち始め
リリーが配る書類を食い入るように見る。
「自給自足も良いけれど、やはりお金は回さなくては集まってこないー。
外貨を稼ぐのが、経済の第一歩だと思うんですー。
それで軌道に乗って採算が取れるようになったら
館への税金の投入が少なくなり
皆さんの “寄付” も “投資” になるかも知れませんー。
まあ、これは順調に行けば、ですがー。」
「ふむ、これは良い計画だと思うが、そう上手くいくかね?」
その指摘に、アッシュはイヤミったらしく溜め息を付いた。
「まったく気が短いー。
いいですかー、この計画はかなりの長期で考えてくださいー。
最初は口コミで売るしかないですが
私が死んで、館が浄化された後なら
広報部を作って、館の存在を広くアピールできますー。
それからが、儲けを考えて良い時期に入ると思いますー。
まあ、私が死ぬか、作業が上手く回るようになるか
どっちが先かまでは計算できませんでしたがねー。」
「きみの寿命次第かね、はっはっは」
間の悪いギャグを飛ばすおやじに、アッシュが眉ひとつ動かさずに言った。
「私の自然死を待てなければ、殺せば済む事ですがねー。」
「そんで、これが販売所と売買許可証の申請書ですー。
私ら館にいる人って、公務員なんでしょー?
税金で給料貰ってるんですもんねー。
気付きませんでしたよー、もうドビックリですわー。
公務員の副業って基本的には禁止ですよねー?
だから館に商業部を作りたいんですが
そのへんのお力添えもお願いしたいんですー。」
リリーが次々に出す書類に
「手回しが良いでーすねえ。 これを1ヶ月足らずで?」
と、若いメンバーが驚くと、アッシュが人指し指を上下に振って
「そう、それ!!!」
と、大声を上げた。
「改築費用の捻出法を考えていて、ふと館の図面を見たら
そこに大きな可能性が広がってるじゃないですかー。
もう、愕然としましたよー。
今までは倫理だの道徳だのばかりに焦点を当てて改革してきたけど
腹が減ったら正義どころじゃないですもんねー。
今後はいかに他人を受け入れて、館を社会に帰属させるかですよー。
それが出来て初めて、“改革” と言うんですよー。
それに気付いてからはもう、ドタバタで走りたくりましたよー。
まったく、ニートには盲点なジャンルでしたねー。」
若いメンバーは、ほうほう、と感心したようにうなずいた。
「それで、改築費用はどこから捻出するんでーすかあ?」
「はいー?」
アッシュはキョトンとした表情をした。
「いや、店は改築じゃなくて・・・・・ あっっっっっ!!!!!」肝心の寝室の改築の事を忘れていて、頭を抱えるアッシュに
メンバーたちは、ついプッと吹き出した。
「よくわかりました。
計画書も申請書も不備なく揃っているようなので
今回の提案は、早い時期に良い返事を約束できると思いますよ。
ご苦労様でした。
実りのある会議だったとお礼を言いたい。」
ダンディーな紳士がアッシュに丁寧に告げた。
アッシュは、はあ・・・とだけつぶやき、ヨロけながら立ち上がる。
肝心の己の金策が一歩も進んでいなかった事に
相当なショックを受けている様子だった。
ジジイも、もちろんその会議に出席していたが
ニヤニヤするだけでひとことも喋らなかった。
アッシュとリリーが、会議室を出て行った後
アッシュの計画を、具体的にどこの機関に持っていくかが議題に上った。
この計画はダンディーの予言通り、サクサクと進んでいく。
館 “道の駅” 化大計画 byアッシュ が着々と進み
最近のアッシュの演説は、いかに労働が尊いか、という
ニートのおまえが言うな! な話題に終始していた。
アッシュは相変わらず、金策に悩んでいたが
支払いを長老会が立て替えてくれる事になった。
経済改革案のご褒美というわけだ。
もうほんと、捨てる神ありゃ拾う神ありだよな、ありがたやありがたや
アッシュは街の方に向かって拝んだが
街の方へ行く道は、グルリと大きくカーブしているので
街の方角だと思った方向じゃなく、拝むアッシュのケツの方が街なのだ。
まったく、とんだ無礼者である。
だけど・・・
痛い目に遭ってるんだから、こんぐらいやってもらって当然じゃね?
アッシュの表情が暗く歪む。
そもそも、やりたくてやってるわけじゃなし
よく考えてみたら、何でこんなところにいるのか
何でこんなに辛い事をやってるのか
一体、何なの? 元々兄の遺言でーーーーー・・・・・・・
ここまで思って、慌ててその考えを打ち消す。
そっちの方向に考えたら、もう生きていけない気がする
てか、もういつ死んでも良いんだけど
そんなん思いながら生きていたら、何かダメな気がする
とにかく、前だけを見て走らないと、私、ダメになっちゃう気がする!
