• ジャンル・やかた 13

    「1日2食って、あんた、だからそんなに痩せ細っているんだよ。
     ちゃんと食べないと、体が持たないよ。」
    この手のセリフを聞き飽きていたアッシュは、無視して
    ローズのベルトに挟んである大鋏を見て言った。

    「にしても、その大鋏、凄いですねー。
     グリップを閉じたら、鋏部分が飛び出るんですかー。
     あ、細いチェーンで繋がってるわけですねー?
     これ、自作ですかー?」

    「ああ、これね。 もう何代目かね。
     鍛冶屋に作ってもらったんだよ。
     あたしゃ武器は何でもこなせるんだよ。
     ただ今回はたまたまこれにしただけさ。」
    ローズが少し大声になったのは、周囲に聞こえるようにである。
    来れるものなら来てみろ、という威嚇なのだ。

    「あー、良いですねー。
     私も何か武器が欲しいですねえー。」
    「あんたに武器が操れるのかい?」
    ハッタリの賭けに出たローズに、アッシュが見事に応えた。

    「まず接近戦用に、ナックルは必須ですよねー。
     でもそれはあくまで近付かれた時のためですから
     筋力が弱い私には、長刀みたいなんが欲しいですねえー。」
    こいつもとんだハッタリ屋だな、とローズは痛快だったが
    何とアッシュは本気で言っていた。

    その場にいた人々には、アフタヌーンティーの話題に
    のんびりと武器の希望などを語り合っているふたりの姿が
    歴戦のツワモノに映っていた。

    6人中5人がそう思っても、違う意見のヤツは必ずひとりはいる。
    「あんたも役者だねえ。」
    階段を下りながら、肘で突付いてくるローズの言葉の意味が
    アッシュにはわからなかった。
    が、ローズの眼差しの変化で、後ろに敵がいる事を察知した。

    「おまえら、自信満々のようだな。」
    ちっ、刺激しちゃったか、ローズは後悔した。
    素早く大鋏を取り出したのだが、男はその刃を掴んだ。

    力勝負だからって負けないよ!
    ローズと男が睨み合って、力比べをしていたら
    ローズの頭頂部の髪をかすめて、男の側頭部に何かが当たった。

    アッシュが、そこいらに落ちている箱やら壷やらを
    男の頭目掛けて投げたのである。
    それもフルスイングで、容赦ない勢いである。

    男が怯んだ瞬間をローズは見逃さず、鋏を突いた。
    男は手摺りを背に、何とか踏みとどまったが
    背が高いのが災いして、手摺りの外に反りかえるような体勢になった。

    そこにアッシュが駆け寄り、男の片足にしがみ付き
    持ち上げようとし始めた。

    「おっ、おまえ鬼か?」
    男はそう罵ったが、この数秒の一連の動きから
    アッシュが自分の能力に合わせて、的確な反応をしている事を
    ローズは読み取った。

    文字通り、足をすくわれた形で男は階下に落下したが
    その瞬間アッシュが耳を塞いだのをも、ローズは見逃さなかった。
    男の落ちる音を聞きたくない、というのは
    裏を返せば、どうなるかわかっててやったのだ。
    罪悪感は? などと、キレイ事を言っていたアッシュが
    自ら敵を手に掛けるなど、どれだけの覚悟か。

    その上にアッシュが発した言葉は、ローズを感動させて余りあるものだった。
    「大丈夫ですかー?」
    敵の心配をするでもなく、己の不遇を嘆くでもなく
    まず最初に口にしたのが、ローズの身を案じる言葉である。

    こいつは恐るべきスピードで学んでいるのだ。
    普通に育ってきた人間には理解が出来ないであろう、この環境下において
    望んだわけでもない試練に、たった一日二日で順応しかけている。
    こいつは本当に掘り出し物かも知れない。
    ローズはアッシュの進化に、感嘆していた。

    しかしアッシュの真意は、そこにはなかった。
    アッシュは自分が被害者だという気持ちを手放してはいなかった。
    むしろ、そこに唯一の救いを求めていたのである。

    アッシュは常に、自分のつたない法知識に照らし合わせて
    どう言い訳が出来るのかを考えていた。
    だが、この状態では最早言い逃れは通用しない。

    そうなれば、自分が如何に生き延びるか、のみに照準に合わせ
    後はここの閉鎖性に期待するしかない。
    それ以上に問題なのは、自分の倫理観とどう折り合わせるかである。

    それがかなりの困難な思考転換ゆえに
    他人の心配をして、小さな善行を積み重ねようとしているのだ。
    ローズに対する気遣いは、この心理によるものである。

    もちろん、これを計算ずくでやっているわけではない。
    無意識に一番安心できる方向に向いているだけで
    言わば、心の防衛本能のようなものである。

    アッシュの必死の心の攻防とはうらはらに
    ローズはそれを、アッシュの “成長” と解釈していた。
    アッシュの背中に、冷たい汗が大量に流れているのに
    ローズもアッシュ本人も気付いてはいなかった。

    「あいつが鋏と共に落ちちゃった。 急いで取りに下りないと。」
    ローズとアッシュが階段を駆け下りると
    そこには別の男が立っていた。

    武器なしはマズったね。
    焦るローズの背後で、アッシュが悲鳴を上げながら階段に戻った。
    あ! バカ! あたしから離れるなんて!
    慌てるローズを尻目に、敵の目はアッシュだけに注がれていた。

    階段の半分を上ったところで、アッシュは突然振り向き
    足元に転がっているものを手当たり次第に敵に投げ始めた。

    これが功を奏しているのは、アッシュの投法が優れているからである。
    斜め上から振り下ろす腕からは、硬い物体が猛スピードで
    それも確実に敵の体の中心部に飛んでくる。
    ローズが落ちた男から大鋏を取り戻すだけの時間は稼ぐ事が出来た。

    敵がうずくまる瞬間に、アッシュは目を逸らしはしたが
    ローズの元に駆け寄って訊いた。
    「敵って男性だけなんですかー?」

    いや、そんな事はない。
    多分あたしが護衛だから、腕の立つのが来てるんだろう
    ローズがそう説明すると、アッシュは首をかしげた。
    「相手が弱いだけなんじゃあー?」

    あんたの攻撃力が計算違いだっただけで
    見た感じ、どいつもそこそこいってたと思うがね。
    行きがけの敵は、知ってるヤツだったからわかるけど
    カウントダウンを無視しないと、本当に危なかったんだよね。
    ローズはそう思い起こしながら、アッシュに訊いた。

