• メントールたばこ

    今時、たばこを吸うヤツはバカだと思う。
    ヘビースモーカーの私は、MAX大バカ者なのだが
    やめたくないのだから、始末に負えない。

    たばこさ、ほんと吸わない方が良いぞー。
    たばこ大好きのグレート大タワケな私が言うんだから間違いない。

    ここでたばこの話題を出す度に、これを書くけど
    ボケて同じ話をする、年寄りの性能なわけじゃなく
    当事者の注意喚起なので、間違えて苦笑せんでくれ。
    そりゃ、いっつもマジで忘れて何度も同じ話をしとるけどさー。

    メントールかメンソールかメンソーレ沖縄か、正しい呼び名がわからんが
    とにかくメントール入りたばこを貰った。

    私はメントールたばこは吸わないんだが、それは
    メントール入りたばこは勃起不全になり、その理由が、脊髄にくるから
    という話を、どこかで見たか聞いたか、したからだ。
    私に勃起する身体機能はないので、関係ないんだが
    “脊髄にくる” って部分が、どうにもこうにも気色悪いと思わんかあ?
    だから意識的にメントールたばこは避けていたんだ。

    しかしこの話、よく考えてみりゃ、だったらミント菓子とかも悪いよな?
    “吸う” って行為が問題なら、ミントのアロマオイルなんかどうだよ?
    だからガゼネタだと、最近になって思ったさ。
    じゃないと、ミンティア常備食い、すっげーヤベえじゃん。

    このメントール都市伝説を除いても、ヘビースモーカーとして
    メントールたばこなんぞ素人の吸うもんだ、と公言していた。
    私がどんだけ玄人なんだか、まずそれを自問自答するべきなんだが。

    そんな私に何故メントールたばこをくれる? しかも3種類。
    と、怪訝な顔をしたら、「最近のメントールたばこは面白い」 んだと。

    下の写真は、左上はいつものCASTER ONE 100’Sボックス
    タール 1mg ニコチン 0,1mg

    他の3つが貰い物のメントールたばこ
    右上 KENT HIGH DEFINITION MENTHOL
          TASTE 1 (タール 1mg ニコチン 0.1mg)

    左下 LARK MINT SPLASH 7
          (タール 7mg ニコチン 0.5mg)

    右下 KOOL BOOST 5
          (タール 5mg ニコチン 0.5mg)

    下の写真は左から、キャスター、ケント、クール、ラーク
    下の青い粒、これがフィルターに埋め込まれているメントールの粒。

    クールとラークには、この青い粒が入ってて
    下の写真のクールで説明すると
    フィルターの銀色の部分を指で潰すと、メントールの強い味になるんだ。
    ケントには、青い糸が入っている。

    今のメントールたばこはこうなってるのかーーー! と、
    フィルターをほじくって、感動したよー。

    私は家では、少しでも毒をバリアしたいのと、唇の乾燥防止のために
    いつもフィルターを使っているんだけど

    これを使っているのは、比較的吸いやすいからだ。
    吸うのに力が要るフィルターもあるんだよ。

    で、思ったんだが、吸った後のメントールたばこの粒を
    このフィルターに入れて吸ったらどうなるかな、と。

    潰した後の粒でも、数個入れると微かにメントールの味がした。
    ケントの糸の方は、イマイチ味がしない。
    ロコツに貧乏臭い事をやっとるが・・・。

    てかさ、だったらこの手の別付けフィルターに
    ミントの粉を入れたら、メントールたばこになるよな。
    強さも調整できるし、好きな銘柄をメントールにできて良いんじゃねえ?

    ミンティアを砕いたらどうだろう?
    とか考えたが、やってみようか迷う自分がいて、そんで思いついたのが
    料理に使うミントエッセンス、これなら手軽で良いんじゃないのか?

    とか思っていたら、貰ったメントールタバコを消費するだけで飽きた・・・。
    それどころか、ちょっと喉にきている。
    メントール、結構ノドには悪い気がするぞ。
    私には、たまーに1~2本ぐらいで充分だな。

  • ジャンル・やかた 32

    「そんで、募集の話じゃが」
    ジジイが続ける。

    「昨今は活字離れで、新聞も読まれなくなったんじゃろうなあ。
     年に一度の募集で誰も来ない事もある。
     来るヤツもかなり減ったんじゃよ。
     しょうがないんで、数人募集にきた時など
     面接での合格者を複数出して、順番待ちをさせる事もある。
     そんな人手不足の時に来たのが、あんたの兄ちゃんじゃ。」
    「偶然、なんですかー?」
    「偶然じゃろうなあ。」

    何て疫病神な兄なんだ、と、アッシュがガックリと肩を落とす。
    「で、異国に妹がいるのはわかったんじゃが
     グレーは長く放浪してたんで、身寄りがないも同然、となってな。
     なんせ、その時は他に誰も来てなかったんでな。」
    斜め下から睨み上げるアッシュに、ジジイが慌てて首を振る。
    「わしが決めたんじゃないぞ、長老会じゃぞ。」

    「いやの、わしもそろそろ隠居したくなっちゃってのお。
     グレーには期待してたんじゃよ。
     風変わりだけど頭は切れるし、わしゃ飲み友達だったんじゃよ。」
    「兄は何か有益な情報を握ってたんですかねー?」
    「・・・多分、わしが主だというのは薄々気付いてたはずじゃ。」
    「これ、何のヒントですかねー?」
    アッシュは写真を腹から出した。

    「あんた、それ今どっから出した?
     うっ・・・、ホカホカしとるのお・・・。」
    「いいからー! 裏には漢字で “歴史と伝統” と書いてありますー。」
    「これ、どこで入手したんじゃ?」
    「あんたらが見落としてたとこからですー。
     もう、そういう事はいいからー!
     これどういう意味だと思いますかー?」

    「うーん・・・、ここらへんの城主は自室は2階にあったもんなんじゃ。
     現代は最上階とかに住みたがるらしいが
     城を持っている者は、いくら増築をしても伝統を守って
     いるべき場所にいる、とでも言いたかったんかのお?
     ま、わしは途中で最上階に移ったけど、結局は1階に戻ったんで
     当たってると言えば当たってるんかいのお?
     グレーはわしの移動記録など知らんはずじゃしの。」
    「旧館を調べろ、って事を伝えたかったんですかねえー?」
    「・・・さあな。 あの男も、わけわからんとこがあったからのお。」

    まったく、今になっても意図が判明しないなど
    どんだけわかりにくいヒントだよ?
    兄、ちょっとバカじゃねえ?