とにかく、夢のヒッキールームをありがとうございます
アッシュは改めて拝んだ。
街方向にケツを向けて。
ついでに言えば、金も借りてるだけで、払わなくて良いわけじゃないんだが
アッシュの脳内では、そこはスッポリ抜けているのが不思議である。
続く。
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ジャンル・やかた 66 10.3.31
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
日焼け止めの白浮き防止策
09.5.15のババアの日焼け止め の記事で
ババアのメイクは日焼け止めで汚くなる、という意見を書いた。
白浮きする、タルミ毛穴に毛穴落ちする、乾燥を助長させる
などが理由なのだが、思案していて、ふと思いついた。
自分は色黒だと卑下して買った、ローラ・メルシエの黒ファンデが
まだまだ残っているのだ。
黒すぎるファンデ、結構使わんぞ。
逆に脂肪注入してふっくらさせたいぐらいの骨ババアに
シェーディングなぞ必要なかろう?
買ったのは何年前だったかわからんが
変質している様子はないので、それを日焼け止めに混ぜてみた。
本来、日焼け止めに他のものを混ぜるのは好ましくない。
紫外線カット数値が落ちるからである。
だが、混ぜるものにも日焼け止め効果があったら良いんじゃないのか?
そう思いついたのである。
ローラ・メルシエのファンデは、確かSPF25 PA++
日焼け止めは、SPF30 PA+++
絶対に日焼け止めの効果は落ちると思うんだが
紫外線の弱い冬の間なら、冒険もできる。
結果、白い日焼け止めに黒ファンデを混ぜたら、普通のファンデ色になった。
タルミ毛穴に落ちても、ファンデ色だと目立たない。
ローラ・メルシエのファンデは、薄付きで保湿力があるので
日焼け止めの厚塗り感も抑え、乾燥も緩和された。
その上に、クスミ防止のコントロールカラーや
クマ隠しを重ねても浮かない。
でもファンデを更に乗せると、ちょっと厚塗り感が出る。
と言うか、コントロールカラー等を重ねるならファンデはいらない。
日焼け止めとファンデを混ぜたものだけでも
上にお粉をかけると、化粧感バッチリになるので
私の場合は、Tゾーンだけに粉をかけている。
この日焼け止めとファンデ混ぜ作戦、大成功である!
気になる紫外線カット効果の落ちは
混ぜるファンデを高SPFにすれば、夏でも問題ないと思う。
混ぜる黒いファンデは、外国ブランドに多かった気がする。
ざっと思い出せる中では、私の持ってるローラ・メルシエ以外なら
ボビィ・ブラウン、MAC、シュウ・ウエムラなどの
メイクアップアーティスト系ブランド。
他はマリー・クヮントや昔のガン黒御用達のレブロンにあったはず。
ああ、江原道にもあったあった。
日焼け止めの白は真っ白なんで、出来るだけ黒いファンデが望ましい。
ただ、黒ファンデでも微妙に赤みと黄みに分かれるので
薄めるとそこらへんの色調で、自分の肌色に合わなくなるかもしれないから
そこだけは注意した方が良い。
この混ぜ日焼け止めで今年の冬は絶好調だったが
ネットで化粧品を調べていたら、ある情報が目に入った。
オイリー肌の人は、日焼け止めに砕いたパウダーファンデを混ぜると
汗でも皮脂でも崩れにくくなるという口コミだ。
そうか!
液体に液体を混ぜるなら、薄まる可能性もあるけど
液体に粉体を混ぜれば、その心配はないんだ。
私には保湿力も必要なので、クリームファンデを混ぜているが
オイリーで白浮きしたくない人は、黒粉を混ぜれば良いわけだ。
と言う事は、これまた卑下して買ったけど黒すぎて持て余している
ボディショップのミネラルファンデ、これ夏に使えるんじゃないか?
ミネラルファンデなら、最初から粉々だから砕く必要もない。
まだ乾燥する時期なんで、この方法は試していないけど
オイリーな人は、やってみる価値があると思う。
メイクを始める前に塗る日焼け止め
これがキレイなメイクの仕上がりの邪魔をしている事を
常々苦々しく思ってきた。
メーカーは、いらんSPFの強化などせずに
肌をキレイに見せる日焼け止め、っちゅうのを何故作らないんだ? と。
だけど、ないものは工夫せねばならない。
消費者が自分の肌に合わせて、試行錯誤しなければならないのだ。
今回は良い方法を発見できたんでラッキーだったけど
化粧品の分野には、もっともっと研究の余地が残っている、と
不満とともに、希望も何となく感じるんだ。
考え付いた日焼け止めにファンデ混ぜ
ものすごく自画自賛したいけど、案外もう皆やっているのかも知れんな。
まだの人、ぜひやってみてくれ。 -
ジャンル・やかた 64
はあ・・・
余暇は引きこもろう、と思って寝室改造をするのに
その暇が取れなくなるハメになってんじゃねえよ!