    「あんた野球かなんかやってたのかい?」
    「いいえー、私、運動神経も良いんですよー。 球技は得意ですしー。」
    アッシュの思い上がった言葉にも反感はなかった。
    実際にあの投げ方は、運動神経の良さを表わしている。

    明日から来る敵は、アッシュに対しての認識を変えて手強いだろうね。
    密かに危惧するローズに、アッシュが追い討ちをかけた。
    「ローズさんー、武器は複数身に付けるのが基本ですよー。」

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 12 09.10.1
          ジャンル・やかた 14 09.10.7

  • 切る

    ナイスバディババアのたしなみとして
    プライバシー保護のため、手紙の宛て先とか
    ゴミで出して身元がわかるものは、専用のハサミで切っている。

    このハサミは、切ると粉々になるギザギザ刃の特殊バサミで
    結構、手が腱鞘炎になるレベルの切りにくさを誇っている。

    しかしシュレッダーは目障りなので、部屋に置きたくない。
    3枚刃だか5枚刃だかのハサミも、かむという噂。
    ペンやスタンプで消す方式は、光の加減で文字がわかるらしいし
    今のところ、私にとって証拠隠滅にはこのハサミがベストである。

    だけどだがしかし、本題はこのハサミの話ではない。
    ごく普通のハサミの話である。
    結構長年使っているやつなんだが、これが切れ味が良い。

    と、ここまで書いて、そのハサミを良く見てみたら
    棒人間ふたりが肩を組んでるマークなんだが、これってヘンケルだよね?
    えええええええええええええ?
    そんな高級なブツを買った記憶がないんだけど
    このハサミ、どこで入手したんだ????????

    この切れ味の持続性、さすがヘンケル!
    6年以上使ってるのに、何で気付かなかったんだか
    て言うか、知らずに良い物を選んでる私凄い!

    と、えらくエキサイトしているのは、文房具ブランド好きだからである。
    ヘンケルは文房具ブランドではないんで
    もう何もかもが破綻している論調だが。

    で、本当の本当にこっからが本題。
    最近私はナイスバディババアの宿命か
    どうにもこうにも心身共に調子が悪いんだ。

    別にこれといった医学的数値は出してはいないんで
    これもナイスバディババアのせいか、と思って放置しとるんだが
    たかが20cmほどの文で、3度も自画自賛してるのも
    こうやって本題本題言いながら脇道に逸れまくりなのも
    すべて不調のせいである。

    んで、郵便物をチョキチョキとしていた時に
    何故かその日に限って、大きい紙類とかかさばるゴミになるな、と思い
    いつになく、しつこくしつこくヘンケルバサミで切り刻んでいたんだな。

    夜にハサミを駆使するババアなぞ、オカルト意外の何ものでもないんだが
    何かわけもなく切るのに熱中しちゃってな。
    ここでもう、何かがおかしいのはわかってはいるんだが
    途中で気付いたんだよ

    切り刻む行為はストレス解消になる!!!!!!!

    それに気付いて、ついついゴミ漁りをしてまで
    色々と滅多切りにしたんだけど、そりゃもうスッキリしたよー。

    そんで散々チョキって、落ち着いた後に考えたんだ。
    何で切る行為がストレス解消になるんかな? と。

    思い当たるのがさ、どっかで聞いた話なんだけど
    夫婦喧嘩などで機嫌が悪い時に、皿を割る奥さんの話。
    100均で大量に割る用の皿を買っておいて
    イライラした時に、庭石のとこで叩き割るんだと。
    後片付けのために、新聞紙を敷いておくのがコツだそうだ。

    そんな事をやってたら、近所のヤバリストに載るんじゃないか
    100円とは言え、故意に物を壊すはどうか
    など、あれこれ感想を持ったが、それも切る行為と似てるよな?

    他はゲームでモンスターを殺す、とか
    ちょっと違うかも知れないけど
    浮気した彼氏の服を切り裂く女性だとか
    破壊行為って、ストレス解消になるんじゃないのか?

    そう言えば、精神病院での治療に、紙を切るってのがある
    と聞いた事があるが、それも何か関係してるんだろうか?

    掘り下げて考えると、ものすげえ恐い話だが
    自分以外を破壊する行為が、精神の安定に繋がるのかも知れない。
    だとしたら、よその国を戦場にする戦争は
    自国民が安定する、というメリットもあるよな。

    ちなみに、ギザギザバサミではまったく効果なし。
    どうやら良く切れるハサミで、スッパンスッパン切り刻むのがカギのようだ。

    これも、深読みすると怖い話じゃねえ?
    そういやメタルギアソリッドでは
    銃よりスティンガーの方が爽快だったし・・・。

    うーん、書いてて思ったが、もしかしてこういう感覚は
    特殊な人格のヤツにしか当てはまらないのかも?
    ものすごい発見をした気分になって、得意になって書いていたのに
    何でこう自分を疑うハメになるような方向に行くんかなあ。

    ほんと、自分のこの謙虚さがイヤ!

  • ジャンル・やかた 12

    目覚めたアッシュは、珍しく爽快だった。
    衝撃続きの最近の展開に、一気に老けた気分になっていたのだが
    まだまだ私の美肌健在!
    アッシュは天狗感覚を取り戻していた。

    その勢いで、今後の予定も決めた。
    やっぱ私は天狗になってこそ、私なんだよなー。
    アッシュは珍しくハイテンションだった。

    「勇者よ、旅立つのじゃー、さあ冒険の始まりですー
     ♪ ちゃらっちゃちゃっちゃ ちゃっちゃー ♪
     これから4階に行きますー。
     だけどただの4階じゃないんですー。
     何と! ジャジャーーーン! 南館の4階ですーーー!」

    アッシュがそう言いながら、クルッと回って
    両手を広げ、左足を前に出し右足を後ろに流し、膝を曲げて軽く会釈をした。

    ドア口のアッシュの道化を見せられて
    呆然としたローズと、アッシュの後ろを通りがかった女性の目が合い
    通りがかりは気の毒そうに目を逸らした。

    ローズは、ものすごい恥を掻かされた気分になったが
    やっと自分の出番が回ってきたので、無言で廊下に出た。

    階段の前に来て、ローズがやっと口を開く。
    「南の4階はあそこだけど、この階段をホールまで降りて
     向こうの階段を4階まで上らなきゃならないよ。」
    「北と南と通路で繋がってたんなら早いんですけどねえー。」
    と答えるアッシュに、ローズははた、と訊き返した。