    この写真がなければ、エレベーターに気付いた時に上階に行ってただろうから
    攻略できたのは、この写真のお陰といえばそうかも知れないけど
    それにしても、運が良かった、以外の言葉が思いつかない。

    「そんで、どういう経緯で私に相続話がー?」
    「・・・うん・・・、それは驚きじゃったよ。」
    ジジイは、しばらく遠くを見つめた。

    「おーい、お迎えがきましたかー?」
    「ちょっと回想してただけじゃ!」
    「あー、ビックリしたー。
     年寄りなんだから、突然黙り込んだり動かなくなったりしたら
     間違われて埋葬されかねませんよー、気をつけてくださいねー。」
    「あんたは・・・・・。」
    「日本は何と火葬なんですよー。
     こっちは気が付いたら地中だった、だけど
     日本じゃ気が付いたらあたりが火の海だった、ですからねー。
     まあ、どっちもヤですけどねー。」

    ジジイは怒りを抑えつつ、話を戻した。
    「グレーは遺言書を作っておったんじゃ。
     それも法にのっとった正式なものをな。
     どういうつもりで、あんたに相続させたかったんかはわからんが。」
    「この館の中でそういう事が出来るんですかー?」
    「普通は出来ん。
     じゃが、グレーはリリーと付き合っておったんじゃ。」

    「ええええええええええええええーーー?」
    リリー? あの香水女?

    「そ、それは、ここに来てからですかー?」
    「うむ。」
    「以前からの知り合いとかじゃなくてー?」
    「うむ。」
    「ここにいる数ヶ月の間でー?」
    「うむ。」

    兄ちゃん、何て手の早い・・・。
    呆然とするアッシュに、ジジイが同情の眼差しを向けた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 31 09.11.30
          ジャンル・やかた 33 09.12.4

  • 刺激

    トラブルメーカーに限って、こういう事をほざくのだが
    私が生活する上で一番望むのが、平凡と平穏である。
    変化など起きると、心は良くても体がヘタるので
    お願いだからソッとしといて、という気分で日々を暮らしている。

    ところが歳を取ってくると、そういう生活はヤバいと気付くのだ。
    感情の上下や情報は、良い意味での “刺激” になる。
    これを受けてこないと脳がボンヤリしてくるのが、モロにわかるようになる。

    私は定期的に外からの情報をシャットダウンする時期がある。
    それはゲームにハマっている時。

    ゲームのワクワクやドキドキ、イライラは刺激的ではあるが
    プレイしていない時でも、ゲームの段取りで頭が一杯だし
    ネットはしないは、TVは観ないは、映画は観ないは、本は読まないは
    そのゲーム以外の情報を取り入れないので
    マジで脳がボケてくるのが、ありありとわかるのだ。

    こういう事も、過去に何度か書いているのだが
    脳がモヤっているせいで、何度も同じ事を言いたくてたまらない。
    ボケ老人は、自分が同じ話をしてるのを絶対に自覚していると思う。

    実は今もゲームにハマっていて
    この大掃除でクソ忙しい年末に何をやっとんのじゃ、と自分でも思うんだが
    民主党政権に落ち込んで、現実逃避についやっちゃったら
    思った以上にハマっちゃったんだよなあ・・・。

    年末年始の休みからドラクエ9を始めよう、と決めていたのに
    それまでの逃避として、単なる繋ぎに始めたら
    もうやり込みまくるハメになっちゃって
    こりゃ正月休みもこのゲームに終始してしまうかも・・・。

    お陰で、ブログのネタがなくて困っている。
    常にニュースとかを観て、心を動かしていないと
    ここでギャアギャア怒る気になれんのに。

    あー、これも私にニュースを観る気を失くさせた民主党が悪い!
    引いては、選んだ国民が悪い!
    更には、国民にそこまで不信感を持たせた自民党が悪い!
    とにかく、自分以外のどれかが悪い!!!

    とか、責任転嫁をしつつ、毎日空き時間にカツカツDSを叩いているのだが
    この前、美容院での順番待ちの時に、DSをプレイしてたんだ。
    そんなにノンキに出来るゲームじゃないんで
    カツカツカツカツカツカツ、画面を必死でタッチさ。

    そしたら美容院の新人らしきおにいさんが、シャンプーとか世話担当になって
    その子が、すんげえ大人しくて初々しい可愛い男の子で
    こういうにいちゃんを毒牙にかけちゃならねえな、と気遣って
    愛想良くしつつも、雑誌を手にとって眺めていたんだが
    その子が、すんげえおそるおそる訊ねてきたんだよ。

    「さっき待っている時に何をなさってたんですか・・・?」 と。
    (私のDSは、2重にカバーを掛けているので
     パッと見、DSとはわからないのだ。)

    それが聴こえないようなか細い声で、オドオドと訊くもんで
    ああ・・・、鬼気迫ってやってしもうとったか・・・
    公共の場で、何ちゅう恥さらしな、と、激しく反省させられたぜ。

    DSでゲームをやってたんですよ、と答えると
    「すごく熱心にやってましたよね?」 だ。
    もう、ほんとすいませんすいません、という気分になったよ。

    と、ここまでハマってるゲームは何かと言うと
    DSの “ブラッド オブ バハムート” である。

    プレイレポートを書こうかとも思うんだが
    何せ、毎度変わらずのヘタレっぷりでな・・・。
    参考になる内容にならないと思うんで、ちゅうちょしてるのさ。

    私が言うのも何なんだが、ゲームってのは
    マトモな生活には、ものすげえ障害になる。
    手とか脳とか使ってるんで、ボケ防止に良いように思えるんだが
    一時話題になった、“ゲーム脳” になってるだけで
    それとボケとは別物のような気がする。

    ゲームにばかり熱中していると、バカになると思う。
    見本がここに・・・。

    それと忙しいのを理由に、情報摂取をしないのもバカになる。
    “忙しい” ってのは、結局は毎日のルーティンワークが
    過密になってるだけで、新しい事はほとんど起きていないんだよな。