アッシュは書斎で、電卓を前に頭を抱えていた。
ジジイのいらん采配で、余分な物は自腹扱いになってしまった。
経費だと思っていたからこその、ゲームハード全揃えであって
残り寿命でプレイしきれない量のソフトも買ってしまったのに。
もう全部注文しているので、キャンセルはどうだか。
てゆーか、キャンセルしたら、私のパラダイス台無しじゃん!
ぜってー、ノークレームノーリタ-ン! と、もう一度、電卓を叩く。
何行にもなる足し算を、アッシュがまともに計算できるわけがなく
3度やって3度とも違う合計数が出てきた日にゃ
どれが間違ってるのか、すべて間違ってるのかすら、見当が付かない。
英語どころか数学、いや算数も弱いアッシュは
全体的に薄らバカだという結論になるわけだ。
とてつもない巨額になりそうなのに、正確な数字がわからず
脳が発酵しているところに、リリーが入ってきた。
目の前に積み上げられた書類を読みもせず
やたらめったらサインをする。
「これ、自筆サインじゃなく、シャチハタじゃダメなんですかねー?」
いつもなら、そうゴネるアッシュが、黙々とペンを走らせるので
所在なさげに、リリーが机の上の明細書を手に取る。
「金策ですか?
あの趣味の道具の数々は普通、経費扱いにはなりませんよ。
考えなしな事をしましたね。
諦めで貯金を崩したらどうですか?」
「・・・貯金、ないんですー。」
何に使ってるんですか、食費もいらないのに、と驚くリリーに
「日本の化粧品ですー。」
「ああー、メイド・イン・ジャパン、高いですよねえ。」
「・・・・・・・・・・」
沈黙に耐えかねて、またリリーが話し出す。
「だったら、主様の写真集とか出したらどうですか? ほほほ」
アッシュがペンを走らせながら、気がなさそうに答える。
「・・・要望があれば、水着までオッケー、とかー?
・・・んで、次は主様開運グッズとかですかねえー?」
「・・・くだらない話をしました・・・。 申し訳ございません。」
いけないいけない、主様が言うようなたわごとを言ってしまったわ
主様が無口だと、どうも調子が狂ってしまう
自重せねば・・・、と、リリーは心底恥じた。
にしても、だったらどうやってお金を稼げば良いんだろう・・・
何でいつもこう、どこにいても何をしても、最終的には貧乏になるんやら。
サインをし終わり、グッタリと机につっ伏して
自業自得と呼ぶべき己の “不運” を呪っていた時だった。
あっっっ、そうだ!!!!!
引き出しをまさぐって、敷地内の地図を出して広げる。
ここで作ってる物をチョロまかして、ネットで売れば良いんだよ!
私ってどうして、こう天才なんやら。
そんなほぼ犯罪な目論みで、地図を見る内に疑問が生じた。
自分のいたらん手段にではない。 館の産業についてだ。
「ここ、結構な数の食物とかを作ってるけど
それ、どっかに売ってるんですかあー?」
「そういうのは総務部の方に問い合わせてください。」
リリーがいつものリリーへと体勢を立て直し
相手にしてくれないので、総務部にダッシュした。
総務部ではアッシュが初めて話に来たので、全員直立不動になった。
構わずアッシュは熱心に質問をする。
その姿に、主様が自分たちの仕事に興味を持ってくださっている
と、部員たちが感動した矢先だった。
ひととおり話を聞いて、何となくだが理解できたアッシュは
ああ・・・盲点だった・・・
こんな基本中の基本をおろそかにしていたなんて
私のクソバカ野郎ーーーーーーーーっっっ!!!