    「そういや、何であっちが南だとわかったんだい?」
    「曇ってるけど、夕方微かにあっちの雲が赤かったんですー。
     あっちが西なんでしょうー?」
    「へえ・・・?」
    関心するローズに、アッシュはちょっとムッときた。

    「いい加減、私の知性を認めてくれませんかねえー?」
    「天才と紙一重、って言うけど、そうなのかもねえ。」
    「それは兄の方だと思いますー。
     私は凡才だけど、一般常識はあるんですー!」
    前半は同意するけど、最後の部分はどうだかね。
    ローズは腹の中で思った。

    玄関ホールまでは、何事もなく進めた。
    問題はこっからなんだよね、とローズが思った途端
    長身の男性が現れた。

    「新相続者! 無知なる未知者!
     俺が腕を確かめてやる。
     3つ数えたら開始しよう。 3・・・」
    ローズの鋏が男の腹に刺さっていた。

    倒れ行く男を見て、アッシュが叫んだ。
    「卑怯くせえーーーーーーっっっ!!!」
    「何がだい?」
    男の腹から鋏を引き抜きながら、ローズがアッシュを睨んだ。

    「カウントダウンの途中だったのにー。」
    「それをご丁寧に待ってどうするんだい?
     これは決闘じゃないんだよ?
     わけわからん能書きたれるこの男もバカだけど
     それをボケッと聞くあんたも相当のバカだね。」

    アッシュは恐くて男に近寄れず、遠巻きに訊いた。
    「その人、死なないですよねー・・・?」
    「死のうが死ぬまいが、そんな事はどうでもいい!
     こっちが考えるべきは、戦闘可能かどうかの1点だけさ!」

    ローズが怒り始めたので、アッシュは黙り込んだが
    先ほどまでのテンションが暗転したかのように、地の底に落ち
    恐怖に怯え、膝が震えているのがわかった。

    負けたら私もああなる、って事だよね? むっちゃくちゃ痛そう・・・。
    即死ならまだ良いけど、中途半端に刺されたらどうしよう。

    目前で起こっている出来事は、映画などではよく観ていたけど
    それが現実だと認識せざるを得ないのは
    男のたてるうめき声が、あまりに苦しそうだからだ。

    他人のあんな声、聞いた事がない!
    アッシュは耐え切れず、天井を見上げながら
    両耳に指を突っ込んで振動させながら、あーあー言った。

    ローズはアッシュの受けているショックを理解できた。
    自分も初めての時は、このうめき声にビビったものだ。
    あの時の自分は、ショックから身動きが取れず
    その後何日も食事を採れずに衰弱したものだ。

    立ち直れたのは、周囲の冷笑に負けたくなかったからで
    それでも数ヶ月して、やっと再び戦えるようになったのに
    こいつはその場で自分でどうにかしようと努力をしている。

    ローズはアッシュの肩に手を置いて
    照れくささを隠すかのように、ぶっきらぼうに言った。
    「グレーがいつも言ってた。
     『妹は実は俺より凄いんだ。』 って。
     確かにあんたは大物かも知れない。」

    「へ?」
    指を突っ込んで、あーあー言ってたアッシュに
    ローズの言葉が聞こえるわけがなかった。
    間抜け面して振り向くアッシュに、ローズは激しくイラッとしたが
    こらえて、同じセリフを繰り返した。
    ここで挫折されたら困るから、とにかくおだてないと。

    少々棒読みになったが、ローズの読みは当たり
    アッシュの心は木に登りまくった。
    「兄がそんな事をー? 私、大物ですかー?
     何でそう思うんですかー? 『詳しく』 しても良いですかー?」

    あーもう、またわけのわからん事を言い始めた。
    バカはおだてやすいのは良いけど、調子に乗るから面倒なんだよねーーー。

    ローズは忍耐力をフル発揮しながら言った。
    「優れた適応能力があるような気がするんだよ、あんたには。」
    「・・・適応能力ですかー。 別に優れてないですけどねー。」
    どれだけの大賛辞を期待していたのか
    贅沢にもアッシュは、その答にガッカリした。

    こいつが真に優れているのは、忘却だろうね。
    もう、さっきの戦闘の事を忘れて、ひょこひょこ着いて来ている。
    目まぐるしく変わる話題も、それを表しているんだね。
    階段を上りながら、ローズはひとり納得した。

    4階に着いた。
    行き道の敵は1回だったか。
    いつもより少ないのは、ハンデが与えられているのか?

    玄関ホールを見下ろすローズに、アッシュが声を掛けた。
    「ローズさん、ここのドア、開けて良いですかねー?」
    「開けちゃダメだ。 ここは居住区、非戦闘区域だよ。」
    「あー、やっぱ3~4階でしたかー。
     開けちゃダメ、って事は、居住区には主の部屋はないんですねー?」
    「そうなるね。」

    4階をグルリと一周したら、アッシュの居住区と同じ間取りだった。
    ただ、洗濯室はあるが、食堂の場所は娯楽室になっていた。
    もしかして北館の4階も、こうなってるんだろうか。

    「3階に下りてみましょうー。」
    アッシュの言葉に、ローズが左右を確かめたのち階段を下りる。

    「ここも居住区ですよねー。」
    「そうだね。」
    作りは北館の3階と対称になっているようだ。
    南端に食堂がある。
    「北館在住の私たちでも、ここで食事できますかー?」
    「ああ、問題ない。 ちょうどお茶の時間だし何かつまもうかね。」
    腕時計の針は、2時50分を指していた。

    食堂には、6人の男女が固まって座っていた。
    こっちに気付き、静まり返った様子にローズは悟った。
    こういう時の話題は、相続者の噂ばかりなんだよね。

    自分が護衛の役目ではない時には、ローズもそれに加わっていた。
    しかし今は、第三者ではない。
    ローズはある種の選民意識のような感覚に浸っていた。

    「あー、同じシステムなんですねー。」
    そう言いながら、アッシュは冷凍庫の中のアイスを
    ディッシャーでゴリゴリ削っていた。

    ローズがハムサンドと紅茶を持ってきたのに
    アッシュの前にはストロベリーアイスが乗った皿が1枚だけである。
    「あんた、今朝ちゃんと飯を食ったのかい?」
    「11時ごろに、バタートーストを食べましたー。
     基本、1日2食なんですよねー。」

    そうは言ったが、アッシュが飲み物やアイスしか摂らない時は
    食べないのではなく、食べられないのである。

    アッシュは事務的に物事を考える術が身に付いていたが
    愚鈍なりにも、人間としての感情は普通にあるわけで
    冷徹な脳処理のツケは、体にダイレクトに現れてしまう事に
    いつもギリギリまで気付かずにいた。

    ストレスに気付けないと、それをより大きく育ててしまう事を
    アッシュは今までの人生で、学習できていなかったのである。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 11 09.9.29
          ジャンル・やかた 13 09.10.5

  • 何のために生きるのか 

    自分は何のために生きているんだろう?