    つまりは同じ事の繰り返しだから、脳的には慣れた部分しか使わない。
    使わない部分の脳はヒマなんで、どんどんなまけてしまう。
    これがボケに繋がるんだと思う。

    常に新しい刺激を取り入れて、脳の普段使わんを鍛えておかないと
    頭がほんとマジでボンヤリしてくるぞ。
    若い頃はわからないけど、歳を取るとそこらへんが
    不思議なぐらいに、はっきりと自覚できるんだ。

    頑固者はボケやすい、という俗説があるが
    自分の通常の枠に固執して、変化を受け入れる余地がないと
    確かにそうなりやすいのもうなずける話だ。

    私もいい加減、元の好奇心を取り戻す事に努力するよ。
    老人性ウツとか言って、逃避してたら
    取り返しがつかない事になりそうだ。

    とりあえず今のゲームを終えて、大掃除も終えて
    ドラクエ9も終えたら。

    ・・・とか言ってる時点で、既に期待薄だがな。

    あっ、余談だがな、久々に会った人に 最近どう? とか訊かれて
    いやあ、更年期で参るよー、と答えたら
    ええー? どういう症状なの? と、更に突っ込まれたんで
    「何かイライラする」 と、正直に答えたら
    大爆笑されて、「ナイス!」 とウケられた。

    いや、マジなんだって! ギャグじゃないんだって!
    まったく、どこぞの女性芸人が、こういうのをネタにしとるもんで
    本気の病状告白も、お笑いとして処理されるじゃねえかよ!
    周囲を笑わせるために歳取ってんじゃねえんだよ、やめてくれよー。

  • ジャンル・やかた 31

    広くキレイな会議室の大テーブルの上には
    アフタヌーンティーセットが置かれていた。

    「で、この広いテーブルのこの隅っこで
     ふたり隣同士でせせこましく座るわけですかー?」
    「ふたりで話すのに、何で5mも離れて座らにゃならんのじゃ。
     すまんが、近くで話をさせてくれんかのお?」
    「セクハラしたら、はちくり回しますからねー?」
    「ふぉっふぉっふぉ、わしもまだまだ長生きしたいんで
     そんなメデューサに言い寄るようなマネはせんわい。」
    「・・・ついに化け物扱いですかいー・・・。」

    「さて、この館の種明かしをするとするか。」
    「私、返事しないけど聞いてますから、ひとりで喋ってくださいねー。」
    アッシュがクッキーをボリボリ食い散らかす。
    「わしゃ、いつ食えるんかのお?」
    「あんたの話の長さ次第でしょうがー!
     いらん個人の感想は省いて、箇条書きで話せばよろしいー!」

    ふうー・・・、わし、虐待されとるのお、と溜め息をついて
    ジジイの独演会が始まった。

    「ここには鉱山があるんじゃ。 質の良い鉱石が取れての。
     それでここら一帯は潤って、クリスタルシティができたんじゃ。
     あの街が、ここの母体じゃよ。」
    「えっ? この先の村じゃなくて、あのおっきな街ー?」
    「そうなんじゃ。
     この先の村は、クリスタルシティとここを繋ぐ拠点なんじゃ。」
    「へえー、裕福なんだー。」
    「そう。 その裕福さで、クリスタルシティは国の干渉を跳ね返し
     この館と村を隠し持つだけの権力を持っとるわけじゃ。
     名もなきあの村とこの館は、地図にも載っとらん。」

    「この館は、元は孤児院だったんじゃ。
     鉱山の事故で親を亡くした子供たちのな。
     じゃが、技術の発達で事故も減って
     孤児が減る代わりに、身寄りのない者が住むようになってな。
     この国は、 特にこの地方は鉱山の利権争いもあって内戦も多かったし
     元々気性が荒い者が多い土地柄もあったんかのお。
     そんな中でも、戦争が終わっても社会に馴染めないヤツがいて
     犯罪を起こしたり、孤独死したり、まあ悲惨な人生を送るんじゃ。
     子供から年寄りまで、そんな経歴のヤツがここに来るんじゃよ。
     犯罪歴があって、身寄りのないヤツばかりじゃ。」

    「えっ、でも、ローズさんとバイオラさんは姉妹ですよねー?」
    「ああ、あの子らは親がいなくて、幼い頃から姉妹で
     盗みや引ったくりを繰り返して、ふたりでここに来たんじゃよ。
     ローズはまだ4~5歳じゃなかったかな。」
    「はあ・・・、そうだったんですかー。」
    「たまには、そういう子らもいるんじゃが
     ここは身寄りがないのが原則だから
     結婚したり、子供が出来たりしたら、出て行かねばならん。
     ここの事は一生秘密にせねばならんで
     それを破った者は暗殺される、という条件付きじゃがな。
     この守秘義務を守れる自信がない、とか
     一般社会で生きて行く勇気がない者は、一生をここで過ごすんじゃ。
     年老いて動けなくなった者や病気の者は、村の施設に移るがの。」

    「思ってたより、重い背景なんですねー。」
    「じゃないと、殺人ゲームなどせんじゃろ。」
    ふぉっふぉっふぉ、とジジイが笑い、アッシュが引きつる。

    「相続者はな、年に一度新聞紙面で募集を掛けるんじゃよ。
     『主 求む』 この一文のみでな。
     新聞がない時代は、張り紙をしたらしい。
     これに興味を持って、問い合わせてきた者の身辺を調査する。
     相続者の条件は、クルスタルシティ管轄外の出身者で
     一応、主候補じゃから、普通の家庭に育ち犯罪歴がない、は当然で
     そして一番重要なのが、身寄りがない事。
     最後に面接をして、選ばれた者が挑戦しに来る、ってわけじゃ。
     ここまでは全部、クリスタルシティの長老会がする。」

    「ちょっとおー、うちの兄、身寄りがなかったですかあー?」
    「その話は後でするから、ちょっと待っとれ。」

    ジジイは紅茶をひと口飲んだ。
    「むっ、濃いのお。 こりゃいかん! いかんぞ!」
    アッシュがお湯をドバッと継ぎ足す。
    ジジイ、無言の圧力に屈して、話を再開する。

    「・・・クリスタルシティ長老会の最初の頃の思惑はの
     街に犯罪歴のある身寄りのない者を野放しにしておきたくはない
     だが、そんなヤツらが館で大人しくしておくはずもない
     そこで “相続” と称して、このゲームじゃよ。
     言わば娯楽の一環なんじゃ。」