と、心の中で叫び、無言で机に頭をゴンゴン打ち付けた。
総務部中が凍りついた。
総務部がアッシュの計画を知るのは、すぐ後の事で
それはアッシュにしては、珍しく良い企画ではあったのだが
その前に必ず、周囲の心にダメージを与える方式は控えた方が良いと思う。
その約1ヵ月後に、長老会は再びアッシュの特別会議開催の要請を受けた。
前回の会議は、ガックリと肩を落としたアッシュで幕切れになっていた。
間もなく寝室の改築工事が始まると聞く。
注文した品も、次々に館の倉庫に運び込まれているらしいので
メンバーの全員が、金の無心だろう、と予想していた。
そしてその推理は、ある意味当たっていた。
続く。
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ジャンル・やかた 65 10.3.29
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
ブサイクの法則
アイドルでも微妙な顔の作りの子っているじゃん。
すげえ魅力的で可愛いけど、よく見たら作りはそうでもない、みたいな。
これを私は、“人間、外見だけど、顔の作りではない” 説の
柱に持ってきていたわけなんだけど
その理由は、さして言えば “演出力” だと思っていたんだ。
もちろん、この考えは今も揺らいではいない。
私の場合は、周囲がとことん気を遣ってくれているのかも知れんが
飛び抜けたブサイクの割には、批判をされない。
この私に、直接 「ブス」 など言おうものなら
相手の急所を突きまくる総攻撃を繰り出すので
言いたくても言えないのであろうが
それにしても、言われなさすぎどころか
逆に褒められる事態まで起こっておる。
そこまでは望んでないし、混乱させられるので
お世辞も大概にしてほしいものだ。
これも自分の “演出力” だと思っているのだが
(こいつに何か言おうものなら・・・、と思わせるのも含めて。)
美の研究には余念がないので、更に突っ込んで
作りが崩れているのに魅力がある人もいるのに
その差は何だろう? と、常々考えていた。
ある日何となくTVを眺めていて、とんでもない法則を見つけた。
笑顔で華がないのがブサイク!!!
また、ロクでもねえ説を言い出して
関係者諸氏にはご迷惑をお掛けして申し訳ないが
これ、絶対にあると思う。
本当に造作の整った顔は、この説には関係ない。
美人は怒っても泣いても、もちろん笑っても美しいからだ。
そう、私は笑顔が醜い。
あまりのブサイクさに、キメ顔というのも持てていないが
とりあえず笑顔はあかん、というのは薄々気付いてはいた。
そうか、笑顔の華が美人へのカギなんだな、と気付いて
改めて自分の笑顔を冷静に観察してみた。
私の笑顔の醜さの秘密は、口角が上がらないのと
まぶたに脂肪があるタイプの一重のせい。
口角が上がらないのは多分、頬の肉付きの形状が原因。
骨格が平らなので、頬の脂肪を押し上げにくく
更に老いによるたるみのせいで、口付近の筋肉には頬肉支えは荷が重い。
目は一重にしては、そんなに細目でもなく
理知的な雰囲気もしないでもないので、気に入ってるのだけど
笑うと、まぶたの脂肪が盛り上がって腫れ目になるのだ。
ああ、何だ、こういうわけかー、と激しく納得。
確かに笑うと感じは良くなるけど、美からは遠ざかる。
こいつはジレンマだよな、と思うけど
今まで、気合いによるゴリ押しで突っ走ってきたのは
自分のブサイクさ的には、割と正解な方法だったわけだ。
まあ、そういう方式を取っとるから、口角も下がるんだろうけど。
だから穏便な方向で魅力を出すには
笑顔を研究するのが近道だと思う。
笑うとパッと印象が明るくなるようなイメ-ジで。
笑顔は強力な武器だ、という都市伝説は実に正しい。
いやしかし、今回の検証で鏡の前で散々笑ってみたが
鏡が歪んでいるんじゃないかと思たよー。
鏡、ストレスを掛けてすまんだった。
あまり己のツラを映さないようにするんで、何とか耐えてくれ。
(うちの鏡、相当な負担になったんか壊れてしもうとる。) -
ジャンル・やかた 63
「にしても、彼女の様子はどうしたんだね?」
「いつもは多少なりとも、無邪気さがありましたよね?
