投稿者: あしゅ

  • オラクル

    メイドインジャパンの、オーガニックコスメ。
    “ハーバリスト” という、ハーブの専門家が作った化粧品だそうだ。

    お試しセット ¥1800 を使用。 ( )内は現品の価格。

    メイクアップエリミナー 20ml (130ml 5250円)
    エッセンシャル・クレンザー 25ml (150ml 4200円)
    タイムレス・マスク 10ml (70ml 8400円)
    クラリファイング・トナー 18ml (120ml 4725円)
    パワー・モイスチャー 5ml (35ml 7350円)
    アイ・フォーミュラ 3ml (15ml 7350円)
    クリーム・ルネサンス 3ml (20ml 10500円)
    コットン 5枚

    なあ、これ、何か気付かないかあ?

    送られてきた現物を見て、ものすげえ疑問に思ったんだよ。
    容器も立派なものなんだ。

    そこで、1mlあたりの価格を割り出してみた。
    ( ) 内が、1mlあたりの値段。 小数点以下は適当に四捨五入。
    なお、コットンは個別売りはしていないみたいなんで、省く。

    クレンジング: メイクアップエリミナー (40.4円)
    洗顔料: エッセンシャル・クレンザー (28円)
    パック: タイムレス・マスク (120円)
    化粧水: クラリファイング・トナー (39.4円)
    美容液: パワー・モイスチャー (210円)
    アイクリーム: アイ・フォーミュラ (490円)
    ナイトクリーム: クリーム・ルネサンス (525円)

    1mlあたりの値段 × セットの容量 で計算すると
    このお試しセット、何と 約7512.2円 なんだ!!!!!
    それが1800円だぜーーーーーーーーー?

    今まであっちこっちのお試しセットを買ってきたけど
    こんなにお得なセットは初めてで、逆に???だったよ。

    大抵のお試しセットは、量が少ないから合わなくても惜しくない
    ってだけで、普通は割高になるものなんだよ。
    (こういう計算をするあたり、私の切実な経済状況がバレバレだが。)

    なのに、このセットは安すぎねえ?
    何かおかしくねえ?

    と思ったら、「お一人様1点限り」 だった。
    絶対にリピートされる自信がある、って事か。
    興味がある人は、送料が掛かっても買う価値があると思う。

    ちなみに使用感は、まず匂いが強烈。
    オーガニック系にありがちの、ロコツな天然アロマ臭。
    で、これもありがちなベッタリ感。

    だけど妙に伸びが良いので、なんちゃって自然派かな、と疑っていたら
    サイトに、完全無添加だと書いてあるんだよな。

    他のオーガニックメーカーのクリームなど
    伸びが悪くて、使い心地が悪くて、使用感も悪くて仕方がないのに
    完全無添加でここまで出来るんかよ? と、すんげえ驚き。
    さすがキメ細やかな日本人の作る化粧品だ。

    特筆すべきは、いっつもいつも乾燥して肌がボロボロになる帰省に
    このキットを持って行ったら、無事だった事。
    旅先でのザツなお手入れ法でも、きっちり肌を潤してくれた。
    化粧水は他のオーガニック水よりマシだけど、やっぱりほぼ水なんで
    美容液とクリームが効いたんだと思う。

    私的には現品の値段がネックなんで、金持ちになったらぜひ愛用したい。
    ここのはオーガニックコスメとしては、ぜひお勧め。

  • ジャンル・やかた 26

    「また昼まで寝てる!」
    片足を壁に立てかけ、大股開きでヘソを出して寝ているアッシュに
    ローズが仁王立ちで怒鳴りつけた。

    他人の怒号で目覚める朝・・・
    ちょっと幸せを感じるアッシュ。

    蹴り落とされた布団をたたみながら、ブツブツ怒るローズ。
    「あんた一体どういう寝相をしてるんだい。
     そんなこっちゃ、風邪を引くよ。」
    モソモソと起きだすアッシュに、タオルを投げつけ
    「一時間で用意しな! 今日は動くよ!」
    そう行って、ローズは部屋を出て行った。

    ああ・・・、毎朝ローズさんにモーニング説教をしてもらいてえ
    こういう状況でホノボノとするなんて、私も大概、愛に飢えてるんだなあ
    歯を磨きながら他人事のように思う、反省のカケラもないアッシュ。

    「用意できましたー。」
    ローズの部屋をノックすると、大鋏とともにローズが出てきて訊く。
    「さあ、今日はどこへ行くんだい?」
    「えっ、その前にお茶でも入れてくださいよー。」
    「ああー?
     あたしゃあんたを待ってる間に6杯飲んで、もう水腹なんだよ!」

    「えええーーー、私、まだ何も飲み食いしてないんですよー。
     ローズさんのお茶とクッキーが食べたいですー。」
    「まったく、図々しいったらないね、この子は!」
    ブリブリ怒るローズを、アッシュがヘラヘラ笑いながら部屋に押し込む。

    ローズがイラ立って、床をかかとでカツカツ踏みつつ
    鋏をジャキンジャキン鳴らしている前で
    アッシュはスコーンを頬張っている。

    「あのー、落ち着かないんで、やめてもらえませんかねー。」
    アッシュが懇願すると、ローズが鼻息を荒くした。
    「あたしゃ、毎日毎日あんたを待って待って待って
     ほんとイライラしているんだよっ!」

    その言葉を聞いて、アッシュは思わず立ち上がり
    鋏を持つローズの手を両手で握り締めた。
    「ローズさん・・・、嬉しいですー、ありがとうございますー。」

    「なっ何だい、わけのわからない事ばかり言うんじゃないよ!」
    ローズが慌てて、アッシュの手を振り払う。
    「待ってくれるなんて、愛ですよー、ほんと嬉しいですよー。」
    「愛じゃない! 義務なんだよ!!」
    「愛ってそういうもんですよねー。」