    この自問自答を、必ず一度はしたと思う。
    私もクソ陰気臭え小説を何冊も読んだ時には
    こんな疑問が頭にこびりついたよ。

    人は何のために産まれてくるのか、何のために生きるのか

    だけどケダモノの野生の勘で、この問題には深く立ち入ってはいけない
    と察知したんか、単に脳細胞の不足で忘れたんか
    この疑問を持ち続ける事はなかった。
    バカ、ブラボー!

    寿命も残り少なくなってきた今だから、自信を持って言えるが
    この類の疑問はな、一般人は持っちゃいけない魔の問答だ。
    自分を追い込む呪文なんだ。
    そういうのは宗教家や芸術家に任せておけ。

    だが最近になって、そこらへんの本当の問題は
    この問いにあるんじゃない、と気付いた。
    こういう疑問を持つ人間の方にあるのだ。
    この呪文を持つ心境になる事に、問題があるのである。

    自分は何のために生きているのか?

    これを思うヤツ、よく考えてみい。
    その答を、本当に “自分” が出したいのか?

    違うだろ?
    自分が何のために生きているのか、他人に答えてほしいんだよな?
    自分がいかに他人にとって重要な存在であるか
    その存在を認めているよ、代わりはいないよ、と言ってほしいんだよな?

    幼い頃から、周囲の人との違いを認識させられてきた私は
    大勢の人の中にいても、常に孤独感があった。

    この “違い” とは、よそ者だとか、喋り方がおかしいとか
    直球で言われてたので、バカガキだった私にも理解できた事である。
    しかもそれは、自分ではどうにも出来ないジャンルだったんで
    他人と違う、というのをデメリットとして受け止め
    子供の脳みそで、孤独感に変換してしまったんだと思う。

    しかしこの孤独グセのお陰で、何のために生きるのかという
    迷路に、はまらなかったんだと思う。
    と言うか、そこまでの思考力がないせい、ってのが大きいんだが
    それもまた結果的には幸運だったと言えよう。

    私はただそこにいるだけなのに、周囲があれこれ言うわけで
    それは怒られたり文句を言われたりの、罵倒系が主だったんだが
    その孤独感と、渋谷のスクランブルの真ん中にひとりで立つ孤独感とは
    恐怖が全然違う事に気付いたら、悪口だろうが何だろうが
    言われないより全然マシ、と思うようになれた。

    一番恐いのは、無視なんだ。
    大勢の通行人が行きかう中で、誰も自分を知らない誰も自分に目を留めない
    自分がそこにいてもいなくても、まったく関係ない
    こんな孤独感は、他にないぞ。

    まあ、横断歩道を渡りながら、こんな事を考えるのは
    アホウ以外の何者でもないがな。

    だけど誰でも、大なり小なりこういう感覚を味わっていて
    それが “自分は何の~” という疑問に繋がる。
    もちろんそれは、交差点での話ではなく
    自分が属する社会の中での、自分の存在感に関してである。

    だからあえて言う。
    何のために生きているかなんて、考える必要はない。
    それは他人に認められたい気持ちの裏返しだから。
    そんな疑問を持つ自分は、自己評価が高すぎる事に気付け。

    存在なんて、いくらでも作れるものなんだ。
    コンビニに行けば客だし、会社に行けば従業員だし
    アパートに住めば店子で、雑誌を読めば購読者だ。
    そんで、ここにコメントを書けば、私のネット仲間になるのさ。

    あ、最後のは冗談だから、非難はやめてくれ。
    客だの購読者だの、何だよそれ、と言いたいかも知れんが
    売る側としては、おめえひとりを確保するのに
    どんだけ四苦八苦してるやら。 ほんと死活問題なんだぞ。
    “消費者” って、社会にとって、すんげえ大切なんだ。

    もちろん、そういう存在感が欲しいんじゃないのもわかっている。
    だけど誰しも、そこにいるだけなんだよ。
    どの命も、ただそこにあるだけなんだ。

    まるで荒野に立つ一本の木のような
    この潔いさりげなさの美しさに気付けたら
    生きているだけで、それだけで良い、とも思えてくるんだ。

    ま、弱々な心と足りない頭脳の持ち主、その名は私! は
    ちょっと辛い事があったら、すぐ死にたくなるけどなー。
    (これがまた、その慟哭もすぐ忘れるんで助かっとるが。)

    “特別” という言葉に潜む傲慢さを捨てて
    自分を “いるだけ” で満足だと、いかに納得させるかが
    幸福に過ごす人生のカギだから
    この問題には他人を介入させない方が、平穏だと思うぞ。
    何のために生きて、なんて、主観のフリをした客観だからな。

    誰のためでもなく、自分のために生きればそれで良いんだ。
    自分で作りだした記憶がない自分の命なら
    受け取ってしまったら、最後まで使い切るしかねえんだよ。
    用途を説明されてないんだから、自分にわかるわけがねえだろ。

    そう諦めて、あるがままでいれば良い。

          私に捧ぐ  ううう・・・ 

  • ジャンル・やかた 11

    頑張る、とは言ったものの、やはりムカついてはいた。
    すべてを知る事が出来ない現実にである。

    こうなったら私の推理を全部、後続のヤツらに残しちゃる!
    アッシュは自宅では絶対にしない点けっ放しのパソコンに向かった。
    フォルダを作り、名を “Ash Fail” と付ける。

    何か極秘ファイルのようでかっこいーーーーー!
    アッシュはご満悦だったが、え? “ファイル” って言いたかったのか?
    だったらFILEが正しいのだが、アッシュの英語力はこんなもんである。
    (いや、素でFailと打ってたぜ。 調べて良かったーーー!)

    ワードもエクセルも、その違いすら知らないので
    メモ帳を開き、そこに今までに思い付いた推理や見聞きした情報を
    人差し指1本でガシガシ打ち込む。
    しかもキーボードが英字のみなので、ローマ字で。
    日本語がわからんヤツなど、知った事かい!
    アッシュは、気持ちがささくれ立っていた。

    うーん、これじゃわかりにくいかなー、図解も必要かなー。
    いやもう、日本語をローマ字で書いてる事自体
    1行も読む気がしなくなるほど、わかりにくくて
    図解など、何の付け足しにもならないのだが
    そう思った瞬間、あのペイント太字地図が脳裏に甦った。

    もしかして、他の相続者も同じ心境になったかも!
    あの図解って、やる気を削ぐためのワナなんじゃねえの?