まあ、どっちもヘンだという事には変わりないですけど。」
「言葉に険があるし、まるで別人のように感じますよ。」
メンバーたちの言葉に、ジジイは呆れた。
「あんたたち、録画画像を観とらんかったんかね?」
画像? 何のですか? と、口々に訊くメンバー。
「やれやれ、じゃあ、アッシュの言動も理解できんわな。」
ジジイは溜め息をつくと、説明を始めた。
「報告書には事務的に書かれていたが
ローズはアッシュのあの館での、唯一の支えじゃったんじゃ。
その繋がりの深さを知らないと、わからんかも知れんじゃろうが
ローズは大切なアッシュを、自らの死を持って守ろうとした。
録画画像にちゃんと残っておる。
『命を掛けてあんたを守る』 という最期の言葉がな。
だからアッシュはローズに汚名を着せ、館の崩壊を防いだんじゃ。
この画像は、さすがにアッシュには観せられんので
わしが事前に届けたんじゃが、会議前に確認していなかったんか?」
「そんな画像があったんですか・・・。」
「申し訳ない、我々の方のチェックミスだな。」
メンバーたちには初耳のようだった。
「あんたらも、気合い不足じゃの。
このやり取りを見ていたら、アッシュとローズのふたりが
いかに命を掛けて、館を守ろうとしているかがわかるぞ。
じゃが、残されたアッシュは
大切なローズの死に、今にも気が狂いそうじゃろうな。
あの画像を観れば、その気持ちがあんたらにもきっとわかるじゃろう。
アッシュの前では、もうこの話は禁物じゃぞ。」
重い背景のほんの一部を聞かされただけで
気の毒そうな顔をするメンバーに、ジジイが釘を刺す。
「今までアッシュの寝室は、少しでも安らげるようにと
ローズがいつもバラの花で埋め尽くしていたんじゃよ。
ベッドカバーからカーテンから、毎日ローズが整えとったんじゃ。
それを思い出すのも辛いゆえの、大幅改築なんじゃろう。
主の寝室は、警備上あそこじゃなきゃ困るんじゃが
アッシュは今、書斎で寝泊りしておるようじゃぞ。」
「それで、彼女は大丈夫なんですか?
ショックで人格が変わるという話もありますし・・・。」
メンバーの心配に、ジジイはサラッと答えた。
「これを乗り越えてこそ、主なんじゃよ。
ダメなら、しょせん主の器じゃなかったという事じゃな。
その見極めはわしがする。
無理ならば切り捨てるまでじゃ。」
アッシュびいきのはずのジジイの非情な言葉に、驚いた一同を見て
ジジイがいかにも意外そうな素振りをする。
「街の名士が揃って何を驚いとる?
あんたらだって、こんぐらいやって権力を得とるだろうて。
シビアなもんじゃろ、政財界も。」
それを言われるとそうなんだが
館は街の重荷であると同時に、元々は街の良心でもあったのだ。
自分たちがやっているのはボランティアだと思いたい気持ちがあり
だからこそ改革は、断固として進めなければならない。
出来れば、あの忌まわしい相続を二度とせずに、だ。
「では、寝室の改築ぐらい認めてあげましょう。
今の彼女には、安らぐ場所が確かに必要ですからね。」
ひとりのメンバーの言葉に、他のメンバーたちがうなずいた。
ジジイはそれを見て、言う。
「そうか、じゃあ、そこはわしに任せんしゃい。」
呼び戻されて、長老会から了承を得たアッシュは
「ありがとうございますー。
今後も全力で頑張りますので、ご指導をよろしくお願いしますー。」
と、まるで心のこもっていない棒読みお礼を無表情でした。
そこへジジイの横やりが入る。
「ただし、認めるのは改築費と常識的な家具のみじゃ。
棚、鏡台、KOTATSU、FUTON、TATAMI
コンポとパソコン、DVD機器の類も許そう。
ただしTVは1台までじゃ。
他の物は、全部あんたの自腹で何とかせえ。」
それを聞いたアッシュは、初めて表情を崩し青ざめた。
「ええーーーーーーっ?
液晶、すんげえ高いんですよー?
ネオジオソフト、チョー美品レア物落札しちゃったんすよー?
美容機器だって、ゲルマニウムローラーとか高価ですよー?
超音波美顔器なんか30万超えですよー?
美しさを保つのも、崇拝対象者の義務じゃないですかー?」
「心配すな。
ない “美” は保つ必要もない。」
ジジイが超!セクハラ発言をサラリとし
紳士たるメンバーたちを慌てさせ
リリーは吹き出しそうになったのを根性で耐え
アッシュはヘナヘナと床に両手両膝を付いた。
アッシュとリリーが帰っていった後、ジジイは言った。
「さて、どう金の工面をするやら。
あやつに部屋にこもられたらマズいんじゃ。
大きな悲劇を味わったんだから
それをぜひとも館の管理に活かしてもらわにゃのお。」
今日のアッシュには、有無を言わせない迫力があったが
ふぉっふぉっふぉっ、と高笑いをするジジイを見ると
この人の方が真の鬼だ、とメンバーはゾッとした。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 62 10.3.18
ジャンル・やかた 64 10.3.25
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
訪問販売
たまにうちにも訪問販売が来る。
ほんとこの訪問販売、嫌いで、そのせいでチャイムの音すらイヤなんだ。
昔はどうにか玄関を開けさせようと
自分の名前を言って、ご近所さんかと勘違いさせる手法が流行っていた。
これは 「ご用件は?」 の質問で回避できるのだが
中にはなかなか用件を言わない人もいて
もう、絶対に断るのに、何でこんな時間のムダをしなきゃいけないのか
イライラさせられる事も多かった。
今でもこれに似た手法はあって
「近所に越してきた○○です。」 とか言うんで、出てみたら
近所に代理店が出来た布団売りだったりする。
玄関先に、訪問販売お断りの札を掲げたいんだが
その札で “断れない人” 認定をされて余計にターゲットになる
とTVで言ってたので、それも出来ない。
訪問販売で買わなきゃならんものなど何ひとつない!