    ああもう、こいつはっ!
    益々イラ立つが、その気持ちがわからないでもないのが、また腹立たしい。

    「ん? そういえば、盗聴ゴキブリはどうなった?」
    「ああ、あれ、勘違いですねー。
     よく考えたら、そんな面倒な事をしなくても
     カメラにマイクを付けてれば良いんですよ。
     あれ、本物のゴキブリですよー。」

    「じゃ、あんたは本物のゴキブリを追ってたんだ?」
    うっ・・・と、アッシュがスコーンを喉に詰まらせた。

    そう言われればそうだ、ヒイイイイイイイイイイイイイ
    慌ててアッシュが手を洗いに行くのを横目で見ながら
    バカめ、とローズがせせら笑った。

    洗った手の水をブルブル飛ばすアッシュに
    「あたしの部屋を汚さないでくれ!」
    と、ローズがタオル第二弾を投げつける。

    廊下はあんなに汚いのに・・・と思った瞬間
    「あっっっ!!!」
    「なっ何だい、いきなり!」
    「ローズさん、この館、増築してますよねー?」
    「ああ、そうだね。」

    アッシュは少しちゅうちょした後、上着の下から写真を取り出した。
    「これ、どこにあるかわかります?」

    「・・・あんた、今その写真をどっから出した?」
    「身に付けてるのが一番安全なんですー!」
    「うわ、生温かい・・・」

    ローズが汚物をつまむように、写真を持ち上げた。
    「ん? この写真どこにあった?」
    「兄の置き土産ですー。」
    「へえ、あんだけチェックしてたのに、グレイもやるねえ。」

    「じゃ、この写真は凄いヒントなんですねー?」
    「・・・さあ・・・何のヒントになるんかね、これが。」
    「言えないんですか?」
    「うーん、私には判断が付かないから言わないでおくよ。
     お互いに失格は避けたいだろ。」

    再び腹に入れようとした写真を見て、ローズが止める。
    「ちょっと待った、その裏、何て書いてあるんだい?」
    ローズの目をジーーーッと見て、アッシュがそっけなく答えた。
    「秘密ですー。」
    「何でだい?」
    「私にも意味がわからない言葉なんですよー。
     どうせ大した事じゃないとは思いますけどー。
     というか、知ってて言えないのも辛いでしょうから
     これからはもう、あまり質問はしないようにしますよー。」

    「へえ、ありがたいねえ、思いやってくれるわけだ?」
    ローズの顔が少しほころんだ。
    「ローズさんには、色々と負担を掛けちゃってますしねー。」
    「じゃ、さっさと食べな。」
    「イエッサー!」
    アッシュは座って、再びフォークを手にした。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 25 09.11.11
          ジャンル・やかた 27 09.11.17

  • アンネマリー・ボーりンド

    「食べられないものは材料に使わない」 という信念の
    ドイツのオーガニックコスメである。

    買ったのは、ピュラソフト Q10クリーム 50ml 7300円
    LLアイクリーム 30ml 13650円

    Q10クリームの全成分
     水、野菜油、ステアリン酸オクチル、オクトクリレン、
     ステアリン酸ソルビタン、シア脂、ソルビトール、ピーナッツ油、
     ベヘニルアルコール、ステアリン酸スクロース、グリセリン、
     ジステアリン酸スクロース、フィタントリオール、ステアリン酸、
     コムギ胚芽油、コーン油、ミツロウ、センチフォリアバラ花ロウ、
     エタノール、エチルヘキシルグリセリン、キサンタンガム、
     パルミチン酸アスコルビル、クエン酸水添パーム油脂肪酸グリセリズ、
     トコフェロール、キュウリエキス、スギナエキス、レシチン、ユビキノン
     アルギニン、パンテノール、アラントイン、安息香酸ベンジル、
     酢酸トコフェロール、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、
     フェノキシエタノール、香料

    LLアイクリームの全成分
     水、シア脂、ゴマ油、コーン油、ホホバ油、ソルビトール、
     ステアリン酸、グリセリン、ベヘニルアルコール、
     ステアリン酸グリセリル、セスキステアリン酸メチルグルコース、
     ヤシ脂肪酸スクロース、トウキンセンカエキス、乳酸ラウリル、
     ミツロウ、パンテノール、ダイズ油、水添ココグリセリル、
     パルミチン酸セチル、ヤグルマギクエキス、アイブライトエキス、
     ミモザアカシア葉ロウ、アブラナ種子ステロール、カロットエキス、
     ハゴロモグサエキス、スギナエキス、ビサボロール、
     フィタントリオール、パルミチン酸レチノール、
     パルミチン酸アスコルビル、トリパルミチン酸ピリドキシン、
     トコフェロール、クエン酸水添パーム油脂肪酸グリセリズ、レシチン、
     エタノール、パンテニルエチル、ベンジルアルコール、
     フェノキシエタノール、ソルビン酸K、香料

    ものすごい値段だが、輸入代理ショップで半額近くで購入したのだ。
    正規品は、手を出せない価格帯のメーカーなんだが
    一度は使ってみたくてな。

    と言うか、成分表も微塵もオーガニックの気配がせんのが不安だったが
    Q10クリームの実際の使い心地は、何かを思い出す匂いと塗り心地で
    その “何か” を思い出すのに10日ぐらい掛かった。

    中国の某真珠クリーム、あれにそっくりなのだ!!!
    あの、鯖光のようなパール感はないんだが。

    オーガニックにあるまじき、粉っぽい昔のおしろいのきつい合成香料臭で
    塗り心地もクリームに粉を混ぜたような伸びで
    ベタつかないのは良いけど、何か不自然。
    香港からの購入なんで、まさかニセモノか? と、真面目に不安。