    「つまり “生け贄” だから、相続者はよそ者を選ぶんですねー?」
    「そうだったのかも知れんなあ。
     じゃが、わしはそうはならなかった。
     来る者来る者をバッサバッサと・・・」
    「誇張した武勇伝は後で聞きますからー!」

    「う・・・む、えーと、何じゃったかな、とにかくな
     すべてをもみ消してもらう代わりに、口を閉じていなければならない。
     この館に関わってきた者は、すべてこの掟に縛られる。
     大昔からこうやってきたから、今更修正も出来んのじゃ。
     重ねた罪が膨大に膨れ上がってしもうとるからな。
     ここは、豊かなクリスタル地方の暗部なんじゃよ。」

    「そのうち “事故” で、村ごと消されるんじゃないっすかー?」
    「あんた、恐ろしい事をサラッと言うんじゃな・・・。
     じゃが、それをやっても無理じゃろう。
     ここを出て、子孫を作った者も多くいる。
     長老会にもそういう出がいて、ここを守っとるんじゃよ。
     わしも主を引退したら、長老会に入るんじゃ。
     3年主を務めて生きて交代出来たら、引退後に恩給が出る。
     15年務めたら、長老会に入る資格が貰えるんじゃ。
     わしゃ、余生はクリスタルシティで権力ライフじゃよ。」

    「なるほど、それが主の特典なんですねー?」
    「そうじゃ。
     昔は交代にも一騎打ちが必要じゃったが
     わしの前の代が、長老会を説得しての。
     それでこんな、かくれんぼみたいなルールになったんじゃ。」

    「あれ? かくれんぼだったら、見つかっても死に掛けないんじゃー?」
    「アホウ! 見つかって、はい終わり、なわけないじゃろ!
     扉を開けたら、刃物が飛び出るぐらいの仕掛けはするわい。
     それで負傷したヤツが、事もあろうに逆上してな
     あやうく殺されかけたが、わしの剛力で返り討ちにしてやったわい。」
    ジジイが大威張りしているとこに、アッシュがおそるおそる訊ねる。

    「下の部屋、どこが本来の入り口だったんですかあー・・・?」
    「あそこは管理人室側のドアから入るんじゃ。
     わし以外の掌紋のヤツが入ると、矢が6本飛んでくる予定じゃったが
     あんた、壁を壊して入って来たからのお。
     まあ、その運の良さも主になるには必要、という事なんかのお。」

    高笑いするジジイの横で、アッシュは青ざめていた。
    そしてこの時ほど、自分の粗暴さに感謝した事はなかった。

    あああ、あそこが主の部屋の入り口と推理する知能がなくて良かったーーー
    そんで、行儀良くドアから入る礼儀を持ってなくて
    ほんとーーーーーーーーーに良かったあああああああああああああああ!

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 30 09.11.26
          ジャンル・やかた 32 09.12.2

  • 過緊張

    ここんところ、アロマやらやっとったのは
    実はこれがある、と睨んだからである。

    しかも人生をよくよく振り返ってみると
    どうも20歳過ぎぐらいの時から、過緊張だったと思われる。

    皆様の期待を1mmも裏切らず、申し訳ないが
    私は気分的な緊張は、そんなにしない性質である。
    と言うか、緊張するような状況など堂々とバッくれる。

    特設会場で芸を披露レベルじゃないと、緊張しないんで
    そんな状況には、ならないようにするに決まっとるだろうが。

    とか、ストレスレスな心で過ごしていたら
    体がストレスフルになっとったようだ。

    どうもここ数年、体調が悪いよなー、更年期かー? で流していたら
    これが私のいつもの発病パターンなんだが
    知らず知らずに、とんでもない事になっとった。

    すんげえウツと不安感が1ヶ月続いたのだ。
    口も利きたくないぐらいのウツウツ。

    さて、ここで尊敬してもらいたいのだが、8月のブログ、いつも通りだよな?
    ほんっと、私って凄えよな。 ・・・・・鈍感さが・・・・・。
    でもさ、ウツと不安感なんて、貧乏ババアの標準装備じゃねえ?
    わざわざ大騒ぎするまでもねえだろ、と流してたんだよ。

    そしたらウツはとれてきたんだが、次が不眠。
    2時間おきに目覚めるようになっちゃってさー。
    でもこれも、老人特有の習性じゃねえ?
    うちのかあちゃんが存命中に言ってたんだよ、すぐ目覚めるって。

    と、またまた流していたら、次に来たのが緊張。
    て言うかさ、順番に症状がくるのって何でだ?
    こいつがダメならおめえ行け、とか勝ち抜き方式?
    だったら最後の大将って、即死クラスの病気なんか?

    まあ、多分、2つ同時に感じる事が出来ない
    愚鈍すぎる感覚の持ち主なんで、順番とか思うんだろうけど
    本当はこれ全部、同時に現れてたんかも知れん。

    で、緊張なんだが、夜2時間おきに目覚めるじゃん
    その時に、全身にギューーーーーーーーッって力が入って
    アルマジロみたいに丸まってるんだよ。
    胎児のような姿勢だけど、実情ダンゴ虫、みたいな。

    そんで、昼間はアゴが震えて上手く喋れないし
    手も震えるんで字がキレイに書けない。
    この2つは普段からヘタなんで、誰も何も思わないようだったけど
    私的には、すんげえおったまげ!!!!! だったんだ。

    考えてみれば、食欲がない、胃に空気が入った感じがする
    いつも体のどっかに力が入っている、真冬でも汗をかく
    肩が凝る、頭痛がする、背中全体が痛い
    動悸がする、目まいがする、ひどいと吐き気もする、息苦しい
    脳内を思考が次々に流れて落ち着かない、などなど
    これ、ぜーーーんぶ、緊張の症状なんだよなあ。
    心が緊張しないんで、気付くのが遅くなったんだなあ・・・。

    ちなみに、歯ぎしりもものすごくやってたみたいだ。
    朝起きると歯ぐきが痛いし、治療痕がすぐ破損する。
    でもこれは気合いで、かなり治した。

    夜寝る前に布団の中で、自分に言い聞かせるんだ。
    歯ぎしりを絶対にしない、しない、しない、とな。
    半ば脅しのように、気合いを入れて自己暗示に掛ける。
    翌朝の歯ぐきの状態で、したかしていないかわかる。
    最近、ちょっとまた歯ぎしってるようなんで、布団内恫喝をせねば・・・。

    あまり己の体を無視するのも何だ、と思い、マイ主治医に相談してみた。
    更年期説は、また却下されたよ!!!!!
    30代からなるプレ更年期もあるっちゅうのに、何で認めてくれないんだよ!