という信念があるので、ほんと来ないでもらいたいよ。
どうやったらチャイムを押す前に、それをわからせられるのかなあ。
このように、全断りをしているのだが
最近は腹が立つ言い方の販売員が増えた。
「○○ですが、ちょっと出てきてください。」
これ、すんげえムカつかないか?
「出てきていただけますか?」 じゃないんだよ。
勝手に来ておいて出て来いって、どういう言い草だよ?
この言い方、特に有名な会社に多いんだよ。
牛乳の宅配をしている超有名メーカーとか。
中でも私がとても怒っていたのが、某企業なんだ。
この企業さ、何度もしつこく来るんだよー。
先月もピンポン来たよ、夕方7時過ぎの飯作りの時間帯に。
「某企業ですが、お知らせがあるので出てきてください。」
本当にこういう言い方をするんだぜ?
「どういうご用件でしょうか?」 と、インターホンで訊いたら
光のご案内だと。
またかよ!!!
この某企業の光案内、去年も3度ぐらい来ている。
確か1度目はマンションタイプの光設置の案内で
そんなんは大家さんに言わないと無理だろ。
そんで2度目は長々と説明されて、考えてみます、で
後で調べたら、既に加入している契約の案内だった・・・。
1度目2度目はドアを開けて応対してこれだったんで
3度目はうんざりして、インターホンのみで対応した。
もちろん、既に入っている契約のご案内だった。
うち、何年も前からそこの企業の光なんだよ・・・。
うちが光に入る時に、大家さんに確認をしたら
マンションタイプの設置を固辞されたんで
戸建タイプのにしか入れなかったんだ。
こういう説明もちゃんとしとるというのに、また来たんかよ
今までのやり取り、全部受け流しかよ?
某企業は客の情報も確認せずに、ノコノコ訪販しとんのか?
私が何年も顧客である事は、一切意味なしか?
優遇せえとは思わないが、せめて契約者だと認識はしてくれよ!
呼んでもないのに契約者んちに来て
既に入っている契約の案内をするから出て来い、とは何事だよ!!!
数日後にポストにまた、その企業のチラシが入っていて
専サポに、こうこうこうなんだよー、と訴えたら
それはひどいんでクレームを入れろ、と指示された。
私的には、よくわからん分野でそういう苦情を言うのはとても苦手なんで
おめえが機嫌が悪くて、誰かに八つ当たりをしたい時に
私の代わりに電話してくれ、と言ったら
そりゃもういつでも! と何故かとても喜ばれた。
そんで早速機嫌が悪くなるような事が起きたんか、電話をしたらしい。
大家さんの感触が良かったんで
マンションタイプの光設置が出来ますよ!
そうすると今の契約は解除しなきゃならなく
工事費に2万何ぼ掛かりますけど
月々の使用料が500円安くなりますよ!
専サポは怒って、「アホか!」 と本当に怒鳴ったそうな。
その契約だと、安さの恩恵にあずかれるのは5年後以降で
しかも今の契約では、長期使用割り引きってのがあるんで
逆に損をするんだとさ。
「お知らせがあるんで出てきてください。」 にイラッとして
インターホン越しの対応で済ませたせいかも知れんが
そんな話、私は聞いてないよ・・・。
インターホンで、きちんと話さないのは何でだ?
意味のある話なら、こっちも玄関を開けるぞ。
不利な契約変更だとわかっているから
ツラをつき合わせて騙しにかかろうとしてたのか?