    それでも使用していたが支障は出ず、かといって何の効果も感じられず
    ちょっと意味のわからん化粧品だ。

    もういっちょ、わからんのが、クリームの減り方。
    このクリーム、蓋を開ける度にゴゴッゴゴッと減ってるんだよ。
    指跡は付いているけど、クリーム表面が妙に平らになってるし。

    (注: クリームはスパチュラですくい取るのが鉄則だぞ。
        指を突っ込んでると、細菌が繁殖するから。
        いや、指ブッ込みの私が言うな! って話なんだが・・・。)

    そんで、使い切るのに、たった98日だった。
    50gのクリームだったら、私の場合、半年近く持つんだけど
    3ヶ月ちょいで完全に使い切ってしまったんだ。
    霊が勝手に使ってるんじゃないか? と思ったほど。
    (コスメ記事なら、メルヘンに “妖精さん” と
     言うべきところなんだろうけど、私はオカルト好きだもんで。)

    そんで、最初は粉っぽいさっぱりクリームだと思ったのに
    中身が減るほど油っぽくなってきて、最後は塗るのが辛いほどベタついた。
    なのに、保湿されていない気がするという、ものすごい違和感。

    で、手持ちの関係で、先にQ10クリームを使い始めて
    アイクリームは後から使い始めたのだが
    アイクリームの中蓋の銀紙を剥がして驚いたよ。

    アイクリームは、すっげえ天然香料の匂い!!!

    こっちは、正にオーガニックコスメ、という匂いで
    Q10クリームとは似ても似つかない。

    Q10クリームに中蓋の銀紙が貼ってあったか、覚えていないんだけど
    これはマジで、中身がすり替えられているかも
    そう思うほど、この2つは別物なんだ。

    こんな疑惑があるのに、使用感のレポを書いても意味がないかも、と思うが
    こういう事もあるよ、という経験談として何とぞ。

    アイクリームは、ちょい黄色めクリームで天然系のきっつい匂い。
    でも、こっちも伸びがものすごく良い。
    保湿力はQ10クリームよりあり、油分多めの感触。

    効果は・・・よくわからん。
    納得できる使い心地なんで、良いんじゃないかと。
    すまんのお、鈍感が使用レポなど書いても、何の役にも立たんわなあ。

    偽物か本物か、確かめた方が良いんじゃないか?
    と思われるだろうが、正規店以外の購入は
    そういう事も覚悟して買うべきだと思っている。
    安さのために保証を捨てるんだから、自己責任だな。

    そんで買った店にも一報もしない。
    本物を知らないんで、確証が持てないからだ。

    こういうユーザーが、メーカーにとって一番迷惑なんだよな。
    きちんとした店で買ってくれ、っちゅう話だよな。
    つくづく思い知ったんで、今後は気をつけるよ。

    ちなみにな、買ったサイトを確認したら
    この商品の取り扱いがなくなってた・・・。
    もう、限りなく黒々としてる怪しさだよな。
    苦情が多かったんじゃないか? と、邪推してるよ。

  • ジャンル・やかた 25

    コォ・・・ン

    「あれ? 今何かヘンな音が聴こえませんでしたー?」
    「いや? どんな音だい?」
    「遠くでわら人形を打ってるようなー・・・。」
    「わら人形? 何だい、それ?」
    「日本古来より伝統的に行われている、呪いの儀式ですよー。」
    「・・・・・日本って、本当にどういう国なんだい?」
    「神も仏も家電も混在している、何でもアリの国ですよー。」
    「あんたの言ってる事は、どうも信じられないねえ。」
    「兄や私は、典型的な日本人ですよー。」
    「ああ・・・、なるほどね・・・。」

    ローズが入れてくれたお茶を、ひと口すすって続ける。
    「そういや、ここ、幽霊とか出ないんですかー?」
    「幽霊? 聞かないねえ。」
    「あなたは神を信じますかー?」
    「宗教はやってないんでね。
     日本人は何だっけ? ブッディストって言うんかい?」
    「日本には八百万の神様がいて、幽霊もウジャウジャいるんですよー。
     八百万は神道で、幽霊は仏教の分野になるんかなー。」
    「・・・何か色々と大変そうだね・・・。」
    「そうなんですよー。 もうゲシュタルト崩壊ですよー。」
    「何だい? ゲシュタルトって?」
    「そんな難しい事を私に訊かないでくださいよー。」

    ローズは、アッシュとの会話に慣れてきていた。
    「さて、寝ようかね。」
    さっさと流して、腰を上げる。
    「あんた、ちゃんと寝るんだよ。」
    「・・・はい・・・。」
    心細そうに表情を曇らせたアッシュの頭に、ゲンコツを一発入れる。
    「ほら! シャンとしな!」

    アッシュの返事を待たずに、ローズは部屋を出て行った。
    どうせ、また思い出してはメソメソするんだろ、こいつは。

    ローズの読み通り、アッシュは中々眠れずにいた。
    時計を見ると、夜中の1時である。
    また腹が減った。
    考えてみれば、今日は1食しか食っていない。
    こんな時間に食べると、体調が悪くなるのだが
    食わず癖が付くのは、もっとマズい。
    アッシュは食堂へ向かった。

    食堂は無人かと思っていたが、賑わっていた。
    しかも全員、酔っ払いである。
    ああ・・・そうか、そうだよな
    飲酒はどこの世界でも習慣だもんな。

    その、全世界共通の言動の酔っ払いに囲まれて
    アッシュは居心地悪く、飯を食った。
    「嬢ちゃんは、まだ酒を飲めない歳かねー?」
    「はい、未成年なんですー。」

    一体いくつサバを読めば気が済むのか
    シラッと答えるアッシュに、オヤジが叫んだ。
    「俺は10歳から飲んでるぜー、わはははは。」
    「俺なんか産湯がウイスキーだったぜ、ぎゃはははは。」
    「あたしなんか母親がアル中で、腹ん中で既に酒浸りさー。」