    デスクトップの他のファイルを開いていくと
    当たり前だが、全部英語であった。
    くわーーーーーーーーっ
    日本語のわからないヤツに仕返しされてるうううううううっ!

    別に誰もアッシュを想定して打ったわけではないのだが
    今のアッシュは、とことん被害者意識で一杯であった。

    その頃、ローズは食堂にいた。
    時計の針は、もう夕方の7時を回っている。
    あいつ、夕飯は食わないんかね?
    あまり飲み食いしないようだけど、あんなに痩せ細ってて大丈夫かねえ。

    親しい誰もがアッシュに対して抱く心配を、ローズが思ったのは
    アッシュを少し好きになりかけている事だという事に
    ローズは気付いてはいない。

    ローズは “敵” としては、指示がない限り動かなかった。
    普段の生活では、決して好戦的ではない性格のせいと
    自分が行けば、その回の相続は終わる、という
    自分の戦闘能力に対して、揺るぎない自信があるからである。

    しかしローズは、過去に4人の相続者の護衛をしていて
    そのすべてが相続者の死で終わっている。

    だけどそれは、ヤツらがあたしの言う事を聞かずに突っ走ったからだよ。
    グレーは自分では戦わなかったから、いけると思ったんだけどねえ。
    ローズにとって、グレーの結果は消えない深い後悔でしかなかった。

    その妹であるアッシュ。
    理解できない言動が、何を考えているのかわからなかったけど
    アッシュなりに色々と考えて、挑戦している事がわかったし
    今のところ、あたしの言う事は素直に聞いてるし
    後は戦闘でどう動くかがキモだね。

    ローズも、この相続が腕っぷしだけじゃクリア出来ない事を薄々感じていた。
    ゲレーといいアッシュといい、この兄妹は
    動きのなさにイライラさせられるけど
    それはそれで、正しいやり方を選んでいるような気がする。

    兄と同じ、それはアッシュにとっては最大の賛辞である。
    自他共に天才と認められていた兄
    その差の大きさに、妹はその背を追えずにもいた。

    しかしアッシュもまた気付いていない。
    投げやりなローズが、アッシュに対して徐々に惹かれている事を。
    それは館の頂点に立つ主の資質として、欠かせぬ要素
    得なければならない住人の尊敬の第一歩、である事に他ならないのだ。

    が、こういう時に無意識に台無しにするのが、アッシュの常。
    「ちょっと、あんた、飯は食わないのかい?」
    アッシュの部屋のドアを開けたローズの目に飛び込んできたのは
    顔面に紙を貼ったアッシュの姿であった。

    「・・・それは何のまじないだい?」
    ローズが怪訝そうに訊くと、アッシュはローズを手招きした。
    近寄ったローズの鼻先に顔をくっつけて
    アッシュはジロジロとローズの肌をチェックした。

    「ローズさんー、お肌のお手入れ、してないでしょー?
     日焼け止めとか、ちゃんと塗ってないでしょー?
     ここのシミとここのシワは、その証明ですよー。
     ほら、ここらへん、たるんで毛穴も開いてきているーーー!
     ちゃんとお手入れをしないと、ゴッと老けますよー。
     ほら、私、プルップルでしょー。」
    紙を剥がしたアッシュの肌は、確かに透き通って美しかった。

    「東洋人は肌がキレイだからね。」
    「東洋人とひとくくりにしないでくださいー!
     日本人!の肌がキレイなんですー!!
     それは日本人が、遺伝子とか水とかに恵まれてるからだけではなく
     お手入れをきっちりする性格だからでもあるんですーーーっ!」
    「あんた、いくつなんだい?」

    アッシュはローズに意気揚々と耳打ちした。
    「えっ、あたしより年上なのかい?」
    ローズのその驚きは、アッシュにとっては当然の反応だったが
    それはアッシュの最も好きな場面であった。

    アッシュは高らかに笑った。
    「ほーーーーっほほほほほほ!」
    テーブルの上に並べられた大小様々な形の容器を示し
    「この面倒くさいお手入れをこなしてこその、若さなのですわよー!」

    この後アッシュは、美容の知識をまくしたて
    ローズをとことんウンザリさせた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 10 09.9.24
          ジャンル・やかた 12 09.10.1

  • 民主党政権

    最近ニュースを観ないようになっている。
    それは、必ず民主党の話題が出るからで
    それを観ると、ものすごく憂うつな気分になるからである。

    中でも目に付くのは、鳩山総理の夫人の言動。
    初めて見た時に、えらい頑張ってる感じの人だな、と
    良く言ってるフリをしての悪口の印象しかなかった。

    ああいうタイプの人が身近にいると、とてもうっとうしいと思う。
    「頑張ろうね!」 とか、明るく言われて
    ええっ? 私そんなに頑張ってませんか? と聞き返したくなるような
    押し付けがましいポジティブさを感じる。

    が、TVを観ていて愕然とした。
    ・・・あの人、デンパちゃんか?
    夫人が本に書いてたそうだが、寝ていて木星だか火星だかに行ったんだと!
    緑がたくさんあったんだと!

    これは個人の自由っちゃあ自由だが
    総理夫人になる前から、議員夫人で公的存在の女性だろ?
    そういう経験談は、ちょっと控えてほしい。
    アメリカ外交の時に何かやらかさないか、ドキドキしたよ。
    ニッポンの名誉は無事だったんだろうか?