前3回が、既に入っている契約を契約しませんか? という
話にならん “お知らせ” だったんで
今回もそうだと思って、インターホンのみにしたんだが
今回のはちっとは違うNEW情報だったわけじゃん。
何でそれを最初に言わんかなあ。
ま、話を全部聞いても、PC系は自分ひとりじゃ即決はしないけど
立派な大企業なのに、こんなやり方をしてたら
詐欺会社にしか思えなくなってくるぞ。
訪問販売、何でこんなに多いのか不思議でならない。
需要があるんだろうか?関連記事 : 10.4.7 NTT光の営業
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ジャンル・やかた 62
配られた報告書とアッシュの解説に、長老会メンバーは苦悩していた。
「これは、本当の事なのかね?」
ひとりの紳士がアッシュに向かって訊ねた。
「何をマヌケな質問をしているんですかー。
これが、まごうことなき現実なんですー。」
資料を片付けながら、振り向きもせずに答えるアッシュに
他のメンバーが続けて訊く。
「きみは長年の護衛に罪をかぶせたわけだね?」
その言葉にアッシュの右目がピクッと動き
参加していたジジイとリリーはハラハラした。
アッシュは椅子に座り、テーブルを指でカツカツ叩きながら言う。
「こういう事を言うのは卑怯なんで、ほんと言いたくはないですけどねー
最前線にいない人にはわからないと思いますよー。
てか、普通の暮らしを出来るなら
こんな汚れ仕事、わかる必要なんてないですー。
死ぬか生きるかの環境なんて、存在しない方が良いんですからー。
でも私はもう、ドップリ関わってしまったー。
責任も重いー。
それをわきまえて、自分の仕事をこなしますから
今後は事後報告のみを待っていてくださいー。
この報告書を見ただけで、気分が沈むでしょー?
事件勃発の真っ最中に経過を聞いていたら、マジでウツになりますよー?
本当なら、改革が完了するまでは
皆さんへの報告も止めたいぐらいなんですよー。
知らない方が良い事も多いんですからねー。」
「知られたくない事をしている、って事かね?」
その言葉にアッシュが激怒すると、言った本人も含め全員が覚悟したが
意外にもアッシュは冷徹な表情で静かに答えた。
「知られたくない事をしていた事を
しないで済むようにしたいから、今頑張ってるんですよー。」
まるで早口言葉のような、わかりにくい返答だったが
メンバー全員がその言葉の意味を深く理解し、言葉に詰まった。
「どうせ汚れた手だから、責任は全部私が負いますー。
時間が掛かる事ですが、必ず私の代で終わらせますー。
そして私が死んだ後に、やっと館が浄化されるんですー。
その計画を見守っててくれませんかねー?」
長老会メンバーが皆、沈痛な面持ちで黙りこくったところに
アッシュが、紙を取り出した。
「それで、今回の締めくくりとして
私の寝室の改築をしたいので、その経費を認めてくれませんかねー?
図面と明細はこれですー。」
「何だね?」
ワラワラと集まって、その紙を覗き込む。
「部屋を丸ごと取り替えるのかね!」
「tatami?」
「液晶TV2台?」
会議室がザワめきたつ。
「これは何だ? メガドライブ?」
「SEGAのゲーム機ですよー。」
「こっちは何だ? ナショナルイ・・・オンスチーマー?」
「ああ、それは美顔器ですー。」
爪をほじくりながら答えるアッシュを全員が睨む。
「何のためにこんな物が必要なのかね?」
「ほんと、すいませんー。
自分でもちょっと独裁入っちゃってるかなー、と思ったんですけどー
私の心の安定のためなんですー。
さっきは大きい事言っちゃいましたけどねー
私も今回の事は、精神的にものすごいキツいものがあってですねー
せめて寝る場所ぐらいは、安心できる空間にしたいんですよー。
実はもう発注済みなんで、後は工事を始めるだけですー。
でもこれでも売れる物は全部売っちゃって
費用の足しにしようとしたんですけど、もう全然足りなくてー。」
一本調子で答えるアッシュに、一番若そうなメンバーが口を開いた。
「あなたは、OTAKU? とかいうやつでーすか?」
アッシュは はあ??? 何言ってんの? こいつ
という表情で、そのメンバーを睨んだ。
いつもは真面目にふざけた態度を取っているので
態度の悪さのランクで言ったら、そう変わらないのだが
今日のアッシュには、どことなく凄みがある。
たとえて言えば、チンピラ風情が盃をもらった、みたいな。
そんなアッシュの態度に戸惑ったメンバーが無言でいると
アッシュがテーブルの上に両手を組み、ようやく普通の口調で話し始めた。
ご機嫌が直ったのかと思ったが、その内容はよりヒドいものだった。
「子供を何人も誘拐してきて殺して血を飲むとか
使用人に次々に暴行するとか、そんな事をするより
ゲームの中でモンスターを倒している方が、健全じゃないですかー?
そういう極悪非道な支配者って大勢いるわけですしー。」
あまりの言い草に、互いに目を合わせて動揺するメンバーたち
ジジイがその様子を見て、アッシュに告げた。
「ちょっと我々だけで話すから、席を外してくれんかのお?」
アッシュとリリーが出て行った後、残された長老会メンバーは
ジジイのアッシュかばい独演会を想像したが
意外にもジジイが発したのは質問だった。
「それでどうするんじゃ?