    ドワッと笑いの渦が巻き起こる中
    アッシュだけは無表情で、皿を突付いていたが
    いたたまれず席を立ち、そそくさと食堂から退散した。

    「愛想がないのね。」
    え? 私? と振り返ると、女性が立っていた。
    えーと誰だっけ? と、珍しく思わなかったのは
    その強烈な香水の匂いである。
    アッシュが初日に門のとこで会った女性であった。

    「はあ。 酔っ払いに愛想良くしても良い事ないですからー。」
    その答に大笑いするその女性も、かなり酔っている。
    構わず行こうとするアッシュの顔を覗き込む女性。

    ジッと凝視され、目が泳ぐアッシュ。
    「あなた、お兄さんと全然似ていないのね。」
    「はあ、よく言われますが、ほんとにほんとの実の兄妹でー。」
    「でも、目の色は同じね。」
    「すいませんが、日本人は全員この色なんですよー。」
    「髪も一緒ね。」
    「ほんとすいませんけど、日本人、皆こうなんですー。」

    女性はふふっと笑い、フラフラと東の廊下へと歩いて行った。
    明るい茶色の巻き髪のその小柄な女性は
    他の住人たちと一緒にここにいるにしては、異質な雰囲気である。

    あの人は何をしている人なんだろう?
    女性のピンヒールを見て、アッシュは違和感を感じた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 24 09.11.9
          ジャンル・やかた 26 09.11.13

  • 大掃除強化シーズン

    普通は12月の30~31日の、ほんっとの年末にする大掃除だが
    私の場合は12月に入ったら、大掃除月間として
    コツコツと毎日掃除をする事にしていた。

    これはもう10年以上の習慣で、お陰で12月は大嫌いな月になっている。
    ただでさえイベントがあまり好きではないので
    クリスマスだの大晦日だの、世間に合わせるのがすんげえ面倒くせえのに
    そこに掃除義務まで加わったら、地獄のmonthだろ。

    それが今年は11月に入ってから、既に大掃除をしている。
    理由は2つ。

    ひとつは、ああー、来月は大掃除だー、と悩むのがうっとうしいから。
    カレンダーが目に入る度に、ちょっとウツが入るのに嫌気が差し
    そんなに気が重いのなら、とっとと始めよう、と思ったのだ。
    とんだ気の短い行動を取っとるが、来年は10月に悩み始めるんだろうか?

    どうも本来の “大掃除” の意味を、取り違えている気もするが
    関西では5月のゴールデンウィークに大掃除をする人もいるので
    要は年に1度、どっかで大掃除をすりゃ良いんじゃないか
    と、自分ご都合主義的拡大解釈をしている。

    目指せ、(ゲーム三昧ホラー見放題の) 優雅な年末ライフ!

    もうひとつの理由は、風邪。
    確か去年は12月始めに大風邪を引いて、とても辛い思いをした。
    思い起こすと、毎年毎年12月のどっかで風邪を引いて
    スケジュールが押せ押せになってしまっている。

    人生、何があるかわからんので先手必勝! を実行しているんだが
    先手必敗になってるきらいも無きにしもあらず。
    だが後回しというのが、どうも性に合わないので
    勝とうが負けようが、とにかく突っ走りたいのである。
    とても頭が悪い性格だというのは自覚しているので、放っといてくれ。

    そんなこんなで、掃除箇所リストを作り
    1日1か所! を目標に、今現在、毎日掃除をしている。

    てか、何でこんなに掃除せにゃならんところが多いんだよ?
    普段から、整理整頓と掃除はやっているのに
    いざ大掃除になると、あそこもここもだ。

    大掃除っちゅうのは、普段掃除しない場所をするんだろ?
    普段掃除しない場所っちゅうのは、したくない場所なんだよ!
    何かもう一生、触りたくも見たくもない場所なんだよ!
    それをしろと? しかもクソ寒い年末にしろと?

    模様替えとか整理整頓は好きなんだけど、拭き掃除がほんっとイヤ。
    特に縦拭き、水平じゃなくて垂直。 窓ガラスとか。
    腕も首も疲れてかなわん。
    家の中のもの、割り合い的に縦拭きのが多い気がする。

    水平と言っても、床とかもたまらん。
    這いつくばって、全身運動で疲労困ぱいだ。
    自然に立って自然に拭ける位置以外は拭きたくない!

    掃除機も、さっさとついてくりゃ良いものを
    後ろでガスゴス物にブチ当たって、ゴロゴロ横ローリングしやがる。
    おめえのせいで、壁に付かんでいい傷が付いてしもうとるんだよ!
    私の気持ちを察して、チャッチャと合わせてくれよー。

    これは単なる八つ当たりなんだが
    そんだけ掃除というのは面倒くさいものである。
    どうせするのなら、楽しくやりたいと思うのだが
    何故か掃除だけは、そんな前向きな気分になれない。

    それどころか、早めにチマチマやってるのが裏目に出て
    家中いきなりピッカピカ、という達成感がないのが大誤算。

    と言うか、それほど汚れてもいないんだよ。
    汚れてからすりゃ良いんじゃないのか?
    と一瞬、ドス黒い私がささやきかけてくるが
    汚れが心の重荷になる性分なので、そこまで放置も出来ない小心ぶりである。

    “目に見えないバイキン” とか、一体誰が言い始めたんだよー
    知りたくなかったよ、そんな言葉
    菌が目に見えないほど小さいなど、わかりきっているけど
    何でそれを、あえてわざわざ標語にしなきゃならないんだよー
    人生にのしかかるレベルの、ものすげえ脅迫だよーーーーーーー!