    主治医が言うには、自律神経が異常を起こしてるんだと。
    とにかく寝れ寝れ攻撃で、軽い睡眠導入剤と自律神経要の薬を処方されたが
    この自律神経の薬って、飲んでると日がなボーッとして辛い。

    ここ数ヶ月の私の記事がつまらんのは、この薬のせいで
    過去の記事がつまらんのは、自律神経のせいだ、と明言しておくぞ!

    今は結構、通常の状態に戻れたが
    まだちょっと調子が悪いようで、今後の記事も保証できないなあ
    と逃げに走っておく事も忘れないのが、私らしくて素晴らしい。

    ところで、マイ主治医はいつも優しい営業スマイルの人だと思っていたが
    私の様子がおかしかったんか、真面目な顔で
    「何か悩みがあったら、いつでもどんな事でも相談してください。」
    と、言ってくれたのが、もんのすごーーーーーく驚いた。
    そんでその後、しばらくしてから感動した。

    いや、正直、あまりににこやかなんで、心のない人だと思っていて
    まさかそんな親身になってくれるとは、想像もしてなかったんだ。
    だからこんな時間差反応になっちゃったのさ。

    ストレスには、ひとつ心当たりがある。

    貧乏だ!

    金持ちから貧困へ転落なんて、現実でも人生ゲームでもよくある展開だし
    生活レベルを落とすのは、私の性格上そんなに苦じゃないんで
    あまり気にしていないのに、私のボディは我がままが過ぎるぞ。

    心がオッケーって言ってるんなら、大人しくしときゃ良いものを
    あれイヤこれ辛いなど、いちいち反応してんじゃねえよ。
    リアル貧乏の上に、体の気遣いなどやっとったら、今度は心が壊れるわ!
    ないなら、ないでやっていくしかねえだろうによー。

    と、体に憤っているが、鈍感中の超鈍感なんで
    この心当たりも当たってるかどうか、定かじゃないのが難点だ。

    だけどわからん原因を探っても、見つけられんだろうし
    もし見つかっても私の事だから、正しい対処法が出来るとは思えん。

    つーか、私の人生、結構終わっとるんかも知れん。
    が、寿命が尽きるまでゲームオーバーにならんところが、きっついのお。

  • ジャンル・やかた 30

    玄関ホールに出たアッシュを、館の住人たちが出迎えた。
    ご苦労さん、の声はあったが、みんな動揺しているようで
    控えめにザワついている。

    「交代は初めてのヤツが多いからのお。」
    ジジイが全体を見回して、その不安と期待を読み取る。
    そして後ろを振り向き、名残惜しそうにつぶやいた。
    「ここともお別れじゃな・・・。」

    アッシュがつられて見ると、ガラス戸の上にパネルが貼ってあり
    『管理人室』 と書かれている。
    それに気付いた途端、ヘナヘナと両手両膝を床に付いた。

    このジジイは、堂々と “管理者” を名乗っていたのだ!
    『ああ、何だ、管理のじいさんだよ。』
    さっきのローズの言葉も脳内で再生されて、追い討ちを掛けた。

    「ふぉっふぉっふぉ、皆気付かんもんなんじゃよ。
     盲点じゃろ? 上にいた頃は何度も死に掛けたが
     IT化でここに移ってからは、誰にも見つけられんかったわい。」
    「死に掛けた?」
    「昔は、主を倒したヤツが主になる仕組みだったんじゃ。
     わしも若い頃は豪腕とうたわれた荒くれで・・・・・。」

    ジジイの武勇伝は長くなるのを知っているので
    アッシュは聞く耳すら持たずに、さっさと立ち上がり
    エレベーターへと向かった。

    ローズの姿を探したが、人垣で見つからなかった。
    その時ローズは、人々に囲まれて祝福を受けていたのであった。

    自分だけ乗り込んだら、さっさと閉まるボタンを押すアッシュに
    「ちょ、待たんかい! うおっ!!!」
    と、ジジイがドアにガガッと挟まれながら、もぐりこんでくる。

    「あんた、自分勝手じゃのお。」
    エレベーターの中で、ジジイがアッシュを非難する。
    「おめえほどじゃねえがなー。」
    アッシュは無表情で返した。
    「・・・とうとう “おめえ” 呼ばわりかい・・・。」

    「あああー? 当然じゃねえー?
     何も知らない善良な一般市民を
     了承もなしで命の危険のあるゲームに巻き込んでー。
     私の一生、ムチャクチャじゃねえかよー!」
    怒り大爆発のアッシュに、ジジイがヒインと後ずさりする。

    「でも、でもな、今回は特例っちゅうこって
     あんたが門から入って来なくても、生きて帰そうってなってたんじゃよ。
     だから事前に何も知らせていなかったんじゃ。
     この館の事は、門外不出じゃからの。」
    「門?」
    「うん、そうじゃ。
     あの鍵の掛かった正門、あそこが運命の分かれ道なんじゃ。」

    6Fでエレベーターを降りると、そこは近代的な作りのフロアだった。
    おおっ、とアッシュが感心した声を上げると、ジジイは東の窓に近寄った。
    床から天井まで、すべてガラス窓である。

    「こっからじゃよく見えんが、あの門にはX線装置が仕掛けられていて
     相続者の身体検査をしとるんじゃ。
     じゃが、毎日X線を浴びるとマズいじゃろ?
     だから行き来する者は、横の木戸を使うんじゃよ。」

    アッシュが思い出して叫んだ。
    「あっ!!! それーーー!
     殺し合うっていうのに、何で誰も銃を持っていないのか
     すげえ不思議だったんですよー。
     銃は禁止なんですねー?」

    「そうじゃ。
     相続者はあの門を開けて入って来なければならん。
     その時に銃器類を持っとったら、うちのスワットに射殺。
     横の木戸から入って来ても射殺されるんじゃ。」