    鳩山総理は夫人の助言を大事にしているそうだから
    今度の日本が未知の世界へ誘導されそうで、とても恐い。

    もういっちょ激しく報道されているのが、ダム廃止。
    八ッ場ダムと川辺川ダム。 (やんば、一発変換しねえ!)
    前原国土庁大臣の黒いガラス玉のような瞳が、いつも気になる。
    ホラー映画なら、あの瞳は人間ではないキャラ設定だ。

    でもまつげが、やたら長いのがすんげえ羨ましい。 それも上下とも。
    男性にそのまつげはムダだろー、私にくれ、頼む!
    マスカラも付けまつげも、お肌に激しく負担なんだよー。

    あやうくヘンな方向に行きそうになったが、真面目に話を続けると
    ダムの存続か廃止かについては、事務的には廃止の方だと思う。
    しかし事務的処理だけで国政をやってはいけない。
    この問題に関しては、非は自民党政府にあるので
    現政府はいい迷惑だと同情せんでもないんだが。

    ただ、マニフェストマニフェストとアホウのひとつ覚えのように
    断行しようとする、その姿勢が気に食わない。
    民主党政権を許したドバカ国民の考えなぞ、よくわからんが
    民主党のマニフェスト全部を支持して、票を入れたわけじゃないはず。

    これは確信犯なんだよ。 (確信犯という言葉の使い方を間違ってるけど)
    愚民どもは、あのマニフェストの全文を読んで理解など出来ない
    仮に全読み理解をしたとしても
    まさかこれはしないだろう、とタカをくくっているに違いない
    選挙の時から、そう民主党は予想してたのさ。

    民主党が本当にやりたい事は、在日外国人の参政権なんだよ。
    現在は壮大な計画の、起承転結の “転” 状態なんだ。

    起は、商売で儲けて、地位、力を得る
    承は、宗教で洗脳して、政治の分野に足場を築く
    転は、政権を取って、有利な法案を全部可決させる
    結は、日本植民地化・完了

    これからの日本政府の動向を注視してほしい。
    特に大きく報道されないところに、恐ろしい動きがあるはずだから。
    よく考えるとこれってヤバくねえ? みたいな法案成立が。

    民主党は、日本国民 “だけ” に大きく犠牲を払わせて
    世界平和だの平等だの皆仲良くだののキレイ事を唱えながら
    日本国民 “以外” が幸せになれる世界を目指していくだろう。

    これを阻止できるヤツはいないかも知れない。
    何故ならば、上記の2つのダムの所在地、
    調べてみたけれど、この選挙区は自民党が勝ってるんだ。
    つまりダム周辺地域住民は、民主党マニフェストにNO!と言ってるんだ。
    なのにその民意を尊重してもらえない。

    これは民主党が強いんじゃなく、自民党がダメなんだって事。
    本当に日本国民のための政治を心掛けるヤツはいなくなってしまった・・・。

    ちなみに、八ッ場ダムんとこの当選議員は小渕優子
    川辺川ダムんとこは、金子恭之。

    何故このふたりは前原大臣視察の現場に行かないんだ?
    行って騒げよ、それがそこの人々に選んでもらった義務だろ。
    ほんと、情けないよ・・・。

    ダム建設を続行するか廃止するかは別として
    この政権獲得後の第一手であるダム問題には
    今後の民主党政権の方針が凝縮されている。

    国民がどうあらがおうが、俺らがダメと言ったらダメ
    それはマニフェストに基づいた “民意” であって
    俺たちを選んだのはおまえらだろう? と言われているんだ。

    日本、このままじゃ終わってしまうと思う。

  • エロ広告対策

    最近、エロ広告が増えてきています。
    セキュリティ設定が低い場合、
    見るだけで感染するページが増えてきているので、
    URLや、メールアドレスをクリックしないように、
    注意してください。
    発見次第、消していきます。

    また、「http://」を使えない設定にしたので、
    使いたい方は、最初の「h」を抜いた「ttp://」で始めてください。

  • 小説もどき

    私は小説を読まない。
    長文が読めないくせに、活字が好きなんだが
    物語を楽しみたきゃ、映画を観れば良いし
    文字を読みたきゃ、雑誌やノンフィクションを読む。

    ネットはいかん!
    いや、最近つくづく感じるんだが、モニターって発光してるよな?
    その光が、半端なく目にクるんだよ。

    TV画面もそうなんだ。
    うちはまだブラウン管なんだが、すんげえ眩しい。

    PCモニターもTV画面も、どっちも光度を最小限ギリギリにしてて
    ただでさえ暗い場面が多いオカルト映画なんか
    8割ぐらいほぼ真っ暗なシーンで、何が起こっとんのかさっぱりなんだが
    それでも眩しいんだ。

    目が疲れて、目の奥が痛くなって、連動して頭痛がして
    何かもう2時間も見てると、辛くてしょうがない。
    歳を取ると、モニター系は凶器になる。

    その点、紙は発光しない。
    光を反射はするけど、モニターほどではない。
    しかし難点がある。
    紙媒体は有料なのである。

    そりゃPCもTVも無料ではないが
    同じだけ楽しもうとすると、紙系の方が莫大な費用が掛かるんだ。
    よって最近は買う雑誌でさえ厳正な選択を強いられておる。

    何か話が逸れまくっとるが、とにかく私は小説は読まないのだ。
    うちの親は、遊びたい盛りの幼児の誕生日プレゼントに
    よいこの図鑑全巻セットやドリトル先生全集を贈る大馬鹿者だった。

    (他に何も娯楽がないド田舎だったので、図鑑は面白いものだったんだが
     ニンテンドーが頑張ってる現代のガキがほんと羨ましいよ。)

    周囲の大人たちが、私の情緒が欠落しているのに気付いていたのか
    しきりに本を読め本を読め、と言いまくっとったんで
    高校は本を読もう、と思い立ち
    今思えば、単に勉強をしたくない言い訳なだけだが
    1年ちょっとぐらい、毎日毎日小説を読んでいた。

    それが、大正?昭和初期?ぐらいの作家の本で
    一日に2冊とか読む時もあったんで
    教科書に出てくる作家たちの本は、ほとんど読んだと豪語してもいい。

    しかしな、“読む” 事だけを目的にしたせいか
    内容どころか、何を読んだのかもキレイさっぱり忘れてしもうた。
    ばかりか、作家の憂うつが移ったんか、ウツ気味になってしまって
    青春時代にこんな事をしててはいかん! と、気付いて
    その後は遊び狂ったさ。

    学生の本分は勉学だと言うに、何を考えとんのか
    お陰で私の高校時代は、タメにならん3年間だったぜ。

    てかさ、文句が恐いんで名前は伏せるが
    ああいう作家たちって、何であんなに陰気なんだ?
    思春期の少年少女が思い悩むような、自虐思考で
    もしかしたらそれが “少年の心を忘れない” ってやつなんか?

    こんな感想しか持てなかった私には
    情緒を補うための読書は、正直ムダな行為だった、と言えよう。
    こういう経験が、小説を読まない生活に繋がっているのかも知れない。

    ところが、ここに来て知ったが
    小説は、“書く” のは、とても楽しいんだ!