    と、毎年毎年、年末になると飽きずに掃除のグチを書いているが
    シンデレラって実際は大変だったろうな、と、つくづく思うぜ。

    あ、でもシンデレラは姫さんになって、掃除はしなくて良くなったが
    私は一生、掃除に追い回されるド平民の運命だし
    やっぱシンデレラ、ラッキーだよな。 清掃面だけでは。

    と言うか、私のどこにもシンデレラと張れる部分は何ひとつないんだが
    何を考えてメルヘン話の主人公と比べてるんやら
    私、逃避の仕方も、ちっとバカじゃねえか?

    しかし11月というのは、年末というには早いので
    妙な余裕が湧いてしまい、ちょっときついとダラダラしてしまう。

    “私” の分際で何がそんなにきついのか、と問われそうだが
    もう息をするのも疲れるんだよ、人生はっ!

  • ジャンル・やかた 24

    アッシュは階段側の廊下の壁に張り付いていた。
    耳をくっつけたり、コンコンと叩いたりして、左右にウロつく。

    ここに部屋が、最低2個は並んでいるはず。
    私の部屋は、ここの並びがバストイレだったから気付かなかったけど
    このフロアの南の壁の奥には、かなりのデッドスペースがある。

    そんで、この建物、こっから奥は増築されたんだ。
    アッシュがかなりムチャをして、剥いだ壁紙とその下の板
    その更に下の壁は、途中で材質が変わっていた。

    歴史のある館の増築や改築は普通の事だよな・・・。
    ・・・歴史・・・、どっかで聞いたような・・・?

    「あっ!」
    しばらく考え込んでいたアッシュが、叫んだ。
    飯! 飯を食ってなかったんだよーーー!

    それを思い出すと、そそくさと部屋の中に入っていった。
    どんなに大事な事でも、ひとつ思い出すと他は全部忘れる
    まるで昆虫並みの知能の持ち主である。

    ふと目覚めると、あたりは真っ暗だった。
    どうやら満腹になって、うたた寝していたようだ。
    ソファーで寝たせいか、体のあちこちが痛い。

    ヨタヨタと歩いて電気を点けると、時計の針は22時を回っていた。
    アッシュはものすごい孤独感に襲われた。
    こんな時は、自分以外に生き物がいない世界に迷い込んだ気分になるのだ。
    アッシュは何の動機もないのに、サメザメと泣いた。

    だめだ、こんな生活だとウツウツしてくる・・・。
    どうせあと半年 (最長) の命だから
    規則正しい生活とかアホらしいかも知れんけど
    それでも沈み込んで暮らしたくない。
    きちんとせんと、きちんと!
    アッシュは涙を拭って、ローズの部屋に向かおうと廊下に出た。

    ドアを開けたら、目の前にローズが立っていて
    お互いに 「うわっ」 と、叫んだ。
    「ごめんごめん、電気が点いてたから起きたと思ってさ。
     遅くなっちゃったけど、鋏、修理できたから
     ん? あんた、どうしたんだい?」

    アッシュが再び大泣きし始めた理由は
    せっかく鎮めた気持ちを、ローズとの鉢合わせの驚愕と
    ローズが自分の部屋の明かりをチェックしていてくれた事で
    揺さぶられたせいである。

    「すい・・・ません、驚いたんで・・・」
    「驚いたぐらいで泣かれたらたまらないよ!」
    「起き・・たら・・・真っ暗で・・・何か・・・寂しくて・・・」

    まったく、こいつはガキかい。
    こんなヤツに相続など、とんでもないね!
    ローズは、恐らく出会ってから今までで一番呆れていたが
    泣きじゃくるアッシュを、可哀想と想ってしまう気持ちもあって
    そんな自分にも激しく腹が立った。

    でもまあ、死への恐怖感で情緒不安定になってもしょうがないね
    ローズは、そう擁護して解釈したが
    実はアッシュは普段から、時々こういう
    起きたら夜! という事をやらかしては
    自己嫌悪に陥って、メソメソしていて
    これがアッシュのナチュラルな姿であった。

    「はいはい、わかったから、中に入って座って。
     さっきの朝飯は食ったかい? お腹は減ってないかい?」
    甲斐甲斐しく世話を焼くローズを、アッシュは弱々しく見つめ
    ローズはその目を見て、まるで捨てられた犬のようだ、と感じていた。

    これが二人の関係を決定した出来事で
    その形は、その後変わる事はなかった。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 23 09.11.5
          ジャンル・やかた 25 09.11.11

  • アロマ

    どうも体が緊張する性質のようなので
    その対策の一環として、アロマオイルを試そうと思い立った。
    指一本たりとも動かさずに効き目があるんなら、こんなに良い事もねえよな。

    アロマオイルは以前に、ちょっとやった事がある。
    でも、まったく効果を感じず放り出していたのだ。

    知人に言わせると、アロマは気合いを入れてせんと効かん!
    効く! と信じる心が大事だ!
    と、えらく熱弁を振るわれたあげく
    おめえにはそういう繊細さはないから、アロマは無理
    とか、身に覚えのない烙印を押されて、そこで怒るべきところなのに
    ああ、そうなんか、とナチュラルに受け入れて諦めたのだ。

    いや、そこらへんの心の機微とかを突かれると
    よくわからんので、素直に尻尾を丸めて引き下がっちゃうんだよ。
    ボンヤリと自覚している己の無神経さが、私の弱点だと思う。

    ところが、よくわからんが、どうも最近ストレスが溜まっているらしく
    体がやたら緊張しているようなんだ。
    心の方は無神経だから、緊張する事はあまりないんで
    体のこの異変が緊張によるものなのか
    果たして自分にストレスがあるんかもよくわからんが
    よく考えると、あまりリラックスというものを感じた事がないのに
    気が付いたんだ。

    そこで、とにかく何かいっちょ対策を講じてみよう、と
    思い立ったのが、アロマオイル。
    これを選んだ理由は、最初に書いた “指一本たりとも” だ。

    そこで何の知識も持たずに、のこのこアロマ屋さんに行ってみた。
    もう、こっからして無神経な行動かも知れんが
    アロマ屋さんはプロなんだから
    素人の一夜漬けの知識なんか、かえって邪魔にならんかあ?