    「・・・何? その無差別殺人・・・。」
    「これは普通に相続に参加する時には、ちゃんと説明を受ける事なんじゃよ。
     門から入ってくださいね、銃器類は禁止ですよ、とな。
     それすら守らんヤツは、即時死刑で良かろう?」

    ニタリと微笑むジジイに、アッシュはつぶやいた。
    「あんたもロクな死に方をせんだろうなー・・・。」

    「ところが、あんたは門から入ってきた!」
    ジジイが気にせずに続ける。
    「わしゃそん時に管理人室から見てたんじゃが
     門に錠をガンガン叩きつけるあんたの姿を見て
     怪物が来た! と、ものすごく恐かったよーーー。」

    「じゃ、何ですかー?
     私が渡された鍵を素直に使って門を開けたのが悪いとー?」
    「うん、そうじゃ。
     あんたはあの時、知らずとはいえ、自分で相続の道を選んだんじゃよ。」
    「ああああああああああああああ、誠実な心がアダにーーーーーーっ!」

    木戸の存在に気付かなかったくせに、すべてを自分以外のせいにしたいらしく
    床に倒れて転げ回るアッシュに、ジジイが優しく声を掛ける。
    「まあ、いいじゃないか。
     あんたはこうやって相続を果たしたんじゃし
     グレーも念願が叶って安心して眠れるじゃろうよ。」

    その言葉に、はたと動きを止め、アッシュがつぶやく。
    「私、実は・・・・・
     主の正体は兄だった、という展開かと思ってたんですよー。」

    「だから、あんたの兄ちゃんは死んだと言うとろうに。」
    「うっせー! 人の身内を遠慮なく死んだ死んだ言うなー!
     おめえが死ねーっ!」

    ヒイ~ン、と悲鳴を上げながら、ジジイはドアの方に逃げて行った。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 29 09.11.24
          ジャンル・やかた 31 09.11.30

  • 裏切る兄

    帰省して久々に兄と再開した。

    珍しく空港に迎えに来てくれる、っちゅう話だったんだが
    私は人の顔を、たとえ親兄弟でも会わないと忘れるんで
    わかるだろうか・・・、と内心ドキドキしながら出口に向かったさ。

    ・・・そしたらな、ひと目でわかったんだよ・・・。

    と言うか、もんのすげえ目を引いたんだ。
    詳しく描写すると、絶対に特定されるんで書けないんだが
    とにかく普通じゃないんだ、異様な格好なんだ。

    こいつは何でこう、いっつもいっつも意表を突く事をするんだよ!
    これだから、私の帰省をあそこまでゴネたんだな?
    機嫌取りに、いつもしない出迎えをしたんだな?

    何かもう絶望を感じてさ、飯屋に入るなり詰問タイム突入だぜ。
    だけど、自分に何の疑問も持っていないみたいなんで
    誰かに突っ込まれた事があるか訊いてみた。
    誰も何も言わないそうだ。

    「当たり前だ!
     触れちゃいけない、と思われてるんだよ!
     そんだけ異様なんだよ!!!」

    久々の兄妹の再会で、いきなり激怒をかました私も私だが
    そんなトンチキな格好の兄の方が、何倍も何倍もいかんと思うぞ。

    “自由” とか、“人それぞれ” なんか、言われたくないね!
    それ、明らかに他人事だろ。
    自分の親父がツインテールにしても、それが言えるかよ?
    身内が突っ込まなくて、誰が突っ込むよ?

    私も若い頃はパンクファッションとか、トチ狂っていたが
    ほんと今になって、心の底から反省させられたよ。
    とうちゃんかあちゃん、ほんとーーーにごめんだった!

    年頃の娘が、髪の毛おっ立てて黒ずくめの怪しい格好をして
    安全靴のようなブーツやらはいて、真っ黒口紅とか塗って
    さぞかし心配をかけた事だと思う。

    そんな妙な趣味に走ったせいで
    ナイスバディでモテモテのはずの青春も捨ててしもうた
    という大きなバチも当たった事だし、きっちり因果は受けてるわけだが
    モテないのをファッションのせいにしとるとこも、どうだか、なんだが。

    まあ、成人式やら彼氏の懇願やらで
    パンクスピリットは断念せざるを得なかったが
    実は今でもああいうファッションが好きではあるんだな、これが。
    ほんと、嗜好って取れないものだよなあ・・・。

    このように、こういう素っ頓狂な事をするヤツは
    言い聞かせても、自分のおかしさには気付かないわけで
    兄も何ひとつ反省していない。

    私の場合も、あの頃、誰にどう言われたら目が覚めたんだろう?
    と、自問自答してみたが、まったく思いつかない。
    自分で嫌気が差さない限り、治るものではないんだろう。

    周囲の注意や忠告は、その “目覚め” を手助けするものだから
    ムダではないんだけど、決定打にはなりえない。

    そうはわかってはいても、腹の虫が治まらず
    親族たちに、「何で誰も注意してくれないの?」 と、八つ当たりしたら
    「家を掃除したんだから、そのぐらいもう良し良し」 だと・・・。

    うちの兄、どんだけヌルい目で見られてるんだよ?
    私も私なのに、兄まで 「兄だし」 になっちゃったら
    うちら、社会不適格兄妹じゃんよー。

    兄には、ほんと期待を裏切られる、っちゅうか
    私が言うのも何なんだが、もちっとマトモになってほしいよ。
    兄の行く末がマジで不安だ・・・。

  • ジャンル・やかた 29

    「だって普通、モニターに囲まれた広い部屋の真ん中で
     クジャクの羽ー?みたいなデカさのオットマンチェアーに座ってて
     グルリと振り向いて、『ようこそ、我が館へ。 ふはははは』 
     とかやる、って思うじゃないですかーーー。」

    「そんな夢を見ていた頃が、わしにも確かにありました・・・。」
    じいさんが遠い目をして語り始めた。

    「最初は普通に増築改装をしていけてたんじゃよ。
     それがここ十数年のIT化の波でな、とても苦しくなってな
     ちょっと改築するより、モニター1個の方が高いんじゃ!
     予算が圧迫されて、わしの居場所もどんどん削られて・・・。」