    頭の中で話がどんどん広がっていって
    まるで映画を脳内で観てるような、そんな楽しさがある。
    これは多分、“ジャンル・やかた” の話は最初に夢で見て
    その時に設定がちゃんと決まっていたから、もあると思う。

    話の大筋や登場人物は固定されていたんで
    後はその続きを、夢を見るごとく脳内で妄想すりゃ良いだけなんだ。
    話の内容がさすが私の夢だけあって私好みなんで、妄想するのも楽しい。

    ま、それを文章にせにゃいかん、という困難はあるが
    私の妄想は、ほとんど言葉のみなんで
    それを繋ぎ合わせれば良いだけだから、何とかどうにかやっている。

    と言うわけで、今のブログでの私のストレス解消は
    この “ジャンル・やかた” である。

    あっ、「面白くない」 という意見は聞かんからな!
    あえての補足で、このブログ全体がつまらん、という意見もだ。

    この小説もどきの記事は、自分の楽しみになってるんで
    色々と言いたい事も山ほどあるだろうけど
    しょうがねえなあ、と目を逸らしてくれ。

    皆にも小説を書いてみるのをお勧めするよ。
    やってみると、結構楽しいかも知れんぞー。

  • ジャンル・やかた 10

    「私がまず思ったのは、挑戦期間ですー。
     普通は数週間なのに、兄は数ヶ月生きていられましたよねー?
     まあ、最後は自爆ですがー。」
    いつものアッシュなら、ここで笑うとこなのだが
    真面目な顔で続けるので、ローズも無言で聞き入った。

    「つまり今までの挑戦者は、武闘派だったのでしょうー。
     館中を探して回るというストレートな方法ばかりだった。
     だけど兄が探していたのは、主の部屋じゃなくて
     主の部屋に繋がる手掛かりだったんじゃないんですかー?」

    ローズが口を挟んだ。
    「いや、あたしは何も聞かされてないんだよ。
     上からもグレーからも。
     あたしの知ってる事は、本当に少ないんだ。」
    「あなたが嘘を付いていないのはわかりますー。
     あなたが知っていて言えないのは、館の間取りだけですよねー?」
    「うん、大体そんなもんだ。」

    ローズはちょっと驚いた。
    真剣にバカだバカだと思っていたアッシュが
    こっちの状況を読んでいる事が信じられないのだ。
    それほど心の底からアッシュをバカだと信じていたのである。

    「ローズさん、私が知りたいのは、電気の流れなんですー。」
    「はあ? 電気・・・?」
    ああ、やっぱりバカだ、とローズはガックリきた。

    「はい。 電気ですー。
     この館って、古いようでいて凄い電子制御がされていますよねー。
     私の今いるこの建物のこの階の廊下だけで、カメラが6個ー。
     7階建ての多分地下2階、それが8棟ー!
     全体の電気の使用量は、ものすごいもののはずですー。」

    「ちょっと待った、地下が何で2階なんだい?」
    「これはあまり自信がない推理なんですけどー
     敷地内は電気や電話線は、地下ケーブルで通ってないですかー?
     だったら外部からの電気の入り口は、地下ですよねー?
     警備や設備の搬入とかを考えて、よくわからないですけどー
     とにかく地下1階に電気系統の制御室がある、と考えたんですー。」
    真偽はともかくも推理が出来る頭はあるんだ、とローズは再び驚いた。

    「そして、こういう作りの建物には、必ず地下水路が通ってますー。
     今まで観た映画ではそうでしたもんー。
     歴史やら地盤やらはわからないですけどー
     何となく、地下はあっても2階までじゃないかとー。 勘ですがー。
     そんで水路と同じ階に、ビリビリくる電気系統は持って来たくないんでー
     ここは元々地下2階に水路があってー、地下1階は牢屋とか拷問室とかでー
     そこを電気関係の部屋として利用するんじゃないかとー。」
    ローズもそこまでは知らないのだが
    アッシュの言ってる事が正しいような気がして、ほおー、と声を漏らした。

    へっ、本気を出せばこんぐらい軽いぜ! と、アッシュは図に乗った。
    「主の部屋がどこかはわかりませんがー
     この監視カメラの数からいっても、かなり多くのモニターがあるわけで
     モニター室がどこかにあると思うんですー。
     私が主なら、しょっちゅうそのモニターを見ていたいので
     主の部屋の近くにモニター室もあるんじゃないかと考えたんですー。
     私は電気には詳しくないですけど
     最初に館に電気が入ってくる場所があって
     そこから各階に電気を流しているのだから
     その場所にはどこにどれだけ電気を流しているか、表示があって
     ケタ外れに電気消費量の多い部屋、そこがモニター室だろう
     そこを見つければ主の部屋も近い、と、考えてるわけですー。
     だから地下に行きたいんですー。」

    「・・・あんた、凄いね・・・。」
    よくわからないが、あまりの意外性にローズがつぶやいた。
    「私の電気の知識は、某専門誌の受け売りですけどねー。」
    アッシュが天狗になって、表面だけの謙遜をする。

    「でもさ、地下には入れないんだよ。
     それはルール違反になるんで、即刻失格になるよ。」
    「へえ、そうなんですかー。
     うーん、・・・・・・・ そうかあー
     そのルールだけで地下の価値がわかったから、もう良いですー。」
    あ、なるほど、とローズは思った。

    「じゃあ、どうするんだい?」
    「私も無謀な特攻はしたくないので、的を絞りたいんですー。
     兄の行ってた先を教えてくれませんかー?」
    「あー・・・、悪いんだけどそれは言えない。」

    アッシュが食い下がる。
    「上か下か、北か南かだけでもーーーーーっ!」
    「失格になりたいのかい? 即刻死刑だよ?」
    「うーーーーーーーーーー・・・・・・・」

    頭を抱えるアッシュに、なだめるようにローズが語りかけた。
    「あたしだって困ってるんだよ。
     あんたは主の座を望んで来たわけじゃない。
     言ってみれば、無欲な被害者であって、本当に気の毒に思うんだよ。
     でもあんたは来ちゃっただろ。
     始まっちゃったんだから、終わらせるしかない。
     できればあんたに代替わりを成し遂げてもらいたいんだよ。」
    「・・・・・本当ですかー?」
    「今は本当にそう思っているよ。」

    「ありがとうございますー、ローズさんー。 嬉しいですー。
     あなたのためにも頑張りますー。」
    「グレーのためじゃないんかい?」
    「あんなバカ兄貴の事はどうでもいいですよーっ
     そもそもあいつがこの惨事の元凶ですもんー。」

    そりゃそうだね、とローズも心の底でうなずいた。
    「じゃ、まだ出掛けないんだね。 用事が出来たら声を掛けな。」
    部屋を出ようとするローズに、アッシュが訊いた。
    「ローズさん、あなたはこの館内で引越しした事がありますかー?」

    「一度だけだったかね。 何でそんな事を聞くんだい?」
    「居住区はここだけじゃないんでしょー?
     他の居住区でも私は安全でいられますかー?」
    「さあね。 だけど居住区内だけは安全なんだよ。」
    「そうですかー、ありがとうー。」

    「?」
    首をひねりながら、ローズは出て行った。

    引越しはない、という事は
    ローズさんの部屋があるから、私もこの部屋なんだよね
    だったら他のフロアにも挑戦者専用部屋ってのがあるかも?