    だが行ってみたら、そこは熱い場所だった・・・。
    まず、今持っているアロマポットの種類を訊かれ
    もうそこで既に脳内には ? の嵐だったんだが
    要するに、小さい器具は小さいなりの効果しかないそうだ。

    しかし勧められたのは、これ何の装置? というぐらいデカい物体で
    何種類もあったんだが、その中の一番小さいのでももはや “機器” で
    うちの庶民派住宅では、加湿器さえも置く場所に困るから
    超ミニを選んで、鼻先に置いていると言うに
    こんなデカいアロマポットなんか置けないよー。
    常にグレートデーンが部屋にお座りしてる、と思ってみい
    すんげえ邪魔だろ? (幅はそんなにないけど、高さがとにかくトール!)

    しかも値段もどれも超グレートで、ほんと無理!
    だったんで、アロマポットを使わずにアロマをする方法を訊いた。
    そんでオイルも選んでもらった。

    店員さんによると、嫌いな匂いは効果ゼロだそうだ。
    リラックス効果では一番に名が挙がる、柑橘系もラベンダーも
    私には嫌いな匂いなんで、すんげえ困難だったけど
    何だっけ? もう忘れてしもうとるが、ローズマリー?
    とにかくその類のローズ何とかを基調にしたブレンドオイルにした。

    そんで、アロマポットを使わない方法だが
    化粧用エタノールでアロマオイルを溶いて、水で希釈して
    スプレー容器に入れて、空中散布だそうだ。

    うちには精密機器拭き取り掃除用に使っていたエタノールしかなかったが
    まあ、薬局で (5年前に!) 買ったやつだし
    オイル溶かし用だから良いか、とそれを流用し
    おまけに配合割り合いとかちゃんと訊いたんだが、途端に忘れてしもうて
    まあ、肌に直付けしないから良いか、とテキトーにドボドボ混ぜた。

    もう、自分でもどっから突っ込めば良いのかわからんムチャクチャぶりだが
    何かそれらしき液が出来ただよ。

    だけど空中散布じゃ、匂いが一瞬なんだな。
    そこで、肌に直接塗布しなきゃ良いだろ、と
    服にスプレーしまくって、それでも匂い、一瞬で
    アロマオイルを足そうかと思うも、数ml何千円のブツなんで
    服に集中して振りかけて、それで鼻を覆ってスーハースーハーやっている。
    結果的に皮膚に付いているがな。
    そこにニキビが出来たがな。

    シンナー中毒者のような光景で、情けないんだが
    それをやってると、ちょっとだけは眠くなるんで
    一応効果は出ているかな、と自負している。

    ただ、それをした服は、洗濯後の匂いが何故か生ゴミ臭い。
    何か悪い点があるんだろうか?

    注: 何もかも間違っとる! という罵倒はやめてくださーい。

  • ジャンル・やかた 23

    どおしって お腹って減るんだっろー

    布団の中でブツブツと歌うアッシュ。
    真剣に悩んでいたり、悲しんでいたりする時に
    空腹になると、とても情けなくなる。

    ちゃんと寝て目覚めた朝は、食欲がなくて困るのに
    悩んで眠れない夜など、明け方ぐらいから腹が減ってたまらなくなる。
    こんな時の油っこい麺類や駄菓子ほど美味いものはない。
    あーーーっっっ、チャンポン食いてえー、亀せんべえ食いてえー
    アッシュの悩みは、ここにコンビニがない苦悩へと変わっていた。

    布団の端をガジガジ噛んでいると、ドアがゆっくり開いた。
    ローズがソッと顔を覗かせる。

    こいつは私にノックせえせえ言うくせに、自分は覗きまくりかよ
    アッシュが凝視してると、ローズはニカッと笑った。
    「あんた、夕べ寝てないだろ、腹が減ってるんじゃないかい?」

    「やったーーー!!! ご飯ーーーーーーー!!!」
    アッシュが喜び勇んで飛び起きると
    ローズが大威張りでトレイを差し出した。

    トレイの上には、コーヒーとサンドイッチが乗っていて
    それを見て、チッという顔をしたアッシュに、ローズが怒った。
    「文句があるなら食わなくて良いよ!」
    「とんでもない、とてもありがたいですーーー、感謝ですー。」
    しょせんバテレン人には、日本人の心のふるさと、おにぎりなどという
    芸当は無理っちゅう話だよな
    へっへっへと、腰を低くご機嫌取りをしつつも
    性根は腐りきっているアッシュであった。

    廊下に出ながら、ローズが微笑んで言った。
    「何も心配はいらないよ。
     夕べの事は、あたしがちゃんとカタを付けておいたからさ。」
    それを聞いて、アッシュは忘れていた不安に再び駆られた。
    ああ・・・、私がテキトーに掘った墓穴を
    こいつが丁寧に整備している気がする・・・。

    「んじゃ、あたしはバイオラのとこに行ってくるよ。
     鋏の修理がまだだから、何か調達してこないとね。」
    「あの男の人のコレクションの武器を借りたらどうですか?」
    「男?」
    「ほら、トンファーを持った・・・」
    「ああ、ラムズね。
     何でラムズが武器コレクションをしてるって知ってるんだい?」
    「私がこの状況ならするからです。」
    「・・・なるほど・・・。」