    「IT化っすかー。
     何か単語が大間違いな気がしますけど
     私もいつも目クソ鼻クソな事を言ってますから、追求しませんよー。
     言おうとしている事は、なんとなくわかりますしねー。
     とにかくそれで、この小汚い四畳半の隅っこで震えてたんですねー。」

    「いや、それは嬢ちゃんが壁を叩き壊すから・・・。
     まさかこんな恐い入って来られ方をするとは思わんじゃったよ・・・。」
    「うっすい壁も、IT化の波のせいですねー?」
    「そうなんじゃ。」

    アッシュはこめかみの血管ビキビキで、ワナワナと震えだした。
    「・・・何か、もんのすごーーーく腹が立ってきたんだけどーーー?
     わけもわからんと、何度も痛い目に遭って、何度も死に掛けて
     あげくが人まで殺してしまって、相続するものの正体が
     不良債権のこのクソ狭いボロ部屋かいーーー!!!!!!!!」

    じいさんが慌てて言い訳をする。
    「い、いや、ちゃんと予算は出るんじゃよ。
     でも時代に合わせようとしたら、どうしても予算オーバーに・・・。」

    「アホか! 予算なんてな、上乗せ申告しておいて
     差額をチマチマ隠し溜めておくものなんだよー! (注: 犯罪です)
     あればあるだけ使うから、いざという時にないんだろうがー。
     やりっ放ししてんじゃねえよー、この無計画ジジイー!」

    「そこまで言わんでも・・・。」
    「この惨状の尻拭いは、次世代の私がせにゃならんのだぞー!
     死ねー! 死んで詫びろー! クソジジイー!」

    「あっ、あんたそんな口を利いて良いと思っとるんかね!
     この館の主は、3年持ったら認められるんじゃが
     わしは30年以上やってきたから、長老中の大長老になってるんじゃぞ!
     言わば、あんたの上司になるんじゃぞ!」

    「それはそれは、とんだご無礼をお詫びいたしますー。
     では、丁重にお願い申し上げますー。
     お早めにお死にになっていただけませんでしょうかー?」
    慇懃無礼にニッコリ微笑んだアッシュだが
    すぐに般若のような表情に戻った。

    「つーか、金の算段もロクに出来んヤツに、上司ヅラなどさせんわー!
     とっとと、ゴー! ツー! ヘル!!!」

    アッシュのとてつもない剣幕に、ジジイはしょぼくれた。
    「くすん・・・、わし、長年頑張ってきたのに・・・。」

    アッシュの右手にあったドアが開いて、若い男性が顔を覗かせた。
    「あの、主様、住人たちが周囲に集まってきていますんで
     お話は会議室でなさった方がよろしいかと思われますが・・・。」

    「おっ、ここに理系男子がいたとわー!!!」
    上半身だけ出していたアッシュが、バキバキと壁を割って
    部屋の中に無理矢理入り込む姿を目の当たりにしたジジイと理系男子は
    果てしなく引き潮に乗った。

    ドアに首を突っ込んで、アッシュは歓喜の雄叫びを上げた。
    「おおおー! 主の部屋の横にモニタールーム、推理大当たりじゃんー!」

    モニタールームは予想通り、広々としていて
    無数のモニターが連なり、それらの前には数人の理系男子が座っていた。
    「ここだけ桃源郷だなあー・・・。」

    モニターと理系男子を、うっとりニタニタしながら眺めるアッシュに
    ジジイがおそるおそる声を掛ける。
    「あの・・・、6階の会議室に行かんかの?」

    ジジイには鬼のような表情になるアッシュ。
    「ああーーーっ? もちろん、茶ぁと軽い食事等ぐらい出ますよねー?」
    「・・・急ぎ用意させるんで・・・。」

    「そんなら、行きましょかー。」
    「うむ・・・。」

    更に壁をドッカンドッカン蹴り割って廊下に出たアッシュの後ろを
    ショボショボとついて行くジジイの心は、傷付き張り裂けそうだった。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 28 09.11.19
          ジャンル・やかた 30 09.11.26

  • 睡眠

    不眠不眠言ってたら、ネット仲間から睡眠について教えてもらった。
    以下はメールより抜粋して転載。

    【治癒】
    ●起きて活動しているあいだ、血液のほとんどが脳に集まる。
        → 昼間は治癒(修復)に回らない。
    ●睡眠に入って、約3時間以内に成長ホルモンが分泌され、
      細胞分裂が始まる。
        → 3時間かけて徐々にホルモンが分泌される。
        → トータルで、1日6時間は睡眠をとりたい。

    【ストレス】
    ●不眠の原因はほとんどがストレス。
    ●矛盾するけれど、一番の解消法は睡眠。
    ●健康のため、食生活以上に大切なのが、睡眠とストレス解消。
    ●大半は仕事が原因。
        → 社会人になってから肌荒れする人が多い。
        → メイクをするようになったからではなく、
           大半はストレスによるもの。

    【時間】
    ●人間の体は1日最低6時間眠らないと、
       睡眠時に行われる身体機能のリセットが終わらない。
    ●ゴールデンスリーピングタイム (23:00 ~ 02:00)
        → この時間帯を含まないと、もっと長く必要になる。

    【重要なのは“質”】
    ●毎朝同じ時間に起きることが重要。
        → 眠る時間が不規則でも睡眠の“質”が向上する。
    ●睡眠に入って、始めの3時間が深いほど良い眠りである。
    ●寝る前の気分も重要。 → 良いイメージで。

    【メラトニン】= 睡眠を促すホルモン
    ●就寝前に2時間以上分泌されれば良い。
        → ある一定以上 (500ルクス) の強い光が目に入ると
           分泌されなくなる。= 目が覚める。
    ( ※ルクス : 明るさの単位。
             PCのモニタで 1000 ~ 1500ルクス。)
    ●メラトニンは朝、太陽光が目に入ってから、
       15時間前後たたないと分泌されない。
        → 外が明るい内はほとんど分泌されない。

    【環境】
    ●寝る1~2時間前から部屋を暗くしておく。
    ●出来るだけ真っ暗にして寝る。

    【その他】
    ●寝だめは出来ない。
    ●睡眠時間の長さは、遺伝子で決まっている。

    “寝る” という行為にはとても体力を使う。
    お年寄りが良い例。
    「眠りたいのに夜中に目が覚めてしまう」「早朝に目が覚めてしまう」
    それで疲れもとれない、と。