アッシュを主から下ろす事も考えるべきじゃないかい?」
その言葉を聞くと、途端に会議室がザワめき始めた。
「いや、その選択肢はないんじゃないですか?
ここまで来といて、今更交代は愚策の極みでしょう!」
「実際にあそこまで出来る人間は、そうはいないと思うねえ。」
「そうだな、ゼロから権力を持った人間は、勘違いの全能感に溺れる。
しかし彼女には、それだけは見られない。
現に初めての個人的要求が、この寝室の改築だ。」
次々と起こるアッシュ擁護に、ジジイは内心ほくそ笑んだ。
じゃろ? 冷静に考えればあんな逸材はおらんぞ?
ジジイのアッシュ交代提案は
長老会に、自らの意思でアッシュを選ばせ直すためのワナだった。
ダラダラと30余年、運のみで主を務めていただけかと思いきや
それだけの功績を残せたジジイは、やはりかなりのタヌキであった。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 61 10.3.16
ジャンル・やかた 63 10.3.23
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
自意識
この言葉の真の意味が、本当にわからん。
自分でも、あまり使ってないんじゃないかと思う。
自意識について、予想してみると
多分、世界の中での自分の存在の確立なんじゃないかと思うが
この時点で既に大間違っていたら
この下全部、誤爆になってしまうんじゃないかと思うが
そういう冒険の旅には出なくても良いんじゃないかと思うが
毎度の綱渡りだし、今更何を守る? って感じじゃないかと思うが
韻を踏めたか?
自意識が自分の確立なら、それは必ず環境が関わってくる。
自分の置かれている境遇と周囲の人々。
その中で、自分と周囲の感覚の落差が大きいほど
自意識は強くなるような気がする。
自然体で生きていられるのなら、自分の確立など考える必要もないからだ。
“考える”“意識する” っちゅうのは
哲学的趣味の持ち主じゃない限り、何かを解決したがっているわけで
大抵の場合、それについて不満を持っているからである。
じゃあ、自意識が強いヤツはどういうタイプか。
ここで大きく関係してくるのが、自己評価だと思う。
自己評価が冷静に客観的に出来るというのは
他人の目を取り入れるのが上手いヤツである。
自意識が低いヤツは、他者の評価と
自分像のバランスを上手く取れているので
自意識を意識する事なく、生きていける。
つまり自己評価が極端に高いか低いか、なヤツが自意識が強い。
自己評価が高いヤツは、自分の不幸不遇を他者のせいにする傾向がある。
自分はちゃんとやってるのに、周囲の見る目がなくて評価されない
と、疑いなく思って、己を甘やかせている。
自己責任感がないので、自業自得すら考えない。
自己評価が低いヤツは、他人の目を気にする神経を持ち
自分を大事にはするけど、自分自身を信用できない。
こう考えていくと、どうも自意識というのは
あまり良い意味ではないようなイメージになってくる。
周囲に対する不平不満が溜まってきた時に、自分の内に目を向け始め
その時に追求するのが、自意識ってやつじゃないだろうか。
しかし、一見、自意識の権化のように思える勘違い系は
唯我独走状態なので、社会まったく眼中なし空間にいて
自意識云々には囚われていないような気がするのだ。
となると、自意識というのは、ある程度の社会性がないと
持つ事すらできないもののような気がする。
この点においては、一概に悪いばかりとも言えないので
度が過ぎるとマズい、という話なのだろう。
まあ、これは何に対しても言えるのだがな。
自分の事で考えてみると、私にはあまり自意識はない。
私は勘違い系に属するからだ。
自分の世界を持っていて、それで満足なのだが
とにかく他人に迷惑を掛けたくない、という気持ちがあるので
社会との穏便な迎合を目指している。
自分の世界は自分の心の中にだけありゃ良いしな。
そして何より、自分にも他人にもあまり期待をしていない。
(もちろん例外はあるが、基本的に大体、って話である。)これ、えらい投げやりな感覚に思えるだろうが、違うのだ。
人に期待しないでいると、他人のちょっとした厚意に気付けるようになる。
その上、その “意外な厚意” が、とてもありがたく感じる。
自分に期待しないと、自然体でいられる。
やっただけの評価しか貰えないのも当然だと納得できる。
何の問題もなく、逆に良い事だらけである。
私の言う “期待” とは、自分に都合の良い願望を差す。
社会というのは、ギブ&テイクが基本設定だと思う。
これを逸脱したら、失望が結構な高確率でやってくる。
それに懲りたんで、私は期待をしない努力をしているのだ。
そこまで極端に走らなくても良いだろうけど
己をわきまえない期待というのは
多くの場合、周囲にも自分にも害にしかならない。
自意識というのは、実はこの “期待” じゃないかと思うのだ。