    「とにかく、あたしが戻ってくるまで出掛けたらダメだよ。」
    ローズが念押しをしている時に、よそ見をしていたアッシュが叫んだ。
    『うおっっっ! ジー!!!』

    「何だい?」
    ローズが身構えて振り向く。
    アッシュの視線の先には、黒光りする物体がいた。
    「何だ、ゴキブリかい。」

    ゴキブリがササッとゴミの山に入っていく。
    それを見たアッシュが、そのゴミを掻き分け始めた。
    「ちょっ、あんた、そこまでして退治しても
     ここには山ほどゴキブリがいるんだよ、キリがないだろ、放っときな。」

    ゴミを四方八方に撒き散らしながら、アッシュが叫んだ。
    「ローズさん、今私が叫んだ言葉がわかりましたかー?」
    「へ?」
    「私、何て叫びましたー?」
    「・・・さあ? そういや何か言ったね。」

    「私はとっさに日本語で叫んじゃったんですよー、それも隠語でー。
     日本語では、ゴキブリの呼び方はGOKIBURIなんですー。
     もう、その単語を使いたくないほど嫌いなんで
     頭文字のGで、『ジー』 って言ってるんですー。」
    「へえー、で、そんだけ嫌いなのに何で探すんだい?」

    「あなた、わからなかったでしょー? 私の日本語ー。
     ゴキブリにも、わからなかったんですよー。」
    「普通、虫には人間の言葉はわからないだろうねえ・・・。」
    ローズが呆れたように答えると、アッシュが振り向いて言った。

    「ところが、この虫にはわかったんですよー。 英語がー。
     あなたの “ゴキブリ” の言葉だけに反応したでしょー?」
    「それは考えすぎじゃ・・・?」
    「考えすぎなら考えすぎで良いんですー。
     こんな汚屋敷で、いつでもどこでも一番自然に存在できるのは
     ゴキブリとかネズミですからねー。
     哺乳類より昆虫の方が本物っぽく作れるでしょー?」

    「何を言ってるんだい?」
    「盗聴ですよー。」
    ローズがその言葉を聞いて、笑い始めた。
    「007の話じゃあるまいしーーー、あっはっはっは」
    「あんなおとぎ話と一緒にしないでくださいー。
     私はアキハバラの国の出身なんですよー?
     他国の軍関係者が兵器の部品を買いに来るとこですよー?
     店頭で誘導システムの部品が売られてるんですよー?」

    それを聞いて、ローズが真顔になった。
    「日本って、そんな国だったんかい?」
    「そうですよー! 今じゃ民家に盗聴器や盗撮機械が仕掛けられてて
     住民は一家に1個八木アンテナが必須ですよー。」

    アッシュはムチャクチャ言ってるが
    ローズはそれを真に受けて、考え込んだ。
    確かに相続者の詳しい動向を、主が知る術はないんだよね。
    護衛に告げ口の義務はないんだからさ。

    「あっっっ!!!!!!!!!」
    いきなりのアッシュの絶叫に、ローズの心臓が止まりそうになった。
    「何? 何があったんだい?」
    「壁紙が剥がれてるーーー。」

    ローズは腰が砕けそうだった。
    もう、こいつにはこいつの世界があるようだから放っとこう。
    あたしゃあたしで、自分の用事を済ませる事に専念しよう。
    「はいはい、じゃ、あたしゃ行ってくるねー。」

    しばらく歩いて振り返ると、アッシュが壁紙をゴリゴリと剥いでいた。
    ローズは、アッシュに初めて会った時の感覚を思い出していた。

    こいつ、ヘン。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 22 09.11.2
          ジャンル・やかた 24 09.11.9

  • 空港の変化

    土産は伊丹空港の2Fの千鳥屋で、千鳥饅頭を買って行った。
    ところが、この千鳥屋、福岡にもあるのだそうだ。
    店名も売ってるものも同じだけど、マークが違うらしい。
    天満宮関係の店じゃないか? という話だ。

    JALの再建がニュースになっているが
    今回の空の旅で、空港関係のサービスがクソだと気付いた。

    特別席とか、いつの間に出来ていたのか知らんが
    何か特別会員というのもあって、それが関係してるんか何なのか
    よく観察してみると、空港内の空気も以前と違いギスギスしているのだ。
    笑顔で応対しながらも、言ってる事がひでえ、みたいな。

    わがままな客が多いからな、と思いつつ荷物を預けに行ったら
    壊れものが入っていないか訊かれ、兄への土産の日本酒だけを出すハメになり
    化粧品とかも入っているんですが、と言ったら
    それが壊れても、被害は他にまで回らないので大丈夫だと笑顔で答えられ
    ああ、そうですか、と預けたんだが
    後でよく考えたら、他のお客に被害が及ぶのだけが困るわけで
    客の自爆は関係ない、って話だよな。

    それはそれで、ごもっとも、なんだけど
    のうのうと言うところが、ちょっと驚かされる。
    昔はああいう言い方はしていなかったと思うんだがなあ。

    そういや預ける荷物の扱いは昔っからひどくて、よく中身が壊れていた。
    今回も、案の定化粧品が壊れて液体が漏れていた。
    ジップ付き袋で全部個別包装、という慎重を期す性格が幸いして
    他への被害はなかったが、熊本からの帰りでもカップラーメンが壊れてた。

    もう二度と衣服以外の物は預けるものか、と思ったが
    今テロ対策で、液体の持ち込みは制限されているんだろ?
    化粧品とか結構な量なんだが、どうしたものやら。

    て言うか、物流のこの時代に、こんだけザツな扱いをするなど
    何か言い分があるんだろうか?
    ああっ、良い、言わんでもっ。
    色々とそっちにはそっちの都合もあるだろうから
    自衛するしかないとわかっているけど
    JALがああなったのもわからんでもない、っつううか
    空港全体、お客様満足度についてちっと考えろやー。
    応対の質がすんげえ落ちたと、空港のあちこちで感じたぞ。