    通常、寝ると体温は下がる。
    寝ようとすると体は、体温を下げようと毛細血管を拡張させ
    毛穴を開いて汗を放出し…などの作業を一生懸命行う。

    以上、とても有益な情報の数々、本当にありがとう。

    年寄りって、夜9時頃寝て朝は4時5時ぐらいから起きる人が多いだろ。
    でも、TVの2時間ドラマの役者がいっつも同じなのは
    年寄りが俳優の顔を覚えられないから、って聞いた事があるんだよ。

    2時間ドラマって、夜9時から11時までだよな。
    年寄り、早々と寝てねえじゃん。

    と、常々不可解に思っていたんだけど
    何かの雑誌で読んだところによると
    歳を取るにつれて、睡眠時間がそんなにいらなくなるんだと。

    代謝の衰えによって、エネルギーをそんなに使わなくなるから
    が、主な理由だったんだけど (多分)
    上の話と総合すると、この情報は私にとって福音も同然。

    何故ならば、つい最近気が付いたんだけど
    私はどうも、寝るのが嫌いみたいなんだ。

    いや、寝るのは意識を失うわけだし、楽しい夢もよく見るから良いけど
    (夕べの夢は、パルテノン神殿に仕掛けられた生物兵器爆弾を
     取り外しに行く話で、とてもスリリングだった。)
    布団に入っているのが、ものすごく退屈な行為で
    嫌々だから、余計に寝付きが悪くなってる気がする。

    布団に入って2時間3時間眠れない、なんてザラで
    あー、こんな無意味な時間を過ごすんなら
    ゲームをやってれば良かった、とかちょくちょく後悔する。

    色んな作業も、夜中の方がはかどるじゃん。
    妙にハイテンションで、一心不乱に片付けをしたりとかさ。

    横になるのも体を休める事になるので大切だそうだけど
    脳が全然休まらないんだよな。
    誰かみねうちでもして気絶させてくれんかな、と思うよ。

    でもその内に真の年寄りになったら、あまり寝なくても良くなるわけじゃん。
    時が解決してくれるって寸法だろ。
    (何か、解釈が微妙に間違ってる気もするけど。)

    だけど、今現在の睡眠の不具合がつらいよなあ。
    上の情報を元に、試行錯誤が続いているよー。

  • ジャンル・やかた 28

    南館の1階の廊下に入っていく。
    「何か、静かですねえー。」
    アッシュがビクつきながら、ローズにコソッと言う。

    こういう空気の時はヤバいんだよね・・・
    ローズもビクついていたが、それを口には出さずにいた。
    アッシュにパニくられるのが一番厄介だからである。

    「なあに、だいじょう」
    「ぶじゃないですーーーーーーーっっっ!」
    アッシュが叫んだ。
    男の影が浮かび、その手には斧が握られている。
    「定番出たーーーーーーーーーーーーーっ! 顔文字略ーーー!」

    男は斧を振り上げ、アッシュへと向かってきた。
    「逃げな!!!」 「うぎゃあああああああああああ」
    ローズとアッシュが同時に叫び、斧が振り下ろされる。

    バキッ

    斧が突き刺さる音がし、アッシュの脳天に衝撃が走った。
    アッシュは進行方向に向き直るヒマもなく、後ずさって
    通路のゴミに足を取られて倒れ、廊下の壁に頭を打ったのである。
    斧はそのすぐ上に突き刺さっていた。

    頭に激痛が走るが、ローズが男と格闘しているので加勢をしようと
    斧を抜こうとしたアッシュは、猛然と斧を左右に動かし始めた。

    斧が抜けた時、野生の勘で何かをひらめいたように
    再びそれを壁に振り下ろした。
    何度も何度も。

    壁の一部に割れ目を入れたら、次は周辺を足で蹴る。
    バキッ メキメキッ ガゴッ ドガッ
    一心不乱に鬼の形相で、それを続けるアッシュに
    取っ組み合いをしていたローズも男も、呆然と見入った。

    体が通るぐらいの裂け目から、アッシュが中を覗くと
    ベッドとクローゼットとサイドテーブルだけの狭い部屋の隅っこで
    じいさんが怯えながら、小さくなっていた。

    中に人がいるとは思わなかったアッシュは、流れで謝った。
    「あっ、すみませんー。」

    じいさんは、おうっ、あわあわ、と我に返ると
    壁にある小さな扉を開け、スイッチを押した。

    ドッパーーーン ポン パンパン

    花火の音に続いてファンファーレが鳴り、機械音声のアナウンスが響いた。
    「ソウゾクタッセイ ソウゾクタッセイ」

    はあ? と、裂け目から上半身を出して目を丸くしているアッシュに
    じいさんが首を振って訴えた。
    「嬢ちゃん、わし、今ものすごく恐かったよ・・・。」
    「え? ああー、リアル・シャイニングでしたもんねー。」

    アッシュは、ホラーネタには素早く反応をするが
    頭の回転はさっぱりだった。
    「で、あんた誰ですかー?」

    「あれ? わかったんじゃなかったんかい!
     じゃあ無効じゃな。」
    さっきの取り消し~ と、館内にじいさんの声がアナウンスされる。

    「ちちちちち違う、じゃなくてー、主の部屋をめっけたのは自覚してますー。
     そういう事じゃなくて、あなたは誰なんですか、って意味ーーー!」
    慌ててアッシュが弁解すると、じいさんは再びマイクを握った。
    「今のは間違い~ やっぱり相続達成じゃった~。」

    「ほれ、わしじゃよ。
     さっきあんた玄関ドアのとこから、わしを睨んどったろう。
     それに食堂で絡まれた事も何度かあるぞ。
     覚えとらんのか?」

    そんな影の薄いジジイの存在など、気にもとめていなかったアッシュは
    はあー・・・、ものすごい疲れたっぽい溜め息をついた。
    実はそこが主の部屋だとは知らずに踏み込んだのだ。

    壊せるみたいだったから、我を忘れて壊しにかかった
    という、ケダモノのような習性を発揮しただけで
    そこがまさかゴール地点だとは、微塵も予想だにしていなかった。

    「何だろうー、この途方もない壮大なガッカリ感はー・・・。」
    「失礼なやっちゃな!」
    じいさんがブリブリと怒った。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 27 09.11.17
          ジャンル・やかた 29 09.11.24