    そんで? いや、ただそんだけ・・・。
    自分が推理している事が、あまり役に立たないと気付いて
    さっきまでの天狗気分が、一気に冷めてしまったアッシュだった。

    何か忘れてる気がする・・・

    アッシュは詰まる度に、繰り返しこの言葉を思い
    それはもう、一種の呪文のようになっていた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた  9 09.9.16
          ジャンル・やかた 11 09.9.29

  • 加齢臭

    加齢臭というものの真実は、よく知らないんで
    解決しようと思ったら、きちんと調べた方が良い。
    ただ私の経験では、一般的に言われている話と
    ちょっと違う事もあるような気がする。

    うちの両親は、ともに体臭は薄かったが
    さすがに老齢になってからは、加齢臭が出始めた。

    どういう匂いかっちゅうと、プラスチック? ビニール?
    何かそういう素材っぽい匂いなのである。
    本来の体臭の中に、そのプラスチック?臭が混ざり始めるのだ。
    そして年々その匂いが強くなり、老人臭になる。

    老人臭というのは、どういう匂いかと言うと
    うーん、体臭が酸化したような平べったい匂い。
    (加齢臭 - 油) + 線香 + 防虫剤 + 酸味 のような。
    上手く説明が付かないけど、老人って皆同じ匂いがすると思わんか?
    体臭は様々だったはずなのに、加齢によってどんどん一本化される。
    これって不思議だよな。

    上で 「老齢になってから」 と書いたが
    加齢臭ってのは、普通は30代後半ぐらいで出始めるのに
    うちの両親は隠居前ぐらいからで、かなり遅かった。

    その変わり目で心当たりがある。
    仕事現役中は、毎日入浴していたのが
    隠居してからは、週に2度ぐらいしか入浴をしなくなったのである。
    それから急に加齢臭が強くなったので
    入浴はやはり臭いと密接に関係していると思う。

    加齢臭というのは、男性の方が強いと言われるが
    うちの父親は体臭からして少なく、その理由は3つ考えられる。
    粗食、風呂の温度、飲酒
    (飲酒は違うかも知れないが、毎晩1升近く焼酎を飲んでいたので
     そこは他人と明らかに違う、という意味で挙げた。)

    粗食とは、肉をあまり食わないだけじゃなく
    食事自体をそんなにしなかったのだ。
    朝はご飯と味噌汁と少量の漬物、昼は麺類、夜は焼酎のみ。
    (ちょっと人間っぽくない食事量だと、今気付いた・・・。
     うちのとうちゃんって、かなりおかしいヤツだったんだなあ。)

    次が風呂の温度。
    とうちゃんの入った後の風呂は、2倍に薄めないと誰も入れない。
    兄は 「50度ぐらいあるぞ!」 と、怒っていたし
    周囲は、あんな熱いお湯に入ってたら死ぬ、と心配していた。
    隠居して、全自動の風呂になったんだが
    とうちゃんの湯張り温度は60度に設定されていて
    親族間で、「緑茶も煎れられる」 と陰口を叩かれていた。

    幸いにも、とうちゃんは風呂じゃ死ななかったが
    あれでヤケドをしないのが不思議でならなかった。

    思うに、粗食は体臭と関係があるので良しとして
    うちのとうちゃんは、あの熱湯風呂で脂を根こそぎ取られていて
    それが体臭の少なさに繋がっていたのではないかと思う。
    普通の感覚の持ち主には、何の参考にもならない逸話だが。

    要するに体臭にも加齢臭にも、入浴は重要なファクターだと言える。
    普通の人は、うちのとうちゃんのように脂煮出し入浴は出来んので
    体の洗浄の方に気を遣うべきである。

    私が勝手に思うのは、しっかり洗うべき部分があるって事。
    脇の下とヘソと股と足の指は当然として
    案外見逃されている部分が、耳の裏の下の付け根。
    ここがものすごい重要な部分じゃないかと思うのだ。

    耳の裏の下の付け根、簡単に言うと耳たぶの付け根の裏だが
    何故ここかっちゅうと、ここが脂っぽい人が時々いるのだ。
    何となく、ここ怪しくねえ? と感じて、自分では熱心に洗っていたが
    先日美容院のおねえさんが、「臭い人は耳の裏が臭う」 と言っていたので
    私のこの予感は大正解だと確信している。

    単に体を洗うんじゃなく、どこを重点的に洗うかが
    加齢臭予防の要だと思う。

    そしてもうひとつ、臭いの元として意外なところに敵がいる。
    ある日、タンスから出した服から加齢臭が漂ってきた事があった。
    それも一部の服からだけ。

    いよいよ私も加齢・・・と思うのはプライドが許さなかったので
    ものすげえ必死こいて別の犯人を探した。

    そこで発見したのは、洗濯してすぐ着る分には支障はないけど
    タンスに数ヶ月しまい込んでいたら
    加齢臭のような臭いになる衣類用柔軟剤が存在する
    という驚愕の真実である!

    冬用部屋着を洗ってタンスにしまい、次の冬に出した時に気付いて
    加齢臭は同時期に洗濯していた衣類からしか臭わないので
    防虫剤ではないし、洗剤は替えてないし、で
    消去法で柔軟剤が真犯人だと気付いたのだ。

    ただ、それがどの柔軟剤だったか忘れてしもうたのが
    私のいつもの惜しい部分!
    こういう生活用品って、何の気なしに使うから覚えにくいと思わんかあ?
    でも使っていたのは、メジャーなのばっかりだったはず。

    とにかくこういう、“悪の柔軟剤” もある、という事は大発見である。
    お陰で柔軟剤を気軽に替えられなくなってしまったあげく
    愛用銘柄がよりにもよって廃止になってしもうて、途方に暮れている。
    今使ってるのが良いか悪いかは、数ヵ月後にしかわからないし・・・。

    まとめてみると、加齢臭防止には洗浄と洗濯
    何か、ごくフツーの結論になってしもうたな・・・。