    ゲートで引っ掛かった客に、何であんなに無愛想にチェックするんだ?
    恐いとすら思わせる表情で、並んでてドキドキしたよ。
    警報が鳴ったら犯罪者扱いされるんだもんなあ。
    「ご協力ありがとうございました」 という声は聴こえたけど
    鬼のような顔だったし、見てるこっちまですげえビビらされたぞ。

    空港業界って、何かあったんか?
    愛想の悪かった業種でさえ、何たらコンプライアンス?とか言うやつで
    最近はカスタマー対応とやらを勉強してるというのに
    あんだけ “特別感” を感じさせていた場所が
    この不況の中、逆に悪い印象を感じさせるなど信じられなくてなあ。

    何となくJALが潰れるのもわかる気がするぜ。

  • ジャンル・やかた 22

    アッシュはベッドの中で、天井を見つめていた。

    はあ・・・えらいな大口を叩いてしもうたが、どうすんだよ?
    守るとか戦いをやめるとか、一民間人に出来るわけがねえじゃん
    相続したら、マジどうすんだよ?
    つーか、相続できるかどうかもわからんわけじゃん
    今日殺されるかも知れないんだし
    相続後の事は、相続できてからで良いんじゃね?
    まずは生き残る事を重点に考えるべきだろ
    でも相続してからどうするか考えても遅くね?
    反乱されて即死とかシャレにならんわけだし
    今からでもボチボチ考えておいた方が良くね?
    てか、今まさに命の危機なんだから
    他の事に気を取られてる場合じゃなくね?
    ああー、ほんと何であんなデカい口を叩いたんだか
    こっちはしたくてしてるわけじゃないってのに
    人殺し人殺し連呼されて、すんげームカついたんだよな
    こういうのを墓穴を掘るっちゅーんだよー
    でも、だったらどうすれば良かったわけ?
    すいませんすいませんなわけ?
    襲ってくる方が悪くね? あの女の人も八つ当たりじゃね?
    でも親しい人が殺されたら、そりゃ怒るわな
    気持ちはわかるし
    でも戦争ってそういうもんじゃね?
    そういうのも覚悟して参加すべきじゃん
    てか、私、参加したくてしてるわけじゃねえし
    だったら、さっさと殺されれば、戦闘は終わるわけじゃん
    何でそんなんで私が死なにゃならんのだよ?
    てか、私が死んでも次の相続者が来るわけじゃん
    だったら、とっとと相続して、戦うシステムをなくせば良いんじゃん
    だからそのシステムとか、どうすんだよ、って話じゃん

    アッシュは、勢いに任せて振るった熱弁を、早々に悔いたせいで
    てか、でも、だって、と思考を空転させまくって
    一睡も出来ずに、一晩中悶々としていたのである。

    しかも食堂の方では、夜遅くまでザワついていた。
    自分が言った事に住人たちが反応してるんじゃないか、と思うと
    恐ろしくて、部屋の外に出る気になれない。

    ああ・・・何であんな事を言っちゃったんだろーーー
    アッシュは布団をかぶって、ジタバタもだえ苦しんだ。

    アッシュの想像通り、住人たちの話題はあの事一色だった。
    アッシュが出て行った後の食堂は、しばらく静まり返っていた。
    最初に口を開いたのは、ローズであった。

    「あんたの彼氏を殺したのはあたしだよ、アッシュじゃない。
     恨むんなら、あたしを恨みな。
     だけどね、戦うヤツらは皆、覚悟してやってんだよ。
     自分で決めてやってるんだよ、強制じゃない。
     ま、あんたの気持ちもわかるから
     カタキをとりたいんなら、いつでも受けて立つよ。」

    ローズは立ちすくむ人々を前に、堂々と声を張り上げた。
    「来たいヤツは来ればいいさ。 返り討ちにしてやるよ!
     それがあたしの役目なんだ。」

    再び沈黙の時間が流れた。
    次に口を開いたのは、屈強そうな男だった。
    「そうさ。 それが俺たちの役目だろう。
     恨まれるなんて、筋違いじゃねえか?」
    それが開始の合図であるかのように、人々から次々に言葉がこぼれる。
    「でもやっぱり知り合いが死ぬのは気分の良いもんじゃないだろ。」
    「自分で決めたんだろ。」
    「死ぬつもりでやってるわけじゃねえよ。」
    「死ぬ可能性が充分にあると普通わかるだろう
     そんな事も考えずにやってるなんて、おまえバカか?」
    「何だと、この野郎!」
    「やるんかよ、このクソ野郎が!」

    つかみ合いが始まり場が騒然となった時に、甲高い女性の声が響いた。
    「でも!」
    声の主は、まだ10代らしき可愛い女の子だった。
    「でも、あの人は皆を守る、って言ってました。
     戦わなくて済むようにする、って。」

    「そんなの出来るわけがないだろ。」
    中年女性が失笑しながら、吐き捨てるように言った。
    「まったくガキは夢見がちで目出度いさね。
     ここはずーーーっと、こういうしきたりなんだよ。
     ずーーーーーっと、そうやってやってきたんだ。
     それを変えるなんて、何も知らないよそ者のたわごとさね。」

    「そうじゃ。 ここはずっとそれでやってきた。」
    老人が部屋の中央に進み出た。
    「主は全員よそ者じゃったのに、変えるなんて言ったヤツはおらんよ。」

    老人のその言葉は、賛同とも批判とも取れるので
    全員が次の言葉が見つからず、黙りこくってしまった。
    食堂の中はおろか、廊下にまで人が溢れていた。
    騒ぎを聞きつけて、南館からも住人が集まってきていたのだ。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 21 09.10.29
          ジャンル・やかた 23 09.11.5